
これは千葉大学の石山智明准教授らによる新たな分析結果だ。
こうした宇宙に存在する物質量は過去にも計算されたことがあるが、今回それとはまったく別の方法で行われ、従来とほぼ同じような結果が導き出された。
このことは、天文学者たちが宇宙に存在する物質エネルギー密度の正解にかなり近づいているだろうことを物語っている。
宇宙に物質はどれほど存在するのか?
宇宙に物質はどれくらい存在するのか?これは天文学においてもっと重要な問いの1つだ。なぜなら宇宙に存在する物質の量は、広大な宇宙の構造にかかわるだけでなく、宇宙の運命すら決めているからだ。
ビッグバンではじまった宇宙はどんどんと膨張する。だが物質には重力があるので、それが十分にあれば、宇宙の膨張はやがて減速して収縮(ビッグクランチ)に転じるはずだ。
ところが、宇宙の膨張は減速するどころか、何らかの力によって加速しているだろうことが明らかになっている。この何らかの力が、「ダークエネルギー(暗黒エネルギー)」と呼ばれる仮説上の力だ。
だからこの宇宙が最終的にどうなるのか占ううえで、宇宙に存在する物質の全体量や、ダークエネルギーとの割合が決定的に重要となる。

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宇宙の物質の量を知る方法
宇宙に物質やダークエネルギーがどれだけあるのか知るには、銀河団の数を数え、その質量を調べてみればいい。それさえわかってしまえば、あとはシミュレーションを走らせ、現実の宇宙の姿とピッタリになる物質とダークエネルギーの割合を探ればいい。
ところが困ったことに、銀河団の質量を直接知ることはできない。
なぜか? それは私たちが直接見ることができる物質(バリオン物質)は、宇宙に存在する物質の2割ほどでしかないと考えられるからだ。
残り8割は、間接的にしか存在を知ることができない「ダークマター(暗黒物質)」となる。
この問題を克服するために、石山准教授らは、銀河団に含まれる銀河の数から銀河団の質量を推定してみることにした。
大きな銀河団ほど、たくさんの銀河で構成されている。この関係を「質量リッチネス関係(MMR)」という。
都合がいいことに銀河は光り輝く物質でできているので、その数をヒントに銀河団の質量を知ることができる。
そのうえでシミュレーションを行い、宇宙を占める物質とダークエネルギーの割合をいろいろと変えながら、架空の銀河団を作ってみた。

宇宙の69%はダークエネルギー、物質は31%
その結果、現実の宇宙にある銀河団の姿と一番近かったのが、31%が物質で構成された宇宙だったのだ。この結果が正しいとすれば、残り69%はダークエネルギーだ。つまり宇宙の大部分は謎のエネルギーで占められているということになる。
ちなみにこの結果は、過去に行われた推定結果とよく一致しているという。
だがその推定結果は、宇宙マイクロ波背景放射を手がかりにしたもの。今回の結果は、質量リッチネス関係を手がかりにした、まったく別の方法による推定だ。
それぞれ別の方法で計測した結果がほぼ同じものだった…それは天文学者たちが宇宙を占める物質エネルギー密度の正解にかなり近づいているだろうということだ。
この研究は『The Astrophysical Journal』(2023年9月13日付)に掲載された。
References:Constraining Cosmological Parameters Using the Cluster Mass–Richness Relation - IOPscience / New Calculations Show Most of The Universe Is Made of Dark Energy : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo
追記(2023/09/25)見出しの誤字を訂正して再送します。
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コメント
1. 匿名処理班
ダークエネルギーの割合が分かっても、それ自体の影響などを観測できないなら、宇宙の運命はわからないままではないのかなぁ? と頭の悪い私は悩む。
2. 匿名処理班
赤方偏移を疲れた光説とするとダークエネルギーは不要
マイクロ波背景放射を宇宙初期からの放射だとすると
現在の宇宙の偏りのある姿と矛盾してくる
この研究結果が現実の銀河団の姿と似てたとしても、更に大きな宇宙の大規模構造でも31%が正しいのか
等方的な宇宙と異方的な宇宙では全く違ってくる
3. 匿名処理班
いつも興味深く拝見しております。
本文中は、69% ですが、
小見出しが【宇宙の 63% はダークエネルギー、物質は31%】
となっています。
4. 匿名処理班
生きてるうちに解明されてほしいなあ
5. 匿名処理班
>この関係を「質量リッチネス関係(MMR)」という。
ΩΩΩ<ナ、ナンダッテー!
6. 匿名処理班
ダークエネルギーとかダークマターとか
なんかかっこいいよね
7. 匿名処理班
ダークエネルギーと言われても…。
観測できない、定義もできない物で言葉遊びしてるだけなのでは。
8. 匿名処理班
膨張が加速してるということは、未来は個々の銀河がめちゃくちゃ離れて観測も不可能になるということ?ばらばらになっていく孤独な宇宙像が正しいの?
9. 匿名処理班
つまり俺の体にもダークエネルギーが存在する……? いつかそれが目覚める日が来るのか!
10. 匿名処理班
暗黒椿は恋の花
11.
12.
13. 匿名処理班
ダークマターもダークエネルギーも存在しない。
既存論が重力の影響を過小評価しているに過ぎない。
14. 匿名処理班
>>7
宇宙の膨張を加速させる原因たる「何か」、名無しの「何か」じゃ座りが悪いのでとりあえずダークエネルギーと仮名を付けてますってだけでしょ
ならダークエネルギーなど存在しないとか観測できてないなら机上の空論とか言ってる方が実際は言葉遊びしてるよ
「加速膨張の原因はコレだ、だからダークエネルギーという言葉はもうお役御免の死語だ」と主張するなら良いが、そういうのは論文でやれってことになるし、
「加速膨張に原因は無いからダークエネルギーも無い」とか「実は加速膨張してないからダークエネルギーは無い」という主張は無理スジすぎるしなw
15. 匿名処理班
>>13
空間内の物質じゃなくあらゆる時空点に存在する場の真空期待値みたいなもんを重力理論の修正でどうにかできるとは思えないけどね
だって重力のソースってmatterじゃんwwwwwwwwww
16. 匿名処理班
残り31%はライトエネルギーに違いない
17. 匿名処理班
7割ダークエネルギーで
残りの30割は優しささ
18. 匿名処理班
>>1
そもそもの前提として、
宇宙は膨張しているがそれを引き起こしているものの正体不明で分からないからそれをダークエネルギーとして呼称している
影響はわかっているんだ
原因がわからない(見つかっていない)のであって
19. 匿名処理班
>>13
重力が強いなら宇宙の膨張は減速しているか収縮に転じてるはずなんだわ
それどころかむしろ膨張が加速してる以上、重力の影響は過小評価なんてされていない
20. 匿名処理班
「どこで」膨張してるんだろう。
宇宙はまだ膨張出来るなら、それは「どこ」なの?
宇宙は「どこで」膨張してるのかしら。宇宙がまだ膨張していないところにはなにがあるのかしら。
そもそもビッグバンが宇宙を作る前はその空間にはなにがあったの?
宇宙の端っこの向こうはなんですか?
21. 匿名処理班
>>20
どこで?と言われれば、ありとあらゆるところで。
キミの体も今まさに膨張している空間に引き延ばされ引き裂かれようとしてるけど、分子結合の力(電磁気力)がそれに抗ってバラバラにならないように繋ぎとめているし、キミと地面や星と星々は重力が繋ぎとめている。
膨張力が加速し続け重力を凌駕したとき、銀河や星は散り散りになり何かに固定されてないものは宇宙に放り出され、また電磁気力を超えたときは全てが素粒子レベルまで分解し霧散する。
荒唐無稽に聞こえるけど、ビッグリップシナリオといって結構真面目に想定されている話だったりする
22. 匿名処理班
ダークエネルギーって、中学生の右手に宿る例の力のことだろ?