メインコンテンツにスキップ

北極の冬に異変、スヴァールバル諸島で凍った地面が大規模に融け出す

記事の本文にスキップ

21件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
image credit:unsplash
Advertisement

 北極圏の真冬に、雨が降り、積雪が消え、凍った地面が大規模に融けるという異常な現象が起きている。

 これは、イギリス、フランス、イタリアの国際研究チームが、2025年2月にノルウェー領スヴァールバル諸島での調査で確認したものだ。

 そこでの出来事は、北極の冬で起きている急激な気候変動がもはや「例外」ではなく、「新たな常態」となりつつあることを示している。

 今スヴァールバル諸島では、気温の上昇速度が世界平均の6~7倍に達しており、冬に限って言えば、その倍近いペースで温暖化が進行しているという。

 この報告記事は『Nature Communications』(2025年7月21日付)に掲載された。

北極圏で目の当たりにした“冬の崩壊”

 2025年2月、北極海に浮かぶスヴァールバル諸島で行われた現地調査の期間中、英国ロンドン大学クイーン・メアリー校のジェームズ・ブラッドリー博士らをはじめとする、フランスのエクス=マルセイユ大学、イタリアのナポリ大学の研究チームは、驚くべき光景を目撃した。

 これまで凍てつく冬が当たり前だったこの地において、異常な暖かさによって広範囲にわたり雪が消え、植物が開花していたのだ。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:unsplash

 スヴァールバル諸島では、地球全体の平均の6~7倍の速さで気候変動が進んでおり、特に冬の気温上昇は年間平均のほぼ2倍にも達している。

 こうした暖冬は北極ではもはや当たり前のことで、北極の冬は凍っているという従来の常識が覆されつつあるという。

 「氷河の先端にある水たまりや、むき出しの緑に覆われたツンドラの上に立てるのは、衝撃的で、現実とは思えませんでした」(ブラッドリー博士)

 研究チームが寒さから身を守るため持参した厚手の防寒具も、あまりの暖かさにもはや必要なく、作業も素手で行われたほどだ。

 しかも研究チームが当初調べるつもりでいた真新しい雪が、冬だというのにほとんど降らないという予想外の事態も発生した。

今回の調査の目的は、新たに降り積もった雪のサンプリングでした。にもかかわらず、2週間の滞在中、新雪を採取できたのはたったの1回。

雪の代わりに雨ばかりが降ったからです(ロンドン大学クイーン・メアリー校・ロンドン自然史博物館 ラウラ・モラレス・モンカヨ氏)

 このような現地での体験は、北極の温暖化についての従来の予測をただ裏づけるだけでなく、それによる変化が驚くべき速さで進んでいる現実を浮き彫りにしている。

この画像を大きなサイズで見る
Photo by:iStock

気候変動がもたらす“雪のない冬”の脅威

 この異常な状況は、北極圏の環境や生態系・社会に甚大な影響を及ぼすのはもちろん、今後の研究調査の継続すら危うくさせる。

 たとえば冬における気温の上昇は、北極の野生動物たちの生存から生態系や微生物による炭素循環まで、あらゆることを崩壊させる。

 しかもそれは永久凍土の融解・微生物による炭素分解・温室効果ガスの放出といった連鎖的な反応を引き起こす恐れがある。

 氷が溶けてできた水によって一時的に巨大な湖が形成されれば、より多くの地面が露出し、微生物や植物が急速に活動を開始するようになる。

 さらに北極の先住民コミュニティが直面するインフラ・交通・緊急対応の面でのリスクも一層深刻になると考えられる。

 また今回の予期せぬ暖冬によって、雪が薄くシャーベット状になったため、スノーモービルが使えないなど、今後これまで通りに調査を行えるのかどうかすら懸念される事態となっている。

 万が一、ホッキョクグマと遭遇したら、どうやって安全な場所まで避難すればいいというのか?

この画像を大きなサイズで見る
image credit:unsplash

気候政策が現実に追いついていない

 こうした実体験をもとに、研究チームは、従来の気候政策はこの現実に追いついていないと警鐘を鳴らし、即時の行動が必要であると主張する。

気候政策は、北極が予想以上のスピードで変化しているという現実に追いつかねばなりません。そして、その変化の中心にあるのが“冬”なのです(ブラッドリー博士)

 科学者たちは、特に冬季の観測体制を強化し、一体何が起きているのか解明することが大切だと述べる。

 基準を作り、将来の影響がどのようになるのか予測するには、急激に変化する状況を理解していなくてはならないからだ。

 何より研究チームは、これまで後手に回り続けてきた気候政策を、予測に基づいて先手を取るやり方にシフトさせねばならないと強く訴える。

 予測が現実になってからでは、遅すぎるのだ。

References: Nature / Arctic winter reaches melting point: Scientists witness dramatic thaw in Svalbard

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 21件

コメントを書く

  1. 夏に長袖来て鍋パーティー開いたり、冬に半袖でアイスをかぶりつく生活を
    送ってりゃさすがに地球環境にいいわけがねえ
    だからといって、昔ながらの生活を送れというと普通は無理
    結局人類全員地球消滅するまで今の生活を捨てきれないよ

    • +21
  2. この気候変動はたしかに不安になるがそれはそれとして
    何百年か何千年ぶりかしらんけど
    待ってましたとばかりに咲く草花のたくましさに戦慄するわ

    • +23
    1. いやさすがに夏は普通に繁殖してるでしょ。
      問題はこれが2月だということ、そして変化は地球全体で均一ではなく局所的に激しいこと。そして反射材である雪の消失で温暖化はより加速していくこと。

      • +14
  3. きっかけが何かわからない以上は人類が悪いとは言えないし、単に間氷期が終わって暖期に突入しただけな気がするんだよな。

    そりゃ、間氷期に反映した生物群からしてみれば大問題なんだけど46億歳の地球さんからしてみればサウナに入りたくなった位の感覚なんじゃねえかなぁ……。

    • -10
    1. 間氷期から暖期へは数万年のスパンでゆるやかに移行していくのであって、
      現在起きているような急激な移行は明らかに自然のサイクルではない。

      • +11
  4. 地球は恐竜が絶滅した頃は今より温暖だったが、その後、現在も続く氷期に突入。
    氷期には、少しだけ気温が上がる間氷期が4〜10万年周期で挟まる。
    今はその間氷期にあたり、次に間氷期が終わって氷期に戻るのは5万年後。

    リンクがうまく貼れずすみませんが、「間氷期 今」などで検索すると出てきます。

    人類、もってあと何年かなあ…
    エアコンはなるべく我慢してるけど、車に乗らないわけにはいかないし…

    • -10
    1. こういうことを言う人は、気温変化の理由ってあまり気にしないんだよね
      とりあえず信じたい数値だけを見て「こうなんだ!」って思い込むことで終わる。原因は考えない
      例えば恐竜時代は大陸の位置によって温暖化しやすい大陸配置だった
      現在の大陸配置はどちらか言うと寒冷化しやすい大陸配置なのに温度が上がっている異常事態とかね

      • +15
  5. 世界中の科学者や研究者が壊滅的な温暖化を警告してるのに、いまだに間氷期が終わっただの、一時的な温暖化、温暖化詐欺だとか言ってるのを見ると正常性バイアスって怖いわー。レッドラインはもう超えるから後は100年以内に文明荒廃と大量絶滅が待ってる。また数万年かけて地球環境は回復するけど、ここまでの文明発展は望めんやろな。

    • +15
  6. 過去100年の人類が好き勝手やってきたツケを
    現代人が負わないといけないのは理不尽なので
    将来の問題はその時の人類で解決できるならしたらいい
    前の世代が責任取らないのに、現役世代が苦しい生活するのは拒否する

    • -16
    1. それを続けた結果が今なんやで。
      それに対処できる間にせなどうにもならん。

      仕事でミスしたからと言って、それを隠してたら取り返しのつかない事になるのと同じようなものや

      • +16
  7. 温暖化はひとりひとりの意識からなんていうけど、便利で快適な生活はやめないし、ここへきてエアコンや車などの交通機関、電気のない生活はもはやできない。
    それらを捨てたら生きていけない人達を犠牲にして温暖化を食い止めるか、何もせずに快適に暮らすか…。

    人類はもう、引き返せないところまできちゃってるから、これから起こることを甘んじて受け入れるしかないんだろうね。

    • +6
  8. 別に温暖化で人類は絶滅などしない。
    ただ、大都市のほとんどが水没し、ランドパワー国家が有利になって、北極圏が大西洋のような扱いになる。結果、戦争が起こるだけだ。
    その戦争によって絶滅する、というならまた話が別だが。

    • -5
  9. 気候実験は世界50箇所以上でこな10年はどこも行われてるらしいが人為的な影響ってどれくらいなんやろ?
    けど太陽熱による海面の温度上昇は太陽の周期とかもあるんやろうけど…
    この5年の異常気象ってやっぱ人類弄りすぎなんかな?って思っちゃうのが否めないよ

    • -1
  10. 今月の支払いですら気を揉むような人間が大半なのに、10年、20年先の事を考えろって言われても難しいよね

    • +8
  11. 少し前までなら「自分がもう生きていない100年後の環境なんて関係ないね」なんて考え方もそれはそれでありだったのかもしれないけど
    変化のスピードが速まってきて、100年後と予想されていた問題が50年後、10年後とどんどん前倒しされてきている感じ

    実際夏の暑さも毎年体感でわかるレベルで厳しくなってきているからねぇ
    100年後の環境が自分に影響する事はなくても来年の気温がもう既に死活問題なわけで

    • +12
  12. 戦争の前後もパンデミックの前後も、大衆は科学的真実なんかより身近な近視眼的なイメージで考え行動する。そんな大衆を雲の上の人々は遠目から眺めてるだけだ。フライパンの上で生活するような時が来てもいまさら冷やすことなんてできない。

    • +5
  13. 暑い、、、もう止まらないだろうし行くところまで行くんだろうけど
    それが何年後か

    • +4

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

自然・廃墟・宇宙

自然・廃墟・宇宙についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

料理・健康・暮らし

料理・健康・暮らしについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。