
あなたが今、壁の向こうから漏れてくる光を見ているとしよう。だがそれだけでは壁の向こうに何があるのか判断することはできない。
だがグラスゴー大学の研究グループが開発した「ゴーストイメージングAI」を使用すればそれが可能となる。あなたの視覚野の脳波を分析することで、本人が認識していない物体を特定することができてしまうというのだ。
広告
カメラの代わりに人間の脳波を使って透視するAI
AIによるゴーストイメージングは「NLoS(Non Line of Sight)イメージング」という、障害物で隠された物体を見る技術を応用したものだ。通常の「NLoSイメージング」は、壁の向こうにある物体を判別するために、レーザーを壁などに照射して光を迂回させる。
壁に当たったレーザーは反射されて、壁向こうの物体に当たり、さらに反射されて壁を経由して戻ってくる。これをカメラで捉えて分析することで、物体の正体を判断する。
だがゴーストイメージングAIは、カメラの代わりに人間の目を使う。そして脳に現れた脳波を分析することで、壁向こうの物体を判別するのだ。

photo by iStock
AIは人間の脳波を介してい壁の向こう側の図形を正確に再現
研究グループがやったのはこんな実験だ。まずプロジェクターでとある図形を投影する。プロジェクターの光はスクリーンを透過してその後にある白い壁に反射する。だが壁の向こうにいる人間は、隙間から漏れてくる反射光を見ても、元の図形が何なのか判別できない。そこでAIを利用する。
被験者に脳波測定器を装着してもらい、壁の光を見ているときの視覚野の反応を計測。それをAIに解読させて、本人が認識していない元の図形を言い当てさせるのだ。
壁に反射した光は一様ではなく、元の図形に応じて濃淡がある。脳波の強さはそれとおおむね相関するので、これを分析することで元の図形を判別するという仕組みだ。
実験では、16x16ピクセルの画像を2秒間、6Hzの周波数で明滅させた。AIは1分ほど光のデータを観察することで、正確に元の図形を再現することができたという。

いつの日か、人間の能力強化にもつながるかも
研究の中心人物ダニエル・ファッチオ氏は、「人間の視覚系を脳波フィードバックに利用することで撮像処理をリアルタイムに調整した、初のコンピューター撮像」と説明する。普通の検出器を使えばできることを、あえて人間の脳波で試してみたのは、将来的に人間の能力強化につながるような方法を模索するためだったそうだ。
今後の課題は、3次元の物体で同じことを行うことと、複数の人間の視覚データを同時に結合することであるとのことだ。
この研究は7月11〜15日開催の学会『Optica Imaging and Applied Optics Congress』で発表された。
References:"Ghost imaging" combines human vision with AI to see around corners / written by hiroching / edited by / parumo
あわせて読みたい





コメント
1. 匿名処理班
ゆくゆくは003誕生だな
ゴーストなだけに
2. 匿名処理班
将来「脳波を記録するデバイス」が開発されれば、たまたま事件現場に居合わせて「目撃した自覚のない人」の脳内情報からも捜査情報が抽出できるようになるのかな?
3. 匿名処理班
ブロック塀だって光を反射してるわけだしパターンをAIが解析して分析すれば曲がり角の向こうとかも認識できる時代が来るんかな
4. 匿名処理班
人間の目自体は分析するに足る情報を受け取ってるけど脳にそれを解析する能力ないし機能はないってことでもあるんかな
めちゃくちゃ面白い
5. 匿名処理班
そう囁くのよ、私のゴーストが。
6. 匿名処理班
テレパシーとか霊視の存在を科学的に証明できる可能性がでてきたってこと?
7. 匿名処理班
これ人間の視細胞というフィルターを一度通ったうえで五感情報でごちゃごちゃした脳波から元画像が復元出来てるのが凄いな。
8. 匿名処理班
はえ〜人間の脳をカメラ代わりにして認識するのか
効率よさそう