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チェルノブイリの黒いカエルが適応進化の過程を明らかにする

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(著) (編集)

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 生物が環境に適応する為の進化は、今もなお着々と進行している。その証拠は、1986年に史上最悪の原発事故が起きたウクライナのチェルノブイリで見ることができる。

 チェルノブイリは今や自然豊かな野生生物の宝庫となっているが、スペインの研究者によると、以前は珍しかった黒いカエルが増えているのだそうだ。

 原発事故の影響で、周囲の自然環境は高濃度の放射線によって汚染された。チェルノブイリの黒いカエルは、そうした環境に「自然選択」を通じてうまく適応した結果だと考えられるという。

チェルノブイリの環境に適応した黒いカエル

 スペイン、オビエド大学のヘルマン・オリサオラ氏らの研究グループは、2016年からチェルノブイリの現地調査を進めている。

 ここは原発事故から30年が経過した今、人間がいなくなったことで豊かな生態系育まれ、野生生物が多く存在する、ヨーロッパ最大の自然保護区の 1 つとなった。現在では、さまざまな種類の絶滅危惧種が保護されている。

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photo by Unsplash

 調査を開始してすぐ、損傷した原子炉のすぐそばで、非常に珍しい「イースタン・ツリー・フロッグ(Hyla orientalis)」が発見されたという。このカエルは通常明るい緑色だが、その個体にかぎっては体が真っ黒だったのだ。

 多くの生物の黒は、「メラニン」という色素によるものだ。この色素は紫外線や放射線のエネルギーを吸収・放散して、その悪影響から細胞を守ってくれる。

 さらに細胞内のイオン化した分子(活性酸素など)を取り除いてもくれる。おかげで放射線による細胞のダメージは軽減される。

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イースタン・ツリー・フロッグのオス。2019年に立入禁止区域外で発見された個体 / image credit:German Orizaola

放射線汚染が酷かった地域ほど黒いことが判明

 研究グループはその後も、2017~2019年にかけて、カエルの色の調査を進めている。

 対象となったのは、ウクライナ北部の12ヶ所だ。各地域の放射線汚染レベルはまちまちで、地球でもっとも汚染された地域もあれば、チェルノブイリの立入禁止区域から外れた地域もあった。

 そこで200匹以上のツリーフロッグを調べたところ、立入禁止区域の個体は他の地域よりも体がずっと黒いことが明らかになったという。2016年に見つかったカエルのように、真っ黒なものもいた。

 こうした色の黒さは現在測定できる放射線レベルとは関係がなく、原発事故当時にもっとも汚染が酷かった地域でよく見られたという。

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ウクライナ北部で見られるツリーフロッグ。原発事故以前はほとんどが緑色だったが、放射線汚染された区域では黒いカエルが増えている / image credit:German Orizaola/Pablo Burraco, CC BY-SA

黒いカエルは環境に適応するための自然選択

 こうした結果は、放射線の影響で急激に進化が進んだだろうことを示しているという。原発事故以前、少数派だった黒い個体は、メラニンのおかげで放射線に強かったと考えられるからだ。

 生き残る確率が高かった黒いカエルは、繁殖して数を増やした。こうして事故から10世代のうちに、チェルノブイリ立入禁止区域では、黒いカエルが主流派になったと考えられる。

 古典的だが、非常に速やかな「自然選択」の賜物である。

 こうした研究は、放射線に汚染された環境において、メラニンが果たす保護機能を理解するきっかけとなる。

 それはただの生物学的な関心というだけでなく、核廃棄物を扱う現場や宇宙探査など、さまざまな分野において応用が期待できるとのことだ。

 ウクライナの戦争が終われば、チェルノブイリの魅力的な生態系を調査するために、大勢の研究者が戻ってくるだろう。

References:Chernobyl black frogs reveal evolution in action / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 35件

コメントを書く

    1. >>1
      ナウシカの世界みたいだなって思っちゃったよ
      汚染された世界で人類は生きていけないけど野生生物たちは独自進化を遂げるっていう

      • +1
  1. うちの玄関のアマガエルちゃんはグレーになったり黄緑になったりするんだけど、ウクライナのは変色しないのかな?

    • +7
  2. この自然保護区も戦争のせいで酷い環境破壊が進んでる恐れ

    • +8
  3. チェルノブイリを見ると、どんな環境への取り組みより
    人間がいない方がよっぽど自然保護になるんだなぁ、と
    放射能より我々の存在が害なのかと、凹むねぇ、、、

    • +22
    1. >>6
      そもそも自然環境保護のスタートラインは、環境破壊によって人類が絶滅したり、多大な被害を受けるのを防ごうっていう発想だから。
      なので最終目標は地球を自然状態に戻すことではなく、人類と地球環境の共存共栄だよ。
      このあたりの前提を間違えると、環境保護には人類がいなくなればいいとかいう無意味な発想が出てくる

      • +5
    2. ※6
      里山と原生林では生態系が全然違うように、世の中には人間の手が入っている環境に適した動植物もいるからそう簡単な話ではないんじゃよ。
      何事もバランスが大事。

      • +2
    1. ※7
      20億年くらい前だったかのはずなので精々単細胞生物の時代でしたけどねw
      天然でウラン235が臨界起こすほどに集積したってそりゃもう凄かったでしょうね。

      • +2
    2. >>7
      現生人類は全員古代アフリカ発祥やぞ

      • +2
  4. 外部の影響を受け自らを変化させるのと、自分の都合に合わせて環境を変えてしまうのと
    一体どっちが優しいんだろうね。

    • +3
  5. 放射能汚染のイメージは
    ・放射能増大 → 遺伝子損傷 → 奇形発生 → 人類滅亡
    かと思ったけど
    ・放射能増大 → 適正種生き残り・環境対応 → 個数増加 → カエルワールド誕生
    なの?

    • +5
    1. ※10
      今回の説はおそらく、緑のカエル(保護色であり、おそらく放射線に弱い)と黒いカエル(保護色でなく、おそらく放射線に強い)ということから、保護色の淘汰圧よりも放射線の淘汰圧のほうが勝ったということではないかと。

      ※11
      私も疑っちゃうな。メラニン色素が守ってくれるのは紫外線ではあるけど、放射線にまで帯域が広いかどうかはちょっとマユツバモノかなぁとね。

      ※7
      人類誕生の地はアフリカのおそらく赤道に近いところで森からステップに出てきたことによって紫外線から皮膚を守る仕組みがないと皮膚がんなどで寿命が短かったのではないかな。もしくはゴリラやチンパンジーを見ると肌が黒いので共通の祖先の肌も黒かったのではないかな。北方へ行った人たちは紫外線はそんなに強くないというか服を着ないといけなくてメラニン色素を作る(には当然エネルギーが必要で生物は不要ならそういうのを作ることをやめるから)必要性が減って、そっち方面が退化するように進化したんじゃないかと。ま、もし今回の話が本当ならネグロイドが一番放射線につよくて、モンゴロイドが次でコーカソイドは放射線には弱いことになりそうですね

      • +4
      1. >>23
        同地の炉心近くで繁殖してるバクテリアは優位にメラニンを生成してたってのを読んだことがあるから眉唾ってほどではないでしょ。

        • +1
    2. ※10
      蛙と人間を一緒にしちゃいかんよ
      人間は間違いなく人口激減する
      大型哺乳類にせよ、奇形で生まれたら即死ぬし
      放射能が比較的マシな地域から人間のいない地域に流れてきた個体も多く
      一見マトモに見える

      劣化ウラン弾で汚染された地域で育った若い女性は
      当人は奇形ではなくとも、子宮が正常に育たず
      何度妊娠しても奇形児・流産してる

      • +1
      1. ※28
        一緒やぞ。人間は1世代がカエルより長い&産子数少ないからタイムスパンが長いだけ。
        どっちも
        ・放射能増大 → 遺伝子損傷 → 奇形発生 → 適正種生き残り・環境対応 → 個数増加 or 適応した生き残りによる個体数回復が間に合わなければ絶滅 やで。

        カエルは最終まで数十年以内、人間は数十年では奇形発生あたりまでしかいかんだけ。個体数も現代では多分カエルより多いから「適正種生き残り・環境対応」期間中に、「適応した生き残りによる個体数回復」が間に合わずに滅んじゃう確率もカエルよりたぶん相当がひっついて低い。

        現にカエルツボカビでかなりのカエルが滅んだっぽいけど、ホモ・サピエンスはパンデミック程度では滅亡に程遠い。有史以降でも天然痘もペストも梅毒もコレラもスペイン風邪も、別に大した科学技術もない状態で乗り越えとる(大流行が収まった≒適応した)。種どころか人種の一つも消えてない。部族やら村落、国家の単位では消えてるけどね。

        • +3
  6. 仮説としてはもっともらしいけど、人工的に放射線の強い環境下でのカエルの飼育実験をして有意に生存率に差が出るかどうか見ないと完全に納得はできないな

    • +3
  7. どっこい生きてる
    カエルも頑張ってるんやなあ

    • +7
  8. 研究のためにも早く戦争を終わらせてもらいたいもんですな

    • +3
  9. 紫とかピンクとかスカイブルーのケロたんもいたら楽しいのになー

    • 評価
  10. 皮膚へのダメージは細菌感染に弱くなるなど二次的な影響が大きくなるから淘汰が発生したのかもしれないが食物連鎖で取り込む放射性物質からの内部被爆に対する適応はなにかあるのだろうか。それともカエルの寿命では放射線障害が深刻化する前に世代交代するので影響は少ないんだろうか。

    • +3
  11. ガングロは来たるべき核戦争時代に備えていた説

    • +9
  12. 宇宙服にはたっぷりメラニン練り込んで、黒人のスペースノーツを増やせってこと?

    • 評価
  13. どうみてもアマガエルちゃんですねえ
    日本にも特殊色の固体たまーにいるよ、青い子とか

    ってことはガングロ(ヤマンバ)などの黒い個体は、メラニンのおかげで放射線に強くなれるという可能性を秘めているという認識で間違って・・・・るわなぁ~

    • 評価
  14. おもしろいのは汚染されて黒くなったのではなく、汚染から防御するため黒くなったってことだな

    • +1
  15. たくさんの犠牲のもとに黒いカエルが生まれたんだろうな

    • +1

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