メインコンテンツにスキップ

アザラシのテレビゲーム実験で明らかになった、濁った海でも方向感覚を失わない理由

記事の本文にスキップ

9件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
ゼニガタアザラシ Photo by:iStock
Advertisement

 濁った海の中では、人間であれば少し前でも見えないことがある。だがゼニガタアザラシは、沿岸の視界が悪い海中でも自在に泳ぎ、方向感覚を失わない。

 これまでヒゲや聴覚など複数の感覚を使っていることは知られていたが、ドイツ・ロストック大学のフレデリケ・ハンケ博士らの研究によって、アザラシが「視覚」を使って進行方向を把握できることが明らかになった。

 研究チームはアザラシに実験用に作ったテレビゲームをプレイさせたところ、視界が極めて悪い環境でも、水中に漂う粒子の流れを見て、自らの向きを認識していたのである。

 この研究は『Journal of Experimental Biology』(2025年5月29日付)に掲載された。

濁った水中でも進むべき方向を見失わないゼニガタアザラシ

 太平洋や大西洋に生息する「ゼニガタアザラシ」は、日本にも定住している唯一のアザラシだ。

 オスならば体長150~200cm、体重70~170kgにもなる大きな体で、視界の限られる海の中を軽やかに泳ぎまわる。

 そんなことができるのも、センサーの役割を果たす敏感なヒゲをはじめ、いくつかの感覚器で周囲の状況を的確に感知できるからだ。

 だがドイツ・ロストック大学のフレデリケ・ハンケ氏は、ほかにも秘密があるのではないかと考えた。視覚も使っているのでは?と。

 彼女が着目したのは「オプティック・フロー」と呼ばれる視覚情報である。これは、移動中に周囲の物体や粒子が視界を横切っていくことで網膜上に生まれる動きのパターンで、人間や鳥類などでも空間認識に利用されている。

 博士はこの現象がアザラシにも当てはまるかを確かめるべく、共同研究者のローラ=マリー・サンドウ氏、アン=カトリン・ティミアン氏)、ミュンスター大学のマルクス・ラッペ博士とともに実験の準備を開始した。

この画像を大きなサイズで見る
Photo by:iStock

シミュレーション映像によるテレビゲームを実施

 この仮説を検証するため、ハンケ氏らは、アザラシたちにちょっとしたシミュレーション映像を使ったテレビゲームを楽しんでもらい、それをもとに進行方向を判断してもらうゲーム形式の実験を行った。

映像は次の3種類が用意された。

1:海中を泳いで進んでいくアザラシ視点で、水中の粒子が画面奥から手前に向かって流れてくる映像。

2:海底を上から見下ろすように、下方向から上へ粒子が流れるもの。

3:水面が頭上を流れていくような視点の映像

 アザラシたちはスクリーンの前に配置され、画面上の動きに基づいて自分がどちらの方向に進んでいると感じたかを示すため、頭の左右に設置された赤いボールのいずれかに鼻でタッチする。

 正解すれば、ご褒美として好物のニシン科の小魚が与えられた。

この画像を大きなサイズで見る
CREDIT: Laura-Marie Sandow.

 実験に参加したのはニック、ルカ、ミロという3頭のアザラシ。

 ニックとルカは過去に同様の実験に参加したことがあり、すぐに課題を理解したが、初心者のミロは少し時間がかかった。

 しかしハンケ博士によれば、ミロは新しい状況にも柔軟に対応できる好奇心旺盛な性格で、すぐに慣れていったという。

この画像を大きなサイズで見る
CREDIT: Laura-Marie Sandow.

アザラシはわずかな進行方向の違いも目で見分けていた

 シミュレーション映像は、進行方向が左右に2度、6度、10度、14度、18度、22度ずれて見えるように調整されており、アザラシがどれだけ微妙な角度の変化を視覚的に読み取れるかが試された。

 サンドウ氏とティミアン氏が選択データを記録した結果、アザラシたちは極めて正確に方向を見分けられることが明らかになった。

 ただし、時には誤答も見られたが、ハンケ博士は「生きた動物ですから、時には集中力が切れたり、やる気が低下したりすることもあります」と語っている。

 それでも、網膜上を流れる粒子の動きだけを手がかりに、濁った海水中でも方向を正確に認識できるという点は明白だった。

 この能力は、アザラシが極限環境でも的確に行動できる理由の1つであることを、科学的に裏付ける結果となった。

今回の研究は、ゼニガタアザラシが視覚的な手がかりだけでも方向を把握できるという能力を初めて実証したものとなった。

今後ハンケ博士らは、オプティック・フローを用いて「どのくらいの距離を移動したか」をアザラシが判断できるかどうかについても研究を進めていく予定だという。

 それが明らかになれば、濁った海中でのアザラシのナビゲーション戦略に関する理解がさらに深まるだろう。

編集長パルモのコメント

パルモの表情、普通

それにしてもアザラシがテレビゲームを楽しそうにプレイしている姿がかわいすぎる。シャチやホッキョクグマ、サメなどの天敵から逃げながら、濁った海を目的の方向に向かって逃げきる。そんなアザラシが主役のテレビゲームがプレイしてみたくなった気分だ。

References: Gaming seals reveal how cloudy water provides sense of direction

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 9件

コメントを書く

  1. 髭や聴覚がメインだけど、視覚も補助的ながら方向を判断する材料になっているって事で良いのだろうか。
    毎秒がサバイバルの野生生物にとって、集中力が切れたとかやる気が無いで方向感管を失うのは死に直結する訳だし。

    • +3
  2. 濁った水中でも進むべき方向を見失わないゼニガタアザラシ
    「ばかもーん、ルパンはあっちだーっ」

    • +8
  3. すみません、自分はどの方向にも進んでいる感じがしないんですが、もうダメでしょうか?

    • +5
  4. アザラシはゲームもできるなんて賢いなあ〜

    • +1
  5. 何ですかこの楽しい実験は
    …アザラシもヒトと似たような視覚情報処理をしてるってことを確認したみたいですが
    彼らの「濁った水中でも方向感覚を失わず自在に泳ぐ」能力の究明はまだ端緒に着いたばかりなのね
    確かに不思議だ…変態だ アザラシすごい

    • -1

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

動物・鳥類

動物・鳥類についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。