
あまりピンとこないかもしれないが、その凄さを写真の歴史に照らしてみればわかる。
1826年にフランスの発明家、ニセフォール・ニエプスが世界初の写真を撮影してから1975年までの150年間で、撮影された写真の数は150億枚。AIはたった1年でその数を生成したのだ。
1年でこうなのだから、来年の今頃にはどうなっているのか想像するのも難しい。画像生成AIは驚くほどの速さでクリエイティブの世界を変えつつある。
広告
AIが生成した画像数がたった1年で写真の歴史150年分に匹敵
任意のテキストを入力すると、本物の写真と区別がつかないリアルな画像がパッと生成される。そんな画像生成AIを普通の人が手軽に利用できようになったのは最近のことだ。それ以降、大勢のAIアーティストがそのプロンプトの技術を磨きながら、さまざまなAI作品を世界に発信しし続けている。
この期間に生成された画像の量は正確にはわからないとしても、驚異的な枚数であることは間違いない。
『Everypixel Journal』の報告書でもっとも驚くべき事実の1つは、たった1年の間にAIによって生成された画像の多さだ。
それによると、2023年8月までに生成されたAI画像はおよそ150億枚。これは「最初の写真が撮影された1826年から1975年までの150年間」に撮影された写真の枚数に匹敵するという。

代表的な画像生成AI
画像生成AIの代表的なものとしては、OpenAIが開発した「DALL・E 2」がある。2022年4月の限定的な公開以来、1日平均3400万枚もの膨大な画像を生成してきた。Photoshopで有名なアドビもまた、「Adobe Firefly」という画期的なAIアルゴリズムを公開している。驚くべきことにFireflyはサービス開始からわずか3ヶ月で、10億枚もの画像を生成。画像生成AIサービスとしては最速の成長を遂げている。
2022年7月にサービスを開始した「Midjourney」は、1500万人の登録者(うちアクティブメンバーは150万〜250万人)がおり、強固なユーザー基盤を誇る。
SNSアプリ「Discord」のMidjourneyチャンネルだけでも、日々250万枚もの画像が生成され、サービス開始以来9億6400万枚の画像が生成されたと推定されている。
だが画像生成AIカルチャーでもっとも影響力があるのは、Stability AIが2022年8月に公開した「Stable Diffusion」かもしれない。このAIはオープンソースのサービスで、これまで1000万人以上のユーザーを魅了してきた。
オープンソースという性質上、実際にどれほどの画像が作られているのか正確に把握することはむずかしい。だが控えめな計算によるなら、Stable Diffusionの公式プラットフォームを通じて日々200万枚の画像が生成されている。
しかしStable Diffusionの本当の影響力はそれにとどまらない。オープンソースであるゆえに、「GitHub」「HuggingFace」「Civitai」といった人気サイトには多種多様な非公式モデルが公開されているのだ。
それらすべてを含めれば、Stable Diffusionによって生成された画像は推定124億9000万枚。AI画像150億枚のほぼ8割を占めている。
The number of AI-created images is greater than Shutterstock's entire library of images, vectors, and illustrations, and one-third of the number of images ever uploaded to Instagram 👆 pic.twitter.com/3w8hr1yz7J
— Everypixel | Creative Technologies (@Everypixelcom) August 15, 2023
AI画像生成の未来
写真の歴史150年分に相当する150億枚という枚数を現代の基準に照らすなら、インスタグラムに投稿された全画像の3分の1と言うこともできる。まだ稼働したての画像生成AIは、ときにギョッとさせるような不自然さが満載で、不気味であると同時に、まだまだ人間には敵わないとどこか安心させてもくれていた。
だが今ではもう本物の写真とAIが生成した画像を見分けることはほぼ不可能なものもある。
たった1年でここまで進化したそのスピードには目を見張るものがあるが、ならば1年後にはどうなってしまうのか、もはや想像もつかない。
これこそが、AIの素晴らしいことこでもあり、恐ろしいところでもある。
それがクリエイティブの世界をガラリと変貌させてしまうことは想像に難しくない。だが、それが人類全体にとって良いものとなることを願いたい。
References:AI Image Statistics: How Much Content Was Created by AI / More AI images have been generated than photographs taken in the first 150 years of photography / written by hiroching / edited by / parumo
あわせて読みたい





コメント
1. 匿名処理班
>わずか1年でAIは150年分の写真を超える画像を生成していたことが判明
間違ってはいないが、非常にまぎわらしい表現だな
普通150年分とは直近1年分の150倍だ
2.
3. 匿名処理班
自分のイラストや写真をAIに学習されたくない〜という人が多いけど
近いうち人間から学習なんてする必要もなくなりそうね
4. 匿名処理班
比較する範囲に差があるように思うが
AIが作成したすべての画像と、人間が公に発表した写真のみを比較するのは違うと思う
富士フィルムのインスタントカメラが今でさえ年1000万台を売ってるというのに、人類のこれまでの写真が150億枚にとどまるわけがない
5. 匿名処理班
よくみたら1975年までの150年間か。そりゃ少ないだろうな。
スマホ登場以降は桁違いに多いだろ。
6. 匿名処理班
>>3
つまり人間なんて無駄だらけで害しか産まない下等な生き物は世の中に不要ってことを言いたいわけですね?
7.
8. 匿名処理班
>>3
残念ながらそうはいかない
AIが生成したものでAIに学習を繰り返していくとノイズが増大してモデルの崩壊が起きる
だからAIには人が作った正しいデータで学習しないといけないけど、ネット上にAI生成物があふれてデータ汚染が起きつつある
9. 匿名処理班
かつてビットコインのマイニングのために膨大な数のGPUと電力が費やされて環境保護に逆行していると多くの非難を浴びました
そして今、それと同じようにAIの性能向上に伴って欠かせない膨大な数のGPUと電力が費やされ
これからもさらに膨らみ続けるこの現状は本当に価値のあるものなのでしょうかね
10. 匿名処理班
>>8
なるほどなぁ
近親交配によって劣性遺伝子が顕著化するのと似た原理ですね
11. 匿名処理班
枚数でAI以前を凌駕するなら、下手だったり違和感があり続けても、AIに主導権を握られそう。
12. 匿名処理班
>>5
調べたらデジカメが初めて売られたのが丁度1975年らしいね。
13. 匿名処理班
私は仕事掛け持ちでAIの教師データを作ってるけど、いずれいらなくなるのかもね。作っていながらもいつ頃までにいらなくなるのかも全く分からんです。
14. 匿名処理班
数年しないうちに人類の歴史超えちゃいそう
15. 匿名処理班
>>8
AIがずっと今のままであれば学習元は必要なんでしょうけど
どのように発展していくかわからないので「学習しなくても…」とコメントしました。
学習されたくないという方のためにも、今後はAI独自の発想で創作したりするようになったらいいと思いますけどね
16. 匿名処理班
1人で5000枚くらいは生成したから少しばかりは貢献しているかもしれない。
ともかく面白い技術なので、変なアレルギーで触らないのは勿体ないと思う。
スタンドアロンのローカルPCで動かせる以上、もはや中央集権的に止めることは不可能。
17. 匿名処理班
Yahooニュースの記事だけど、2018年の1年間だけで推計1兆3000億枚の写真が地球上で撮られたっていう記事があるね。実際との誤差を考えても、仮に150年間を200年間に変えると比較対象にすらならなくなる。
18. 匿名処理班
>>1
精度が低くて利用者が何度も同じプロンプトを再生成するからじゃないか? みたいな疑問を持って記事を開いたら、何と感光に何十分もかかっていた時代の枚数と比べてるんだから驚きだよねw
19. 匿名処理班
AIが生成したというよりも、人間が作らせたと表現するのが正しいかな。
20. 匿名処理班
>>5
過小な見積もりだけど、仮に50億人がスマホで毎日1.1枚の画像を撮影したとしたら年間2京枚だな
21. 匿名処理班
>>8
GoogleとMITの研究で、画像生成AI「Stable Diffusion」の「生成画像のみ」を用いて自己教師あり学習すると強力な視覚表現を学習できて、「リアル画像」での学習よりも優れた性能を達成できたとの報告もあるよ。
その研究は別にしても、じゃあ人間は人間自身で作ってきた‶偏った甞惱データに囲まれたとき、その問題をどうやってクリアしてきたのかを見れば自ずと解決策は見えるだろう。
答えとしては他の作品以外に、自分の目や耳で自然や一見自分の作品分野とは関係ない他分野のものを見て、そこからより正確な情報や新しいインスピレーションを得てきた。つまりAIにも視覚や聴覚を付与してマルチモーダル化すれば良い。そうすれば自分で世界を観察して芸術でも新しい地平を切り開いていくだろう。
今でも(人間との共作で)コンテストに優勝するくらいのAIだけど、さらに人知を超えるほどに発達したAIは果たしてどんな芸術を生み出すのか?誤解を恐れずに言えば、純粋に芸術を見ることに関心ある者としてはそこに大いに興味湧く。
22. 匿名処理班
150億枚の中の149億枚は使われる事もなくデータの海に消えているんだろうなあ
23. 匿名処理班
技術的躍進は実に素晴らしい。
けど、いつの時代も「出来る事」を「やっていい事」と勘違いしてしまう者が出る。
法的な整備が整っていない革新技術であれば尚更。
そう言うのを見る度に、いっそ政治や治安維持は全てAIに任せてしまえる社会の方が、安全で、安心で、良心的なのかもしれないと思ってしまうよ。
24. 匿名処理班
AIが人間の手から離れてAIを開発しだすという確定路線…テレビ電波オークシ
25. 匿名処理班
すごいんだけど、比較対象を都合よく設定しすぎてていまいちピントがあわない…1975年までとかインスタの3割とか…
もっともタイトルのキャッチーさでこの記事に辿り着いたわけだけど