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海に音楽を流して大量の牡蠣の赤ちゃんを召喚!カキ礁復活プロジェクト

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(著) (編集)

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 どこかからか心地の良い音楽が流れてきて、自然と足がそちらへ向かっていったなんて経験はあるだろうか?

 実は海にいる牡蠣(かき)も同じなのだそうだ。彼らは音を頼りに、健全な生息環境が広がる引越し先を探すという。

 現在オーストラリアでは、牡蠣のこの習性を利用したユニークな牡蠣礁(かきしょう)復元プロジェクトが進められている。

失われた牡蠣礁を取り戻す試み

 牡蠣礁(かきしょう)とは、干潟や河口の砂泥地などの浅海域にある、貝殻が集積して形成される礁(しょう)のことだ。

 オーストラリアをはじめ、世界では健全な生態系を回復させるために牡蠣礁の復元が試みられている。

 牡蠣礁は、水をろ過してキレイにしてくれるし、魚の住処にも海洋生物のエサにもなる。豊かな生態系には欠かせない存在なのだ。

 かつてオーストラリアの海には、数千キロもの牡蠣礁が広がっていたが、植民地時代初期に食料やセメントの原料として、9割以上が破壊されてしまった。

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グレネルグ・牡蠣礁プロジェクトの現場。牡蠣が定着する石灰岩を設置している / image credit:Maritime Constructions, CC BY

牡蠣の赤ちゃんを呼び寄せる為に音を利用

 だが、牡蠣礁を回復させるには、1つ難題をクリアしなければならない。それはどうやって牡蠣の赤ちゃんを呼び寄せるのか? ということだ。

 牡蠣礁を復元するには、その基礎となる石灰岩などを海底に設置する。だが、せっかくの岩場も、そこに牡蠣の赤ちゃんが定着してくれなければ、何の意味もない。

 そのためのアイデアが音である。

 私たちは目に頼ることが多いが、海では耳に頼る動物がたくさんいる。

 音は、水の中では光よりずっと遠くまで情報を伝えることができ、ニオイのように海流に流されてしまうこともない。だから海の生物にとって聴覚は、視覚や嗅覚よりも便利なのだ。

 サンゴ礁や岩礁に潜ったことがある人なら、健康なサンゴ礁がびっくりするほど騒がしいことを知っているだろう。魚がエサを食べる音やエビが跳ねる音など、さまざまな不協和音が聞こえてくる。

 こうした騒音は、そこに活気ある健康な環境があることを遠くまで伝えてくれる。じつは牡蠣の幼生は、こうした音を手がかりにして、定着すべき岩場を探している。

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photo by iStock

音を流したところ、大量の牡蠣が集まり、大きく成長!

 そこでアデレード大学の研究チームは、健全な牡蠣礁が残るポート・ノアルンガ・リーフの音を録音し、これで牡蠣の赤ちゃんを呼び込めるかどうか試してみることにした。

https://besjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1365-2664.14307 『Journal of Applied Ecology』(2022年10月25日付)に掲載された研究によると、実験は大成功だったそうだ。

 アデレードやヨーク半島の沖合にある牡蠣礁再生地域で録音した音を流したところ、1平方メートルあたり最大1万7000個もの牡蠣が集まってきた。それだけでなく、その後5ヶ月で、4倍近くも牡蠣が大きく成長したのだ。

 一方、牡蠣がいない場所で録音した音を流してみても、牡蠣が定着することはほとんどなかったとのことだ。

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サウスカロライナ州ハンティング島州立公園の釣り桟橋の中ほどにある牡蠣礁 / image credit:public domain/wikimedia

牡蠣の幼生は器官で音を感じ取ることができる

 牡蠣が音を聞いているという事実は意外だろうか?

 人間の耳は、音波が鼓膜に加える圧力で音を聞き取っている。アザラシやイルカなどの海洋哺乳類も同様だ。しかし、魚や牡蠣はまた違ったやり方で音を聞く。

 魚と同じように、牡蠣の幼生は、音波が通過するときの水の粒子の動きを察知することができる。

 音は水の粒子を押しつぶしたり、引き伸ばしたりして、音が伝わる方向へ振動を流す。牡蠣はこの動きを「平衡胞」という器官で感じ取れるのだ。

 それはとても小さな器官で、大人の牡蠣で見つけるのはほとんど不可能だ。だが牡蠣の幼生はこれを前に突き出しながら、健康な環境を探し求めて泳ぎ回る。

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牡蠣の幼生は産毛の中に音を感じる器官を持っている / Image Credit: S. Pouvreau/Ifremer, Author provided

騒がしくて活気に満ちた牡蠣礁を取り戻す

 ずっと以前に壊れた生態系を回復させるのは簡単なことではない。だが今回の技術は、牡蠣を新しい住処に誘導し、牡蠣礁を回復させる手助けになると期待されている。

 それは万能の解決策ではなく、マイナス面もあるかもしれない。たとえば、牡蠣の幼生を呼びすぎて、ほかの牡蠣礁が犠牲になる可能性はあるし、捕食動物が一緒に集まってくる可能性もある。

 しかし慎重に行えば、静まり返った海に、また以前の騒がしくて活気に満ちた牡蠣礁が戻ってくるのではないだろうか。

References:Playing sea soundscapes can summon thousands of baby oysters – and help regrow oyster reefs / written by hiroching / edited by / parumo

追記(2022/011/01)タイトルの誤字を訂正して再送します。

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この記事へのコメント 15件

コメントを書く

  1. 意味が分からん

    再生地区で牡蠣を一ケ所に集めたら密度がまばらになって全体の再生率は下がる気がするが、全体での比較調査のデータが無い

    結局、全体で増えたのか?それとも減ったのか?

    もし全体で増えているのなら、牡蠣礁再生地域を狭めて一局集中にすればいいだけでは?

    • -11
  2. 海の生き物は人間の耳には聞こえない音を聴いてるかもしれない

    • +6
  3. 不思議の国のアリスの牡蠣のくだりを思い出した

    • +4
  4. カキの幼生が音に引き寄せられるという研究はある。
    テッポウエビのハサミの音が標識らしいとのこと。

    • +2
  5. 一番最初のト音記号の写真、、、
    ヒザの皿の裏側にびっしりと、、の都市伝説や。

    • 評価
  6. 音っつうことは音波であって、音波っつうことはエネルギーの伝播と考えられる。
    聴覚とか感覚器官の混乱を意図して、というよりも自然に音波という形で局所的にエネルギー(仕事量)が多く集まるから、そこで微生物が増えて、それを捕食する捕食者が現れて更にまた……このサイクルの結果、カキの様な比較的高等な生物まで集まる。

    • -2
  7. 植物にクラシックとか聞かすの流行ってたよなw

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  8. 養殖でより多くの幼生を定着させられってことでもあるね

    • 評価
  9. 同種で固まっていないと有性生殖ができないからフジツボみたいなカキ以外の固着性動物でも同じように定着場所の選択をしている可能性がありそう

    • +1
    1. ※14
      サンゴやクラゲ、海綿なんかも小さい頃に浮遊と固着をする生き物だから可能性あるんじゃないかな?
      海は生物が集まってる所と何にも居ない所が極端だから、その説明の一端になるかも?

      • 評価
  10. セイウチと大工と牡蠣の話そのままだな

    • 評価

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