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珍しい古代文字が刻まれた「青銅製の手」が歴史の謎を解き明かす

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(著) (編集)

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 スペイン北部で興味深い遺物が発見された。それは2000年以上前の鉄器時代に遡る青銅でできた平たい手の形をしていて、上部には古代文字が刻まれていた。

 この文字は、ヨーロッパ、イベリア半島で5000年以上前に話され、ほぼ消滅したとされている古代バスク語族のバスク文字であるる可能性が高いという。

手の形をした青銅製の遺物を発掘

 この「青銅でできた手」は、中世ナバラ王国(824年~1620年)があったスペイン北部ナバラ州アラングレン峡谷のイルレギ村近くで数年前から行われている発掘調査によって発見された。

 この王国は、スペイン・フランス国境の険しい西ピレネー山脈の両側の土地を支配していた。

 青銅製の手の大きさは14×15センチ。左右どちらかは特定できないが、ちゃんと5本の長い指が下を向いて並んでいる。

 上のほうに小さな穴があけられているため、吊るして使ったものではないかと思われる。

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古代文字が刻まれた青銅製のイルレギの手 / image credit:Aiestaran, M. et. al / Antiquity Publications Ltd

表面には古代バスク語が刻まれていた

 ヨーロッパの鉄器時代の遺跡から手をかたどったこうした遺物が発掘されたのは初めてのことだが、歴史家、考古学者、言語学者の目を引いたのは、とくに表面に刻まれた文字だった。分析の結果、その驚くべき古代の起源が明らかにされた。

 刻まれていたのは4行の文章だったが、そのうちのひとつの単語が現代バスク語(エウシカラ)の「幸運」という文字と一致した。

 現在使われているバスク語は、古代バスク語族系図の中の唯一の生き残りで、バスク語族と現代バスク語との間に明確なつながりがある証拠が見つかったことになり、興奮が高まる。

 古代と現代のバスク文化研究を専門とするアランザディ科学協会は、この興味の尽きない古代文字の分析を行うために、シンボル解釈の経験をもつ専門家チームと協力した。

 チームを率いるのは、スペイン、ビルバオにあるバスコ大学の考古学者で、アランザディ協会の研究者でもあるマッティン・アイエスタラン氏。

 その結果、この文字は間違いなくバスク語族に分類できると結論づけられた。

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青銅の手の発掘現場 / image credit:Aiestaran et al., Antiquity, 2024

厄除け、幸運のお守りとして住居の入り口に飾られていた可能性

 古代バスク語は紀元前3世紀にローマ人がイベリア半島にやってくる以前から存在していた文字で、それよりも何世紀も前にさかのぼる文化によって使われていたようだ。

この文字は、現代のバスク語とルーツを同じくする古ヒスパニック(ローマ以前の言語)のグラフィックサブシステムで、バスク語族碑文の最初の例だ

住居建物の入り口で発見されたこの遺物に刻まれた文章は、幸運を祈るお守り、厄除けと解釈されている(マッティン・アイエスタラン氏)

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青銅の手は家の入り口にこのようにして飾られていたのかもしれない / image credit:Aiestaran, M. et. al / Antiquity Publications Ltd

 古代バスク語族は、紀元前700年頃に終わった青銅器時代に、ユーラシアのステップ(大草原)からの侵略者がインド・ヨーロッパ語をイベリア半島に持ち込む前に広く話されていた言語で、現代のバスク語はその最後の末裔だ。

 しかし、鉄器時代の遺跡からバスク語族の文字が発見されたことは、ローマ時代以前の紀元前1世紀の終わりまで、この地域の一部で古い言語が存続していたことを示している。(ローマによるイベリア半島征服は紀元前19年に完了した)

 注目すべきは、この青銅の手が発掘された地域は、絶滅したアクイタニア族、あるいはバスク語族のかつての居住地だったという点だ。

 青銅器時代から鉄器時代にかけてのこの文化は、スペイン北部とフランス南西部であるピレネー山脈の両サイドの地域に広がっていた。

 彼らはローマ人に征服されるまで存続し、その後は徐々にローマ文化に同化していった。

 アクイタニア族は、現代バスク語の語源である古代バスク語族を独自にアレンジして話していて、おそらく彼らが紀元前1世紀頃にこの青銅の手を作り、言葉を刻んだ張本人ではないかと思われる。

LA MANO DE IRULEGI

イレルギの手と古代バスク語族の秘密

 イレルギの手は、古代集落の中心にある住居跡の中から発掘された。

 見つかった場所から考えると、家の支柱に釘で留められ、目につくように飾られていたのではないかという。

刻まれている文字の向きと穴がひとつあることから、手の指が下を示すようにぶら下げてあったのではないかと思われます

 研究者たちは、この手はお守りのようなものとして扱われていたのではないかと考えていて、古代イベリア人の特別な習慣に関係があると推測している。

 ギリシャの古典によると、イベリア人は倒した敵の頭や手を切り落として、家、寺院、村の入口に吊るすことがあったという。

 現在のカタルーニャ地方で発見された切断された首の証拠から、鉄器時代までこうした習慣がなんらかの形で存在していたことが知られている。

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今回発見されたイレルギの手と同様の手のモチーフがこの地域で発見されている / image credit:Aiestaran et al., Antiquity, 2024

「イレルギの手は、入植地の文化的文脈の中にうまいこと統合された要素として考える必要があります」アイエスタラン氏は述べている。

この手の遺物は、幸運を呼び込む、あるいは土着の神や幸運の女神への供物として、儀式的な意味合いをもっていたと考えられます

古代バスク語族と現代バスク語に明確な関連性

 手に刻まれている最初の行の単語は、ラテン語のアルファベットで「sorioneku」または「sorioneke」と訳され、これはバスク語で幸運を意味するzorionekoとほぼ一致する。

 古代バスク語族と現代のバスコ語との間にこのように明確な関係があることがわかったことは、考古学、歴史学、言語学の世界に興奮を巻き起こすはずだ。

 バスク語は西ヨーロッパでは主流から外れた言葉だが、長いこと失われていた謎めいた文化に立ち返ることができる言語だ。

 古代史の研究者たちは、その文化が実際にどのようなものであったかを明らかにできる遺物を常に探している。

「イレルギの手の発見は、今もヨーロッパで使われているバスク語の謎、その背後にある歴史を明らかにする新たな地平線を切り開いたと言えるでしょう」アランザディ科学協会代表のミケル・エデソ・エギア氏は説明する。

「この類まれな遺物の発掘は、考古学や言語学の世界に大きな進歩をもたらしました。しかし新たな疑問もたくさん生まれています」

 この研究は『Antiquity』誌(2024年2月20日付)に掲載された。

References:A Vasconic inscription on a bronze hand: writing and rituality in the Iron Age Irulegi settlement in the Ebro Valley | Antiquity | Cambridge Core / Bronze Hand Inscribed with Rare Vasconic Script Linked With Basque Found in Spain | Ancient Origins / written by konohazuku / edited by / parumo

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この記事へのコメント 8件

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  1. すごいな、2000年程度じゃ言葉ってそこまで変わらないんだな

    • +7
  2. バスク人の歴史は古いよー。ローマより古い。
    すごいのはその民族的アイデンティティが今も続いていること。

    • +9
  3. 文字列の一致を見たということは、重要な発見です、今後は言語体系が明らかになることを期待したいです。

    • +4
  4. 興味深いです。今後の研究が楽しみです。

    • +4
  5. こんな薄っぺらい青銅の板がほぼ完ぺきに残っていたのはとんでもない奇跡だな。
    実はかなりの数が作られていたメジャーなものだったのかしら?

    • +5

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