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衣服からAIを操作 静電気を利用した音声センサー機能を持つ布地が登場

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(著)

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Credit: Science Advances (2025). DOI: 10.1126/sciadv.adx3348
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 着ている服に話しかけるだけで、AIチャットボットやスマート家電を操作できる未来がすぐそこまでやってきている。

 中国やシンガポールなどの研究機関からなる国際チームが開発したのは、音声センサー機能を備えた特殊な布地だ。これを衣類に縫い付けるだけで、AIとの対話や家電の操作ができるようになる。

 この技術は、静電気の原理を応用して人の声を感知し、それを電気信号に変換する仕組みを持っている。

 日常的に身につけている衣服そのものが、いつでもどこでもAIとつながることができる音声入力装置に変わるのだ。

 この研究成果は『Science Advances』誌(2025年10月8日付)に掲載された。

静電気の力で音声を検知する仕組み

 中国・東華大学、シンガポール国立大学などが参加した国際研究チームが開発した新たな布素材「A-Textile」は、摩擦帯電(triboelectric effect)呼ばれる、静電気の発生原理を利用している。

 摩擦帯電とは、2つの異なる物質をこすり合わせた後に分離した際に、一方が正に、もう一方が負に帯電する現象のことである。

 これは物質間の電子の移動によって起こり、素材の種類や表面の状態、温度などさまざまな要因で帯電の度合いが変化する。

 身近な例としては、下敷きで髪をこすって髪が逆立つ、滑り台を滑ったあとに人に触れて静電気が走る、などがある。

 「A-Textile」は、この摩擦帯電現象を応用し、複数の層が擦れ合うことで微弱な電荷を発生させる構造を持っている。

 人が話すと、声の音波が布にわずかな振動を与え、静電気の状態が変化する。これを検出することで、声を電気信号として取り出すことができるのだ。

 さらに研究チームは、たナノ粒子を布に埋め込み、電荷が空気中に逃げないよう工夫を加えた。その結果、AIが音声として認識できるほど、明瞭な信号が得られるようになった。

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左)開発された「A-Textile」の実物写真。サイズは直径約3.3π cm(約10.4 cm)×3.3 cm。スケールバー:2 cm 右)
柔軟性を示すために折り曲げられた「A-Textile」。スケールバー:2 cm Credit: Science Advances (2025). DOI: 10.1126/sciadv.adx3348

既存の衣服に縫い付けるだけで音声センサー代わりに

 「A-Textile」の利点は、柔らかくて薄く、非常に軽量なため、一般的な衣類に簡単に取り付けられる点にある。

 特別な服を用意する必要はなく、既存のシャツやコートの襟元、袖口などに縫い付けるだけでよい。

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「A-Textile」は7.59gと非常に軽量だ Credit: Science Advances (2025). DOI: 10.1126/sciadv.adx3348

 布が感知した音声は、無線でスマートフォンやコンピュータに送られる。そこで活躍するのが、音声のパターンを解析して命令を判別するAIの認識システムだ。

 この認識システムには、「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれるAI技術が用いられている。

 ディープラーニングとは、人間の脳の神経回路を模した「多層ニューラルネットワーク(複数の層からなる人工的な神経回路)」を使い、大量のデータから複雑なパターンやルールを自動的に学習する手法である。

 現在では、音声認識や画像認識、自然言語処理など多くの分野で活用され、自動運転車や音声アシスタントの実現にも貢献している。

 このAI技術により、布地が拾った声をもとに、AIや家電への操作指示が正しく理解され、ChatGPTのようなAIチャットボットに話しかけたり、スマート家電を操作したりすることが可能になる。

 まるでマイクのように機能するこの布地は、装着した衣服そのものを、音声入力装置に変えてくれるのだ。

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Credit: Science Advances (2025). DOI: 10.1126/sciadv.adx3348

騒がしい環境でも高精度で音声を認識

 実験では、試作された布素材が最大で21ボルトの電圧を出力することが確認された。また、騒音の多い環境でも、音声コマンドの認識精度は97.5%という非常に高い数値を記録した。

 このシステムを使えば、照明のオン・オフといったスマート家電の操作だけでなく、ChatGPTのようなAIとのやり取りも可能になる。

 実際、実験ではAIに声で質問を投げかけて返答を受けるといったやりとりが行われたという。

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Credit: Science Advances (2025). DOI: 10.1126/sciadv.adx3348

 研究チームは今後、医療や福祉、スポーツ、日常生活支援など、さまざまな分野での応用が期待できるとしている。

 違和感なくAIとつながれる衣服は、まさに近未来がすぐそこにやってきていることを予感させてくれる。

References: Science / How a fabric patch uses static electricity in your clothes to let you chat with AI and control smart devices

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この記事へのコメント 14件

コメントを書く

  1. このサイズと形状でなくていいならシャツの襟元に縫い付けたいかな。
    いちいち手を口元に持ってくるのも面倒だし。

    でも問題は衣服である以上洗濯しなきゃならんことだが防水とか乾燥とか耐えられるのか。
    毎日同じ服着る訳にもいかないから最低でも5着~10着は無いとたまに特別な服の時だけしか使えないってなっちゃう。

    • +4
  2. 空調服かと思った
    ってか、空調服の電装プラットフォーム使えば汎用としての利用が可能だろうな

    • +3
  3. こういったセンサーは手の甲に埋めるタイプ、頭皮に張り付けるタイプ、ベルトに装着するタイプなどが既に存在しており、衣類につけるタイプは選択肢となるだけで目新しさとしてはいまいちですな

    • 評価
  4. 機械が乗っ取って反乱してくると思ってるので、こういうのはとても嫌。
    人間も不信だが機械も信用ならない。

    • -4
  5. 服に言動を監視される時代だぁ、もうフィンランドみたいにサウナで密談するしかねぇ

    • 評価
  6. 摩擦による静電気で発電するだけでなく
    音声レベルの振動も検出できるってことかな
    電波にするには別に電気回路が必要だけど
    ICチップは砂粒サイズで商品タグに組み込まれたりしているからね

    • 評価
  7. なんだ音声認識なのか
    シュバッ シュバッと袖振ったときの音で操作するのかと思った

    • 評価

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