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 カナダのカナダのロッキー山脈には、カンブリア紀の海棲動物の化石がたくさん埋まった、5億500万年以上前の地層「バージェス頁岩」があり、これまでもさまざま太古の海の生物たちが発掘されてきた。

 そして今回、驚くべき発見がもたらされた。それは、恐竜が出現するずっと前に海を泳いでいた170点以上のクラゲの化石だ。

 軟組織が化石になることはとても珍しいが、このカンブリア紀のクラゲたちは、触手のような細部まできれいに保存されていた。

 とりわけ新種である「バージェソメドゥーサ・ファスミフォルミス(Burgessomedusa phasmiformis)は、これまでに発見されたものとしては最古のクラゲの可能性が高いという。
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軟組織も化石にしてくれる「バージェス頁岩」

 ほとんどの化石は、長い年月を耐えることができる硬い骨から作られる。ところが、デリケートですぐに傷んでしまう軟組織は、なかなか化石にならない。

 軟組織が化石化するには、普通の地層とは違うかなり恵まれた条件と幸運が必要になる。そうしたとりわけ保存状態のいい化石が発掘される堆積層のことを「ラーガーシュテッテ」という。

 特に有名なのは、カナダ、ブリティッシュコロンビア州にあるカンブリア紀の地層「バージェス頁岩」だ。
 ここはかつて海の中で、そこに生息していた生き物たちが死ぬと、砂よりも粒子が細かい「シルト(沈泥)」に埋もれた。

 そこでは長い時間と圧力が魔法のような力を発揮して、当時の生き物の軟組織を化石にしてくれるのだ。

 たとえば、奇妙な姿で一度見れば絶対に忘れられない古代生物「アノマロカリス」も、このバージェス頁岩で発見された珍しい化石の一つだ。
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バージェス頁岩に保存されていたカンブリア紀のクラゲ「バージェソメドゥーサ」(右)とアノマロカリス(左) / image credit:Desmond Collins c Royal Ontario Museum

地球最古の可能性が高いクラゲの発見で、進化の謎が解き明かされる

 刺胞動物であるクラゲもまた、柔らかく、なかなか化石にならない生き物だ。だが、まったく例がないわけではない。

 刺胞動物はかなり変わったライフスタイルを持つ生き物で、イソギンチャクのように岩にくっつく「ポリプ」と、水中を浮遊する「クラゲ」の二つの生活モードがある。

 そして特に前者のポリプの化石なら、中国湖北省の地層からカンブリア紀初期のものが報告されている。

 ここもバージェス頁岩に匹敵する有名なラーガーシュテッテで、ここで発掘された化石を「清江生物群」という。

 なお、ポリプとクラゲはまったく別の生き物というわけではなく、生活様式のようなものだ。だから一生のうちにポリプからクラゲになる種もいるし、ポリプのまま生きる種もいる。

 だが進化的には、まずポリプが誕生し、それから水中を浮遊するクラゲスタイルを進化させたと考えられているのだが、それを実証するのは、クラゲの化石が希少なために難しい。

 それらしいものが見つかったこともあったが、それはクラゲとはまた別のクシクラゲ(有櫛動物というまったく別の”門”の生き物だ)の化石であることが判明している。

 今回発見された地球最古の可能性があるクラゲ、バージェソメドゥーサの発見は、こうしたクラゲの進化の歴史を解き明かす重要なヒントになってくれるだろう。
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2体のバージェソメドゥーサ・ファスミフォルミスの化石。触手まできれいに残されている / image credit:ean-Bernard Caron c Royal Ontario Museum

 多種多様な生物が誕生したカンブリア紀の海だが、化石を見るかぎり、硬い殻を持つ生物だけがひしめいていたかのような印象を受ける。

 ところが、実際にはクラゲのように体が柔らかい生き物だっていたのだ。

 この研究は『Proceedings of the Royal Society B Biological Sciences』(2023年8月2日付)に掲載された。


追記:(2023/08/05)本文を一部訂正して再送します。
References:Spectacularly Preserved Jellyfish Found in 500-Million-Year-Old Rock : ScienceAlert / These 508-Million-Year-Old Fossils May Be Earth’s Oldest Swimming Jellyfish | Science| Smithsonian Magazine / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2023年08月05日 08:18
  • ID:iJGLm60.0 #

アロマロカリスの口が当初水母🪼と間違えられたんだよね(食腕は🦐に)。
だから古い本📕にはカンブリア期に水母の挿絵があって後から間違ってると叩かれて…
それがまた正しいということに。

2

2.

  • 2023年08月05日 08:44
  • ID:ykFtB2jT0 #
3

3. 匿名処理班

  • 2023年08月05日 09:53
  • ID:.jQlNxT60 #

>化石を見るかぎり、硬い殻を持つ生物だけがひしめいていたかのような印象を受ける
バージェス頁岩の再研究の成果が一般向けに発表されたワンダフルライフ(米1989日本1993)以前の古い見方だな、と
バージェス頁岩再研究(元々1900年代に頁岩化石が一度は採取されていた)で、クラゲほどではないとしても柔らかい体の持ち主が化石として発見されている
とりわけ有名なのがハルキゲニア

4

4. 匿名処理班

  • 2023年08月05日 12:10
  • ID:SxjmkUID0 #

クラゲちゃんてさ半永久的に生きるんだよね
分裂しては再生したりして
記憶の継承とかあるんだろうか?
前々からそれが気になってる(´・ω・`)

へたしたら何十億年もの記憶をもってるのかも

5

5. 匿名処理班

  • 2023年08月05日 12:25
  • ID:euHxZjhU0 #

>>3
ネクトカリスとかピカイアとか超有名どころでも柔らかいのばかりな印象だよね

6

6. 匿名処理班

  • 2023年08月05日 12:45
  • ID:fwTBSlDA0 #

ほとんど水分なのに化石になるのか

7

7. 匿名処理班

  • 2023年08月05日 13:01
  • ID:rtiCrCts0 #

やっぱり刺したんだろうか?

8

8.

  • 2023年08月05日 15:25
  • ID:g4ckPTL10 #
9

9. 匿名処理班

  • 2023年08月05日 15:30
  • ID:g4ckPTL10 #

×「澄江生物群」→○「清江生物群」

10

10. 匿名処理班

  • 2023年08月05日 15:33
  • ID:TsW9PTs.0 #

>>4
それはベニクラゲちゃんや
普通のクラゲは他の生き物と同じで子供を作ったらお陀仏

11

11. 匿名処理班

  • 2023年08月05日 21:44
  • ID:rtiCrCts0 #

>>4 クラゲは脳がないから、どうやって記憶を保持するかだよね。

12

12. アユラ

  • 2023年08月06日 11:44
  • ID:UJbrmpGF0 #

>>6
死骸も残らないから、身体が全部溶けて消える筈では?
化石が有るって事は、今の水母よりも身体が硬かった?

13

13. 匿名処理班

  • 2023年08月06日 15:48
  • ID:BsFR6FPF0 #

>>12
すごい細かい泥の下敷きになって形が残ったんや
ポンペイの石膏像のもっと細かいバージョンみたいな

14

14. 匿名処理班

  • 2023年08月13日 21:36
  • ID:vxJ7Bmv00 #

>>6
軟組織がまんま残るというより、その跡が残ってる感じじゃないかなー

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