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キングコブラがインドの列車に無賃乗車、生息地を失い人間の生活圏に入り込む

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(著) (編集)

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image credit: Dikansh S. Parmar et al.Biotropica, 2026 CC BY 4.0
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 世界最長の毒蛇の一つであるキングコブラが、現在インド国内の、思いもよらぬ場所で捕獲される例が相次いでいるという。

 インド南西部にあるゴア州では、鉄道の線路や駅の近く、さらには列車に乗り込んで移動している姿が確認されている。

 近年、インドでは森林の減少や鉄道の延伸に伴い、ヘビたちは生息地を追われ、餌や隠れ場所を求めて、人間の暮らす場所に現れるようになっているという。

 この「鉄道の旅」は周辺住民だけでなく、キングコブラたちにとっても危険であり、生態系を守るうえでも大きな懸念材料となっている。

 この査読済みの研究論文は、学術誌『Biotropica』(2026年1月26日付)に掲載された

列車の中や線路沿いで相次ぐコブラの目撃情報

 キングコブラは、インド亜大陸から東南アジア、中国南部にかけて広く分布している大型の毒ヘビで、本来は森や湿った自然環境を好む。

 ところが近年、インドではもともとの生息地とは程遠い場所でも見つかる事例が相次いで報告されている。畑の脇や町外れ、線路沿い、そして列車の中などだ。

 2017年、爬虫類学者であり、キングコブラ救助活動のボランティアもしているディカンシュ・パルマール氏が、列車から1匹のキングコブラを救出した。

 その後、彼の研究チームは、ゴア州での2002年から2024年までの22年間にわたるコブラの救助記録を調査した。その結果、州全体で47件の目撃が確認された。

 内訳はゴア州北部で18件、南部で29件で、なんとこれらの事例のうち5件が鉄道に関連する場所で発生していたという。

 パルマール氏自身が救出したコブラは、この5件の鉄道関連のヘビ目撃情報のうちの1件だった。

生き伸びるために住処を変えるキングコブラ

 パルマール氏は人間の活動、植生、気候といった要素を組み込んだ種分布モデルを作成した上で、理論上適していると考えられる生息地と、実際にコブラが救助された地点とを比較した。

 その結果、キングコブラが最も生き延びやすいのは、海岸から離れたゴア州内陸部で、森林の中、川や小川の近くにある地域だということがわかった。

 下の図は、この研究で判明したゴア州でのキングコブラの状況を示している。地図全体に塗られている色のグラデーションは、「キングコブラが生息しやすいとモデルが予測した確率」を示す。

紫~青に近い色:生息適性が高い
赤~オレンジ:中程度
黄色に近い色:生息適性が低い

 つまり、東側の内陸部にいくほどキングコブラにとって「住みやすい」、西側の海岸寄りほど「住みにくい」環境になっているのが見て取れる。

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image credit: Dikansh S. Parmar et al. Biotropica, 2026 CC BY 4.0

 白い線は道路で、黒い線は鉄道である。「○」は実際にキングコブラが確認・救助された地点であり、前述の47か所を示している。

 さらに「◆」はその中でも、キングコブラが駅構内や線路沿い、あるいは貨物や車両周辺で発見された5件の場所を示している。

 この図からわかるのは、「○」はコブラが「生息しやすいエリア」に集中しているが、「◆」はその外側のグレイの部分にあることだ。

近年、低価格のスマートフォンとSNSが世界的に普及したことで、インドでは列車の上やその周辺でヘビが見つかったという報告が増えています。

30日間のうちに3件が記録されており、さらに多くの事例がSNS上に現れています

コブラが列車で移動している可能性

 そこでパルマール氏らの研究チームは、気候変動が移動を強いているのではなく、別の要因が関わっているのではないかと推測した。

私たちの調査結果は、異なる、より受動的な仕組みを示唆しています。「鉄道」は単なる移動通路であるだけでなく、高速で運ばれる導管としても機能している可能性があります。

これは、しばしばヘビにとって障壁や重大な死亡要因として働くことの多い、「道路」の影響とは対照的です

 下の画像は、それぞれキングコブラが確認された線路の近くや駅周辺、そして列車内の写真である。どこもコブラの生存に適している場所ではない。

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image credit: Dikansh S. Parmar et al. Biotropica, 2026 CC BY 4.0

 パルマール氏の研究チームは、列車による移動ルートが、キングコブラだけでなく、ほかの脆弱な種にとっても、実態がほとんど把握されていない移動手段である可能性が高いと主張している。

 パルマール氏はこうした「受動的な移動」が、野生動物の保全と人の安全の両面で新たな課題を生んでいると指摘する。

 キングコブラが鉄道で移動する事例は、なにも南部のゴア州のみに発生しているわけではない。

 2019年には北部のウッタラーカンド州でも、列車内で体長約3mの個体が発見された事例がある。この時は無事に保護されて、森に帰ることができたそうだ。

コブラの長距離移動を防ぐ対策が必要

 列車によって生息に適さない場所に運ばれてしまった個体は、生存率が下がるだけでなく、人との接触が増えるため、事故や駆除につながるリスクも高くなる。

 人間にも危険性が及ぶが、コブラにとっても長距離移動はリスクが大きいのだ。

 対策としては鉄道の周辺施設での定期的な点検や、列車の隙間に生き物が入り込まないよう構造自体を見直すことが必要だ。

 鉄道や周辺施設の職員はもちろん、地域住民への周知の徹底や通報体制の整備も求められるだろう。

 さらに目撃が発生した地点や移動経路の記録を継続的に蓄積し、分布モデルに反映させていくことで、保護と安全管理の両立を図る必要があるという。

References: King cobras take the train in India / Onlinelibrary.wiley.com

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この記事へのコメント 13件

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  1. デニス・植野行雄「僕が小学生のときに、河原で縦笛の練習してたら、草むらからコブラが顕れたんですよ」」

    • -6
  2. ※1
    銀河系にとってみれば、人間の活動による恩恵など何一つないんです。 例えるなら、我々人類は銀河に浮かぶ・・・ ゴミです

    • +2
  3. サムネの旅するコブラ、なんかウキウキしてるように見える

    • +11
    1. 日本でも電車って割とヘビが乗ってるのニュースなるやん。 操車場や車両基地って郊外で敷地がデカくて人目が少なくて掃除に水よく使うしエンジンだとか温かいから小動物天国。でドア全開で掃除してたりするから。

       インドならさらにドア無い旅客電車もあるしコンテナという小動物が潜り込みやすいもの積んだ貨物列車も2段重ねで運行するくらいバンバン走ってるし、日本と違って鉱物資源豊富だから鉱山から工場まで鉱産物運ぶ屋根が無い貨車とかいっぱい走ってるし(日本でもバラスト運搬車で運ばれている動物達いると思うよ)。

      • +5
  4. たんぽぽの綿毛が風に乗って飛散するみたいに、コブラも環境の力で遠くに行く生存戦略かもしれない。風も電車も地球の一部…

    • +4
  5. キングコブラ「ここも住みづらくなってきたなあ・・・・・・せや! ニンゲンが使っている動く鉄の箱にのって別のとこに移住すればええんや!」

    • +4

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