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クモの嗅覚の謎を解明、オスは脚で匂いを嗅いでいた(蜘蛛出演中)

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(著) (編集)

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 人間よりも古くから地球上に存在していたクモだが、その生態はいまだ多くの謎が残されている。中でも「クモはどのように匂いを感知するのか?」という疑問は未解明のままだった。しかし、今回の研究によりその仕組みがついに明らかになった。

 これまでクモにフェロモンを検知する能力があることは知られていたが、昆虫のような触角がないため、どこで感知しているのかはわからなかった。

 最新の研究で、オスのクモが脚の特殊な感覚器を使ってメスの匂いを嗅ぎ分けていることがわかったという。つまりクモのオスには脚に鼻があるということだ。

長年の謎、クモはどうやってニオイを嗅ぐのか?

 4億年の進化の歴史があるクモは、身近だが驚くべき生物だ。振動を敏感に察知することができ、また視力も優れている。その毒が男性の救世主になることもある。

 ところが嗅覚については長年の謎だった。クモが性フェロモンの匂いを嗅いでいることは確かだ。だが、それを嗅ぐ”鼻”がどこにも見当たらないのだ。

 昆虫ならば、触角で匂いを感じる。ところがクモには触覚がない。だから、そもそも匂いを感じる器官がどのようなものかわからない。

 さらに昆虫が匂いを嗅ぐための「壁孔感覚器」なる特殊な構造が、クモにはないことも知られている。本当にこの器官がないのなら、クモはどうやって匂いを感じているのだろう?

 だがこのほど、ドイツ、グライフスヴァルト大学をはじめとするクモ学者チームによって、ついにクモの壁孔感覚器が発見されたのである。

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ナガコガネグモのメス。オスと違ってニオイ感覚器はない/Photo by:iStock

こちらはナガコガネグモのメス。オスと違ってニオイ感覚器はない/Charles J. Sharp/Wikimedia commons/CC-BY-SA 4.0

クモはオスにのみ脚に嗅覚器官があった、しかも無数に

 それが発見されたのは「ナガコガネグモ(Argiope bruennichi)」のオスの脚だ。

高性能な走査型電子顕微鏡で観察したところ、成熟したオスならばどの脚にも無数の壁孔感覚器があることが判明したのだ。

 面白いのは、クモの壁孔感覚器が脚の体に近い部分にあることだ。ここは歩いたり、狩りをしたり、あるいはメスと交尾をしたりする際でも、物体とほとんど接触することがない。

 一方、脚の下の方には、味を感じるとされる感覚器があり、ニオイの壁孔感覚器と補完的な配置になっている。

 が、一番注目すべきは、この壁孔感覚器が大人のオスにしかないことだ。未成熟なオスやメスには存在しない。

 このことは、クモの”脚の鼻”はオスが交尾をするメスを探すためのものであることを雄弁に語っている。

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ナガコガネグモのオス(左)とメス(右)。メスはオスよりもはるかに大きい Photo by:iStock

メスのフェロモンに爆発的に反応することが判明

 ナガコガネグモのメスは性フェロモンのガスを放出して、遠くにいるオスを魅了する。幸いにして、その性フェロモンの化学構造はすでに詳しく解明されている。

 そこで研究チームは、オスの壁孔感覚器がメスのフェロモンに実際に反応するかどうか試してみることにした。

 その実験では、生きたオスを顕微鏡の下に固定し、壁孔感覚器の反応を記録するための電極を突き刺す。そのうえで、フェロモンを吹きかけてみる。

 すると、20 ngのごく微量なフェロモンに対してすらも、壁孔感覚器の神経細胞は爆発的な反応を示したのだ。こうした反応はフェロモンが増えるほど強く、またどの脚であっても同じように反応した。

 この研究に参加したルンド大学のジャン・ダンダン氏の解説によれば、オスのクモのこの反応は、もっとも性フェロモンに敏感な昆虫に比べても、非常に高感度なものであるという。

その力があれば、空気中に漂うわずかなフェロモンであっても感じられるそうだ。

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Photo by:iStock メスのナガコガネグモは体長:約14~18mmで明るい黄色と黒の縞模様が特徴的。オスは体長:約4~6mmでメスに比べてかなり小型で、地味な色合いをしている。

他のクモのオスもほとんどの種が脚に鼻を持っている

 なお、こうしたクモのオスの壁孔感覚器は、クモのほとんどの種が持っている。クモの系統樹全体にまたがる16科19種を調べたところ、どのオスでも同じものが確認されたのだ。

 ただし例外もあった。アジアに生息するトタテグモの仲間など、原始的なクモには壁孔感覚器がないものもいた。

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トタテグモの仲間 Photo by:iStock

 このことから、この感覚器はさまざまなクモが独自に進化させ、中にはそれを失ったクモもいるのだろうと、研究チームは推測している。

 はたしてクモはニオイで世界をどう認識しているのか? 今回の研究は、その解明を大きく前進させることだろう。

 壁孔感覚器のないメスはどうやって匂いを嗅ぐのか、フェロモン以外の匂いは嗅げるのか、そうした匂いはクモの行動にどのような影響を与えているのかなど、いくつもの興味深い疑問が解明される日を待っている。

 この研究は『PNAS』(2025年1月6日付)に掲載された。

References: Spiders ‘smell’ with their legs – new research

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この記事へのコメント 10件

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  1. クモの世界では「臭すぎて足がもげそうだぜ」とか「なかなか足が利くじゃねぇか」などと言ったりするのか

    • +11
  2. これおっさんに置き換えると自動的に悶絶しちゃうんかな。

    • -1
  3. >だがこのほど、ドイツ、グライフスヴァルト大学をはじめとするクモ学者チームによって
    結構大規模

    • +2
  4. 蜘蛛じゃないけど昆虫は足の付け根辺りに鼓膜があったりするのであまり驚かなかったけど足で味覚を感じていたとは
    つーか味を感じてたのか

    • +4
  5. 2025 0117現在、このクソ寒い冬なのに、窓の外にコガネ蜘蛛が巣をつくって元気?に生きてるんだが。夜はどっかに引っ込んで、朝から夕方までは巣の真ん中におる。

    • +3
    1. 去年観察していた蜘蛛は夕方に出て来て朝には隠れていた
      ある日朝になっても居たのでカラスに食われちゃうぞと心配していたら
      直後に本当になってしまった(-_-;)
      コガネグモは昼間出ていて大丈夫?
      寒くても餌になる虫もいるんだね

      • 評価
  6. 前足を挙げてるのは臭いを嗅いでるときなのだろうか

    • +1
  7. 感覚器とフェロモンどっちが先なんだ、こういう話いつも不思議に思う

    • 評価
    1. 両方でしょ。メスはフェロモンを多く出せる個体が生き残り
      オスは多くのフェロモンを認識出来る個体が生き残る
      人間も手先が器用な個体が何度も繰り返した結果、こうやってタイピングが出来てる

      • 評価
  8. 今まで解明されてなかったんだね
    ハエの手を擦るような行動をクモもやってるからとっくの昔に解明されているのかと思った

    • 評価

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