メインコンテンツにスキップ

Googleでカラパイアを「お気に入りサイト登録」

1億6500万年前にタイムスリップ!ジュラ紀の昆虫たちの鳴き声を科学者たちが再現(要音声)

記事の本文にスキップ

0件のコメントを見る

(著)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Image by pixabay / Marcos-Photographer
Advertisement

 恐竜が歩き回っていたジュラ紀の森には、どんな音が響いていたのだろう。

 中国とイギリスの研究チームが、内モンゴル自治区で見つかった約1億6500万年前の昆虫の化石から、当時の虫たちの鳴き声を音として復元した。

 多くはコオロギに似た澄んだ音だったが、1種だけ人間の耳には聞こえない超音波で鳴いていたという。

 昆虫の超音波はコウモリから逃れるために進化したと考えられてきたが、コウモリが現れるおよそ1億年前から身に着けていたことになる。

 この研究成果は『Proceedings of the National Academy of Sciences』誌(2026年8月25日付)に掲載された。

化石に残されていたジュラ紀の昆虫の音を出すための翅

 恐竜たちの姿を復元する技術は大きく進歩したが、どうしても再現が難しいものがある。それは「音」だ。

 恐竜の鳴き声を司る発音器官や軟部組織は、化石として残りにくいからである。

 そこで 中国の四川農業大学とイギリスのリンカーン大学などの研究チームは、音を発する翅(ハネ)が化石に残りやすい昆虫に目を向けた。

 現在のコオロギやキリギリスなど、翅(ハネ)をこすり合わせて鳴く昆虫の仲間たちだ。

 研究チームは、中国北部の内モンゴル自治区にある約1億6500万年前(中生代ジュラ紀中期)の地層から発掘された、9種20個の昆虫の化石を調査した。

 これらの化石には、昆虫が音を出すための翅の構造が驚くほどきれいに保存されていた。

 昆虫の翅には、微小な歯のような「やすり状の隆起(摩擦器)」があり、反対側の翅にある「こすり器」がここをこすって音を出す。

 生み出される音の高さや種類は、この隆起の間隔と、振動する翅の面積によって決まる。

 この音を発する仕組みは、2億年以上前の三畳紀後期から現代の昆虫まで基本的に変わっていない。

 そのため、化石の翅の構造を調べれば、当時の鳴き声を推測することができるのだ。 

毎秒1万フレームで撮影した、翅をこすり合わせて鳴く現代のフタホシコオロギ(Gryllus bimaculatus)のオスの高速度映像 Image credit:Proceedings of the National Academy of Sciences (2026). DOI: 10.1073/pnas.2615107123

最新技術で翅を解析し、1億6500万年前の音を再現

 研究チームは「レーザードップラー振動計」という特殊な装置を使い、現代の昆虫の翅がどのように振動するかを細かく測定した。

 次に、そのデータをもとに化石の翅の構造をコンピューターモデルに入力し、古代の昆虫たちが発していた鳴き声の周波数と基本構造を割り出した。

 さらに人工知能(機械学習モデル)を使って発声の間隔を推定し、ジュラ紀の音風景(サウンドスケープ)を構築することに成功したのである。 

 解析の結果、当時の音響環境が私たちの想像以上に豊かであったことが判明した。

 調査した9種のうち多くの種は、現代のコオロギの一部と同じような、およそ5kHz(キロヘルツ)の低い純音で鳴いていたことがわかった。

 純音(じゅんおん)とは、単一の高さ(周波数)の雑音が混ざらない澄んだ音のことだ。

 こうしてジュラ紀の森に響く昆虫たちの鳴き声を再現することに成功した。

 以下がその音の映像である。目をつぶり意識をジュラ紀の森に飛ばしてみようか。恐竜マメンチサウルスとかも遠くに出演させてみちゃったりしよう。

復元されたジュラ紀のキリギリスの祖先の鳴き声。復元に使用した各種の翅と、そこから得られた鳴き声を対応させたもの。Image credit:Proceedings of the National Academy of Sciences (2026). DOI: 10.1073/pnas.2615107123

 研究に携わったイギリスのリンカーン大学の感覚生物学者、フェルナンド・モンテアレグレ=サパタ氏は、なぜジュラ紀の昆虫たちが純音で鳴いていたかについてこう推測している。

 コオロギが鳴いているのは聞こえるのに、どこで鳴いているのか探そうとしても、なかなか見つからない。

 純音を使うことで、仲間同士でコミュニケーションを取りつつ、捕食者からは居場所を特定されにくくしていたのだという。

この画像を大きなサイズで見る
化石に残された昆虫の翅と(AからL)と、系統関係にもとづいて予測された鳴き声の周波数(K)Image credit:Proceedings of the National Academy of Sciences (2026). DOI: 10.1073/pnas.2615107123

コウモリより古い超音波で鳴く昆虫の発見

 さらに研究チームを驚かせたのは、「シグマボイルス・ペレグリヌス(Sigmaboilus peregrinus)」という絶滅種の存在である。

 この昆虫はなんと、人間の耳には聞こえない20kHzを超える高周波の超音波を出していたことが判明したのだ。

 これまで、昆虫が超音波でコミュニケーションをとるように進化したのは、超音波を使って獲物を探すコウモリから逃れるためだと考えられてきた。

 しかし、コウモリが地球上に登場したのは約5500万年前のことである。今回の発見は、コウモリが登場するおよそ1億年も前から、昆虫たちがすでに超音波を使いこなしていたことを証明するものだ。

捕食者から身を守るために進化した昆虫たちの知恵

 この発見により、「コウモリだけが昆虫の超音波進化の要因である」という長年の定説は覆された。

 では、なぜジュラ紀の昆虫たちは超音波を獲得したのだろうか。

 研究チームは、優れた聴覚を持つ初期の哺乳類や、その他の捕食者の存在が、昆虫たちに進化のプレッシャーを与えたのではないかと推測している。

 捕食者に見つかりにくい高周波や超音波に切り替えることで、オスは近くのメスにだけこっそりと自分の存在をアピールすることができたのだ。

 また、当時の森には多くの種類の昆虫が生息しており、それぞれの鳴き声が入り乱れていたと考えられる。

 周波数を変えて超音波を使うことは、同じ森にいるライバル種の鳴き声に自分の声がかき消されないようにするための、賢い生存戦略でもあったのだろう。

 1億6500万年前の森には、捕食者から身を隠しながら、命をつなぐために多様な音を奏でる昆虫たちのドラマがあったのだ。

 そんなことを考えながらもう一度、復元された音源を聞いて意識を飛ばすことで、憂鬱な月曜日を乗り切れると思うんだ。

References: DOI.10.1073/pnas.2615107123 / Reconstructed Jurassic insect calls evoke a 165-million-year-old forest soundscape

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

絶滅・絶滅危惧種生物

絶滅・絶滅危惧種生物についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

昆虫・爬虫類・寄生虫

昆虫・爬虫類・寄生虫についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。