この画像を大きなサイズで見る地球近傍小惑星、「リュウグウ」と「ベンヌ」は、試料が地球に持ち帰られたことで大きな注目を集めた。それぞれ太陽系初期の名残をとどめる炭素質の小惑星であり、生命の材料となり得る有機物や水の痕跡が見つかっている。
そして今、この二つの天体が兄弟のような関係にある可能性が新たに浮上した。
アメリカ・サウスウエスト研究所の最新研究によれば、彼らの親は小惑星帯に存在するポラナという天体かもしれないという。
宇宙の家系図が、いま解き明かされようとしている。
この研究は『The Planetary Science Journal 』(2025年8月18日付)に掲載された。
地球近傍で発見された小惑星、リュウグウとベンヌ
リュウグウとベンヌは、いずれも地球の軌道に接近する地球近傍小惑星である。
リュウグウは日本の探査機「はやぶさ2」が目指した天体で、2014年に打ち上げられた同探査機は2018年にリュウグウへ到達。サンプルを採取し、2020年に地球へと帰還した。
一方、ベンヌはNASAの探査機「オシリス・レックス(OSIRIS-REx)」が2016年に打ち上げられ、2018年に接近。こちらも試料を採取し、2023年に地球へ届けられた。
どちらの小惑星も直径はおよそ500 mから1 km程度で、ほぼ球形に近い形状をしている。
表面には岩塊が多く、重力が非常に小さいため、探査機の着陸も難易度の高い作業だった。
特に注目されているのは、これらの天体がいずれも炭素質小惑星である点だ。
炭素を主成分とする岩石で構成された小惑星で、太陽系の形成初期の物質を比較的そのまま残していると考えられている。
有機物や水分を含む鉱物が検出されており、地球上の生命の起源との関連が期待されている。
この画像を大きなサイズで見る小惑星帯の「ポラナ」との関係性
今回の研究を主導した、アメリカ・サウスウエスト研究所のアニシア・アレドンド博士の研究チームは、リュウグウとベンヌが共通の起源を持つ可能性について調査を進める中で、「ポラナ(142 Polana)」という小惑星に注目した。
ポラナは、火星と木星の間に広がる小惑星帯に位置する小惑星で、現在の直径は約55 kmとされている。表面が非常に暗く、太陽の光をほとんど反射しないのが特徴である。主に炭素を含む岩石でできた炭素質小惑星だ。
この小惑星は、1875年1月28日にオーストリアの天文学者ヨハン・パリサによって発見され、発見場所の現在のクロアチア領プーラ(当時のポーラ)にちなんでポラナと名付けられた。
かつては大きな天体だった可能性が高く、長い年月の中で衝突を繰り返し、分裂していった破片が「ポラナ・ファミリー」と呼ばれる一群を形成している。
このポラナ・ファミリーの一部は、太陽の重力や他の天体の影響を受けて軌道を変え、地球近傍にまで到達した可能性があるという。
今回の研究では、リュウグウとベンヌが、ポラナ・ファミリーの一員ではないかという見方が示された。
ポラナ・リュウグウ・ベンヌに類似する炭素質の鉱物成分
研究チームは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を使って、小惑星ポラナの近赤外線スペクトルを観測した。これは、天体の表面に含まれる物質がどの波長の光を吸収し、どのように反射するかを測定することで、その組成を分析する手法である。
得られた観測データは、リュウグウとベンヌから地球に持ち帰られた試料の分析結果と比較され、三つの天体のあいだに明確な類似点があることがわかった。
中でも注目されたのは、いずれの天体からも炭素質の鉱物成分が確認された点である。これらの結果は、ポラナがリュウグウやベンヌの親にあたる天体だった可能性をさらに強めるものとなっている。
アレドンド博士は、三つの天体が非常によく似た成分で構成されていることから、もともと同じ天体に由来していても不思議ではないと述べている。
今後、さらに詳細な比較を進めることで、関係性をより明確にできる可能性があるという。
この画像を大きなサイズで見る同じ親でも、歩んだ道はそれぞれ
ただし、たとえ共通の親天体から分かれたとしても、リュウグウとベンヌにはそれぞれ異なる特徴がある。
たとえば、ベンヌには太陽系の内側や外側、さらには星間空間に由来する物質が混ざっていることが判明しており、非常に多様な成分を持つ小惑星であることがわかっている。
一方、リュウグウは表面に多くの岩塊を持ち、内部には空洞があるとみられており、衝突の歴史や内部構造に違いが見られる。
こうした違いは、破片がもともと親天体のどの部分から生まれたのか、宇宙空間でどのような環境にさらされたのかなど、さまざまな要因によって生じたと考えられている。
兄弟でありながら、別々の道をたどってきた結果なのだ。
この画像を大きなサイズで見るつながる観測とサンプルの成果
今回の研究は、宇宙望遠鏡による遠隔観測と、地球でのサンプル分析が連携することの意義を示したものだ。
NASAのオシリス・レックス主任研究者であるダンテ・ロレッタ教授(本研究には関与していない)は、望遠鏡観測とサンプルリターンがつながったことで、太陽系の起源解明に向けた大きな一歩となったと語っている。
もし今後、ポラナそのものへの探査が実現し、サンプルが持ち帰られれば、リュウグウやベンヌとの関係はさらにはっきりするだろう。
宇宙の家系図の解明は、まだ始まったばかりだ。
編集長パルモのコメント

宇宙の家系図がわかると新たな真実も見えてきそうでワクワクするよね。もし本当にポラナが親なら、ベンヌとリュウグウ以外にもたくさん兄弟がいそう。リュウグウの粒子から生命に必要な構成要素が発見されたり、ベンヌのサンプルから、生命の原材料が発見されたというニュースもあったし、ポラナ・ファミリーに関するSF映画ができそうだ。
References: Iopscience.iop.org / Eurekalert











JAXAがリュウグウから持ち帰った試料をNASAにも一部渡していたよね。
その時の試料を解析してでた結果なのかな
ベンヌとリュウグウを選んだのは偶然だと思うけど兄弟小惑星だったとはなんたる天文学的偶然
起源となる小惑星が非常に巨大だった場合、
そこら中に「ポラナファミリー」がいる可能性も
今後サンプルを増やしていけばその辺も詳しく分かるかな
まあ人間のケース、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児でも成長過程での様々な差異によって、大人になったら大きな違いが出たりするからな。兄弟小惑星ではあってもその違いから、元の小惑星から分離した後どのような過程を経たか、つまり太陽系形成の時間的変化等が残されてると仮定して、さまざまな理論の検証ができるかもしれん。楽しみだ
オオタワラ……
パリの古称の「ルテティア」という小惑星と、大田原さんが発見した小惑星Otawaraが元々の探査目標だった。
小惑星 4979_Otawaraは、探査機ロゼッタの最初の目標だったが、アリアン5ロケットの打ち上げ失敗で探査目標から外された。発見者は、大田原 明さんではなく、カール・ヴィルヘルム・ラインムートである。
何かがちょっと違えばポラナも惑星になれたんかな?