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ライオンの兄弟がワニが多く潜む危険な水域を渡り遠泳の最長記録を達成、兄は3本足にもかかわらず

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(著) (編集)

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 2頭のライオンの兄弟(うち1頭は足の一部が欠損)が、ワニやカバがひそむ危険な水域を泳いで渡り、遠泳の新記録を樹立する瞬間が目撃されたそうだ。

 オスライオンの壮大な冒険は、ドローンによって夜間、アフリカのウガンダにある2つの湖を結ぶ「カジンガ水路」で撮影された。

 ジェイコブとティブと名付けられた兄弟は、メスとの出会いを求めていたらしく、約1.3kmの水路を渡り切ったのだ。

 これはライオンが泳ぐと思われていた距離の10倍もの長さだという。しかも10歳の兄、ジェイコブは3本しか足がないのに、4度目のトライでこの偉業を達成したのだ。

1.3kmの水路を泳ぎ切ったライオンの兄弟

 百獣の王ライオンとはいえ、この水路は決して容易いものではなかった。

 ジェイコブとティブは、エドワード湖とジョージ湖を結んでいる水域、カジンガ水路に入っては引き返すを繰り返し、4度目の挑戦でようやく向こう岸に渡ることに成功した。

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熱探知カメラでとらえられた、ライオンの兄弟が水路を泳ぎ切り、陸地に到着するところ / image credit:Griffith University Alexander Braczkowski

 この川には危険なワニやカバが密集している。陸上では王者といえども、泳いでいる最中は彼らに太刀打ちできない。兄弟たちが何度も挑戦しなければならなかったのは、ある意味当然だった。

 しかも10歳の兄、ジェイコブは、これまで何度も九死に一生を得ており、足が3本しかないのだから、なおのこと驚きだ。

 ジェイコブは以前、バッファローに角で突かれ、ライオンの体の一部を売買する密猟者に家族を毒殺され、罠に捕まりながらもなんとか脱出した。だが再び別の密猟者の鉄製の罠にかかって片足を失った。

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兄のジェイコブは密猟の罠にかかり、後ろ脚を失っている / image credit:Griffith University Alexander Braczkowski

 ジェイコブスを8年以上にわたって観察し続けていた、オーストラリア、グリフィス大学のアレクサンダー・ブラツコウスキー博士はこう語る。

そんな状態にありながらも、それでもカバやワニが密集している水路で新記録を打ち立てたのは、ピンチを切り抜ける彼らの素晴らしい力を示すものです

危険な水域を泳ぎ切ったライオンの兄弟の姿は、ドローンに搭載された高解像度の熱探知カメラにとらえられていた。

なぜ彼らは危険を命懸けの冒険に?

 その一方で、このような大胆な行動自体が、ライオン兄弟が暮らすクイーン・エリザベス国立公園が密猟者からの強い圧力を受けているだろうことを告げているという。

 ブラツコウスキー博士らの調査によるなら、この地域のライオンはわずか5年でほぼ半減したという。

 一般に動物は、消費するエネルギーに見合わないメリットしかない行動はとらない。

 だがジェイコブとティブは、それでもこの命懸けの冒険を行わざるを得なかった。

 公園のライオンの数が激減しているために、そうしなければメスに出会って子供を残せなかったのだ。

おそらく兄弟はメスを探していたのでしょう。公園内でのメスをめぐる争いは熾烈です

水路をわたる数時間前、彼らはメスをめぐる戦いに敗れました。だから水路の向こう岸にいるメスに出会うため、危険な冒険に出たのでしょう

 じつは水路には小さな橋もあるのだが、兄弟がそこを渡らなかったのは、人間と遭遇することを恐れたためだと考えられている。

 実際ジェイコブは密猟者に殺されかけた経験があるのだから、水中のナイルワニやカバの方がまだマシと思ったのかもしれない。

 そうして図らずも、約1.3kmもある水路を泳ぎ切るという、史上最長の遠泳記録を更新することになったのだ。

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ライオンの遠泳記録を打ち立てたジェイコブとティブ / image credit: Alexander Braczkowski

今そこにある、野生動物分断の危機

 こうした兄弟の行動は、生物多様性を守るうえでとても重要ながら過小評価されている脅威、すなわち野生動物の分断化を浮き彫りにしている。

 ライオンのオスは、エサやメスが乏しかったり、強力な個体との縄張り争いが激しすぎるような場合は、生息域から離れて新天地を求める。

 だが人間による土地開発によって生息地が分断されてしまうと、そう簡単には引越しできなくなり、その地域のライオンたちは孤立するようになる。

 その結果、エサやメスをめぐる競争が激化するなど、さまざまな問題が生じ、やがて数を減らすようになる。

 ジェイコブとティブは運に恵まれたが、同じようなチャレンジに挑んだライオンたちの多くは、ハッピーエンドでは終わらないだろうという。

ジェイコブとティブの大冒険は、もっとも力のある野生動物たちですら、人間が支配する世界で住処や仲間を見つけるために厳しい決断を迫られていることを示す重要な事例です(ブラツコウスキー博士)

 この研究は『Ecology and Evolution』(2024年7月10日付)に掲載された。

References:Lion with nine lives breaks record with longe | EurekAlert! / Lion with nine lives breaks record with longest swim in predator-infested waters  – Griffith News / Watch: Lion siblings’ death-defying record swim across croc-infested river / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 8件

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  1. どうしたら生物多様性が守られるかな?
    密猟者が育つ環境に、経済と教育をもたらすことができたらいいのに。

    • +6
  2. ちょっと違和感…..
    あたかも美談かのように紹介されてるけど、この肉食獣も私たち人間と同じように常日頃から生命を奪ってるんだけど、それは本当にいいことなのかな?
    無意識の内に「生きるために食べる」と正当化してるからこそ、もう一度私たちは自分たちの行動を振り返り反省する必要がある。
    そうでもしないと自身が積み重ねてきた罪に対して自覚的になれないし、自分たちがこのライオンと同レベルだと認めるようなものだよ。

    • -16
  3. 記事軽く読んでたら凄いなと思ってたらライオンが半減とか足は罠でとかの下りを見て悲しくなった

    • +5
    1. >>4
      俺も「歴戦の古強者がかつて決死の戦いで足を失った」みたいなカッコイイのをイメージしてたのに、密猟者の罠なんて…。
      どうして密猟なんて非情な事ができるんだろう…?
      単に俺がぐうぜん日本というぬるま湯で生活できてるだけで、現地民や密猟者にとっては金になるものならなんでも金にしなきゃ生活できないのかもしれないけど…。

      • +3
  4. 出会いが少ないのも、それで危険な水場を泳いて渡らなければならないのも、片脚を失ったのも、全部人間のせいで悲しくなった

    • +6
  5. 最後の写真2頭ともすごくいいお顔してるね。

    • +3
  6. ライオンって情けない姿とか、意外なとこばっか見られて百獣の王のくせに全然大したことないと理解してる人多いけどさ、こいつら恐ろしさと強さってネコ科動物最大級の体躯を誇っていながら組織行動するところにある。

    皮分厚すぎて食べるのも面倒臭い上に、倒すのもリスキーだから滅多にやらんだけで、群れにちょっかいかけてきた若いアフリカゾウを徐々に孤立させて闇討ちで集団で襲って最後は仕留めるような映像もあるからね。

    いろんな意味で強い生き物だよ。ライオン同士の争いも実は組織同士の対立だし。

    • +1

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