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世界で最も有毒なキノコがアメリカで大増殖、カリフォルニア州を制圧

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 「世界で最も有毒なキノコ」としてギネスブックにも掲載されている「タマゴテングタケ」が、米カリフォルニア州で大量増殖し猛威を振るっている。

 ヨーロッパが原産だと考えられているタマゴテングタケだが、このキノコは一体どうやって海の向こうの土地を征服することができたのか?

 新たな研究によると、タマゴテングタケは猛毒であるだけでなく、「無性生殖」で自分自身をコピーし、クローン軍団を作ることで新しい土地を制圧しているようなのだ。

世界最凶の猛毒キノコ「タマゴテングダケ」

 ヨーロッパに多く自生する「タマゴテングタケ(学名 Amanita phalloides)」は、一見地味でおとなしそうだが、絶対食べてはいけないヤバいヤツだ。

 その強力な毒から、ドクツルタケやシロタマゴテングタケとともに「猛毒キノコ御三家」に数えられ、「最も有毒なキノコ」としてギネスに載ったり、古くはローマ教皇クレメンス7世の命を奪ったりと、危険なエピソードに事欠かない。

 日本では北海道で発見されることがあるが、本州以南の地域では見つかることは今のところ稀だそうだ。

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photo by iStock

 タマゴテングタケのタチの悪いところは、その毒素が遅効性で、じわじわと、しかし確実に命をトりにくるところだ。

 その毒素成分の1つ「α-アマニチン」を口にしても、最初は何の変化もない。だが体内では腸から肝臓に侵入し、そこで新しいタンパク質を作るための酵素をダメにして、少しずつ人体を蝕み続ける。

 すると肝臓や腎臓の細胞が死に始め、24時間もする頃にはコレラのような吐き気や下痢に苦しむことになる。臓器の機能は急激に低下し、最後は危険なキノコをうかつに食べた愚か者の命を奪う。

 今のところ解毒剤は存在しないので、対症療法でどうにか命をつなぎ留めるよりない。

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photo by iStock

タマゴテングダケはどうやってカリフォルニアを制圧したのか?

 そんなタマゴテングタケは英名を「デス・キャップ(死のカサ)」といい、19世紀末頃にヨーロッパからアメリカ大陸へ持ち込まれたと考えられている。

 本来このキノコは、ヨーロッパナラの木の根に寄生して生きる「外生菌」だ。

 そこから養分をもらう代わりに、水や栄養を探す手伝いをしたり、近くの木が発する化学信号をキャッチするなど、共生関係を築いている。

 だからおそらくはタマゴテングタケの胞子が付着した木がアメリカに輸入されたことで、北米大陸に渡ったのだろう。

 1938年には、カリフォルニア州にあったとある有名リゾートホテルの観葉植物の根から生えているところが目撃された。

 それからマツやブナといった木々にどんどんと広まり、原産地であるヨーロッパよりもカリフォルニアの方がよく見られるようになってしまった。

 だがいくら猛毒キノコとはいえ、見知らぬ土地でそう簡単に勢力を広めることができるものなのだろうか?

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photo by iStock

無性生殖で自己増殖しクローン軍団を編成

 これまでタマゴテングタケがカリフォルニアを制圧した方法はわかっていなかったが、新たなる研究によると、どうやらそれはクローン軍団を編成した結果であるらしい。

 DNA配列の分析から、ヨーロッパのタマゴテングタケが「有性生殖」で増えることなら確認されていた。

 ところが、ウィスコンシン大学マディソン校をはじめとする研究チームが、カリフォルニアのタマゴテングタケの遺伝子を調べてみたところ、「無性生殖」すなわち自分自身のコピーを作って増えていたことが明らかになったのだ。

 カリフォルニアのキノコはどれもまったく同じ遺伝子を持っており、異性のパートナーがいなくても17~30年は増殖できるようなのだ。

 このことから研究チームは、タマゴテングタケは新しい環境にやってくると無性生殖に切り替え、クローン軍団で制圧してから元の有性生殖に戻るのではとの仮説を立てている。

 しかしこの新発見からは、新たな疑問も浮かび上がってくる。

 というのもニュージャージー州とニューヨーク州に生えてたタマゴテングタケには、無性生殖で増えた形跡がなかったのだ。

 もしかしたら、クローン軍団を作るには、時期や環境といった何らかの条件があるのかもしれない。

 またこうしたコピー能力が、タマゴテングタケならではの特殊能力なのか、侵入種キノコに一般的なものなのかも気になるところだ。

 その謎はキノコの専門家たちがいずれ解明してくれることだろう。差し当たり私たちは、安全な食用キノコを美味しくいただきながら、続報を待つことにしよう。

 この研究の未査読版は、現在『bioXiv』(2023年1月31日投稿)で閲覧できる。

追記:(2023/02/23)本文を一部訂正して再送します。

References:World’s deadliest mushroom conquered California with a clone army, study reveals | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 41件

コメントを書く

  1. こわいなあ・・、カエンタケとかもそうだけど有毒なきのこが増えていってるね。
    いまに人間も某ゲームみたいに胞子に侵食されそうだな。

    • +7
  2. タマゴテングタケについてwikiを覗いたら、いかにもカラパイア好みの一節がありましたよ♪

    「種名phalloidesの意味は「男根 (phallus) に似た (-oides) 」であるが、文字通りの意味なのか、Phallus(スッポンタケ属)に似ているという意味なのかははっきりしない。」

    • +9
  3. パートナーがいないなら自分で、そうでなくなったら有性で増えるとか、数で制圧する戦略が優秀過ぎる。
    ネックは木に寄生することくらいか。

    • +8
    1. >>6
      カエンタケは毒素が揮発しているので近づくだけでかなり症状が出てくる

      • +1
    2. >>6

      カエンタケは触れるだけでも危険だから食う人はまずいないし、ペロッてもクソマズだから吐き出す。
      食って亡くなった人数的にタマゴテングタケの方が多いからコッチが危険だねと言うこと

      • +4
      1. >>39
        カエンタケに触れるだけで危険って言われてるの、そーでもないらしいよ
        実際に自分で実験した人がいて、粘膜みたいな吸収されやすい部位以外なら
        大丈夫っていう結論になってた。基本食わなきゃ平気だと思う
        猛毒あるけど美味しい食べちゃいたくなるきのこのほうが実際やばい気がする
        テングタケ系はまさにそれ

        • -1
  4. なんのためにこんなスゴい毒を…
    もう絶対に天敵に食べられたくないんだな。
    …っつか、天敵いるのかな?

    • +7
    1. >>7
      鳥にとっての唐辛子は辛くない普通の果実だったり、大抵の生物にとって猛毒なネギ類を食べる人間だったり

      自分以外に万能の毒ってものは難しいよ

      • +8
      1. >>31
        ちょっと前にリスが毒キノコ食べてる写真がネットに上がって話題になっていたね

        • 評価
  5. タマゴタケの間からタマゴタケモドキが生えたりするから、テングタケの類は基本食うな、と爺さんに教わった。タチの悪いことに美味らしい。

    • +13
  6. 切り替えのシステムがわかったら人間にも応用できたりしないかな

    • +3
  7. 人間もパートナーがいない環境では無性生殖出来ればいいのに…

    • +5
    1. >>10
      だが待ってほしい。本当にそう思うのか…?

      • +1
  8. きのこの胞子は雨滴を形成する時の核になるそうだから、風にのって遠くまで運ばれてきて雨と一緒に落ちてきたのかな?

    • +3
  9. だが無性生殖による同一クローンならば、ある日いきなり病気が流行って全滅ということもあり得る。
    恐らく植物学者たちもそんな病気の探索を始めているだろう。

    • +12
  10. 逆にこれ食べる生物がいるのかな?
    肝臓に作用するなら哺乳類に効きそうな毒に聞こえる
    たとえば虫とか菌とかの”天敵”いないのかな

    • +6
    1. >>13
      これもテングタケ科のようだから、イボテン酸ももってないかな。イボテン酸はうまいらしいので、ちょっと食べてみたいw

      • 評価
    1. >>14
      地上に出てるキノコは本体の菌糸のごく僅かに過ぎないッ!!!
      我らは既に奴らのテリトリー奥深くに侵入してしまったのだッ!!!
      (ゴゴゴゴゴゴ)

      • +8
  11. カエンタケは食べるまでに至らないぐらいヤバいと思う

    • +5
    1. >>15
      カエンタケは一般的に大騒ぎされてるほどヤバいものでもないってキノコオタク(専門家含む)の人達が言ってたけどな
      いや、もちろん食べたらダメなんだけど、触っても平気な人も割と多いし知らない人が大袈裟に騒ぎすぎ、もっと地味な見た目でしれっと生えてるやつの方が危険なのたくさんあるから注意喚起ならそっちをすべきなのにって

      • 評価
      1. >>20
        いや、何が言いたいんだ
        大した事がないから素手で触ろうとかいってのかソイツは
        そんな無知無教養でお前さんを害する事が確実な奴とは距離をおいたほうがいいんじゃないか

        • +5
        1. >>38
          危険性に尾鰭がつきすぎて実態と乖離してるってだけでしょ
          むしろ何故上の文章読んでそんな事も分からないのかが不思議

          そして文脈的に身の回りにいる知人とかじゃなく、識者の記事や論文、動画や番組での発言から得た知識だろうから、後半の文章を書くに至った発想も滑稽

          • 評価
  12. 最強の毒持ちはミカワクロアミアシイグチだと思う

    • +3
    1. >>17
      このキノコ凄いですね。猛毒すぎて致死量不明って…

      • +1
  13. タマゴベニテングダケとの表記になってる箇所がある。

    • 評価
  14. クローンで制圧してから有性に切り替えるムーヴ強い。一見毒キノコに見えないのも怖い
    毒持ってる奴は食われると困るから毒々しい見た目で警告するのに
    こいつからはそういう危機感も感じない
    食われても増えまくるし確殺だから見た目が変わるような進化が起きなかったってこと…?

    • +4
  15. キノコというには分類じゃないでしょ。
    真菌ね。

    • -2
  16. キノコ → サルマタケ → 『男おいどん』 → 松本零士
    と連想した。
    合掌。

    • +1
  17. 毒殺事件が増えてFBIも忙しくなりそうだな

    • 評価
  18. 見てみて海を渡って変な気球が飛んで来たよ

    • +2
  19. カエンタケ教信者のワイにとってはタマゴテングタケなどひよっ子レベルなのだが?

    • 評価
  20. 昔これに似たキノコを池山吊尾根の登山道で見た事がある

    • 評価
  21. まあ、食べなきゃ済む話ではあるんだが。
    見た目あまり凶悪に見えないのがまた厄介そうだな。

    • +2
  22. 自己増殖型クローントルーパーですやん

    • 評価
  23. アメリカでは温暖なカリフォルニアで増えているのに、日本では北海道では発見されるも本州には稀なのが興味深いな

    • 評価

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