メインコンテンツにスキップ

世界最古のビールの領収書:約4000年前メソポタミアの粘土板に刻まれていた

記事の本文にスキップ

15件のコメントを見る

(著)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
粘土板に楔形文字で刻まれた世界最古のビールの領収書  image credit:WIKI commons / Dr Tom L. Lee
Advertisement

 何かを購入したら領収書をもらう。現代では当たり前のことだが、そのシステムは実は4000年前にも存在していたのだ。

 メソポタミアで発見された紀元前2050年頃の粘土板には、ビール醸造者がある人物に納品した取引の詳細が楔形文字で刻まれている。

 この粘土板は、単なる取引記録を超え、メソポタミア文明におけるビールの重要性を示す貴重な証拠となる。

 ここでは粘土板に残された歴史ともに、古代メソポタミアの人々とビールの関係性を探っていこう。

世界最古のビール領収書は古代メソポタミアから

 この粘土板は「アリルのビール領収書」と呼ばれている。紀元前2050年頃、メソポタミアの都市ウルで作られたもので、そこには「醸造者アリルが最高品質のビールをウル・アンマに納品した」という内容が楔形文字で刻まれている。

 アリルは当時のビール職人のひとりであり、おそらく地元の人々や神殿にビールを提供していた人物だと考えられている。

 ウル・アンマはビールを受け取った際、一緒にこの粘土板の領収書を受け取ったようだ。この小さな粘土板が残されたことで、約4000年後の私たちが当時の取引の様子を知ることができるのは驚きだ。

しかし、なぜこの時代にビールの領収書が必要だったのだろうか?

この画像を大きなサイズで見る
4000年前のメソポタミアの世界最古のビールの領収書  image credit:WIKI commons / Dr Tom L. Lee

メソポタミア人がビールを愛した理由

 古代メソポタミアの人々とは、現在のイラク周辺に住んでいたシュメール人、アッカド人、バビロニア人、アッシリア人などの民族のことだ。

 彼らにとって、ビールは重要な栄養源だった。大麦を発酵させたビールには炭水化物やタンパク質が含まれ、飲むことでエネルギー補給ができた。また、ビタミンBも豊富で、当時の人々にとって健康的な飲み物でもあった。

 さらに、当時の水は衛生状態が悪く、雑菌が多かった。そのため、発酵過程を経たビールの方が安全であり、安心して飲める飲み物だったのだ。

 メソポタミアでは、ビールは貨幣の代わりとして使われることも多かった。神殿や王宮で働く労働者には、給料の一部としてビールが支給されていた。

 例えば、かつて発掘された他の粘土板には「労働者に毎日一定量のビールが配給された」と記されている。

この画像を大きなサイズで見る
メソポタミアにかつて存在した古代都市、ウルクから発見された粘土板には、倉庫施設からのビールの分配が記録されている。紀元前3100~3000年頃のもの。大英博物館所蔵 WIKI commons/CC BY 2.0

 これは、ビールが生活必需品であり、労働力を維持するために不可欠だったことを示している。

 メソポタミア人は、ビールを神々からの贈り物と考えていた。ビールの女神ニンカシは、醸造の守護神として崇拝され、彼女に捧げる詩の中にはビールの醸造方法が細かく記されている。

 また、神殿では神々への供物としてビールが捧げられることもあった。これは、ビールが単なる飲み物ではなく、宗教的な意味を持つ神聖な存在だったことを示している。

この画像を大きなサイズで見る
紀元前2600~2350年頃、メソポタミアの2人の人が同じ壺から長いストローでビールを飲んでいる様子を彫刻した円筒印章(左)と、それを粘土に転がして印影を残したもの(右)  image credit:Oriental Institute of the University of Chicago

メソポタミアのビールはどんな味だったのか?

 現代のビールは黄色から黒褐色の透明で炭酸が効いているものが多いが、メソポタミアのビールはまったく異なるものだった。

 液体は濁っており、とろみがあり、現代のような色ではなかった。また、アルコール度数は比較的低めだったと考えられているが、種類によっては酔いやすいものも存在した。

 風味については、ナツメヤシのシロップを加えて甘みを出すこともあれば、フェンネルやコリアンダーなどのスパイスを使って香りをつけることもあった。

 こうした調味料がどの程度使われていたのかは明確には分かっていないが、ビールに独特の風味を加えていた可能性は高い。

 また、飲み方も現代とは異なり、大きな壺に入れられたビールを長いストローで飲んでいた。これは、発酵の過程で残る穀物のカスを避けるための工夫だったと考えられる。

この画像を大きなサイズで見る
古代メソポタミアの円筒印章の刻印。上段にはビールを飲む人々が描かれている image credit:Cuneiform Digital Library Journal

 発掘調査では、金や青銅で作られた豪華なストローも見つかっており、富裕層の間では特別な道具を使ってビールを楽しむ文化があったことが分かっている。

このように、メソポタミアのビールは現代のものとは見た目も味も飲み方も異なっていたが、それでも人々にとって欠かせない存在だったのだ。

References: The Oldest Beer Receipt (Circa 2050 BC) | Open Culture / Brewing Mesopotamian beer brings a sip of this vibrant ancient drinking culture back to life / Brewing Up Ancient Beer | Accolades | NC State University

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 15件

コメントを書く

  1. ドイツビールはビール純粋令が消えた今でも基本を守ってるけど
    ベルギーの場合香料などを入れて、酸味や香りを楽しむ
    多分今回のビールも似たような感じだったのかな

    • +5
  2. そして四千年後だってやはり酒を頼んでその時代の媒体で領収書を貰っているだろう

    • +11
  3. 働けば相応の食糧が供給される
    実に理にかなったシステムよね

    • +5
  4. どっか復刻しないかね、一度だけなら飲んでみたい

    • +4
  5. 技術水準や記録媒体は変わってもやってることは数千年前から変わってないのだなぁ。メソポタミアでもお店で粘土板レシート貰って粘土板家計簿付けたりしてたのかな。

    • +11
  6. 読めない。。。せめてヒエログリフくらいであったら。。。

    • 評価
  7. 壺に入った古代エジプトのビールが発掘されている。
    いまでは飲めたものではないだろうけど、成分分析から当時のビールを再現することは出来るだろうね。
    確かそういうプロジェクトがあったはずでは?

    • +2
  8. 紀元前から酒が飲めるぞー♪

    海外のいろんな人がサワードゥと麦芽にナツメヤシとか香辛料とか入れて再現試みてるね
    いちど味見してみたいけど日本だと酒税法的に個人じゃ難しそうだなあ
    博物館グッズとかであればいいのに

    • 評価
    1. アルコール度数が1%未満であれば酒税法に引っかからないので、やる気があれば作ることはできる。度数が1%を超えないように発酵には注意が必要だけど。

      • +1
  9. 紀元前400年ごろのアルメニアの山岳民族が大甕に入れた酒を麦しべで飲んでいたことがアナバシスに記されているが、これも古い文化が地方に残っている古代の例になるんだろうか

    • +2
  10. ビール職人クラスは少なくとも文字が読めたんだ
    えっ読めたよね?厄除けの御札じゃないんだから
    読めない領収書なわけないよね?
    学校とかあったみたいだけど、民衆のどのランクまでが文字読めたんだろう?

    • +1

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

料理・健康・暮らし

料理・健康・暮らしについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

歴史・文化

歴史・文化についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。