メインコンテンツにスキップ

地球温暖化の影響で、次の氷河期が早まる可能性

記事の本文にスキップ

24件のコメントを見る

(著)

公開: (更新: )

この画像を大きなサイズで見る
Image by Istock
Advertisement

 地球全体が熱くなる地球温暖化が進むなか、灼熱の未来が待っていると思いきや、実は正反対の極寒の世界がやってくるかもしれない。

 アメリカのカリフォルニア大学リバーサイド校の研究チームが、地球の気候システムに隠された驚くべき事実を突き止めた。

 人類が排出した温室効果ガスが、皮肉にも地球を凍結させるスイッチを押し、次の氷河期、正確には氷河時代の中でも特に寒さが厳しい時期である「氷期」の到来を大幅に前倒しする可能性があるというのだ。

 暑さが寒さを呼ぶという、一見するとあり得ないような矛盾がなぜ起きるのか。そこには、地球が自ら二酸化炭素を回収しようとして引き起こす、行き過ぎた連鎖反応が隠されていた。 

 この研究成果は『Science』誌(2025年)に掲載された。

地球が本来持っている氷期と間氷期の周期的なリズム

 まず知っておかなければならないのは、地球はおよそ250万年前から第四紀氷河時代と呼ばれる時代に入っており、極域に氷床が存在するこの時代は現在も続いているという事実だ。

 この長い氷河時代の中には、さらに寒い氷期と、比較的温かい間氷期を交互に繰り返す一定のリズムが存在する。

 約2万年前には最終氷期の最盛期を迎え、地球の約3分の1が氷に覆われていたが、約1万年前にその氷期が終わって現在は穏やかな間氷期にあたる。

 自然のサイクルに従えば、次の氷期が本格的に始まるのは約5万年後のはずであり、何もしなければ地球はゆったりとしたスケジュールで冷えていくはずだった。

 しかし、現代の急激な地球温暖化が、この数万年単位のゆったりとした予定表を大きく乱そうとしている。

この画像を大きなサイズで見る
Image by Istock

岩石の風化が担ってきた地球の穏やかな温度調節機能

 地球にはもともと、気温が上がりすぎないように調整する自然のプロセスが備わっている。その中心にあるのが、岩石の風化と呼ばれる現象だ。

 雨が降ると、大気中の二酸化炭素が雨水に溶け込み、それが地上の岩石、特に花崗岩などのケイ酸塩岩を少しずつ溶かしていく。

 溶け出した成分と二酸化炭素は川を通じて海へと運ばれ、そこでカルシウムと結びついて貝殻やサンゴ礁になる。

 これらはやがて海底に沈んで積み重なり、数億年という長い時間をかけて炭素を岩石の中に閉じ込める。

 大気中の二酸化炭素が増えて気温が上がると、雨が増えて岩石の風化もスピードアップするため、より多くの二酸化炭素が回収されて気温が下がる。

 これまでは、この穏やかなサイクルが地球の環境を一定に保つ役割を果たしていると考えられてきた。

この画像を大きなサイズで見る
Image by Istock

プランクトンの増殖が引き起こす行き過ぎた冷却の仕組み

 ところが研究チームは、急激な温暖化が進むとこの岩石風化による回収システムが暴走を始めることを発見した。

 気温が上がって激しい雨が降ると、陸地からリンなどの栄養分が大量に海へと流れ出す。すると、この栄養を餌にするプランクトンが爆発的に増殖する。

 大量に増えたプランクトンは、寿命を迎えると海底に沈んでいく。このとき、大気から取り込んだ炭素も一緒に海底に沈殿し、堆積物の中に閉じ込められる。

 通常ならここで終わりだが、暖かい海ではさらに特殊なことが起こる。

 プランクトンが爆発的に増えると、その死骸を分解するために酸素が使われ、海中の酸素レベルが低下する。

 酸素が少なくなった環境では、一度海底に沈んだリンが再び水中に溶け出しやすくなるため、そのリンを餌にしてさらにプランクトンが増えるという循環が発生する。

 このループが続くと、大気中から二酸化炭素を回収する動きが加速し続け、地球の気温は元の状態を通り越して一気に急降下する。

 温暖化が引き金となって、本来のサイクルよりも早く氷河期を招いてしまうのは、この炭素の回収が止まらなくなるためだ。

 この海底に炭素が埋まっていくプロセスは、かつて地球で起きた「海洋無酸素事変」のように、後に石油の元となる有機物が蓄積された仕組みとも共通している。

この画像を大きなサイズで見る
大量の二酸化炭素放出後の地球の変化。海中のリン(P)が増えてプランクトンが激増し、炭素(C)を海底に沈めてしまう。その結果、5万年後を境に気温が急降下し、極寒の氷河期へと突入するサイクルを示している。Image credit:University of California – Riverside / Science

地球の未来を人類が書き換えてしまう可能性

 今回の発見は、海流の変化で北半球が冷えるという有名な説とは異なり、海全体の炭素循環そのものが変化してしまうという驚きのメカニズムだ。

 リッジウェル教授は、このプロセスを家庭のエアコンと温度調節装置の関係に例えている。設定温度になれば止まるはずのエアコンが、センサーの不具合で部屋が凍りつくまで動き続けてしまうような状態だ。

 地球の歴史をさらに遡った数十億年前などの超古代には、大気中の酸素が非常に少なかったためにこの暴走が止まらず、地球全体が完全に凍りつく事態も起きていた。

 現代は当時よりも酸素が豊富であるため、超古代のような極端な凍結にはならないと予測されているが、自然のサイクルを無視して氷河期を早めてしまうほどのパワーがあることに変わりはない。

 人類が排出した二酸化炭素は、遠い未来に訪れるはずだった氷河期を、私たちのすぐ目の前まで引き寄せてしまった。

 この不安定な連鎖を止めるためにも、現在の地球温暖化を食い止めることは、地球の未来のスケジュールを守るための重要な戦いといえる。

 追記(2025年12月30日): 氷河時代と「氷期(ひょうき)」の正確な用語定義、および海流の停止とは異なる本研究独自の炭素循環メカニズムについて加筆・修正を行いました。

さらに深掘り】かつての温暖化は「恐竜の進化」のトリガーだった

 今回の研究で注目された「海洋無酸素事変(OAE)」を引き起こしたような過去の温暖化は、実は恐竜たちの運命も大きく変えていた。

 東北大学の研究(2024年)によると、大規模な火山活動による温暖化とそれによる気候変動が、植物の世界に劇的な変化をもたらしたという。

 それまで主流だった裸子植物に代わり、多様な「被子植物(花を咲かせる植物)」が爆発的に増え、世界の景色を一変させたのだ。

そ して、この「食べ物」の変化に応じるように、植物食恐竜たちも劇的な進化を遂げた。トリケラトプスやハドロサウルス類に見られる「デンタルバッテリー」という、何百本もの歯が重なり合った強力なすりつぶし装置は、この新しい植物たちを効率よく食べるために発達したと考えられている。

 地球温暖化が引き起こす連鎖は、海を凍らせるスイッチを押すだけでなく、かつては恐竜の形すら作り変えていた。

 地球の気候と生命が織りなす壮大な連鎖反応は、私たちの想像を遥かに超えるスケールで今も続いているのだ。

References: Science / Sciencedaily / Tohoku.ac.jp

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 24件

コメントを書く

  1. これ、おそらくだけど氷河期になる前に急激な食糧危機が起きて人類大混乱絶滅コースになると思う。そうなるのは恐らくあと10~20年以内急激に気候変動で変わるハズある程度自然って許容範囲があってあるレベルまでは大丈夫なんだけどそのラインを超えると一気に崩れる。PCが良い例だけどある程度のタスク処理なら可能難だけで量が増えるとシステムが突然ダウンする事がある、それと同じ。

    • -10
    1. 人類は絶滅しない。何万年も前、文明の利器抜きで世界中の大陸が陸橋で繋がるような過酷な氷河期を生き延びた人類だよ。人類本来の力はそんなヤワじゃない
      例えば日本の真冬を半袖短パンで過ごす北方人種が赤道付近まで降りればどうとでもなるだろうなってイメージ湧くんじゃない?
      ただまあ氷河期が来たら現代社会は崩壊するだろうし(間違いなく貨幣経済は終わり自由主義の命脈は断たれる。北方人種が生存を懸けて赤道まで侵攻するなんて、つまり地獄の世界大戦だ)、その危機感にまでは異を唱えないよ

      • +5
      1. まぁ人間は強い生物な厳しい環境から生き延びるために脳が発達した動物だからな
        動物なら環境の変化などで絶滅したりするが人間の場合は科学や知恵で対処出来るのが大きな違い

        • +2
  2. 人類はそのうち全世界の気候や気温、湿度をコントロールする地球型エアコンを開発してしまいそうだな。

    • -1
    1. 実は現時点でも寒冷化も温暖化も本気(利益度外視)でやれば荒業でマジで解決ができる
      例えば温暖化対策ならば軌道上に太陽光の遮蔽幕を並べるとか
      寒冷化対策なら鏡を並べて入射量を強引に増やして温めるとかね
      ただどれも「金がかかる」ので誰もやりたくはない。大きな損は被りたくない。それだけ

      • +1
  3. 意外に地球にはホメオスタシスのような恒常機能があるのかもしれない。
    ただし、今の早さでの環境変化はあまりいい影響ではないのだろうな…

    • +7
    1. 海洋炭素循環の話は
      今も国内一流機関の間でも議論が分かれているくらい最先端なのよ

      この記事にもあるサンゴや貝殻などのバイオミネラルの規模と役割、地球環境変化への影響の評価

      今回の記事の話は、それらに加えてプランクトン(珪藻とか有孔虫とか?)による炭素貯蔵のエスカレーションが急激な気候変化で起こりうるということで確かに大きな指摘

      掲載誌もサイエンス

      • +2
  4. 一番上の画像、氷を割って顔を出してるアザラシだと思ってたw

    • +7
  5. 一番上まで戻して、アザラシに見えた、クッソwww

    • +5
  6. その沈んだプラクトンを燃やしてエネルギーウマーするのが人間という生き物

    • +3
    1. それがメタンハイドレートでしょうねぇ

      • +2
  7. AIデータセンターの為の電力製造やGPU冷却の為の放熱で、ますます大気温度が上昇するかもしれません

    • -2
    1. 放熱は関係ないよ。太陽が送り込んでくる熱の方が何十ケタも大きくて機器類の放熱量はそれに比べたら誤差以下。
      その莫大な太陽熱を夜のうちに宇宙へ大量廃棄してるのが地球なんだが、二酸化炭素があるとこれが逃げなくなるってのが地球温暖化。冬の晴れた夜の放射冷却を思うとこの「熱の大放出」を、曇った夜の生暖かさで温室効果を実感できるかもしれない。

      AI冷却で問題になってるのは真水資源の浪費であってコレは温暖化とは全く別の問題だね

      • +4
      1. >冬の晴れた夜の放射冷却を思うとこの「熱の大放出」を、曇った夜の生暖かさで温室効果を実感できるかもしれない。

        ここ凄くよいですね、勉強になりました。この例え、どこかで使わせて頂くかもしれない

        • +2
  8. コンクリートとアスファルトの蓄熱効果も無視できませんぞ

    • +2
    1. 夏場の最高気温は幕末からほとんど変わらないけど
      最低気温は比較にならない程上がってるんだよね
      アスコン・コンクリなどの蓄熱とエアコンなどの排熱で夜になっても気温が維持されるので
      結果として平均気温が上がっている

      • 評価
  9. 何かしらの方法で電気を潤沢に使えるようになると全部突破できるのよね

    • -2
  10. 2039年 火星への旅は、 こういうことを前提にしたのかな?
    地球が寒くなって、火星は、fragezechen

    • 評価
  11. >寒い氷期と温かい間氷期を交互に繰り返しているという事実だ。

    事実て、どうやって測定したら事実認定できんのか謎
    氷期を繰り返すってとういう理由で?
    地球の氷河期は隕石などの外的理由で太陽からの距離が変わる事以外で起きる理由がない
    これまで度々そういう事が起きてただけで温暖化じゃなく正常化ってのが正しい

    • -11
    1. 更新世の氷期・間氷期の周期変化は
      地球の公転軌道や自転軸の周期変化による
      日射量の変化が主因と言われてる
      (詳しくは「ミランコヴィッチサイクル」で検索)

      なお現在の温暖化は人間の活動によって
      温室効果ガスが増加していることが主因とされてる

      • +3
    2. 石筍や氷層コアを化学分析して測定でき分かりますよ。現代地学の基本

      太陽からの距離、地球の角度などが周期的に変わるのでは

      • +4
  12. 太陽のご機嫌しだいです
    地球環境への影響力ナンバーワンは太陽です
    夏と冬の変化を見れば明らかですよね

    • -1
  13. 化石燃料を一切使ってなかった縄文時代の方が暑かった定期

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

自然・廃墟・宇宙

自然・廃墟・宇宙についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。