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ニューヨークのネズミが、人間には聞こえない超音波で独自の言語を使いはじめた

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(著)

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 都会に住むネズミたちは日々進化している。実際には「チューチュー」というよりも、「キューッ、キューッ」といった鳴き声を発するが、それとは別に、人間には聞こえない超音波で、独自の言語で会話し始めたというのだ。

 アメリカの研究チームによれば、ニューヨークに住むネズミたちは、社会的な役割分担を持ち、まるで都市の住人のように超音波でコミュニケーションをとり、情報を共有しながら生活しているらしい。

 相手を見て声のトーンを変え、演技までするというから、これはもう「ネズミ語」と言っていいのかもしれない。

人間には聞こえない高周波で会話する都会のネズミたち

 ニューヨーク州ニューヨーク市に拠点を置く研究機関、ベイシス・リサーチ・インスティテュート(Basis Research Institute)の研究チームは、市内の公園、歩道、地下鉄駅などで、ネズミたちの動きと音を詳細に記録した。

 すると、人間の耳には聞こえない超音波域(20kHz以上)で、ネズミたちが活発に「会話」している様子が確認された。

 この超音波は、イルカやコウモリがエコーロケーション(反響定位)に使うものと同じ周波数帯にあたる。

 エコーロケーションとは、物の位置や形、大きさなどを把握する能力のことで、仲間とのコミュニケーションにも用いられる。

 だがネズミの場合、物との距離や大きさを測ることには使用せず、あくまで仲間とのコミュニケーションだけのために使っていると考えられている。

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救急車の音を上回るほどの強い超音波で会話

 研究チームを率いる神経科学者のエミリー・マケヴィシャス博士は、録音データのスペクトログラム(音声の周波数成分が時間と共にどのように変化するかを視覚化したグラフ)を分析し、こう語った。

「救急車が通り過ぎている間、スペクトログラムを見ていたら、ネズミが発していた超音波の方が救急車の音よりも強く表示されていたんです」

 つまりネズミたちは、人間にはまったく聞こえない周波数帯でありながら、実際には救急車のサイレンを上回るほどの音量でコミュニケーションをとっていることがわかったのだ。

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都市環境に適応し、進化をつづけたネズミ

 観察の対象となったのは「ドブネズミ(Rattus norvegicus)」という種だ。1700年代にニューヨークへ進出し、当時住み着いていたクマネズミ(Black rat)を駆逐し、以来、500世代以上をかけて都市環境に適応し続けてきた。

 その進化は見た目だけでなく、行動にも現れている。頭の形が変わり、脳が発達し、大都市の複雑な構造と危険を乗り越えるための高度な判断力を身につけた。

 研究チームの観察では、若いネズミたちは経験を積むために群れで動き回り、年配の経験豊富な個体は単独行動が多かったという。

 ピザの耳を引きずることで有名になった「ピザラット(Pizza Rat)」のように、彼らは食料を探すプロフェッショナルでもあるのだ。

声を使い分け、演技もこなす?

  研究チームによれば、ネズミたちは状況に応じて発する超音波のパターンを変えており、相手や状況に応じて声のトーンを使い分けている可能性があるという。

 まるで会話の内容や相手の反応に合わせて声色を変えるような、高度なやりとりだ。

 観察の中には、通過した電車などに驚いた後、バタリと倒れて動きを完全に静止し、しばらくして立ち上がる個体の様子が複数記録されている。

 それは恐怖で固まっていた感じではなく、まるで何者かの視線を感じて「死んだふり」の演技をしていたかのように見えたという。

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ネズミについて語りたがるニューヨーカーたち

 この調査で予想外に面白かったのは、ネズミそのものだけではなかった。調査中、通りかかったニューヨーカーたちに何度も話しかけられたそうだ。

 彼らがネズミを研究中だということがわかると、「自称ネズミの達人」として、「ネズミが見たいならあそこに行け」「やつらは猫くらいでかい」「鉄もかじるんだぜ」と、経験談をとくとくと語りはじめるという。

 マケヴィシャス博士も、「この街には研究者以外にもネズミの専門家があちこちにいる」と苦笑まじりに語っている。

 ネズミの進化だけでなく、それを語る市民たちの熱量までが、ニューヨークという街の一面を物語っている。

 実際にネズミが多いことで世界的に有名となったニューヨークではネズミの出没状況がわかる「地下鉄マップ」が登場したり、「ネズミツアー」なるものも開催されているわけだしね。

この研究成果のプレプリントは『bioRxiv』誌(2025年7月24日付)に発表された。

References: New York City’s Rats Have a Secret Nightlife—And a Language Humans Can’t Hear / Biorxiv

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この記事へのコメント 23件

コメントを書く

  1. 日本ではカラス。ニューヨークはネズミか…。

    • +8
  2.  む……もしかしなくても、カメラとマイク併用で AI 解析すればチューリンガル(ホンモノ)が作れそう。 ってか、今ならワウリンガル 2.0 もいけるか? 言語解析できればネズミの方言とか種による多言語解析とか……妄想ひろがるなぁwww

    • +9
  3. 渋谷のネズミも、ニューヨークに負けてはいられないな。
    先週、円山組のネズミと道玄組のネズミの間で抗争があったばかりだが
    まだまだ新宿のネズミの方が、勢力は強いらしい。

    • +10
  4. 名古屋で24時間の交通量調査のバイト
    したことあるが、夜中に植え込みから
    なにかがぴょんぴょん飛び出してくる。
    子猫位の大きさのネズミでした。
    町は天敵いないからネズミ天国やね。

    • +7
  5. >実際にネズミが多いことで世界的に有名となったニューヨークではネズミの出没状況がわかる「地下鉄マップ」が登場したり、「ネズミツアー」なるものも開催されているわけだしね。

     自分の住む地域の生物について、外部情報だけを鵜呑みにしないでこの目で確かめる姿勢ってのは大事な事だと思うけどね。

     活動資金が欲しい自然保護団体の言う事を鵜呑みにして「自然は無くなった」「クマは絶滅危惧」としてクマを知ろうとしなかった罪のツケを払わされる事になったら「全滅させろ」とツケの踏み倒しにかかる。
     「自分の目で確かめない」無関心は取り返しがつかない事態になるまで気が付かないなんて別にクマや動物や自然だけの問題じゃ無いのに、それに気が付けない程 「自分が周囲に興味が無いと気が付かないくらい現実に興味が無い」そんな人が増えた。

    • -7
  6. ひょっとして子供のころにしか聞こえないという
    「妖精さんの話声」はねずみが出してるモスキート音か?

    • +23
  7. ペット用のファンシーラットもこまめなコミュニケーション取らないと鬱になるって飼ってる知り合いが言ってたから元々コミュ力高い生き物なのかもね。

    • +17
  8. 人間が絶滅すれば自然とネズミもいなくなる

    • -5
    1. 正直そうなったらネズミさんに代わりに繫栄してもらいたいw

      • +4
      1. 遠い将来ネズミが人間のような知的生命に進化したら
        人間はどう語られることになるんだろうな

        • 評価
  9. ミッキーマウス発祥の地だけあってネズミ専門家がいっぱいなんだな

    • +3
  10. 猫のサイレントニャーも
    人間の可聴域外の声を出してるんだったよな

    • +1
  11. いつまで笑っていられるだろうな?
    人間を滅ぼすのはコイツらかもしれないのに。

    • -2
  12. AIで言語を解析して、人間と意思疎通できるようになる時代がいつか来るんだろうか?

    • 評価
    1. (超音波の声※救急車のサイレンよりも大きい)

      • +1
  13. 救急車より大きな音で鳴いてるとは知らなかった
    ちょっと理解を超えてる世界だ

    • +1
  14. 人間の知らないところでネズミたちが「おい、あの人間またフラれてるぜ 全く見ちゃいられねーぜ」なんて会話してるんだろうか

    • +1
  15. 都市生活者の言語、チーム内言語ですかね…
    ネズミ総大会に呼ばれてった弱小チームがホームに帰り着くまでに「おめえこの言語しってっか!?」ってよそ者扱いされて逃げ回るんですねちゅー

    • +2
  16. そういえばネズミ対策として、超音波を出してネズミを寄せ付けない機械が売ってるな。

    • 評価

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