
にもかかわらず、中世の写本の中には、このモフモフな生き物の、遊び心のある愛らしい姿を描いているものも多い。これはどういうことなのだろうか。
これらの非常に興味深い描写から、私たちは、中世の人々の猫に対する態度について多くを学ぶことができる。
結局猫たちが、中世の人々の日常生活の中で欠かせない中心的な存在だったのは、言うまでもない。
中世の貴族たちにとってペットはステータスの証
中世ヨーロッパでは、男も女も、飼っている動物によって、そのステータスを識別されることがよくあった。例えば、ペットのサルは、遠い異国から持ち込まれたため、異国情緒があると考えられ、所有者は裕福な証拠だとされた。
ペットは、貴族のアイデンティティの一部となっていたのだ。愛玩以外の機能的な目的がとくにない代わりに、注目や愛情、上等な餌をふんだんに与えられる動物を飼うことは、高い地位をはっきりと示すものだった。
中世で高い地位にある男女が、犬や猫などのペットと一緒の肖像を完成させるのは、珍しいことではなかった。
祝宴や家庭内を描いた絵の中に猫の姿が見られることは一般的で、中世の家庭内でのペットの地位を反映しているように思われる。
画家ピエトロ・ロレンツェッティの描いた「最後の晩餐」では、猫が暖炉のそばに寝そべり、犬が床に置かれた余った料理の皿を舐めている。

猫も犬も、このシーンを物語るような役目は果たしていないが、見るものにこれが家庭の空間であることを示している。
同様に、オランダの時祷書(特定の祈りで一日の区切り時間を表した中世の一般的な祈祷書)の細密画では、こじんまりした家の中にいる男女と、かわいがられているらしい猫が左隅の床から見上げている姿が描かれている。
ここでも、猫は絵の中心ではなく、とくに目を引く存在ではないが、この中世の家庭空間で、受け入れられていることがわかる。

中世の家庭で猫はかわいがられていた
現代と同じように、中世の家庭でも猫に名前をつけた。例えば、13世紀のビューリー修道院の猫は、中世の写本の余白にあった猫の落書きの上に、緑色のインクで書かれた文字によると、「マイト」(チビ)と呼ばれていたようだ。中世の家庭では、猫をよくかわいがった。13世紀始め、オックスフォードシアのククサムにあった邸宅で、猫のためにチーズを買ったという記述がある。ちゃんと人間に面倒を見てもらっていたことがわかる。

14世紀のフランス女王、バイエルンのイザボーは、自分のペットのための装飾品に多額の金をつぎこんでいた。
1387年、彼女はペットのリスのために、真珠が埋め込まれ、金のバックルがついた首輪を注文した。さらに1406年には、猫のための特別なカバーを作るために、鮮やかな緑色の布を購入している。
猫はまた、学者たちにとってもおなじみの相棒で、16世紀には猫への賛辞は珍しいことではなかった。
ある詩は、「猫は学者の光であり、最愛の相棒だ」と表現している。こうした誉め言葉には、猫への強い愛着が表れている。
猫が主人を元気づけるだけでなく、読み書きの難しい知的な仕事から一時、解放してくれる気晴らしを提供していたことがわかる。
中世修道院と猫の関係
中世の宗教的空間でも、猫はステータスシンボルとして多く登場している。それがわかる中世の写本はたくさんあり、例えば、尼僧と猫を描いた小さな装飾や、時祷書の余白にも頻繁に猫の落書きが登場する。

しかし、中世の説教文学の中には、猫を飼うことについての批判もたくさんある。
14世紀の英国の牧師、ジョン・ブロムヤードは猫のことを、貧乏人が飢えているというのに、利益をひとりじめした金持ちの大食漢の無用な飾り物だとみなした。
さらに、猫は悪魔と関わりがあるという記録もある。
ネズミを獲るときの忍びの技と狡猾さが褒めたたえられる一方、そうした性質は人間の相棒としてふさわしいとは必ずしも解釈されなかった。
こうした考えが歪んだ影響を及ぼし、中世期に黒死病やその他の疫病が蔓延したとき、元凶だとして猫が殺される残忍な行為につながった。
数が増えた猫が、原因であるノミに寄生されたネズミの数を減らしたかもしれないというのに。

こうした関連性から、多くは神聖な修道会には猫の居場所はないと考えた。
正式なルールはなかったようだが、宗教界のメンバーたちは、猫を飼うことを禁じられていたという。
猫を飼う習慣への批判が続いたのは、逆に言うと、猫をペットとして飼うことがそれだけ普及していたことを示している。

中世も現代も猫と人間の関係はさほど変わらない
たとえ、宗教界が猫を社会的に受け入れないと考えていたとしても、それでも猫がかわいがられていたことは確かだ。修道院で見られる、遊び心のある猫の絵からも明らかだろう。
ほとんどの猫は、中世の家庭の中で静かに暮らしていた。多くの中世の写本や芸術作品に描かれたおどけた猫の絵からわかるように、中世のご先祖さまたちと猫との関係は、現代の私たちとそれほど変わらなかったといえる。
Cats In Medieval Paintings Looked Really Creepy
References:Cats in the middle ages: what medieval manuscripts teach us about our ancestors' pets / written by konohazuku / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
中世の挿絵職人絵下手すぎ問題
2. 匿名処理班
猫に魔力があるのは本当だと思うね
とてつもない可愛らしさで人を骨抜きにして、学校も仕事も投げうってずっと一緒にいたいと思わせる
恐ろしい…
3. 匿名処理班
現代でパソコン触ってると、もれなく猫が乗ってくるように中世でも書き物調べ物してると猫が乗ってきて困っちゃう〜みたいのあったんかな。
4. 匿名処理班
>>3
日本外国双方の昔の書物で、猫が踏んだ足跡入りのものを見た気がする
困っちゃう〜(ニヤニヤ)ってやってたはず
5. 匿名処理班
貴族や富裕な階層を中心に、修道院でも猫はペットとして愛されてたけど、奢侈の象徴として禁欲的な修道会なんかには敵視されることもあったって所なのかな。猫が害獣のネズミを捕ることは経験的に分かってるのに、その習性に狡猾さを見いだすっていうのはちょっと浮き世離れした発想だね。
6.
7. 匿名処理班
>>5
二面性があるのは仕方がないのだ
日本でだって猫は可愛がられる一方で妖怪として恐れられていて、とくに尻尾の長い猫はおそれの対象となっていた
なぜ「ジャパニーズ・ボブテイル」が誕生したかを調べると結構闇だったりする
西洋社会との交流開始後に原種としての"ジャパニーズ・ボブテイル"は一度壊滅していますけどね
8. 匿名処理班
地球の生態系の頂点だから当然と言えば当然
9. 匿名処理班
お祈りの最中神父さんに猫がまとわりついて来る光景が昔もあったんだろうな
10. 匿名処理班
当時はどんな種類の猫様が流行ってたんだろう♪
今とあまり種類は変わらないのかな?
11. 匿名処理班
>>5
人間同士でも生活に必要な仕事を担う人を蔑む歴史があるんだから
むしろ浮世では
12. 匿名処理班
色んな場面にカメオ出演 名優やがな
13. 匿名処理班
>>5
キリスト教では司祭や修道士、牧師は「(神の羊である信徒をまとめ導く)牧人や牧羊犬」として表現される事も多いので「基本的に群れない」「指示に従うかも気分次第」という猫は白眼視されたのかも?
14. 匿名処理班
>>1
挿絵ってイラストレーターさんじゃなくて、書き写した教会の人とかが描いてたらしいよ
15.
16.
17.
18.
19. 匿名処理班
ち ょい ちょい人 面 猫が出てくるなw
20.
21. 匿名処理班
>>3
このまとめサイトの過去記事に猫の足跡がついてる書籍(当時は手書きで写本していたので)の記事があったりする
22. 匿名処理班
クドい顔をした猫
23. 匿名処理班
かまってポーズするにゃんこの可愛さには誰も抗えぬ。正に人を骨抜きにする悪魔やでぇ。