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吉宗も注文した!万能薬とされた「ミイラの粉末」にウイルスから細胞を守る効果を発見

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(著)

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Image credit:Marwa Elsayed
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 かつてヨーロッパでは古代エジプトのミイラを削り取った「ミイラの粉末」が万能薬として珍重されていた。

 今の常識で考えるとびっくりだが、意外にも有効成分は入っていたようだ。

 ドイツのマールブルク大学の研究チームが、大学や博物館に保管されていた「ミイラ薬」を調べたところ、インフルエンザウイルスから細胞を守る効果があることが明らかになった。

 ミイラ薬は中世から近世にかけて販売され、長崎のオランダ貿易を通じて江戸時代の日本にも輸入され、徳川吉宗が注文した記録が残されている。 

この研究成果は『Proceedings of the National Academy of Sciences』誌(2026年9月22日付)に掲載された。

ヨーロッパで万能薬とされた「ミイラの粉末」

 歴史を通じて、現代の人から見ると信じられないものが万能薬として扱われてきた。

 古代エジプトのミイラから作られた「ムミア・ヴェラ・アエギュプティアカ(Mumia vera aegyptiaca)」も歴史的な治療薬の1つである。

 ミイラ薬は、ミイラの体を削り取って粉末にしたもので、ミイラを作るときに遺体に塗られた防腐処理の材料も含まれていた。

 ミイラ薬の使用は1300年頃にさかのぼり、アラビアとヨーロッパで広く使われていた。

 当時の医師たちは、ミイラには病気を治す力が宿っていて、服用することで生者に受け継がれると信じていた。

 そのため、頭痛や咳、めまいなど幅広い病気の治療にミイラ薬を用いていた。

 16世紀から18世紀のヨーロッパでは人間の頭蓋骨の粉末を混ぜた薬が頭の病気に効くとされ貴族の間で流行した歴史もあり、人の体を薬にする風習は珍しくなかった。

 スイス出身の医師であり、錬金術師であるパラケルスス(16世紀頃)もミイラ薬を支持し、需要は急速に高まった。

 エジプトの墓からミイラを持ち出すことが制限されると、偽造品まで大量に出回るようになった。

 本物と偽物を区別するためにラテン語で「本物のミイラ」を意味する「ムミア・ヴェラ」という言葉が使われるようになった。

 18世紀になると、イギリスの上流階級のあいだでは、自宅でミイラの包帯をほどいて見物する開封パーティーまで開かれるようになり、ミイラそのものがもてはやされた。

 ミイラ薬の効能に疑念を持つ者が現れても信仰は根強く、18世紀にはヨーロッパ中の薬局で販売されていた。

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Image by pixabay / DenisDoukhan

江戸時代の日本にも伝来した不気味な特効薬

 ミイラ薬の流行は日本にも及ぶ。

 長崎のオランダ貿易を通じて、江戸時代の日本にも薬として輸入されていた。

 江戸時代の本草学者、貝原益軒も『大和本草』の中で、ミイラを万能薬として紹介している。

 オランダ側の取引記録によると、1743年には8代将軍・徳川吉宗の注文を受けて、オランダ船がミイラを届けている。

 吉宗の跡を継いだ9代将軍・徳川家重もミイラを注文している。

 ヨーロッパの貴族と同様に、日本の将軍もミイラ薬の効能を信じて買い求めていた。

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徳川吉宗像 public domain / Wikimedia

ミイラ薬にインフルエンザウイルスから細胞を守る効果

 何世紀にもわたって人々が薬として使ってきたミイラには、科学的な効能があったのだろうか。

 ドイツのマールブルク大学の研究チームは、大学や博物館に保管されていた、当時のミイラ薬のサンプル、ミイラ化された体の一部、包帯、2つの頭蓋骨など、24点を分析した。

 研究チームは、ミイラ薬から取り出した成分を、4種類のインフルエンザウイルスに感染させたイヌの腎臓の細胞に与えて実験を行った。

 実験の結果、ミイラ薬の成分を与えた細胞は、与えなかった細胞よりも長く生き残った。

 毎年冬に流行する季節性インフルエンザのウイルスに対しても、同じように細胞を守る効果が見られた。

 人々が万能薬として信じていたミイラ薬の中には、ウイルスから細胞を守る力が秘められていたのだ。

樹脂やアロエの成分も発見される

 研究チームが成分を詳しく調べると、多くのサンプルに古代エジプトの防腐処理に使われた針葉樹の樹脂が含まれており、7-オキソデヒドロアビエチン酸という成分が多く含まれていた。

 過去の研究でも、一部の樹木樹脂が細菌と戦う性質を持つことが示されているが、7-オキソデヒドロアビエチン酸だけでは、細胞を守る働きを再現できなかった。

 他の成分と組み合わさることで効果が得られると考えられるが、それがどの成分なのかは、まだ特定されていない。

 また、現代も健康効果があるとされる「アロエ」に関連する成分が、約2700年前のミイラの頭蓋骨と18世紀のミイラ薬から見つかった。

 古代エジプトの防腐処理の材料から実際にアロエの成分が確認されたのは今回が初めてだという。

 中世の文献にはミイラ薬とアロエの関連性が記されていたが、これまで科学者たちは著者の単なる推測だと考えていた。

 マールブルク大学のターニャ・ポンメレニング教授は、中世の文献の記録が深い歴史の事実に基づいている可能性を指摘している。 

 現代人が聞いたら迷信としか思えないミイラ薬の中に、健康効果のある成分が含まれていたという事実はちょっとびっくりだ。

 昔の人が考えた民間療法の中には、本当に効果があると後でわかったものも存在するが、絶対にダメなやつもあるので、まずは医師に相談することにしよう、そうしよう。

References: Ancient Medical Remedy Made From Egyptian Mummies May Actually Protect Cells Against Flu Viruses | IFLScience

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