南極の氷の下に巨大な河川が眠っていた
 西南極の分厚い氷床の下から、1500kmにもわたり蛇行していた古代の大河跡が発見されたそうだ。

 ドイツのアルフレッド・ウェゲナー研究所ヘルムホルツ極地海洋研究センターの堆積学者、ハン・クラーゲス氏らによるこの発見は、地球の歴史を今に伝えるもので、大きな気候変動による地球の変化を教えてくれる。

 将来起こりうる深刻な気候変動について考えるならば、これまでの地球が体験してきた歴史から学ぶことができるかもしれない。

 この研究は『Science Advances』(2024年6月5日付)に掲載された。

過去の気候変動で南極はどのように変化したのか?

 始新世の中期から後期(3400万〜4400万年前)にかけ、地球の大気は劇的に変化していた。二酸化炭素の濃度が急激に低下して、それまで氷がなかった地球に氷河が形成されるようになったのだ。

 はたして、この大きな気候の変化は、南極大陸にどのような影響を与えたのだろうか? それは、二酸化炭素レベルが急激に上昇し続けている現在において、重要な科学的関心事だ。

 ドイツ、アルフレッド・ウェゲナー研究所ヘルムホルツ極地海洋研究センターの堆積学者、ハン・クラーゲス氏によれば、始新世後期の二酸化炭素レベルは、現在のほぼ2倍だったという。

 だが、このまま増え続ければ、150年か200年後の地球もそれに匹敵するようなレベルになると予測される。

 とはいえ、南極の過去を覗き込むのは簡単ではない。

 ある地域の地質学的な歴史を知りたければ、堆積物の中に閉じ込められている粒子・鉱物・化石などが手掛かりになる。

 だが、南極の場合、その表面が分厚い氷におおわれているため、そう簡単には過去の痕跡を集められないのだ。

 なお南極の氷の中には古代の空気も閉じ込められており、ここからも当時の様子を知ることができる。
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アムンゼン海に浮かぶ巨大な氷山の前を通過する調査船ポーラースターン号。この調査では4000万年前の大河の存在が明らかになっている/Image credit: Johann Klages

堆積物の中に4000万年前の大河の痕跡を発見

 クラーゲス氏をはじめとする研究チームは、その手がかりを高度な掘削機で手に入れた。

 2017年、研究チームは調査船ポーラースターン号に乗って、チリの最南端から荒れ狂うドレーク海峡を横断し、西南極に到着。

 強力なドリルで凍った海底を30mも掘削し、苦労の甲斐あって2つの異なる時代の堆積物を回収することができた。
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ポーラースターン号に乗船していた研究者たちは、高度な掘削装置を用いて、西南極に4000万年前に存在した古代の川を発見した / image credit:ohann Klages

 1つは、サンプルの下層にあった白亜紀中期(約8500万年前)の堆積物だ。ここからは、化石・胞子・花粉といった、当時南極に生い茂っていた温帯降雨林の痕跡が見つかっている。

 サンプルの上層にあったのが、始新世中期から後期(3000万〜4000万年前)にかけての堆積物だ。

 そしてこちらからは、まるで現代のミシシッピ川やリオ・グランデ川で見られるような、河川デルタ地帯を思わせるパターンが認められた。

 このことから南極にはかつて大河が流れていたのではないかと推測された。

 この仮説は別の証拠によっても裏付けられている。

 脂質バイオマーカー分析で、そこに含まれる脂質と糖の量を調べてみたところ、淡水に生息するシアノバクテリア(藍藻)によく見られるユニークな分子が発見されたのだ。

 こうした始新世の堆積物は、南極を東西に分断する南極横断山脈までたどられた。そこから明らかになったのは、かつてこの地域を1500kmにわたって蛇行し、やがてアムンゼン海に流れ込んでいた太古の大河が存在しただろうことだ。

 「今は分厚い氷におおわれている南極大陸ですが、かつてはそこを流れる巨大な河川があったことを想像するだけでもワクワクします」とクラーゲス氏は語る。

 研究チームは現在、採掘されたサンプルに含まれるさらに新しい時代の層を分析している最中だ。

 それは2300万年前の漸新世から中新世にかけてのもので、地球の気温が今後どうなるのかを予測する手掛かりになるとのことだ。

References:A large-scale transcontinental river system crossed West Antarctica during the Eocene | Science Advances / Giant river system that existed 40 million years ago discovered deep below Antarctic ice | Space
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