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食べられるマイクロレーザーが登場!食品や薬の品質を光で見分ける未来の技術

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(著)

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 スロベニアとギリシャの研究チームが、すべて食用素材だけで構成された“食べられるレーザー”の開発に成功した。

 このマイクロ(極小)サイズのレーザーは、オリーブオイルやヒマワリ油などから作られた液滴(えきてき)を利用しており、食品や医薬品に混ぜることで、糖分濃度や酸性度、微生物の増殖といった状態を高精度に検知することができる。

 また、液滴のサイズを工夫すれば意味を持たせることもでき、製造日などの情報を食品に埋め込めば「食べられるバーコード」としての応用も可能になるという。

 安全性が高く、食品ロス削減にも貢献する新しいモニタリング技術として注目を集めている。

 この研究は『Advanced Optical Materials』誌(2025年6月3日付)に掲載された。

食べられるマイクロレーザーとは?

 レーザー(laser)とは、本来は英語の Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation の頭字語で、日本語では”誘導放出による光増幅放射”を意味する。

 その過程で得られるレーザーの光は、光子(こうし:光の最小単位で「光の粒」とも呼ばれる)が、同じエネルギーとタイミングでそろって放たれることで、単一かつ位相がきれいにそろった波長の光の集合となる。

 そのため他の光に比べて広がりにくく、一定方向に向かって遠くまで直線的に届く性質から、一点に集めてエネルギー密度を高めることも容易という利点がある。

 なお現在レーザーといえば、ときにはレーザ光が略されレーザーと呼ばれる場合もあるが、基本的にはレーザー光を出す技術を組み込んだ装置や仕組みを指す。

 このレーザーを作るには、一般的にアルミニウムやガリウム、ヒ素などの無機化合物が必要である。しかし、これらは体内に取り込むことができず、食品や医薬品への応用には適さない。

 そこで研究チームは、「体に入れても安全な材料」でレーザーを作るという新たな挑戦に乗り出した。その成果が「食べられるマイクロレーザー」である。

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image credit:Pixabay

食用油の液滴がレーザーになる仕組み

 研究では、オリーブオイルやヒマワリ油などの食用油を、数十マイクロメートル(1マイクロメートル=1000分の1ミリ)ほどの微小な液滴(えきてき)に加工して使用した。

 液滴とは、液体が表面張力によって球状またはそれに近い形にまとまったものである。そのサイズや形状は、表面張力、重力、液体の粘性、周囲の環境などによって変化する。

 この液滴に紫色の光を当てると、油に含まれるクロロフィル(植物の葉緑素の一種)が光エネルギーを吸収し、電子が励起状態(れいきじょうたい。高エネルギー状態)になる。

 その後、電子がもとの状態に戻るときに光子が放出される。この過程が液滴内で連鎖的に発生し、光が増幅されていく。

 さらに液滴内では光が何度も反射して閉じ込められるため、結果として従来のレーザー光と同様のまとまった強い光が生まれるのである。

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水の中に浮かんだオリーブオイルの小さな液滴に青いレーザー光を当てたところ、液滴の内部で光がぐるぐる反射してレーザーのような強い光が出ている様子  / Image credit:Abdur Rehman Anwar, Maruša Mur, Matjaž Humar

食品や薬の状態を食用レーザーで検査できる

 液滴から発せられるレーザー光の性質は、液滴のサイズや密度、使用する材料の組成によって微妙に変化する。

 この性質を利用することで、食品や医薬品の状態をレーザー光の波長や強度から読み取ることが可能になる。

 研究では、以下のような情報を高い精度で検出できることが確認された。

  • 糖分の濃度
  • 酸性度(pH値)
  • 加熱履歴(高温にさらされたかどうか)
  • 微生物の増殖状況

 これまでこれらの情報を調べるには、専用機器と人手を必要とする分析作業が欠かせなかった。

 しかし、食べられるマイクロレーザーを活用すれば、より簡便で安全な方法でリアルタイムに品質を管理することが可能となる。

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研究チームは、さまざまな食用素材を使って非常に小さなレーザー(マイクロレーザー)を作ることに成功した。光を内側で反射させて増幅する2つの仕組みを用いたレーザーが作られ、それぞれが食品や薬に混ぜて使える。これらは食品や医薬品に情報を記録したり、状態を検知したりする目的で利用されており、偽装防止や健康リスクの低減に役立つと期待されている。  / Image credit: Abdur Rehman Anwar

食べられるバーコードで製造日や産地を記録

 研究チームはさらに、液滴のサイズを調整して、それぞれに特定の意味を持たせ、情報を埋め込む実験も行った。

 たとえば直径の異なる7種類のヒマワリ油の液滴を特定の順番で配置することで、レーザー光にパターンを持たせ、製造日や原産地などの情報を埋め込むことができる。

 この「食べられるバーコード」は、食品そのものに直接埋め込むことができ、ラベルや印刷物に頼らず情報を記録・読み取り可能である。

 実験では、保存食である桃のコンポートにバーコードを埋め込んだ例があり、1年以上経っても光学的に安定して情報を読み取ることができたという。

 この技術が実用化されれば、偽装防止、サプライチェーンの透明化、食品ロス削減といった課題への新たな解決策として期待される。

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桃のコンポートが入ったガラス瓶に埋め込まれた「食べられるバーコード」から、情報を読み取る実験のようす。 / Image credit: Abdur Rehman Anwar

References: Onlinelibrary.wiley.com / These tiny lasers are completely edible / Edible microlasers made from food-safe materials can serve as barcodes and biosensors

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この記事へのコメント 5件

コメントを書く

  1. ん、んー?
    読んだ感じだとレーザー(波長の揃った光子ビーム)そのものが食べられるというよりもレーザーを発振するためのレーザー媒質についての話じゃないかしら
    液滴内の光励起が起きている辺り励起源も兼ねているのかな、いずれにせよ応用の幅が広そうな技術でイイね

    • +4
  2. こりゃ凄い。皮膚や毛の代謝に耐えられる構造や仕組みを利用すれば、家畜の管理や産地証明、野生動物の追跡に応用できそう。

    • +7
  3. 専用の読み取り装置が必要かな
    スマホにレーザーポインターを組み合わせれば何とかなるか
    食べられることもだけど、目立たないのもよい
    肉に目に見えるバーコードなんていやだよね

    • 評価
  4. 思ったレーザーと違った
    俺の知ってるのは沖縄で屋根の上にのってるやつ

    • -1

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