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木炭を食べる火属性の菌類の生存戦略、細菌から遺伝子をコピーして進化していた

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(著)

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 山火事で焼け野原となった地に、鎮火後の木炭をごちそうにして大繁殖する火を好む菌類が存在する。

 米カリフォルニア大学の研究によると、これらの菌類は熱に強いだけでなく、細菌から遺伝子をコピーして取り込むという「水平伝播」により進化を遂げていたことがわかった。

 この研究は火災前には土の中に潜んでいた菌が、炭を分解して爆発的に増える理由を遺伝子レベルで解明したものだ。

 「火属性」ともいえるこの菌類の能力は、将来的に石油流出などの環境汚染を浄化する技術への応用が期待されている。

 この査読済みの研究論文は『PNAS』誌(2025年12月4日付)に掲載された。

火災後に炭を食べ爆発的に増殖する菌類

 山火事は、進路にあるものすべてを飲み込む容赦ない破壊力があるが、それは同時に新たな生命の始まりへも導く。

 自然火災は自然界のサイクルの一部であり、一部の植物や菌類はその定期的な発生に適応してきた。

 火を好む「好火性(こうかせい)」と呼ばれる菌類は、火災後の生態系において不可欠な存在だ。

 炭化した有機物の分解を促し、栄養の循環を助けることで、焼け野原となった土地がより早く回復する手助けをする。

 これまで、火災前には検出されなかった菌類が、鎮火後に爆発的に増殖する現象は知られていたが、その具体的なメカニズムは不明だった。

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Image by unsplash Landon Parenteau

菌類が炭を消化するために獲得した3つの進化戦略

 カリフォルニア大学リバーサイド校のシドニー・グラスマン准教授らのチームは、この謎を解明するため、カリフォルニア州の7カ所の山火事跡地から菌類を採取し、遺伝子解析を行った。

特定の菌類が熱に強く、競合のいない場所で急速に成長し、炭の栄養を消費できることは既知の事実でした。今回の研究で特定されたのは、その能力を裏付ける遺伝子の仕組みです(グラスマン氏)

 研究チームは採取した菌類の遺伝子を解読し、一部を木炭(炭化した植物の残骸)にさらす実験を行った。その結果、好火性菌が炭を消化するために進化した、主に3つの手法が特定された。

 1.遺伝子重複(いでんしちょうふく)

 これは生物学的なコピー&ペーストのような機能で、特定の酵素をより多く作り出すことができる。

 パンに生えるアオカビの一種「アスペルギルス」はこの方法で無性生殖を行う。炭を消化する遺伝子のコピーを増やすことで、炭素の塊を分解する酵素を大量生産し、効率よく栄養を摂取していた。

 2.有性生殖による遺伝子の組み換え

 これを利用するのは「担子菌門(たんしきんもん)」と呼ばれるグループで、スーパーマリオブラザーズに登場するキノコのモデル、「ベニテングタケ」のような典型的なキノコの形を作る種が含まれる。

 彼らは交配を通じて遺伝子を組み合わせ、を代謝(消化)する能力を素早く進化させて環境に適応している。

3.水平伝播による遺伝子のコピー

 「コニオカエタ・ホフマニ(Coniochaeta hoffmannii)」という菌は、まったく別の生物である細菌から、を分解するのに最も役立つ遺伝子を獲得していたのだ。

 これは「水平伝播(すいへいでんぱ)」と呼ばれる現象である。

 通常、人間を含め多くの生物は、親から子へと「垂直」に遺伝子を受け継ぐ。

 しかし細菌の世界では、異なる個体同士、あるいは全く異なる生物種間で、遺伝物質が水平方向(同じ世代内)に移動し、取り込まれる現象が起きている。

 グラスマン氏はこれを分かりやすくこう例えている。 「水平伝播は、あなたが友人や兄弟と遺伝子をシェアするようなものです。だからこそ、細菌はこれほど多様なのです」

 それでも、細菌と菌類という、異なる生物界の間で遺伝子の移動が起こるのは極めて珍しいという。

 だがそれこそが、この菌が火災の傷跡を分解するために必要な遺伝子を与えていたのだ。

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高熱の火災を再現した実験で、激しく焼かれた土の中から生き延び、採取された菌類の培養サンプル。 Image credit:Maria Ordonez/UCR

菌類が高熱の火災を生き延びている理由

 研究チームは、炭を食べる能力だけでなく、菌類はそもそもどうやって高熱の火災を生き延びているのかについても調査した。

 ある種の菌は「菌核(きんかく)」と呼ばれる耐熱性の構造を作り出す。

 これは菌糸が硬く固まったもので、地下で何十年も休眠状態を保ち、再び成長できる適切な条件が来るのを待つことができるシェルターのような役割を果たす。

 また、別の戦略をとるものもいる。土のより深い場所に避難し、火が過ぎ去った後に、栄養豊富でライバルのいない地上へと進出してくるのだ。

 例えば、「ピロネマ(Pyronema)」という菌は、炭を分解するための遺伝的な装置をそれほど多く持っていない。

 その代わり、競合相手のいない環境を利用して、オレンジ色の小さなお椀のような形をしたキノコを素早く形成し、繁殖する戦略をとっている。

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カリフォルニア州の山火事から数か月後、焼け跡に生息するピロネマ Image credit:Monikafisch / commons.wikimedia / CC BY-SA 4.0

火属性の菌類が環境汚染を浄化してくれる可能性

 植物が火災を生き延びる方法については多くの研究がある、菌類についてはあまり注目されてこなかった。

 しかし、特定の菌類がどのようにして炭を分解できるのかを理解することは、人間の生活にとっても大きな利益をもたらす可能性がある。

 木炭の化学的構造は、石油流出や鉱山の廃棄物、その他の産業プロセスによって人間が残した多くの汚染物質と似ているからだ。

 もし研究者が、菌類がそうした物質を消化するメカニズムをより深く理解できれば、いつの日か汚染された環境を菌類の力で浄化できるかもしれない。

石油流出の浄化や鉱石の分解、あるいは焼けた景観の修復を助けるために、これらの遺伝子を活用する方法はたくさんあります

これは非常に新しい分野であり、*多くの有益な応用が期待できる、可能性を秘めた分野です(グラスマン氏)

References: Eurekalert / PNAS

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この記事へのコメント 14件

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  1. 炭は自然に還らないので、キャンプなどでは必ず持ち帰るように、という話を聞いたことがありますけれど
    自然は強いんですね

    • +15
  2. インディアンがペニシリンを得ていたのも山火事のあとからだったね
    生存競争が激しいのでは?

    水平伝播は証明が少ないだけでたくさん起きてるようだ
    茸は頻繁に性質が混ざることは養殖の過程で知られていたし
    最近は捕食によるものも、ダニの抗凝固因子は爬虫類から得たものだとか

    とにかく生き物はしたたかだ
    まだまだ色々なことが見つかるだろう
    だから、これ以上の種の絶滅を防がないといけない

    • +15
    1. 実際は人間とかでも起きてそうな気はします。
      人間は手段を選ぶことを美徳としますが生き物自体は目的のためには手段は選ばないですからね。
      生き残って繁栄すればそれでいいわけですから。
      水平伝播とかそれを考えるとかなり強力な武器になりますし。

      • -2
    2. 当然、人間でも起きてるでしょう
      私は否定していません
      証明されてる(知られていること)が少ないと書いたのです
      良いにしろ悪いにしろ人類にも機会は与えられ、悪い場合は死に良い時は逆に働くだけです

      もしかするとアルコールの分解能はそれかもしれません

      • +2
  3. 人類が滅んだ後に地上を支配しているのは、もしかしたらキノコかもしれないね
    人間たちが残した産業廃棄物を消費して

    • +3
    1. 菌糸がニューロンを連想させるせいもあってかSFではよくキノコが人類のライバルとして描かれているよね
      さらにウイルスの力を借りなくても水平伝播が起きるとあっちゃ妄想は膨らむ一方よ
      キノコはロマン

      • +5
  4. 山火事の後のパイオニア的な役割になるのかな?
    この菌自体や生成物が他の生物のエサになるならば、分解スピードや増殖力の優れた菌を特定することで、生態系の回復を早めることができそう。

    • +6
  5. 石油由来製品を食べる菌や、汚染された環境を浄化する菌というアイデアは数十年前から日本の漫画に有った
    有名どころだと風の谷のナウシカなど
    でも大抵の作品は菌のコントロールが効かなくなり、文明が滅びる
    大婆様も言ってたろ?「腐海に手をだしてはならん」

    • +2
  6. 好火性菌類とか、一番ダメっぽい組み合わせなのにわけが分からないなw

    • 評価

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