メインコンテンツにスキップ

キメラ技術:世界初、人間の細胞が入ったブタの胎児を作ることに成功(米研究)

記事の本文にスキップ

56件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Advertisement

 臓器移植に利用される臓器が不足しているという問題はいずれ解決されるかもしれない。動物の体内で人間の臓器を作る”キメラ技術”が着々と進められている。

 米カリフォルニア州にあるソーク研究所はその実現へ向かって大きな第一歩を踏み出した。世界初となるヒトとブタのキメラ胚の作成に成功したのだ。

ラットとマウスのキメラ作成から応用

 ファン・カルロス・イスピスア・ベルモンテ(Juan Carlos Izpisua Belmonte)氏が率いる研究チームは、まずラットとマウスのキメラ作成に着手。これに成功したのは2010年のことで、日本でラット多能性幹細胞から発達させた膵臓(すいぞう)を持つマウスが作り出された。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:first.lifesciencedb

 同チームはこのときの経験をもう一歩進め、CRISPR-Cas9というゲノム編集技術を用いて、膵臓だけでなく心臓や目などの臓器に関連する遺伝子までマウスから削除。

 続いて削除された臓器の代わりとしてラットの幹細胞を注入した。特定の臓器の主要制御因子と呼ばれるものの機能を止めても、細胞のガイドとなる環境自体は残っているため、そこに代理となる細胞を移植したというわけだ。

ブタとヒトのキメラ胚作成へ

 チームはさらにラットとブタのキメラ作成に挑戦。しかし、あまりに違いすぎる種であるために上手くいかなかった。そこでウシとヒト幹細胞を組み合わせて胚を作成することにした(種同士の臓器のサイズが比較的同じ)。ヒト-ウシキメラ胚作成に成功すると、今度はよりコストの低いブタで同様の胚を作成した。

 こうして作成された胚をブタに移植し、3~4週間かけて成長させた結果、本来の幹細胞よりも若干成長が進んだ中間幹細胞が確認された。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:TheScientistLLC

 しかし、この中間細胞でさえも、最終的にブタ胚に組み込まれるヒト細胞の数が少なすぎるために、キメラ胚の多くが未発達のまま残るという問題がある。

 チームによると、ヒト-ブタキメラがマウス-ラットキメラのように上手くいかない理由はいくつかあるという。その1つは、ヒトとブタはマウスとラットほど似ていないことだ。

 例えば、マウスとラットの妊娠期間は数日しか違わないが、ヒトとブタは5か月以上も違う。そのためにヒト細胞は3倍も速い細胞の発達に合わせなければならなくなる。

 それでもヒト幹細胞の一部が、筋細胞ならびに膵臓や肝臓といった臓器の前駆細胞に変化してたことは確認されている。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:NatureNews

 研究者によると、次の段階は、CRISPR-Cas9で組み合わせる前にブタ胚に対するヒト細胞の寄与率を向上させる戦略を編み出すことだという。現段階ではブタ細胞10万個に対してヒト細胞1個しか含まれていないが、それを0.1~1パーセントまで引き上げることが目標だ。

移植に適したヒトの臓器を動物で作るキメラ技術の行く末

 移植に適した臓器を作るという最終的なゴールは、まだずっと先にある。しかし、また別の重要な一歩も踏み出されている。それは東京大学の中内啓光氏がラットで育てたマウスの膵臓をマウスに移植することに成功したことだ。その内臓は1年以上もきちんと機能している。

 その一方、イスピスア・ベルモンテ氏はキメラ胚の別の応用方法も提唱している。人間の発達と疾病の研究、ならびに治療法の評価である。移植しないとしても、そうした用途に適するものを作成することは夢物語ではない。

この画像を大きなサイズで見る

 いずれの利用方法にしても、人間と動物のキメラに内在する倫理的な問題が突きつけられる。その最たるものとして挙げられるのが、キメラの中で人間の脳細胞や生殖器官が発生するという可能性だ。

 これについて、イスピスア・ベルモンテ氏はその可能性があることを認めつつも、同時にそれを防ぐ手段もあると主張する。例えば、キメラ胚が完全に発達する前に実験を停止するというやり方や、そうした器官が発達しないよう遺伝的あるいは後成的に幹細胞を仕向けるというやり方だ。

 今後、特定の組織が宿主細胞によってコロニー化される程度を慎重に評価し、きちんと制御する方法を確立することが求められることは間違いない。

via:naturertthe-scientistなど/ written hiroching / edited by parumo

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 56件

コメントを書く

  1. これほど夢のある研究もそう多くはないよね。
    お願いだから、馬鹿な奴が世論に拒否反応を引き起こすようなパフォーマンスをしてしまったりしないでほしいな。

    • -12
  2. 生き延びるために最大限の努力をする、自然の掟ですね。
    可哀想だけど、人類の命には変えられない。

    • -3
  3. 移植を想定した技術だけど最終的にはトレックみたいに
    薬でポン治療が目的だろうな
    だとしたら、障碍者になる人も少なくなるし、保険代も
    安くなるやらいいことしかない

    • +3
  4. ブタの体内でヒトに移植できる臓器を発生・培養させるということかな。うーん、ちょっと抵抗がある。

    いっそヒトのクローンを作り、胚段階で各臓器ごとにバラし(1個の生命体としてはこの段階で消失)、それぞれを培養するほうが、いろいろな意味で自然な気がする。

    • -1
    1. ※9
      胚段階じゃ臓器に分化してないし、細胞レベルならともかく完全な臓器を培養できるような人工的環境はまだ構築できてないよ

      • 評価
      1. ※27
        そりゃ課題はいろいろあるだろう(だから実現してないわけだし)。でも、無理に異種間でキメラをつくるよりは、同種間で何とかする方法を模索するのもひとつの道だと思う。

        • +2
    2. ※9
      臓器提供用のクローン作っちゃうだったか、子供培養する話が、キノの旅にあった気がする。

      • 評価
  5. 疾うにチンパンジーとしてる@UCバークレー

    • 評価
  6. 比較的人間に組成が似ているとされるヒヒや豚からの移植実験は昔からあるけど、それをもう一歩推し進めた感じ、なのかな?

    • +1
  7. 人間と結婚出来ない人は、豚と結婚する時代が来るのか

    • -1
  8. 動物愛護団体はやっぱり大反対するのかな?

    • +1
  9. 生命倫理問題ありまくり
    だろうけど移植用臓器開発の為には
    いたしかたないのか?

    でも一番怖いのはさ・・・・・・
    「あっち系」科学者が暴走して
    「作っちゃった」てのが
    問題なんだよな

    100%監視できるわけないんだしさ
    ひょっとしたら既に人のクローンなんてのも
    いるのかもね・・・・・・・・

    • +16
    1. ※25
      国によって法律も倫理観も違うのでやってるとこはすでにやってるし、できない国もできる国ですでにやってるし、そういうことができる国ですよって表には情報を出さないようにして裏で大金と引き替えに各国各組織が研究施設建築したりしてる、だろうという妄想。

      • 評価
  10. 豚は臓器の大きさが人にちょうどいいんだって(つか品種を選べるからね)
    今後は初期の機能不全は幹細胞の移殖、全摘ならコレと交換がいいんだろうな
    同じように、普通の癌は赤外線で焼く治療、頭蓋内の癌はγナイフとか
    最先端医療も使い分けになるだろう

    将来、豚の腹を開けると腎臓が房なりになっていたり、分岐した肝臓を持ってたりするところまで行くのかな

    • +8
  11. 人のクローンはただの一卵性双生児みたいなものだけど、動物と掛け合わせるのは危険だぞ
    「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」
    が現実になってしまうぞ

    • +3
  12. なるほど、くっころ世界は現代文明の次に来る世界だったのか
    エルフっていうのは、寿命が長くなった代わりにひ弱になった俺らの事で・・・じゃあ、あの世界の人間って、いったい何なんだろうな

    • -1
  13. 一番まずいのは、人間の脳みそを持ったブタが生まれることだな。

    • +14
  14. 遂に臓器バンクの入り口に降り立ったか…

    • +3
  15. いつか3Dプリンタで移植用の臓器ができるようになればいい
    健康な時の臓器データを3Dにしておいて
    臓器損傷したり病気になったりしたらプリンタで出力してそれを移植する
    病気の因子は臓器データを取り込むさいに修正しておくか
    因子の無い素材を使う

    • +4
  16. やめろや!そのうち間違って豚肉市場に出回ったらどうすんだよ!

    • +3
  17. ムスリムはこの臓器もらいたくないだろうな

    • +9
  18. 大統領? やっぱりそうだったのか・・・

    • 評価
  19. 中身が人で(人と同等の知能を持って自分が本当は人だという意識がある)、体だけ豚に生まれさせられたり…そういう悲劇が起こらないことを祈る

    • +4
  20. ヒトとブタのキメラか・・・
    人間並に賢くなってしまったら可哀想だな

    • 評価
  21. 某SF作品の◯殻では豚の中で人間の臓器を育ててる会社が合ったね。
    小奇麗な社屋で管理されて。保険会社で選べる保険の1つらしいけど。
    ワタシ的には嬉しいな。
    病的要因で限られた臓器が癌化してくから。その要因だけ取り除いた内臓を作ってもらって入れ替えたい。多分負担は減ると思う。

    • +2
  22. うーん、、、
    あまり賛成出来ないかな、、、

    • +4
  23. テラフォーマーズみたいな別の生物同士ののキメラが出来る様な感じで怖いな(大汗)。

    • +1
  24. 人と豚のキメラとか作って、人に感染しやすい致死性のウイルスが
    出でこなければいいけどな

    • +2
  25. 臓器移植で手術後豚の習慣が患者を蝕むに一票。

    • +1
  26. 猫に人の遺伝子入れたら、アイルーやカジートみたいになるのか?

    • 評価
  27. 神の領域への特攻突撃は、個人的には恐怖を感じるかな。
    後々問題が出た時に、誰が責任を取れるのかと…。

    しかし人間同士(臓器提供移植)でも拒絶反応(免疫不適合)が出るのに、どうなんだろ? 抑え切れるのかな? 造るメリットはあるんだろうか?

    • 評価
  28. 豚とヒトは肝臓の大きさがほぼ一緒だからという理由で移植に適していると言われるけど、臓器を作らせるためのキメラを作るという点では考え直したほうが良いと思う。系統的にも非常に遠く、5か月も妊娠期間が違うため一方の細胞の増殖が追いつかない。これでは豚でやるかぎり成功するとはとても思えない。せめて実験動物でもあるコモンマーモセットやニホンザル等の霊長類をドナーに選ぶべきではないだろうか。

    • 評価
    1. ※53
      ドナー用キメラ臓器と考えれば、レシピエントに同系、または極力近縁系の動物の方が、臓器構成蛋白への免疫応答もより少なく済むかもしれませんね。
      それを理解した上での、前段階のブタなのかも知れませんが。

      後は異種血液(残存体液)の問題化か…。ブタさんの血抜き?

      • 評価
  29. 豚から出来た臓器移植はちょっと抵抗ある…

    • 評価
  30. 人間が行っていい一線を越えているぞ。古い映画だけど、労働用に3年だけの寿命を与えられたブレードランナーのレプリカントみたいだ。創られた方はどうなる!移植された方もブタさんのたんぱく質の長期記憶を引き継ぐのだぞ、何世代もたったらどんな結果になるんだ?欧米はキリスト教国なのにこの節操の無さ、終わりの始まりか。

    • 評価
  31. 「ゴールデンカムイ」の姉畑先生が生き返りそうな記事やな(苦笑)

    • 評価
  32. 人と何らかの生き物のキメラって
    ハガレンで色々居たんですけど。

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

サイエンス&テクノロジー

サイエンス&テクノロジーについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。