この画像を大きなサイズで見るアメリカの広大な大地を走る高速道路。なんとその足元には、何千、何万本もの「古タイヤ」が埋まっている場所があるという。
年間数億本も排出される廃タイヤの処理は、アメリカにとって長年の頭痛の種だった。そこでエンジニアたちがひねり出した答えが、「道路の下に埋めてしまおう」という大胆な発想だ。
これはただの投棄ではない。そこには強度やコストを計算した工学的な理由があるのだ。
一方で、ネット上では「環境汚染にならないのか?」という鋭いツッコミも飛び交っている。 今回は、廃タイヤを利用したユニークな道路建設の裏側を見ていこう。
なぜアメリカでは道路の下に古タイヤを埋めるのか?
今回SNSで話題になっていた動画は、ナレーターの素朴な問いかけから始まる。
「なぜアメリカ人は高速道路の下に古いタイヤを埋めるのでしょうか?理由は単純です」。
動画のナレーションによれば、アメリカは長年、使用済みタイヤの扱いについて苦闘してきたという。
タイヤはゴムや鉄、化学物質の塊であり、自然界で簡単には分解されない。燃やせば有毒な煙が出て危険だし、埋立地に捨てれば、何十年も消えないゴミの山として残ってしまう。
この画像を大きなサイズで見るこの厄介者を解決するために、エンジニアたちは新しいアプローチを考案した。
それが、タイヤを丸ごとの形で再利用する方法だ。
動画には、道路の基礎部分(路盤)にタイヤをぎっしりと並べ、その空洞部分に砂利を充填していく様子が映し出されている。
タイヤをハニカム構造のように敷き詰めて土台にし、その上をアスファルトで覆うのだ。
完成した道路は一見するとごく普通の高速道路に見えるが、その実は、何千本もの古タイヤの上に成り立っているのである。
この画像を大きなサイズで見る強度が増し、建設コストも下がる一石二鳥のアイデア
ナレーションでは、なぜこの方法が優れているのか、その理由を次のように説明している。
第一の利点は、材料の大幅な削減だ。
タイヤという廃棄物を利用することで、通常なら採掘して運んでこなければならない新しい石や砂利などの建設資材を、ほぼ半分に減らすことができる。
第二の利点は強度だ。
タイヤはもともと丈夫で弾力性がある。これを土台に使うことで、上を走る自動車からの衝撃を吸収し、道路そのものを長持ちさせる効果があるという。
実際、この工法で作られた道路の中には、通常の道路に比べて約2倍の寿命を保つものもあるそうだ。
そして何より重要なのは、何百万本もの廃棄タイヤが、ただ捨てられるのではなく、資源として再利用されるということだ。
「ですから、次にアメリカの滑らかな高速道路をドライブしているとき、あなたの車のタイヤの下には、何千、何万という古いタイヤで作られた土台があるなんて、想像もしないかもしれません」と締めくくられている。
「土台」だけじゃない! 粉砕タイヤをアスファルトに混ぜる
動画のキャプション(説明文)には、動画で紹介された土台への利用とは別に、もう一つの重要な技術についても触れられている。
アメリカでは毎年2億5000万本以上もの廃タイヤが発生しているが、そのすべてが丸ごと埋められているわけではない。
多くはシュレッダーにかけられ、「クラムラバー(粉砕ゴム)」と呼ばれる細かい破片に加工されている。
これをアスファルトと混ぜ合わせることで、「ゴム入りアスファルト」という高機能な舗装材が作られるのだ。
つまり、土台には「丸ごと」、表面のアスファルトには「粉砕して混ぜ」、それぞれの特性に合わせて使い分けられているのである。
この混合材には多くのメリットがある。道路の不快な騒音を減らし、道路の強度を高め、ひび割れなどを防いで長期的なメンテナンス費用を安く済ませることができる。
すでにカリフォルニア州、アリゾナ州、フロリダ州などでは、高速道路や駐車場、さらには公園の遊び場にもこの方法が採用されているそうだ。
これは、古い材料を無駄にするのではなく何度でも活用する「循環利用(サーキュラー・ユース)」の考え方を体現していると言えるだろう。
この画像を大きなサイズで見るネット上の反応と環境への懸念
この動画は、工事や作業現場の様子を投稿しているInstagramのアカウント「Worldtradepro.com」に2025年11月22日に投稿されて以来、70万回以上再生され、多くのコメントが寄せられた。
紹介された2つの工法に対して議論が巻き起こっている。
動画にある「丸ごと埋める」様子を見たユーザーからは、環境への影響を心配する声が上がった。
あるユーザーは、「帯水層(地下水脈)にとっては最高だね」と、強烈な皮肉を書き込んだ。タイヤをそのまま土中に埋めれば、成分が溶け出し土壌に悪影響を与えるのではないかという懸念だ。
また、粉砕してアスファルトに混ぜる方法に関しても、「うーん、でも時間が経つと化学物質が地下水に染み出してくるんじゃないの?」という疑問の声が上がった。
「道路に利用するより、細かく破砕して新しいタイヤを作る材料にしたほうが良くないか?」という声も上がった。
さらに別のユーザーは、「オーストラリアでは、タイヤを細断してからアスファルトに混ぜているよ」と、自国では「粉砕して混ぜる」方が主流であると紹介している。
このように、ネット上では「リサイクルは素晴らしい」という称賛と共に、「そのまま埋めるのはどうなのか? もっと良い再利用法があるのでは?」という議論も交わされているようだ。
この画像を大きなサイズで見る日本の場合は?
ここで少し、日本の事情についても補足しておこう。
実は日本でも、アメリカの一部やオーストラリアと同様に、粉砕したタイヤをアスファルトに混ぜる技術が使われている。
北海道のような寒冷地では、アスファルトに弾力のあるゴム粒子を混ぜることで、冬のひび割れを防いだり、たわみを利用して路面の氷を割ったりする特殊な舗装として実用化されているのだ。
一方で、アメリカの動画にあったような「タイヤをそのまま大量に道路の下に埋める」という光景は、日本ではまず見られない。
なぜなら、国土が狭い日本では、廃タイヤの9割以上がリサイクルされているものの、その大半はセメント工場や製紙工場で「燃料」として燃やされる「熱回収(サーマルリサイクル)」に使われているからだ。
広大な土地があり、埋める場所には困らないがタイヤの処分に困るアメリカと、資源として極限までエネルギー回収を行う日本。同じ廃タイヤでも、国が変わればその「第二の人生」も大きく異なるのである。
















これは信じていいことだ
他の材料と混ぜて使えたとしてもその製品や道路の寿命が来た時はどうするんだろ?
分別しにくくなるし処分の先延ばしにしか思えないけど
アスファルトだけだったら時間が経っても化学物質が地下水に染み出したりはしないってこと?
これがリタイヤというやつですか
Confined Aggregate Concreteと呼ばれる2016年に発明された方法で、固定したタイヤとタイヤ同士の隙間に砕石を詰め込む事で、通過する車両の重みで潰れて砕石が徐々に横方向へと拡がってしまうのをタイヤにより物理的に防ぎ、結果として道路が陥没しにくくなるという事らしい。
この技法なら畦道のような狭い道でもタイヤがもつ限りは舗装が維持されるんじゃないかな。
ロックマンの敵ステージかよ
EPS工法も驚きそうだな
自動車であれスケボーであれ靴底であれ、ゴムっぽい合成素材を履いて移動すること自体がみんなで大量にマイクロプラスチックその他の粉塵を生産する行為だから、道路そのものに混ぜられたタイヤの成分が上側の空気中へ舞っても同様の「大きくて中長期的な課題」と思えるんだけれど、しかしアスファルト内部であらかじめ粉々にされたり朽ちていくものから「土中へ染み出ているっ!」ってことになると急にイメージが悪い感じがする