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地球に落下する人工衛星のアルミニウムが大気に及ぼす影響を調査

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(著)

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Image credit:High Enthalpy Flow Diagnostics Group
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 地球上空の軌道上を回る人工衛星は、役目を終えたり故障したりすると大気圏へ落ちてきて、空気との激しい摩擦で1,600℃を超える熱を受ける。

 人工衛星の機体は主にアルミニウムでできているため、大部分は溶けて微粒子となり、大気の上層に残されたままだ。

 アルミニウムの微粒子はオゾン層を破壊する可能性が指摘されているものの、実際に地球にどのような影響があるのかは、これまで詳しく調べられていなかった。

 ドイツのシュツットガルト大学の研究チームは、地上で大気圏再突入を再現する実験によって、アルミニウムの微粒子が地球の大気に及ぼす影響を詳しく調べている。

参考文献:

毎日3個以上の人工衛星が大気圏に突入している

 人工衛星が最も多く回っているのは低軌道と呼ばれる領域で、地表からおよそ高度160kmから2,000kmまでの範囲になる。

 国際宇宙ステーションが飛んでいるのは高度約400kmでこの軌道に含まれている。

 欧州宇宙機関(ESA)によると、2026年6月時点で、運用中のものと機能を停止したものを合わせて約18,000機の人工衛星が地球を回っている。

 役目を終えた人工衛星をそのまま軌道に残すと他の人工衛星と衝突する危険があるため、運用を終えた機体は残った推進剤で高度を下げ、大気圏へ突入させて処分する方式がとられている。

 低軌道を離れた人工衛星は秒速8km前後という猛烈な速さで大気圏に突入するため、空気との激しい摩擦によって1,600℃を超える熱を受ける。

 ESAによると、制御を失って落下するものも含め、大型の人工衛星や使用済みのロケットの段が毎日3個以上、大気圏に突入して燃えており、1年間では数百トンの人工物が大気圏で蒸発しているという。 

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Image by Istock / yucelyilmaz

人工衛星のアルミニウムは微粒子となって大気に残る

 ドイツ、シュツットガルト大学 宇宙システム研究所のファビアン・フーフガルト氏は、人工衛星が燃えても、すべてが消滅するわけではないという。

 人間が作った人工衛星は、機体の骨格から外板まで主にアルミニウムでできている。

 アルミニウムが溶ける温度は約660℃なので、大気圏に突入した後、機体は高度60kmから80kmのあたりで溶けだし、微粒子となって大気の上層に残される。

 ちなみに地球大気圏には、毎日大量の隕石や宇宙塵も降り注いでおり、NASAの推定では1日あたり44トンに上るという。

 だが隕石や塵は主にケイ素でできていて、ニッケルや鉄をわずかに含む程度にすぎない。

 地球が何十億年も受け続けてきた物質と、人工衛星が持ち込むアルミニウムは、まったく別のものになる。 

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Image by Istock / MikeMareen

アルミニウム微粒子が大気に与える影響

 研究チームが心配しているのは、人工衛星から出たアルミニウムが酸素と結びついて酸化アルミニウムになることである。

 アルミナとも呼ばれる酸化アルミニウムには、オゾンを破壊する働きと太陽光を反射する働きが知られている。

 オゾン層は太陽の有害な紫外線を遮っている層であり、薄くなれば地上に届く紫外線が増える。

 アルミニウムが残される高度も厄介な問題になっている。

 地表近くで出る排気ガスや煤は、風や雨によって空中の大気から比較的早く洗い流されていく。

 航空機からも大量の排出物が出ているものの、高度が低いため大気が循環する。

 ところが、人工衛星が溶ける高度は空気の循環が乏しく、いったん入り込んだ物質はなかなか抜けていかないのだ。

 ただし、アルミニウムが必ず酸化アルミニウムになるとは限らない。

 計算モデルによっては、オゾンへの害がより少ない可能性のある水酸化アルミニウムが生じると示すものもある。

 どちらが生じるかによって、事態の深刻さはまったく変わってくる。

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Image credit:High Enthalpy Flow Diagnostics Group

プラズマトンネルで人工衛星が溶ける環境を再現

 高度60kmから80kmという高さは、気球や航空機が到達するには高すぎ、人工衛星が飛ぶには低すぎる。

 人工衛星が溶けている現場に直接出向いて試料を採ることができないため、研究チームは地上に同じ環境を作り出すという方法を選んだ。

 研究チームは、シュツットガルト大学 宇宙システム研究所にある大気圏再突入と同じ高温を地上で再現する「プラズマトンネル」という装置を使用した。

 プラズマとは気体を極端な高温にしてイオン化させた状態を指し、装置の内部では5,000℃から8,000℃に達する。

 装置の壁が溶けてしまわないよう、壁のなかには水を絶えず流し続けている。

 研究チームは、人工衛星の本体に頻繁に使われるアルミニウム合金7075の円柱を、高温の流れのなかに置いて溶かした。 

 最初の実験では、空気中に約1%含まれていて他の物質とほとんど反応しない希ガス「アルゴン」と、窒素だけを使い、酸素を含まない状態の流れにアルミニウムをさらした。

 次の実験では、同じアルミニウムを酸素の含まれた空気の流れにさらしている。

 酸素があるかないかで、溶けたアルミニウムが何に変わるのかを比べるための実験になる。

 航空機からの観測では、原子の状態のアルミニウムと一酸化アルミニウムが放つ光がすでに見つかっている。

 研究チームは粉末にしたアルミニウム合金をプラズマの流れのなかに漂わせ、同じ光を装置のなかで再現しようとしている。

 研究チームによると、人工衛星のアルミニウムからどの種類の粒子が生じるのかを突き止めることが非常に重要で、いまはまだ最初の一歩の段階にあるという。

この研究でわかったこと

  • 燃え尽きた人工衛星のアルミニウムは消えず、微粒子となって高度60〜80kmの大気に残り続けている
  • 大気に残ったアルミニウム微粒子が地球にどんな影響を与えるかは、これまで詳しく調べられていない
  • 地上の装置で再突入と同じ高温を作り、酸素のあるなしでアルミニウムがどう変わるかを比べられる

今後の課題

  • 大気に残ったアルミニウムの微粒子が、地球にとってどのような影響をもたらすのかを突き止める
  • 溶けたアルミニウムが灰になるまでの全過程を、地上の装置で再現できるようにする
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この記事へのコメント 11件

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  1. オゾンを破壊せず太陽光を反射する、とかだといいんだけど・・・

    • +5
  2. 固体燃料ロケットの排気に含まれる塩化アンモニウムが、高層大気中で
    何か悪さをするのかも知れない。
    とか言う話を聞いた事はあるな。

    • +2
  3. 二次精錬(スクラップや空き缶)で歩留まり八割九割とか当たり前なんですが
    人工衛星の何億倍だと思ってるんだろうか

    • -2
  4. 圧縮断熱は摩擦じゃないだろ

    • +2
  5. その内スターリンク衛星が地球に降り注ぐ日がくるだろうけど
    大気汚染はどうなるんだろうな

    • +2
    1. 血管に直接注入した実験結果で業界激オコになった

      • -1
  6. そういや昔アルミが認知症の原因とか言われてたことあったなあ

    • +3
  7. 上空漂っててもその内雨雲の核になって降りてきて
    地上に到達して乾いた後舞い上がるわけだな?どんくらい先かは知らんけど
    ずっとお空の上ってことはないだろうしな

    • -2
    1. >ところが、人工衛星が溶ける高度は空気の循環が乏しく、いったん入り込んだ物質はなかなか抜けていかないのだ。

      • 評価
  8. まあだろうね
    カッシーニだか「核電池を積んでるから打ち上げるな」ってやってたじゃん
    打ち上げ🚀失敗しても同じような問題がある
    こういうリスクはかなり高いから
    まずは小型化の方向で、光害もあるし
    少なくとも大気に撒かれる量は減る

    • +6

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