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小惑星ベンヌのサンプルから、水が作った化学組成の複雑な構造が明らかに

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(著)

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小惑星ベンヌ Image credit:NASA
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 NASAの探査機が小惑星ベンヌから持ち帰ったサンプルを分析した結果、過去の水の活動によって作られた「パッチワーク」のような複雑な化学構造が明らかになった。

 トルコのドクズ・エリュール大学の研究チームは、ウイルスより小さな物質さえ見分ける特殊な光の分析法を駆使し、水が領域ごとに異なる影響を与えていた事実を特定した。

 この発見は、生命の材料が宇宙でどう生き残るかを知る大きな手がかりとなる。

 この研究成果は『Proceedings of the National Academy of Sciences』(2026年3月9日付)に掲載された。

参考文献:

生命誕生のカギを握る小惑星ベンヌ

 小惑星ベンヌは、炭素を豊富に含んだ「C型小惑星(炭素質小惑星)」と呼ばれる天体だ。

 この小惑星には、生命の誕生に欠かせない有機化合物が含まれているため、科学者たちは長年注目してきた。

 ベンヌはもともと、はるか昔に存在したもっと大きな「親天体」が激しい衝突によってバラバラになった際、その破片が再び集まってできたものだ。

 興味深いことに、日本の探査機「はやぶさ2」が調査した小惑星リュウグウも、ベンヌと非常によく似た特徴を持っている。

 近年の研究では、この2つの小惑星がかつて同じ大きな親天体から分かれた「兄弟」である可能性が高いことが指摘されている。

 同じ親から生まれた兄弟が、それぞれ別の軌道を歩み、NASAとJAXAという異なる国の探査機によってサンプリングされた事実は、太陽系の歴史を探る上で運命的なつながりを感じさせる。

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小惑星ベンヌから採取されたサンプル粒子のクローズアップ画像 Image credit:NASA/Scott Eckley

ナノレベルの最新分析で見えた複雑な構造

 ドクズ・エリュール大学のメフメト・イェシルタス教授たちの研究チームは、2023年9月にNASAの探査機「OSIRIS-REx」が地球へ持ち帰ったベンヌのサンプル試料「OREX-800066-3」の分析を行った。

 使用したのは「ナノスケール赤外分光法」と「ラマン分光法」という、目に見えないほど小さな世界の物質を特定できる技術だ。

 これらは光の反応を利用することで、ナノメートルという、ウイルスよりも小さなスケールで「何がどこにあるか」を精密に調べることができる。

 これまでの研究では、小惑星の成分はある程度混ざり合っていると考えられていた。

 しかし、この高度な分析によって、ベンヌの内部は驚くほどバラバラな性質を持っていることが判明した。

 研究チームは、試料の中に「3つの異なる化学領域」が繰り返し現れることを発見したのだ。それはまるで、異なる布を継ぎ合わせた「パッチワーク」のような構造だったのである。

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小惑星ベンヌの南半球から宇宙空間にかけての眺め。ベンヌの表面に存在する岩塊がよくわかる。Image credit:NASA

水の活動が場所ごとに異なる領域を作り出した

 発見された3つの領域には、それぞれ明確な特徴がある。

 1つ目は、炭素と水素が鎖のように連なった「脂肪族化合物」が多い場所。

 2つ目は、水の存在下で形成される「炭酸塩鉱物」が豊富な場所。

 そして3つ目は、アミノ酸などの生命現象に深く関わる「窒素」を含んだ有機化合物が集まっている場所だ。

 このような物質の偏りは、過去にベンヌの親天体の中で「液体としての水」が活動していた際、全体を一様に変化させたわけではないことを意味している。

 水はある場所では特定の鉱物を作り、別の場所では有機物を変化させるといったように、非常に複雑で局所的な影響を与えていたのだ。

 この「ナノレベルの不均一性(ばらつき)」こそが、巨大な親天体が衝突でバラバラになり、その瓦礫が再び集まってベンヌが誕生した激動のプロセスや、内部で熱い水が岩石を溶かして複雑な模様を描き出した、数億年にわたる波乱万丈な歴史を物語っている。

過酷な宇宙で生命の材料が生き残るための重要な手がかり

 今回の研究で最も驚くべき発見のひとつは、水による激しい化学変化を経験しながらも、非常に壊れやすい性質を持つ有機分子がそのままの形で残っていたことだ。

 水は物質を変化させる力を持っているが、ベンヌの内部では場所によってこれらのデリケートな分子が破壊されずに保護されていたのである。

 この事実は、地球に生命の材料がどのように届けられたのかを考える上で、非常に大きな意味を持つ。

 宇宙の過酷な環境下でも、小惑星の内部にある複雑な構造がバリアのような役割を果たし、生命の基礎となる材料を守り抜いた可能性があるからだ。

 私たちがどこから来たのかという究極の謎を解くピースが、この小さな砂粒の中に刻まれているかもしれない。

References: Nanoscale infrared spectroscopy reveals complex organic–mineral assemblages in asteroid Bennu

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