
この中に、特定の角度から見るとハート型に見える頭蓋骨がふたつあり、明らかに意図的に頭蓋骨に手が加えられている例が初めて報告された。
かつて、人工的に頭蓋を変形させる習慣は、南メキシコや中米の拠点であるマヤではごく一般的なことだったといわれている。
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ラ・フェレリア遺跡で発見された頭蓋骨と骨の分析調査
メキシコ国立人類学歴史学研究所(INAH)の発表によると、メキシコ、デュランゴ州にあるラ・フェレリア遺跡の地下から見つかった16人の遺骨のうち、8人は死亡時に30歳から40歳の成人、残り8人は1歳から7歳の子どものものだった。ほとんどの骨は砕けてバラバラになってしまっていたが、成人の頭蓋骨のうち3つは、良好な状態で残っていた。
メキシコ政府文化庁、INAHデュランゴおよびソノラ・センター、北メキシコ人類学歴史学校(EAHNM)、メキシコ国立自治大学の人類学・法医歯科学研究所などの専門家チームによる包括的、生物考古学的分析が行われた。
ラ・フェラリア遺跡は、スペイン統治以前の西暦600年から1350年頃のにさかのぼるものだとされている。

西暦600年から950年頃に存在したと言われるこの特別な場所は、およそ604平方メートルの広大なエリアで、中央広場を囲むように、9つの長方形の建造物がある。
これまでの発掘で、建造物内に多数の墓が見つかったことで、ここは死者専用の場所だったと考えられている。

意図的な頭蓋骨の改変「人工頭蓋変形」を確認
頭蓋骨に人為的になんらかの力を加えると、頭蓋の正常な成長が変化してさまざまな形になる。こうしたやり方には、頭蓋に無理やり外力を加える方法も含まれており、多くの場合、木片で締めつけるなどの方法がとられたと考えられる。

こうした行為は、さまざまな文化的、社会的、宗教的目的で行われ、それぞれの社会には、頭蓋を変形させる独特の方法と理由があった。
アイデンティティ、社会的地位、グループへの帰属のしるしとして機能していたようで、美の理想や文化的規範を定義し、そのコミュニティをほかのコミュニティと区別する上で極めて重要な役割を果たした。

南米アメリカ大陸でかつて行われていた人工頭蓋変形
ラ・フェレリア遺跡では、意図的な頭蓋の改変はこれまで報告されていなかったが、世界中の古代文明ではこうした例はたくさんある。驚くことに、世界の隔絶した地域では、現在でもこの習慣が続いているところがあるという。
ラ・フェレリア遺跡以外の南米アメリカ大陸地域でも、頭蓋改変の習慣は普通に行われている。
その顕著な例はペルーのパラカス文化で、ここでは明らかに意図的に変形させたと思われる細長い頭蓋骨が見つかっている。
チリの古代チンチョーロ族の人々も、紀元前5000年から3000年頃に、頭蓋の改造を行っていて、こうした習慣の最古の例のひとつと考えられている。
紀元前1400年から紀元前400年頃に栄えたオルメカ文明も、メソアメリカ地域で頭蓋改変を行ったことが知られている最古の文明のひとつだ。
オルメカ人の遺跡からも、細長い頭蓋骨が発見されていて、この行為が彼らの社会において重要だったことがわかる。
紀元前2000年から西暦1600年まで存在したマヤ文明は、社会的地域と美の象徴として、頭蓋の形を人為的に変える行為を行っていた。
彼らは、細長い頭蓋骨は見た目に美しく、地位の高い人物を象徴していると信じていたと思われる。
References:Descubren entierro multiple en la Zona Arqueologica de La Ferreria, en Durango / Heart-Shaped’ Cranial Modification Carried Out on Skulls at Ancient Mexican Site of Durango | Ancient Origins / written by konohazuku / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
南北アメリカ大陸の文明って切り離されてたからか
ユーラシア大陸の諸文明とは異質で怖さを感じるわ
2. 匿名処理班
>>1 自分もそう思ってたら、人口頭骸変形の過去記事でフランスなどのヨーロッパやロシアなどでも行われてたとあり、オドロキ。
3. 匿名処理班
イソニアジド ・ メキシコ国立人類学歴史学研究所(INAH)
イソニアジドは抗結核薬
4. 匿名処理班
記事内容も理解できるんだけど、>>1 >>2と同じく異質というかオドロキというか腑に落ちないというか納得できない感じ。
自分にオルメカ文明を始めとする古代メキシコの文化風習についての知識が少ないと言われればそうなんだけどね。
これが刺青だったら納得できるんよ。アレはマーキングだし人が集団生活をする世界中で発生しているのもわかる。
でもなあ、頭蓋骨の変形は大変だしデメリット多くない?発育上の問題も多いような気がする。だから全員に施すわけでなく特権階級(もしくは特権階級にさせるため)だけでしょ?
もっと社会構造上どのような扱いをしてたか知りたいね。
5. 匿名処理班
後のハート様である。
6. 匿名処理班
>>4
頭部変形させるのは頭蓋骨が完全に接合できていない幼少期に行われるので、発育上の問題があったかどうかもわからない(現代社会では実験もできないけど)
また当時の特権階級は宗教と結びついていることが多かったので、問題が出たとしても何らかの「神の恩寵」として崇められていたのかもしれませんね
7. 匿名処理班
ハートどれ・・・?
1:15?
8. 匿名処理班
コーンヘッドぐらいのを想像していたら50倍ぐらいやばかったでござる
9. 匿名処理班
頭蓋骨を変形ってどんな発想だよと思ったら現代日本でも同じ事やってて草
赤ちゃんの後頭部が絶壁にならないようにするヘッドギアってあるんだけど、あれも美しい頭部に変形させるって点では同じだろ
10. 匿名処理班
>>3
INAH
イソニアジド
メキシコ国立人類学歴史学研究所 (Instituto Nacional de Antroplogia e Historia)
11. 匿名処理班
>>9
逆にそれをしないでいつもあおむけに寝かせ続けて後頭部絶壁になるのも「頭部変形」の一つではないのか?
常に背中に背負って世話をすることで、なるべく絶壁にさせない生活なんて今は無理なんじゃ?
12. 匿名処理班
どこがどうハートになってるのか分からなかった…
13. 匿名処理班
なんだこれ首の後ろ?生活しづらそう
14. 匿名処理班
何らかの宗教的儀式の役割を担わせるために生まれたときからこの子はこういう変形を強いるって決めて無慈悲に実行してるのだろうか。
その子が健康的に普通の子と同じように成長する事を否定して宗教的な人生が決定してしまうというのは殺すわけではないけれど生贄と同様の思想なんかなあと。
また逆に特権階級がその特権の象徴として祝福と敬意をもって変形させたのかもしれないというね。
古い文明に対する理解の不足が真逆の想像を為し得るから研究者の人すごく頑張れ。
15. 匿名処理班
ディオ様は実在した…だと!?
16. 匿名処理班
ハートに見える角度ってのはどれ?
どういう風にハートに見えるのか知りたい
17. 匿名処理班
現代人だって美のために骨を削ったり顔の皮膚を切開したりしてるわけで(美容整形)
人間っていつの時代もどこの地域も本質は大して変わらないなあと思う
美容整形を子供の頃からする例は少ないだろうけど、
歯列矯正だったら子供の頃からさせるのがメジャーだし(自分もしてる)
それも一種の骨の変形