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3000年前のマヤ文明最大最古の建造物には宇宙の仕組みが表されていた

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(著)

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Image credit: Takeshi Inomata
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 メキシコ南東部タバスコ州で発見された約3000年前の「アグアダ・フェニックス」遺跡には、マヤ文明最大にして最古の建造物が眠っていた。

 アリゾナ大学の考古学者、猪俣健教授が率いる国際研究チームの最新調査によれば、この遺構は、太陽の動きや時間の流れをもとに設計され、宇宙の仕組みを地上に表していた可能性があるという。

 人々は宇宙と社会の調和を地上に映し出し、何千人もの市民が協力してその姿を築き上げたと考えられている。

 マヤ文明が芽吹く前の世界観と人間の知恵を今に伝える、壮大な遺構である。

 この研究成果は『Science Advances』誌(2025年11月5日付)に発表された。

森に眠っていた巨大建造物

 アグアダ・フェニックス遺跡は、LiDAR(ライダー)技術を搭載したドローンによるリモートセンシング調査によって2020年に発見された。

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マヤ文明最大最古の十字型の遺構が発見された場所 Image credit: Takeshi Inomata

 長い年月、森林と平原の下に埋もれていたこの遺跡は、紀元前1050年ごろに築かれ、約300年間にわたり使用されていた。

 遺跡の中心には長方形の巨大な台座(基壇)があり、南北と東西に延びる2本の大通りが交差する位置に築かれている。

 その中央には階段状に掘られた十字形の遺構があり、内部には翡翠(ひすい)の装飾品などの儀式用遺物が収められていた。

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十字形の遺構の中におさめられた翡翠の装飾品 Image credit: Takeshi Inomata

 この十字形の構造は、マヤの人々が宇宙を「四方の方向と中央」でとらえていたことを象徴しており、宇宙の秩序を再現した模型のような意味を持っていたと考えられている。

 この遺跡は、これまでに確認されている中でマヤ文明圏最古かつ最大の建築遺構とされており、その規模は後の都市遺跡をも上回る。

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メキシコのアグアダ・フェニックス遺跡で発見された十字形の遺構 Image credit: Takeshi Inomata

太陽の動きと暦が導いた宇宙の仕組み

 構造物の東西軸は、現在の暦で10月17日と2月24日の朝日が昇る方向と一致している。研究チームは、これが後のマヤ暦における重要な祭祀日と関係している可能性があるとみている。

 アリゾナ大学の考古学者、猪俣健教授は「当時の人々は宇宙が南北・東西の軸に従って秩序づけられていると考えていた。太陽の動きと時間の流れは結びついていた」と説明する。

 この設計思想は、後にマヤやアステカで重要視される260日周期の儀式暦へと受け継がれていく。アグアダ・フェニックスはまさに「宇宙と時間を結びつけた最初の建築」だったのかもしれない。

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異なる方向を表すために、異なる顔料が使用されていた Image credit: Takeshi Inomata

強制ではなく市民の協力で造られた

 この遺跡の台座は全体で約360万立方mの土で構成されており、19万立方mにおよぶ水路や池が張り巡らされている。しかし、水の貯蔵や灌漑といった実用目的で使われた形跡はない。

 研究チームは、建設には1000人以上が動員され、数年にわたり毎年数か月ずつ作業を行ったと推定している。

 興味深いことに、この遺跡では支配者の像や階級を示す遺構がまったく見つかっていない。

 猪俣教授は「人々は宗教的儀式や共同体の活動として自発的に建設に参加した」と語り、強制労働で築かれたエジプトのピラミッドとは異なる点を強調している。

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発見された翡翠の装飾品 出産する女性が描かれている可能性があるという Image credit: Takeshi Inomata

文明誕生前の社会が描いた「宇宙の秩序」

 研究チームの分析によると、アグアダ・フェニックスの全体構造は南北約9km、東西約7.5kmにも及び、ティカルやテオティワカンといった後世のメソアメリカの都市をしのぐ規模を誇る。

 石造ピラミッドは存在せず、土で築かれた巨大な台座が中心となっている点も特徴だ。

 この壮大な建造物には、誕生直後のマヤ文明社会がいかに宇宙と調和し、時間と空間の秩序を信仰の中に取り込んでいたかが刻まれている。

 アグアダ・フェニックスは、権力や階級ではなく、信念と協力によって築かれた「人類最初の宇宙の都市」ともいえる存在である。

References: Science / Massive 3,000-year-old Maya site in Mexico depicts the cosmos and the 'order of the universe,' study claims / The largest known Maya monument was built as a cosmogram — the first and oldest large-scale representation of the order of the universe

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この記事へのコメント 11件

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  1. 最後の翡翠のやつ、良く割らずにこんな溝掘れたな。
    何百個と失敗した上での生き残りやろか?

    • +12
    1. 穴を開けて、砂と糸で糸ノコみたいにして切っていきます。

      • +2
  2. この構造物なんだろうと思ったら他を調べながら夏至冬至春分秋分の日を待ったりするのかな

    • +4
    1. それはそれで微笑ましいけど、測量すればわかります
      あと作られた時代によっては”地軸の傾き”が今とは違うことがあるので
      待ってもズレていることがあったりします

      • +5
  3. 翡翠のチャーム、デフォルメのヒト型になってるんだね

    • +2
  4. 日本の多くの都市は古代から現代に至るまで、山岳や河川の制約を受けて設計される。
    一方でアグアダ・フェニックスの地形は広い平野で、現代では東西南北とほぼ平行に道路が走っている。
    おそらく古代において都市設計の際には、天体の位置が一番基準として使いやすかったのではないだろうか。
    その結果、宇宙の動きそのものが影絵のように都市の形に「転写」されたのでは。

    しかし南北約9km、東西約7.5kmに及ぶ都市がそれほど統一された規格で作られているというのは恐れ入る。
    これは面積に換算すると67.5平方kmで、東京都で言えば大田区や世田谷区がスッポリと入る。
    グーグルマップで建築物の区割りを見てみると、東京の混沌さにめまいを覚える。

    • +8
    1. 国家権力によって1からそのために築かれた都市と、
      東京ならば本格的開発が始まってから400年間拡張され続けた都市
      それを比較して何の意味があるかさっぱりわからない
      都市開発も”シムシティ”や”シティーズスカイライン”みたいに簡単に壊して建て直せて
      住民の文句も出なければ楽でいいのにね

      • +2
  5. なぜこの地にこうした高度な都市が築かれたのか。
    おそらく、南北アメリカを結ぶこの陸橋は、交易の要、
    物流の要衝として機能したからではないか。
    東西南北の方向が重要になったのも、交易と文化の中央であった中国中原で同様の思想が発展したのを彷彿とさせる。
    この都市は、アメリカ大陸が現在わかっている以上に複雑な社会だった可能性を示唆していると思う。

    • +6
  6. ・エジプトのピラミッドの配置は、宇宙の星の位置、特にオリオン座の三つ星(オリオンベルト)と対応していると考えられています。
    ・ピラミッドの配置や天文学的な知識は、古代エジプトの農業暦の観測・管理にも活用されており、季節の変化を正確に捉えるための重要な要素だったと言えます。
    ・ナイル川の氾濫時期や農業のタイミングを把握していたと考えられています。

    • +1
  7. 権力や階級によらないパラダイスみてえな人類最初の宇宙都市を作りてえ

    • +3
  8. 未だにエジプトのピラミッドが強制労働で建造されたと認識してる考古学者はほとんど居ないでしょうし、下の文も猪俣教授が言ったのではなく、記事として勝手に付け加えたものでしかない事に注意が必要です。

    猪俣教授は「人々は宗教的儀式や共同体の活動として自発的に建設に参加した」と語り、強制労働で築かれたエジプトのピラミッドとは異なる点を強調している。

    • +5

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