この画像を大きなサイズで見る世界で最もミステリアスな奇書とされる「ヴォイニッチ手稿」が、何世紀にもわたり、間違った順番でページを読まれていた可能性があることが、マルタ大学などの研究者の分析で明らかになった。
15世紀に製本された際、ページが本来とは違う順番で綴じられてしまったのだという。
1人の天才が書いた暗号だと思われていた手稿は、知識を後世に伝えるために複数の人が作った小冊子の束だった可能性もある。
中世の写本の多くは、バラバラのため失われることが多かったが、皮肉なことにヴォイニッチ手稿は順番を間違えたとはいえ1冊の本に綴じられたおかげで、今日まで残ることができたようだ。
この研究成果は『Digital Medievalist』誌(2026年)に掲載された。
参考文献:
- A medieval manuscript has confounded scholars for centuries. Have they been reading it wrong all this time? | Culture | The Guardian
解読できないヴォイニッチ手稿の謎
「ヴォイニッチ手稿」は、世界で最もミステリアスな古文書と呼ばれている。
中世に作られたとされる羊皮紙(動物の皮を薄くのばして作った書写材料)で作られたページは、奇妙な植物の絵や天文学の図解で埋め尽くされている。
さらに裸の女性たちの姿や、誰も読めない謎の文字がびっしりと書き込まれている。
失われた言語で書かれた本なのか、楽譜なのか、はたまた手の込んだ作り話なのか。
手稿は17世紀に書籍収集家の記録に登場して以来、何世紀にもわたって世界中の学者や暗号解読者たちを寄せ付けなかった。
1912年に古書商のウィルフリッド・ヴォイニッチが手稿を買い取った当初は、13世紀の博学者ロジャー・ベーコンが書いたものだと考えられ、レオナルド・ダ・ヴィンチの作だとする説もあった。
イェール大学が所蔵する手稿の羊皮紙は、放射性炭素年代測定によって1404年から1438年のものとされ、有名な天才たちが書いたという説は否定されている。
2019年には、ブリストル大学の研究助手が、手稿は「ロマンス祖語」で書かれていると主張したが、後に異論が出て、大学はウェブサイトから主張への言及を削除している。
この画像を大きなサイズで見る15世紀の製本でページの順番が狂っていた
マルタ大学のコリン・レイフィールド氏と、アメリカ中世学会の中世文字の専門家、リサ・フェイギン・デイヴィス氏は、学者たちの見解が長年一致しなかった理由を説明する研究結果を報告した。
研究によると、手稿の中身が謎に満ちていることに加え、誰もが間違った順番でページを読んでいたことが、見解がまとまらなかった理由の一つだという。
2人によると、手稿は元々「シンギュリオン(singulion)」と呼ばれる形で作られていた可能性があるという。
シンギュリオンとは、クリスマスカードのように二つ折りにした1枚の羊皮紙のことで、手稿は二つ折りの羊皮紙を何枚も重ねただけの束だったという。
シンギュリオンの束は15世紀半ばから後半にかけて、何枚もの二つ折りを入れ子状に重ねて真ん中で綴じる、一般的な本の形に誤ってまとめられてしまった。
入れ子状に綴じると、1枚の二つ折りの前半のページは本の前のほうに、後半のページは本の後ろのほうに離れてしまい、見開きの左右には別々の羊皮紙のページが並ぶことになる。
製本の間違いが原因で、何百年にもわたりページの順番がバラバラのまま読まれてきたことになる。
この画像を大きなサイズで見る文章の分析と絵のズレが示す順番の間違い
研究チームは数値分析ツールを使って、手稿の文章のまとまりどうしを比較した。
すると、もともと同じ1枚の羊皮紙だったページ同士は、現在の製本では間に何ページも挟まって離れていても、内容の近さを示す数値が高いことが多かった。
視覚的な手がかりもページの順番の間違いを裏付けている。
手稿には小川やパイプのようなイラストが描かれている。
だが本の中央の綴じ目(ノド)にまで延びた線が、反対側のページの絵とぴったりつながらない箇所がある。
レイフィールド氏は、ばらばらのページを重ねたものとして扱うと、不自然だった絵が突然すべてつながると語っている。
この画像を大きなサイズで見る世代間で知識を受け継ぐための小冊子だった可能性
研究者らは、今回の発見によって、手稿が作られた目的についての考え方が根本から変わると述べている。
ヴォイニッチ手稿は、一人の天才が屋根裏部屋で暗号を使って書いたものだと思われがちだが、デイヴィス氏は、手稿は知識を世代から世代へ受け継ぐための小冊子の束で、もっと多くの人が関わって作られたものだと考えている。
デイヴィス氏は2020年に筆跡を分析し、手稿は最大5人の書き手によって書かれたと結論づけており、この結果も仮説を裏付けるという。
中世の写本はほとんど残っておらず、2022年に『Science』誌に掲載された研究では、中世ヨーロッパの物語文学の写本の90%以上が失われたという。
その理由は火災や物理的劣化だが、きちんと小冊子として綴じられなかったのも要因の1つではないかとデイヴィス氏は推測する。
皮肉なことに、順番を間違えて製本されたおかげで、ヴォイニッチ手稿は今日まで残ることができたとデイヴィス氏は語っている。
この画像を大きなサイズで見るヴォイニッチ手稿は他にも存在していた可能性
手稿には女性の生殖器に似た絵や、薬草学、占星術を思わせる絵が含まれている。
デイヴィス氏は、手稿は女性たちの民間の知識を書き残した本だったのではないかと考えているが、まだ証明はできないとも述べている。
手稿と同じ謎の文字(ヴォイニッチ語)で書かれた写本は、当時ほかにも存在していた可能性があるという。
puikko 紙製ブックカバー ヴォイニッチ手稿2(カラー) クラフト紙 (茶色)
このPRリンクから注文に進んだ場合、販売サイトからカラパイアに紹介料が支払われることがあります。紹介料が発生した場合は、サイト運営の継続と記事制作の資金として活用いたします。














ヴォイニッチ語が読めないから研究者も困っている気がする
AIに読ませればある程度の輪郭が見えてくる気がする
そもそも近代以降は特定法則で文字を置き換える程度の暗号や未発見の言語なら
「特定の文字の後には一定確率で○○という助詞がつく(例えば『私』なら次は高確率で『は、が、の、に、を』等)」みたいな法則性を整理したらすぐ解読できるし、
いまならその手の統計をAIが一瞬で片づけられるのでなおさら容易い。
極端にサンプル数が少ない場合はこの方法では解読できないけど、ヴォイニッチ手稿ぐらいの文章量なら瞬殺できるはず。
それでも長年解けないので、ヴォイニッチ手稿の文字は文字ではなくただの文字っぽい装飾模様説が強い。
いちおう複数章をそれぞれまったく違う方法で暗号化している、などの説もあるけど、
不規則な位置にイラストのあるページでもすべての文翔が空白を作ることなく、
また文字の大きさを調整することもなくびっしり書き込まれていたりするし
ものすごい文章量なのに書き損じの痕跡もないあたりちょっと怪しい。