地球から27億光年の彼方で、天文学史上最大級の「超大質量ブラックホール」が発見されたそうだ。
『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』(2023年3月29日付)で紹介された怪物ブラックホールは、太陽のなんと300億倍以上の質量がある。
「Abell 1201」という銀河団にあるそのブラックホールは、理論上の限界と考えられる大きさであるだけでなく、「重力レンズ」という特殊な現象を利用することで発見された。
アインシュタインが予測したこの不思議な現象は、いかにして怪物ブラックホールの発見につながったのか?
太陽の300億倍以上ある史上最大級のブラックホール
天文学にさほど興味のない人でもブラックホールなら知っているだろう。巨大な重力で光すら逃れられず、ときにダークマター(暗黒物質)の証拠すらもたらしてくれるその特徴は、一度聞けば絶対に忘れられないインパクトがある。
だが、その知名度とは裏腹に、ブラックホールは謎めいた存在だ。光を放つことがなく(ゆえに間接的にしか探せない)、しかも非常に遠くにあるので発見が難しいのだ。
だから新たにブラックホールが発見されれば、さまざまな学びがもたらされる。
とりわけ今回発見された超大質量ブラックホールは絶好の学びのチャンスだろう。というのも、2つの意味で非常に珍しいブラックホールだからだ。
まずこのブラックホールは、「太陽の約327億倍もの質量」がある。これまで検出された中では最大級のもので、理論上考えられるブラックホールの大きさの上限に達している。
天文学史上最大級の「超大質量ブラックホール」 / image credit:ESA/Hubble, Digitized Sky Survey, Nick Risinger/skysurvey.org, N. Bartmann
アインシュタインが予測した宇宙の「重力レンズ」により発見
もう1つ珍しいのは、この怪物ブラックホールが「重力レンズ」という不思議な現象によって発見されたことだ。重力レンズとは、アインシュタインの一般相対性理論から予測された現象で、天体の質量によって光が曲がることで起こる。
たとえば銀河や銀河団のような非常に重たい天体があると、その質量によって周囲の時空が歪む。それがまるでレンズのように光を曲げることから、このような名称がついている。
レンズというだけあって、これを通すことで、その向こうにあるそのままでは遠すぎて観察できない星々であっても、詳しく調べられるようになる。
だが、それと同時に重力レンズを作り出している天体そのものについても知ることができる。今回のケースがそれだった。
銀河団の中にはまるでボスキャラのようなもっとも明るい銀河(これを「BCG」という)があるのだが、Abell 1201のBCGは重力レンズを作り出すことで知られていた。
イギリス、ダラム大学をはじめとする研究チームは、この重力レンズを通過する光を分析し、その背後にある天体の質量を計算してみた。その結果が、太陽の300億倍以上という怪物ブラックホールだったのだ。
この怪物は、重力レンズを利用して発見されたブラックホール第一号であるそうだ。
UMBH Gravitational Lensing video
さらなるブラックホールの発見に期待
この重力レンズを用いた方法は、史上最大級のブラックホール発見につながっただけでなく、今後さらなる同様の発見を期待させるものだ。とりわけ期待されるのは、普通なら見えないブラックホールの発見だ。
「不活性ブラックホール」というタイプは、周囲に飲みこむことができる物質がなく、放射線を発しないため、通常の方法では発見困難とされている。だが、この重力レンズを利用したやり方ならば見つけられるかもしれない。
研究チームのジェームズ・ナイチンゲール氏は、重力レンズなら「私たちの周辺の宇宙のさらに向こうにある数多のブラックホールを検出し、これらエキゾチックな天体の進化を宇宙時間のさらに昔にさかのぼって明らかにできるようになります」と、プレスリリースで述べている。
References:Light-bending gravity reveals one of the bigg | EurekAlert! / Scientists Discover One of the Biggest Black Holes Ever / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
条件を越えたブラックホールは「裏返る」のかな、それとも破裂するのかもしれないな。
2. 匿名処理班
27億光年の先から重力によって映像を歪める存在
宇宙コワイ
3. 匿名処理班
ワイらが宇宙と思っている空間自体がブラックホールの中だったりして
4. 匿名処理班
考えますに、宇宙が無かった状態に戻ろうとしているのではないかと
5. 匿名処理班
何が何だかさっぱりわからん…
単純に凄そうだ
6. 匿名処理班
ブラックホールの名前見て濃い奴らが集まるイベント開催を
思い出してしまった
7. 匿名処理班
>これまで検出された中では最大級のもので、
>理論上考えられるブラックホールの大きさの上限に達している。
ブラックホールの質量の上限って、どういう形で考えられてるんだろう
8. 匿名処理班
数年後…
「新たな超巨大ブラックホール発見! 地球から僅か1光年!」
9. 匿名処理班
なるほどわからん
10. 匿名処理班
太陽「俺は地球の33万倍!」
BH「じゃあ…じゃあ…僕はその327億倍!」
人「中二病乙」
11. 匿名処理班
>>4
追記すると、泡が生じて膨らむうちに穴が開いて萎むように
12.
13. 匿名処理班
>>8
それは無い(w
1光年程度の近距離に有ればマイクロブラックホールぐらいの小ささならともかく
超巨大なのが存在してればアインシュタイン博士が論文と共に証拠として出してたと思われる
実際これだけ質量のでかいBHだとどのくらいの数のBHが合体したのだろう?
14. 匿名処理班
≻太陽のなんと300億倍
こんなにでかくとも直系(事象の地平線、だったっけ?)は
結構ちんまりしてるんだよね
15. 匿名処理班
真ん中に穴が空いているだけで何故か怖いな イメージ図ですら恐れおののく
16. 匿名処理班
第二形態来るよ
17. 匿名処理班
>>7
ブラックホールは周囲の物質を吸収して成長するけど
引力が届く範囲の物質を吸収し尽すと成長が止まる。
ブラックホールから十分に離れた物質はそのブラックホールより
他の天体の引力を強く受けるから引き寄せられなくなるそう。
18. 匿名処理班
天の川銀河は太陽の約1兆2600億倍の質量らしいから
このブラックホールは天の川銀河の40分の1くらい。
下手な銀河よりもでかいレベル。
19. 匿名処理班
ブラックホ−ルの密度すごいな
地球全体をサクランボの大きさに押し込めたくらいだそうだ
太陽がブラックホ-ルになると半径3kmほどなので
質量が327億倍で密度が同じとなると半径が3200倍の9600km
つまり直径約2万キロの球体ということですね。
地球2個並べたより少し小さい直径の球体です。
20. 匿名処理班
>>8
1光年ってシュワルツシルト半径の外縁から1光年ってこと?
光を飲み込む降着円盤と上下から噴き出すジェットが綺麗に見えそう
21. 匿名処理班
>>19
>地球全体をサクランボの大きさに押し込めたくらいだそうだ
これは「ブラックホールはこの密度」ということではなく
「引力が光も逃がさない強さになるライン」ではないかと。
実際のブラックホールは重力崩壊によって
永久に収縮を続けている状態なので
中心部の密度は理論上無限大なんだとか(特異点)。
22. 匿名処理班
第1号でこれだと宇宙どんだけやばいんだってなって頭おかしくなる
23. 匿名処理班
しばらくしたらこれの3倍4倍とか意味不なモノが続いて、からの100倍200倍…
24. 匿名処理班
>>23
いまある「理論」が破綻してから次世代に進歩するのはあるあるだから、さらに大きいのは発見されていい
25. 匿名処理班
ようするに東京ドーム何個分ですか?
26. 匿名処理班
けどこれより質量のあるブラックホールもあるんだよなぁTON618とか
「理論上」が言葉だけになりそう
27. 匿名処理班
>>4
宇宙の始まりビッグバンはある一点から突如フッと始まったと聞きます
ブラックホールは物質が極限まで集中し、下のコメントでも挙げられる通り中心部は密度が無限大の特異点と呼ばれます
さてSF好きとしてはこれらを結びつけない手はない…
無に帰るのではありません。新しく始まるのです。次のビッグバンが…!(壮大なBGM)