メインコンテンツにスキップ

海洋生物が赤道から冷たい水に逃げ出している。大量絶滅の兆候なのか?

記事の本文にスキップ

36件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
photo by iStock
Advertisement

 色とりどりのサンゴ礁や熱帯魚など、豊かな生態系で知られる赤道直下の海だが、今、そこに住んでいた海洋生物たちは、冷たい水のある場所へ逃げ出しているそうだ。

 『PNAS』(4月13日付)に掲載された研究では、赤道の海がすでに多くの種にとって熱くなりすぎていると警鐘を鳴らしている。地球温暖化が原因だ。

 地球の歴史を振り返ると、海洋生物の9割が死に絶えた大量絶滅期にまったく同じ傾向が見られたそうだ。 

赤道から引っ越しする海洋生物たち

 ニュージーランド、オークランド大学をはじめとするグループが調べたのは、1955年以降に収集された海洋生物5万種の分布データだ。

 一般に生物種の多様性は、北極や南極ほど少なく、赤道ほど豊かになる。このパターンをもとにすると、赤道を頂点とする釣鐘状のグラフを描くことができる。

 ところが調査では、現在に近づくほどに釣鐘の頂点部分がくぼみ、どんどん深くなっていることが明らかになったという。つまり赤道から種の多様性が失われているということだ。

 そうした生物は、快適な温度を求めて、より北や南にある亜熱帯の海へと逃げ出している。

 過去50年における赤道の平均気温の上昇は0.6度で、高緯度地域に比べれば穏やかな変化だった。にもかかわらず、赤道の海に生息する生物は、生存可能な環境にとどまるために、より大きく移動しなければならなかった。

 なお、今回のグループは、すでに5年前にこうした傾向をモデルに基づいて予測していたそうだ。

この画像を大きなサイズで見る
photo by iStock

かつての大量絶滅でも同じ現象が

 実ははこうした変化は過去にも起きたことがあるという。それは2億5200万年前のペルム紀末期のことだ。

 この時、地球史上もっとも激しい火山活動が起き、世界の平均気温は3万~6万年かけて10度上昇したと言われている。

 この時期は「P-T境界」と呼ばれており、海洋生物のうちの96%。全ての生物種の90%から95%が失われるという史上最大級の大量絶滅が起きたことで知られている。

 今回の研究グループによれば、化石による調査から、このときもまた赤道の生物多様性が減少していたことが明らかになっているという。

 12万5000年前も同様のことが起きた。やはり急激に温暖化が進んだ時期で、サンゴ礁が熱帯の海から逃げ出し、赤道から生物多様性が減少したのだ。だがこの時期に大量絶滅は起きていない。

この画像を大きなサイズで見る
photo by Pixabay

赤道から海洋生物が移動することで生態系に乱れが

 現代に話を戻すと、赤道の海に生息する「有孔虫」(硬い殻を持つ単細胞プランクトンの一種)がもっとも豊富だったのは、1万5000年前に終わった前回の氷河期の最中だったという。

 そしてそれ以降、有孔類は減少し続け、現在進行中の温暖化によってその傾向が加速している。プランクトンは食物連鎖の基礎となる種であるので、非常に重要な意味を持つ。

 一方、亜熱帯の海では多様性が増加している。そこによそ者が侵入してきており、これまでにはなかった捕食関係や競争関係が生じているということだ。

 こうしたことが生態系の崩壊につながったとしてもおかしくはないと、研究グループは説明する。実際P-T境界では、生物が大量に絶滅し、生態系がもたらすサービスは永遠に変わってしまったという。

この画像を大きなサイズで見る
photo by Pixabay

その影響は人間にも及ぶ

 その影響は海の中だけにとどまらず、人間にも及ぶ。

 たとえば熱帯島嶼国の多くにとって、マグロ漁船への漁業許可販売は、重要な収入源だ。だが運動能力に優れたマグロなら国境など無視して、簡単に亜熱帯地域へ引っ越ししてしまうだろう。

 民芸品の素材として大切なサンゴや、エコツーリズムの目玉となるジンベエザメ、マンタ、ウミガメといった大型海洋生物も同様に重要な収入源だ。

 そうした生態系サービスに依存している国家にとって、熱帯の生物多様性の減少は直ちに死活問題につながりかねない。

この画像を大きなサイズで見る
photo by Pixabay

熱帯の海の豊かな生物を守るには?

 研究グループは、熱帯の生物を守るために、まずパリ協定に定められた温室効果ガス削減目標にのっとって、各国がきちんと行動することが大切だと述べている。

 それからもう1つ、それ以外の影響から熱帯の海を守ることも大事なことだという。今日、海洋の2.7%が保護区として指定されているが、これは生物多様性条約に定められた2020年までの目標(10%)を大きく下回っている。

 今、41か国で構成される「グローバル・オーシャン・アライアンス」(日本は未参加)は、2030年までに海洋保護区を30%に広げようと世界に訴えかけている。

References:Marine life is fleeing the equator to cooler waters. History tells us this could trigger a mass extinction event/ written by hiroching / edited by parumo

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 36件

コメントを書く

  1. 生息するのによい温度帯に移動してるんだよね。
    だから温度が上がった南極海にいわゆる蟹が進出してるそうだ。
    これが大問題になるだろうと予想されてる。

    • +7
      1. ※17
        カニ化 収斂進化で検索してちょ。
        タラバとかがこれなんだに。

        • +3
    1. ※3
      キミらが巨大化したら恐竜の復活やん

      • +3
  2. ペルム紀末の大量絶滅はスーパープルーム(シベリアトラップ)によるものだとする説もあるしなぁ、これっぽっちのデータではなんとも言えないし、なんとでも言える。

    • +3
    1. ※4
      シベリアトラップって規模と影響のデカさとにビビり散らすが
      実際はちょっと前のアイスランド噴火みたいなサラサラ溶岩がじっくり10万年かけて撒いた二酸化炭素だから
      地層だけ見てたら時間間隔がバグるいい例

      • 評価
  3. 50億年のなか、2億年前か。人間なんて虫けらみたいなもんよね。しかし知的生命体として漫画のような新たな安息地を求めて宇宙を旅する未来も見てみたいものだね。死んだらまた人間として生まれたいものだ。

    • +3
  4. 乱れとか異常って言うけど、宇宙も地球も混沌こそ平常なのでは
    むしろ近代が異常な平穏ってだけで

    • +11
  5. 十年位したら別の順応した奴らがわんさか沸いてそう

    • +7
  6. >一般に生物種の多様性は、北極や南極ほど少なく、赤道ほど豊かになる
    これ海でも言えるの?
    極圏の豊富なミネラルを元にしたアミ等プランクトンの爆発
    それを糧にした豊富な生物層
    対して赤道付近は海の砂漠ってイメージ

    • +2
  7. おやおやこれはどういうことかな
    ホホジロザメも北海道で目撃されてちょっと話題になっていたなそういや

    • +2
  8. 人間のせいで大量絶滅みたいな論は昔からあるけどさ、逆に人間のせいで新種大量発生とかできないのかな。
    みんなで一年ぐらい掃除しないで部屋汚くしていれば新種のキノコとかカビとか大量にできてくるんじゃない?
    人類総出で生物多様性に貢献しようぜ!

    • 評価
    1. >>12
      疫病の類はどんどん新種でてるね(菌類やウイルスになるけど)
      あと、ゴキブリの中には殺虫剤に耐性のある奴が出始めてるけど、これも新種にカウントしていいかな?

      • +4
    2. >>12
      サルマタケやねw「男おいどん」を最近の若いもんは知るまいのぅ…

      • +3
  9. 恐竜の時代の海水は今より遥かに暖かかったときくけどね。
    今が冷えてるって見方もできるんじゃないかな。

    • +1
    1. ※13
      温暖化したらシベリアでバナナが取れるようになるぜ!ってのは冗談にしても小麦が作れるようになるといいなぁ。
      耕作可能地域が広がって食糧事情が良くなることを期待してる。

      ※22
      それは怖い。ってか、あの性格のままデカくなったら、人間は食われるよ。今でも奴らのほうがだいぶ小さいけど噛みつかれたり追いかけられたりして怖いのに。

      ※24
      元コメとは違う者だけど、勉強になった。ありがとうございました。

      • 評価
  10. 温暖化の素かどうかは兎も角、グーグルアースで地球を見るとかなりの面積の森林と思われた所が畑になってしまっている事には愕然とした。

    • 評価
    1. >>14
      人間が増えすぎなのは確かなんだよね。第二次世界大戦後の増加率は異常。それでも

      • 評価
      1. ※31
        ウルトラマンが放映していた頃(1966)は地球の人口は22億。

        • 評価
    2. >>14
      育ちきった樹木はそんなに二酸化炭素吸収しないらしいからなあ

      • -1
  11. 火力は二酸化炭素で温暖化だからダメ!原発は放射能でダメ!再生可能エネルギーは供給が不安定だし電気料金上がるのはダメ!
    と、あれもダメこれもダメって、じゃあどうしろと・・・人類の皆さん要求が多すぎます。少しは妥協もしないとですね・・・

    だがちょっと待った!
    実はそんなワガママな皆さんの要求に一気に答える方法があるんです!
    それこそが核融合発電です!!
    これが完成すれば二酸化炭素や処理に困る高レベル放射性廃棄物は出さず、莫大な電力を安定的に得られます。それだけではない。その有り余る電力をもってすれば、ビルなどを利用して大量のLEDライトで巨大な野菜工場を作ることによって、農地開墾で失われる森林を激減させることも可能となります。また既に大気中に放出された二酸化炭素を直接回収して適性濃度まで減らすことだって可能でしょう。
    つまりこれまで二項対立の如くなにかと相対してきた文明の発展と環境保護の両立が安定して継続的に可能となるのです。

    今人類が直面するこの未曽有の危機を救えるかどうかは核融合発電の早期実現が可能か否かにかかかっていると言っても過言ではありません。
    温暖化のスピードを鑑みて、2050年より早くの実用化と以降の早期普及に漕ぎつければ人類は明るい22世紀を迎えられるでしょう。逆に今世紀後半以降にもつれ込むようだと人類は暗黒の22世紀を迎えることになるかもしれません。
    今人類がやるべきはコロナ禍のワクチン開発での様に核融合発電完成に向けて人類の総力を挙げて取り組むことです!

    • -5
  12. ペルム期末期の温暖化と大量絶滅は海底火山の噴火とメタンハイドレートの連鎖崩壊のため
    これによって酸素濃度が低下しメタン濃度が上昇し大量絶滅が引き起こされた

    それに引き換えこの程度の気候変動は誤差の範囲
    逆に二酸化炭素をどれだけ排出してもメタンによる温暖化とは比べ物にならない

    • -1
  13. 人類という環境変化によって絶滅した種はいるが逆に適応した種である家畜やペットは
    自然界ではありえないくらいの種と繁栄を得ている

    ある一時の環境に適応した種を未来永劫残すとしてそれに何の価値があるのだろうか?

    • 評価
    1. ※19
      人類が利用できる可能性を残しておくためだよ
      絹、ペニシリン、カブトガニの血etcetc
      賛同を得る為に残酷とも言える目的を曖昧にして
      手段をキャッチーにして摺り替えたからねw

      それはさておき「縄文海進」って言葉があるように
      縄文時代も温暖化で埼玉まで海が行ってたんだよね
      まぁそれはそれで困るんだけれどもw

      • 評価
  14. 正直、海面上昇とかより、マラリア上陸のほうが怖いんだが。

    • +2
  15. 平均気温の上昇は言及されているのに、肝心の海水温は記事中に具体的な数値が出ていないような。

    • 評価
  16. 北海道近海でもブリ・ハマチが獲れるようになったのは、このせいなのかな?
    温暖化の長期的な影響はともかくとして、例えば昔は米どころと呼ばれた地域では、平均気温が上がった結果、質のいい米が獲れなくなってしまい離農する米農家が増えたという話もある

    • 評価
    1. ※27
      かつて日本人は狂気にも似た情熱をもって熱帯の作物を亜寒帯で育てるとか頭おかしいことやってたのにね。
      それがちょっと気温が変わっただけで諦めモードか。もうそんな情熱は残っていないのかな。

      • +1
    2. ※27
      北海道の米が美味くなった。
      他の地方でも林檎・桃の産地は葡萄や柑橘に切り替え始めてる。

      • 評価
    3. >>27
      米って元々、亜熱帯の植物なんだけどねぇ…

      • +1
  17. むしろ生きるために移動するわけだし
    そう簡単に移動ができない人類のほうが深刻な気はするが
    数千年単位で考えたら問題もなかろ
    滅びる種は滅びるし、生き残る種は生き残る

    • 評価
  18. スモールライトで人間をちっさくするしかない。誰か作ってくれ!

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

自然・廃墟・宇宙

自然・廃墟・宇宙についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。