
正式名称は「アメリカミズアブ」というのだが、この昆虫には地球環境を救ってくれる秘められたパワーがあるそうだ。
テキサスA&M大学の研究チームは、アメリカミズアブの死骸が、生分解性プラスチックの原料に有効活用できることを発表した。
自然環境で分解される生分解性プラスチックは、サトウキビや樹木のグルコースなどを使って作られてきたが、そうした植物は他の目的で使用されているため、資源に限りがある。
だがアブの成虫なら、他の目的で使用されることもないため、従来の生分解性プラスチックの原料問題の新たな解決策となるという。
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アブの成虫に含まれる硬い高分子「キチン」
日本には、第二次世界大戦後に侵入し、北海道を除く全国で自然繁殖をしている「アメリカミズアブ」だが、その幼虫はタンパク質などの栄養が豊富なので、人工的に飼育され、家畜のエサとして使用されている。ところが成虫になるとほとんど役に立たないし、すぐに死んでしまう。
これまではただ捨てられるだけのアブの死骸を何かに利用できないか? というのがこの研究の始まりだった。
そこでテキサスA&M大学のカレン・ウーリー氏らがこのアブを調べてみたところ、その主成分が「キチン」という物質であることがわかったのだ。
これは糖をベースにしたポリマー(高分子。プラスチックもまたポリマーの一種)で、昆虫やカニなどの硬い殻の成分でもある。だから生分解性プラスチックの原料として利用できる。
キチンはカニやエビの殻から抽出されることもあるが、研究チームによると、アブのキチンはそれより純度が高く、魚介アレルギーの心配がないというメリットがあるという。

photo by iStock
アブのキチンから、高性能のハイドロゲルを作成
ウーリー氏らはさまざまな方法を試すことで、アブからキチンを抽出することにも成功している。これをもとに作られたハイドロゲルは、吸湿素材として素晴らしい性能を発揮したという。わずか1分間で、その重さの47倍の水を吸収してくれるのだ。
これをたとえば畑などに撒いておけば、洪水のときには水を吸収し、干ばつになればゆっくりと水分を放出してくれる。
テキサス州は天気の差が極端で、洪水か干ばつかのいずれかになりがちなので、農業ではこうした特性が大いに役立つと考えられるのだそう。

photo by Pixabay
虫が生産して、虫がリサイクルする生分解性プラスチック
研究チームは、近い将来、アブから抽出したキチンで、ポリカーボネートやポリウレタンにも似た生分解性バイオプラスチックを作れるようになるだろうと期待している。日常生活のありとあらゆるところに使われているプラスチックだが、それによる汚染は今人類が直面している最大の環境問題の一つとされている。
だが、アブのプラスチックならばそのような心配はない。最後は虫が食べて、リサイクルまでしてくれるからだ。
最終的には、昆虫にプラスチックごみを食べてもらいます。それをまた集めて、そこからプラスチックを作ります。虫はプラスチックの原料になるだけでなく、プラスチックごみを処理してもくれるわけですと、ウーリー氏は語っている。
この研究はアメリカ化学会(ACS)の秋季大会で発表された。
追記:(2023/08/18)本文を一部訂正して再送します。
References:Transforming flies into degradable plastics - American Chemical Society / Dead flies could be used to make biodegradable plastic, scientists say | Plastics | The Guardian / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
アブなくないプラスチックか
2. 匿名処理班
キチンだったらカニ殻とかエビ殻とかも使えそう。
3. 匿名処理班
一寸の虫にも五分の魂で無機質な物の材料にするのは気分のいいものではないな
食品(食品添加物とか…)にするならまだ仕方ないかなとは思うけど…
4. 匿名処理班
アブでは量産むずかしくね?
5.
6. 匿名処理班
嫌われものだった便所バチがヒーローになる時代が来るのか…胸熱w
7. 匿名処理班
>>6
ルー大柴や江頭も昔は濃い奴らだったが、今ではダンディーな部類
時代によってもあつかいは変わるぜ
8. 匿名処理班
そのプラスチック製品を部屋に置いたら虫が集ってくるんじゃ無いか?
9. 匿名処理班
のちのアブ人間の元となるのだった…
10. 匿名処理班
上手く軌道に乗ると良いね
ただ一寸心配なのは新たなアレルギー源にならないかなと言う点かな
身近じゃ無かったから水生甲殻類ほど一般的なアレルギーじゃ無かっただけで、触れる機会が増えたら状況変わる気がするんだよね
11.
12. 匿名処理班
部屋にいきなりブーーーーンと飛び込んできて
ハチかと思ってびっくりするやつだ!
13. 匿名処理班
アブさん蚕化ルート来るん?
14. 匿名処理班
>>2
また記事内容読んでない…
記事中でアレルギー問題が指摘されてるけど、日本でも蟹殻からプラスチック繊維作り出して学校制服作ってる企業があったはず。制服として既に採用されているならアレルギー問題はクリアされてる気がするな。
15. 匿名処理班
>>8
ゴキやネズミのいる環境では食べられそうだね
生分解性だと使用中に腐らないのかな
腐っても困らない用途限定かなあ
16. 匿名処理班
>>12
ウシアブのほうがびびるよ、あいつら飛ぶ時には音をほとんど立てないからな。
刺されたら痛がゆいし。
17. 匿名処理班
>>2
へぇ博学!
ところで記事読んだ?
18. 匿名処理班
殺されるために大量に生まされるのか
カイコなんかはそうだし、牛さんや豚さん、鳥さんもそうだし
今更ではあるか
19. 匿名処理班
>>2
あんた頭いいね
大したものだ
20. 匿名処理班
生ごみで幼虫育て、サナギになったら中身絞って虫ミルク、残り滓は高機能原料。
素晴らしい! これぞサステナブル!! SDGs万歳!!!
理想ではあるけどあの平べったいサナギを見ると食欲失せるのがネックかな、それのあった環境を思い出してあるはずのない味や臭いがしそうで。
21. 匿名処理班
どうやって量産するのかな
製薬会社にG部屋があったけど
量産体制だともっと大がかりだろうし、大量脱走とかされたら・・・
22. 匿名処理班
×「自然繁殖で北海道を除く全国で自然繁殖をしている」→○「北海道を除く全国で自然繁殖をしている」
23. 匿名処理班
刺すアブは産卵管が変化した器官である針で刺す訳ではなく、口吻で刺して吸血するんよ。
太いので痛いよ。
24. 匿名処理班
日本在来種はコウカアブな
ちなみに後架とはお寺のトイレの事らしい
蜂じゃないので針は無いし
口も退化してるので刺さないぞ
25. 匿名処理班
便所バッタはカマドウマ
便所バサミはハサミムシ
26. 匿名処理班
昔アース製薬のミズアブジェットっていう殺虫剤にお世話になったな。ウジ虫のキチン合成を阻害する成分が入ってて、大人になれず死滅するという恐ろしい殺虫剤。これ使ったらキチンが上手く取れなくなっちゃうね。
27. 匿名処理班
植物より虫殺すほうが罪悪感デカくないか…
虫も命じゃなくて材料扱いなんだな…
まぁ鶏牛豚魚がそうなんだからそうなるか
28.
29. 2
すでにミズアブ自体は量産してるとこあるけれど、なんでも食うのでゴミ処理には最適だし鶏や魚の餌にも良いけれど、植物に比べてプラ製品作るほどの物量が確保できなそう。可能性を論じるの大事だけどね。
あ!!サバクトビバッタ集めよう!
30. 匿名処理班
>>14
魚介アレルギーは問題ないとしても新たに虻アレルギーが出て来ないとも限らないしな
実用化する時はアレルギーももっと検証するだろうね
31. 匿名処理班
>>3
あなたがそう思われるなら率先して消費されるがよろしい
原油もはるか昔は生物だったので是非に慈しんで下さい。
32. 匿名処理班
>>31
笑いどころはどこだい?
33. 匿名処理班
そのうち人間からもつくられそう
34.
35. 匿名処理班
>>33
なんとかグリーン!!
これは食べ物か
36. 匿名処理班
最後は虫が食べてリサイクルされるというなら害虫が大量発生して農薬等の使用量が増えたりしないか?
37. 匿名処理班
人間は恐ろしいな。虫をプラスチックに加工するのか。怒りの王蟲が攻めてくるな。
38.
39. 匿名処理班
いろんな生き物から無視されずに、きちんと分解されるといいね
40. 匿名処理班
>>14
揚げ足取りが多くて気持ち悪いな
41. 匿名処理班
>>15
生分解性プラスチックの主な用途は、食品なんかの一時的な梱包になりそうだね。
もしくは、使い捨てる様な緩衝材とかかな?
42. 匿名処理班
>>40
いやコメントするなら記事読めよ
と思うのが普通じゃないのか
最後まで読まずに一体何に対して発言してるんだよ…
(読んでないんじゃなくて速読の精度が低すぎて読んだ気になってる可能性も考慮してあげてもいいかなとは思う)
それはそうと便所バチはかわいい奴らよ。人が出す腐った生ゴミだけ食べて、食品や人にたかる事もなく人畜無害、それに栄養満点で、プラスチックにまで…うーん作ってる現場は見たくないな