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アメリカでは軍用イルカが現在も核施設の約4分の1を守っている

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(著) (編集)

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Photo by:iStock
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 冷戦時代から各国で運用されていた「軍事イルカ」の存在は、SFのようでありながら現実だ。イルカの学習能力の高さや模倣力、自己認識力、そして問題解決能力の高さは、科学的にも実証されている。

 最新の報告によると、特殊訓練を受けたイルカたちは、現在もアメリカの核兵器を守る重要な任務を果たしているという。

 米軍によりジョージア州のキングスベイ海軍潜水艦基地とシアトル近郊のキトサップ海軍基地に配備されたイルカが、既存の核兵器の約4分の1を防衛する任務に就いているという。

アメリカの海洋生物軍事活用の歴史

 1959年、米海軍はアシカ、ウミガメ、海鳥、サメ、エイなどさまざまな海洋生物と共に多種類のイルカの調査を始めた。

 感覚能力、身体能力、訓練能力を試験した結果、軍用に適した候補はバンドウイルカとカリフォルニアアシカ、シロクジラ(ベルーガ)に絞り込まれた。

 訓練は海軍の海洋哺乳類プログラム(NMMP)によって実施され、1980年代までに全米の海軍施設に100頭以上のイルカが配備された。

 そのための軍事予算は当時で800万ドル以上だ。

 イルカはカメラを装着され、敵のダイバーの位置を特定してメッセージを送るように訓練された。

 アシカは海底から機雷を回収し、ベルーガは海域をパトロールして脅威を探すよう訓練された。

優れたエコーロケーション能力で活躍したイルカ

 ベトナム戦争中には、ベトナム南東部カムラン湾にもイルカが配備され、水中を監視し、敵のスパイから軍用船を守った。

 1986年から88年にかけて、6頭のイルカがペルシャ湾を通ってクウェートへ向かう石油タンカーを護衛し、2003年にはイラクの都市ウンム・カスルの港で機雷除去を行う合同軍の手助けした。

 イルカがなぜこうした軍事作戦に重用されるのか? それはイルカの知性や身体能力、社交性に加え、彼らがエコーロケーション(反響定位)という能力を進化させたところも大きい。

 エコーロケーションはクリック音を発することで発生する音波が周囲のものにぶつかって跳ね返ってくる反響を解釈、周囲の環境をマッピングする能力のことで、コウモリなども同じことをして方向感覚をつかんでいる。

 こうしたクリック音は口で発するのではなく、鼻腔につながっている音声唇を通して押し出される空気によって発せられる。

 空気が鼻腔を抜け、音声唇を通ると周囲の組織が振動して音が出る。

 イルカはさまざまな周波数と波形をもつ複雑な音を発することができ、濁った水域など人間が活動するには難しい環境でも、かなり詳細な画像を描くことができるのだ。

イルカのエコーロケーション

そのため、イルカは浅瀬や混雑した港でも、機雷などを見つけるのが得意だ。

 また、数百フィートの水深まで潜ることができ、潜水病の心配など人間が抱える身体的な制限やリスクはなどはないという利点がある。

生物を軍用に使うことの議論

 しかし、生き物を軍用に利用することには、深刻な倫理的懸念がある。

 動物愛護活動家らは、彼らがどのように飼育されているのか、自主性があるのか、潜在的な危険がある状態なのに無理やりこうした任務をやらされているのではないか、などの疑問を呈している。

 現在、米国ではバンドウイルカおよそ85頭とアシカが少数訓練されているという。ロシアも同様に海洋哺乳類を軍事訓練してきた歴史があり、昨今は再び訓練プログラムを強化していると思われる。

 2014年にロシアがクリミアを併合したとき、ウクライナの軍用イルカを押収し、さらにその数を増やしているという。

 2019年から2023年にかけて、ロシアで訓練されたとみられるシロイルカのヴァルジミールが、ハーネスでGoPro(ゴープロ)カメラを身に着けた状態でノルェー近海で目撃された。非常に人馴れしていたという。

 しかし、ロシアのスパイとされるヴァルジミールは、2023年8月31日、ノルウェー南部のリサヴィカ湾で死亡が確認された。死因は明らかにされていない。

 動物の軍事利用については意見が分かれるところだが、高い能力と実績をもつ海洋哺乳類の活用は今後も当分続きそうだ。

References: Military Dolphins Still Protect Around A Quarter Of The US’s Nuclear Arsenal | IFLScience

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この記事へのコメント 11件

コメントを書く

  1. 動物の軍事利用の議論については自爆攻撃とかじゃない比較的安全で平和的な利用(地雷除去のアフリカオニネズミの例とか)ならまあいいかな・・・ 警察犬や狩猟犬の方がよほど危険だと思うし(比較してマシだからいいという訳じゃないけど

    • +1
  2. 軍用イルカを描いた「イルカの日」っていう映画があって、この映画でイルカのトレーナーをしていた人物が、映画撮影でイルカが死んでしまったことで「改心」して、イルカ愛護団体の始祖になったんだよな

    • 評価
    1. 申し訳ない。撮影中に死んだイルカにショックを受けて自然保護活動家になったのは「わんぱくフリッパー」のトレーナーのリック・オリバーだった。訂正します

      • +4
  3. 殉職時に二階級特進とかなって、昇進した分高額の補償、確か年金とかそれ以外恩給とかだったっけ?そういうのが遺族に支払われるとか流石にイルカは無さそうだ。

    報酬って飯と医療だけかね?ひょっとして。

    • +5
  4. 潜水艦ソナーがイルカやクジラにダメージ与えてるって話もあるよな

    • +8
  5. 軍用イルカって聞くと真っ先に思い浮かべるのは寧ろロシアなんだけどな
    ロシアの運用がオマケ扱いなのが不思議

    • +3
  6. >彼らがどのように飼育されているのか、自主性があるのか、潜在的な危険がある状態なのに無理やりこうした任務をやらされているのではないか、

    兵士ってそんなものなのでは

    • +6
  7. 何か海外SFドラマでイルカが活躍してるやつ思い出した。
    深夜にやってて潜水艦と海が舞台で、エラのある人とか出てたような?イルカは多分喋れて賢かった。

    • +1

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