メインコンテンツにスキップ

巨大渦巻銀河の成長プロセスを特定、120億年かけて小さな銀河を飲み込み巨大化

記事の本文にスキップ

9件のコメントを見る

(著)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
渦巻銀河NGC 1365が他の銀河と合体する様子のイメージ Image credit:Melissa Weiss/CfA
Advertisement

 巨大な渦巻銀河がどのように成長してきたのか。その答えが、銀河の中にあるガスに含まれる酸素の分布から初めて読み解かれた。

 ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究チームは、約5600万光年先、南天の星座「ろ座」にある銀河NGC 1365を観測し、ガス中の酸素の広がりを詳しく分析した。

 さらに約2万通りの銀河進化シミュレーションと比較した結果、この銀河が長い時間をかけて小さな銀河と合体しながら成長してきた可能性が最も高いと示された。

 この研究は、これまで天の川などごく近傍の銀河でしか適用できなかった手法を遠方銀河へ広げた初の成果であり、銀河系外考古学という新しい研究分野の確立を示している。

 この研究成果は『Nature Astronomy』誌(2026年3月23日付)に掲載された。

参考文献:

銀河の過去を探る「銀河考古学」を遠くの銀河に初の応用

 宇宙の歴史を調べる方法は、遠くを観測するだけではない。銀河の中に残された星やガスの成分や分布を調べ、その銀河がどのように誕生し成長してきたかを読み解く研究がある。これが「銀河考古学」である。

 この手法はこれまで、天の川銀河やアンドロメダ銀河のように、個々の星を分けて観測できる近い銀河に限られていた。

 今回、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのリサ・キューリー教授らが率いるチームは、この考古学の手法をはるか遠くの銀河に応用することに成功した。

 地球から約5600万光年離れた巨大な渦巻銀河「NGC 1365」が、120億年かけて周囲の小さな銀河を飲み込みながら大きくなった成長の跡を特定したのである。

 渦巻銀河とは、中心から腕のような構造が渦を巻くように広がる形をした銀河で、私たちが住む天の川銀河もその一種である。

ガスの光から銀河の歴史を読み解く「銀河系外考古学」

 今回の調査で確立された新手法は、私たちの銀河系の外にある遠方の天体を対象とするため、「銀河系外考古学」と呼ばれている。

 数千万光年も離れた銀河では、距離が遠いため、星を1つずつ識別してその動きを十分な精度で測定することが難しい。そこで研究チームは、星そのものではなく、銀河の中に広がるガスの「酸素の分布」に着目した。

チームは、チリのラス・カンパナス天文台にある望遠鏡を使い、銀河内のガスが放つ光を精密に分析した。

 若く高温の星が出す強い光は周囲のガスを加熱して電離させ、このとき酸素などの元素は特定の波長の光を放つ。

 その光の分布を調べることで、銀河のどの場所にどれだけの酸素があるのかを細かく捉えた。

 こうして得られた酸素の分布は、星の誕生やガスの流れ、過去の銀河同士の合体の影響を記録した手がかりとなり、遠い銀河の歴史を読み解くことができる。

この画像を大きなサイズで見る
Image credit: mik38

小さな銀河を飲み込んで巨大化したNGC 1365の正体

 分析の結果、NGC 1365の中心部には酸素が多く、外側に行くほど濃度が下がる一方で、最も外側の渦状の腕では酸素の量がほぼ一定であるという特徴が見つかった。

 研究チームはこの観測データを、コンピュータによる約2万通りの銀河進化シミュレーションと比較した。その結果、観測結果と最もよく一致するモデルが1つ見つかった。

 そのモデルによると、NGC 1365は宇宙の初期に中心部分が形成されて多くの星が生まれ、超新星爆発によって酸素が周囲に蓄積された。

 その後、約120億年にわたり、周囲のより小さな銀河との合体を繰り返しながら外側へと成長していった。特に外側の渦状腕は、ここ数十億年の間に合体した銀河から供給されたガスや星によって形成された可能性が高い。

この画像を大きなサイズで見る
銀河NGC 1365を異なる「光の波長」で捉えた6つの姿 左から順に、以下の特徴を示している。
目に見える姿: 私たちの目で見える色合いに近い、自然な銀河の姿。
星形成の現場: 若く巨大な星がガスを光らせている場所。渦巻きの腕がはっきりと見える。
元素の分布(3枚): 窒素や硫黄など、特定の元素がどこに集まっているかを示した地図。
銀河の回転: 銀河の中のガスがどのような速度で動いているかを色分けした図。Image credit: B. Madore, The Observatories, Carnegie Institution for Science

天の川銀河の成り立ちを探る手がかり

 この研究は、遠くの銀河の歴史を明らかにしただけではない。私たちが住む天の川銀河も同じ渦巻銀河であるため、その成り立ちを理解する手がかりになる。

 天の川銀河も、他の銀河との合体を繰り返しながら成長してきた可能性がある。しかし、私たちはその全体像を外から直接観測することができない。

 そのため、NGC 1365のような似た構造を持つ銀河の歴史を調べることで、天の川銀河がどのように現在の姿になったのかを考えることができる。

 今回の研究では、観測とシミュレーションを組み合わせることで、銀河の進化の過程を説明できるモデルが示された。

 今後、この手法はさらに多くの銀河に応用されていくと考えられている。

 銀河に残されたガスの成分は、宇宙の歴史の記録でもある。その記録を読み解くことで、銀河の進化だけでなく、私たちの体をつくる元素がどこで生まれ、どのように広がってきたのかという問題にも迫ることができる。

References: Nature

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 9件

コメントを書く

  1. ふーむ 考古学もスゲー広域になったもんだ。
    今までならエジプトの○○王の~程度だったのにw (自分の偏見w)
    例として紹介されてるNGC1365って直径20万光年ぐらいなんだろ
    それが120億年掛けて今の姿になるとか。

    • -5
    1. 考古学が広域になったんじゃなくて天文学の一分野を分割してそう呼んでいるということでしょう

      • +4
    2.  学生だった時に一般教養として受けた講義の最初で先生は「考古学は過去のモノはすべて対象になる」とおっしゃっていました。 一般に無印の考古学はヒトが関与してますけど、対象がヒトでないときにはそれの名前を付けてるんでしょうね。 銀河が対象なら専門としては新しい研究分野ということで面白いことがわかってくるんじゃないでしょうか。 聞いたことはないですけど、惑星が対象なら惑星考古学とか、太陽系を対象にするなら太陽系考古学とか、そんなことを考えるとワクワクしてきます

      • +3
      1. 主に系外惑星の成り立ちや将来を研究する惑星科学の一分野を「惑星考古学」と呼ぶことがあるみたいですね。

        • +2
  2. ワイらの生なんてほんの一瞬の瞬き、真空から物質が生まれ
    反物質と対消滅するに等しい、、、
    せめてエピキュリアンとして楽しく生きよう(*^q^*)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \

    • +2
  3. もし銀河系とアンドロメダ銀河が衝突したら、地球から見る空はどんな光景だろうか

    • 評価
  4. われわれの太陽系が含まれる天の川銀河も、約40億年後にはアンドロメダ銀河と衝突して
    合体して巨大銀河になる運命よ。
    そのころまでには人類はいなくなってるけど。

    • 評価
    1. 仮に40億年後まで科学技術が順調に進歩したなら
      皆で安全な場所へ宇宙船で避難するくらいはできそう
      というか既に他の銀河へ分散してるかも

      • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

自然・廃墟・宇宙

自然・廃墟・宇宙についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。