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今どきの車は運転支援や衝突防止といったハイテク技術が満載だ。カメラやレーダーなどの高性能センサーを使ったさまざまな便利機能がドライバーの安全に一役買っている。だがひとたびセンサーが傷つくと車の誤作動などの潜在的なリスクになり、致命的な交通事故を招きかねない。
そこで今回開発されたのが、自動車のセンサーに使用可能な「自己修復」する特殊な透明素材だ。既存のレンズ材料から造られたこの素材はコーティング材に活用できる。
その修復方法は簡単で、できた傷の部分に虫眼鏡などで太陽光を当てるだけ。すると60秒以内に傷が消えるという。
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自動車センサーを傷から守り交通事故を防止する「自己修復型」レンズ材料
高感度なセンサーや精密な光学機器も、重要な箇所が傷つけば本来の機能がガタ落ち。それがハイテクな車の安全をつかさどる検知センサーだった場合、異常な動作や致命的な危険運転を引き起こすこともある。この「自己修復型」レンズ材料は、そのような交通事故の防止策として韓国化学研究所 (KRICT)のチームが開発したもの。自動車の重要なセンサー類を傷から守る画期的な材料だ。
ついた傷を虫眼鏡で集めた太陽光で修復。60秒で無かったことに!
この材料の自己修復機能は、高分子(ポリマー)に太陽光をあてることで起きる動的化学結合を利用している。その実験は以下のとおり。この材料の傷が修復する様子だ。レンズ材料でコーティング後に傷つけた光学部品
こすったような傷跡がいくつかみえる

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撮影中のカメラのレンズにあてると傷で車の反射光が伸びてきらりんとしたクロス型に

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そこでいったん外した光学部品の傷部分に虫眼鏡で太陽の光を1分あてる(10倍速)

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するとあったはずの傷が…消えた?

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もう一度カメラのフィルタにしてもこのとおり多少の傷は残っているがさっきのような反射光はない

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見てのとおりその修復効果は太陽の光の照射で発揮される。それも虫眼鏡のようにシンプルな凸(とつ)レンズで集めた太陽光でいいのだ。カメラなどの光学部品でできている自動車センサーもあらかじめこの材料でコーティングしておけばきれいなまま。
表面に傷がついても、そこに集中的に太陽光を当てればわずか60秒以内に傷が無かったことになるのだ。
自己修復レンズの修復プロセス
03. Full video of the self-healing process from Newswise on Vimeo.
高分子と機能性色素から成る自己修復機能。センサーを阻害しない設計
自己修復機能の維持については、一般に硬い材料で作られるレンズや保護材では難しく、分子の運動性からみてもより柔軟な物質のほうが有利となる。そこでチームは、既存のレンズ材料のチオウレタン構造と、透明な光熱変換色素に着目。その2つを組み合わせ、直射日光下で高分子材料が分解・再結合する「動的化学結合」を設計した。

光熱変換色素とはエネルギー変換用色素の一種だ。この色素は近赤外線を吸収して熱に変換する。
今回その色素は太陽光から熱を作り、高分子の分解・再結合、つまり自己修復プロセスを誘発する役目を果たすが、吸収するのは特定の波長域の光で選択的なため、自動車のビジュアルセンサーが使用する可視光領域やLiDAR(ライダー)センサーに使う近赤外領域を妨げることはないそうだ。

つまりハイテク自動車の「目」である、カメラなどの検知センサーの保護材にしても、肝心なセンサーの仕事を邪魔しないようにできている。
その自己修復性は一度きりではなく、同じ場所に5回以上傷がついても修復が確認できたため、チームはこのレンズ材料が「パーフェクトな」治癒特性をもつとみなしている。
韓国で自動運転車の事故多発。センサーカメラを守る材料を開発
研究チームによると、近ごろ韓国では自動運転システムを搭載した自動車の交通事故が多発しているそうだ。
image credit:ID 226859797 via c Beselialuka | Dreamstime.com
その原因がビジョンシステムのセンサーの誤認や誤作動にあることから、国民の間ではハイテク自動車への安全性や信頼性が薄れつつあるという。そこでチームは、センサーの正確な検知に欠かせないカメラなどを傷から守る革新的な材料の開発に着手した。
傷ついても自己修復するレンズ材料で自動運転車の安全性向上
自己修復機能を持つレンズ材料でのコーティングなら、コストが高いセンサーが直に傷つくのを防ぐだけでなく、傷ついても自己修復できる。しかも機能を妨害したり、精度をひどく下げることもない。つまりこの材料だけで、これまで問題だった損傷がある程度解決し、センサーのカメラについた小さな傷が原因の致命的な事故も予防できる。またこうした保護でセンサーの寿命も延びるだろう。
ダメージの程度にもよりそうだが、表面の傷による誤作動も最小限になるというこの材料は、この先普及するであろう自動運転車の安全性向上に役立ちそうだ。
メガネやカメラだけでなく自律型走行車のセンサーにも
この素材について韓国化学研究所所長のイ・ヨングク博士はこう語る。これは安価な高屈折ポリマー材料と光熱変換色素の両方を使用して、自己修復レンズ材料を合成するプラットフォーム技術です。メガネやカメラだけでなく、自律型走行車のセンサーなど様々な用途に広く活用されることが期待されます。高性能でデリケートなセンサーだらけのハイテク自動車に役立つ自己修復材料。虫眼鏡のように簡単な集光レンズと太陽の光で傷が修復できるとは手軽だし、透明だから使いやすそう。
詳しいコーティング方法や修復の限界とかも気になるけれど、この材料を活用すればすり傷がつきやすいメガネのレンズやカメラ付きの精密機器も長持ちしそうだな。
References:designtaxi / techxploreなど /written by D/ edited by parumo
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コメント
1.
2. 匿名処理班
どうやって傷がついたのを検知するの?
わざわざ虫眼鏡で修理するのは手間だ
そもそも自動で修復しないものを自己修復とは呼ばない
3. 匿名処理班
既に売ってる商品でほぼ同じのがある。
4. 匿名処理班
新造人間キャシャーンが太陽の光で怪我を治していたよね すごくポジティブなイメージ
5. 匿名処理班
金属もそういうの開発されて「クリスティーン」みたいに事故っても「ボコッ」って復活するようになったりして
6.
7. 匿名処理班
心に塗れば失恋の傷も消えますか?
8. 匿名処理班
この技術を応用して、太陽の光にあてるだけで髪が生える商品が実用化されたら人生が明るく照らされる人も多数いるだろう
9. 匿名処理班
個人的には車のセンサーよりスマホの画面に欲しい技術
10. 匿名処理班
傷が付きやすいけど修復できる材料か
傷が付きにくいけど修復できない物で
意見分かれそうよね
11. 匿名処理班
形状記憶合金的なものかと思ったけど少し違うようだ
12. 匿名処理班
板金屋が失業する時代が来るのかぁ。
13. 匿名処理班
板金屋ってガラスも直せるんやすごいんやなぁw
14. 匿名処理班
すまない。ガラスの話してたのねw