西暦1054年、「SN1054」と呼ばれる超新星爆発が発生した。この爆発は現在も見られる「かに星雲」を誕生させたほど壮大なもので、藤原定家の『明月記』や中国の『宋史』で触れられるなど、世界各地で観測された。
世界中の人々が目にしたはずの超新星爆発だが、不思議なことにキリスト教圏にはその記録がない。もしかしたら、当時のキリスト教徒はごく控えめな形でその記録を残していたのかもしれない。
『European Journal of Science and Theology』で閲覧できる査読前論文によると東ローマ帝国時代に鋳造された特別な硬貨に、「SN1054」と思わしき星が描かれているのだそうだ。
世界中で観測された超新星爆発の記録がキリスト教圏にない理由
1054年7月4日に発生し、世界各地で広範囲に観測された「SN1054(かに超新星)」は、日本や中国などでは、日中で23日間、夜間では653日間も輝いていた記録され、アメリカ先住民が壁画を残したと言われているほどの規模だっただ。それなのに、なぜかキリスト教圏にはその記録がないのか?
これについては以前から議論が交わされており、はっきりとしたことは不明だが、『Phys.org』によると、一般的な説として、当時の学者たちが「完璧で不可侵とされた天空の変化を指摘して、教会で騒動になることを恐れた」からと解説する。
当時のキリスト教徒にとっては神学的教義が絶対であり、それを疑おうものなら破門や死刑にすらなる危険があった。
特に見返りがあるわけでもないのに、そのような危険を冒すのは、よほどの勇気がなければできないことだったろう。
コンタンティヌス9世モノマコスの治世に鋳造された硬貨。右下の硬貨に2つの星が描かれている/Credit: Filipovic et al
東ローマ帝国の硬貨にこっそりと刻まれていた可能性
だが、硬貨を作る職人にはそんな勇気の持ち主がいたようだ。東ローマ帝国マケドニア王朝の皇帝「コンスタンティノス9世モノマコス(在位:1042年 - 1055年)」の時代に作られた「コンスタンティヌス9世モノマコスIV硬貨(Constantine IX Monomachos Class IV)」と呼ばれる特別製の硬貨に、当時鋳造されたほかの3種の硬貨にはない、2つの星があしらわれていることが判明したのだ。IV硬貨は1054年夏から1055年春にかけて鋳造されたとされるもので、皇帝の頭の両側にはっきりと星が輝いている。
片方は金星と考えられるが、その反対側には超新星SN1054らしきものが浮かんでいる(なお皇帝の頭自体は、太陽を表しているとされる)。
世界中の博物館から集められた36枚の硬貨に描かれた星は、それぞれ微妙に大きさが違っている。研究グループの仮説によれば、星の大きさを変えることで、徐々に暗くなっていった超新星を表現したのだという。
寸法を分析中の硬貨/Credit: Filipovic et al
ただし具体的証拠はあがっていない
もしそうなら、当時のキリスト教圏においても、やはり超新星が観察されていたということになるが、古代の歴史が常にそうであるように、あくまで推測の域を出ない。研究グループは、IV金貨が鋳造された枚数や、その正確な日付が不明なだけでなく、2番目の星が超新星であることを裏付ける具体的な証拠もないと述べている。
だが当時の何者かが密かに超新星の記録を残し、1000年たった今その命懸けの行為が明らかになったと想像すれば、歴史のロマンを感じられることだろう。
References:Do ancient coins record the supernova of 1054? / written by hiroching / edited by / parumo
追記(2022/07/13)本文を一部訂正して再送します。
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コメント
1. 匿名処理班
11世紀東ローマを古代ローマって言うのは違くない?
2. 匿名処理班
こじつけが甚だしい
3. 匿名処理班
「チ。」を読むと地動説論者は拷問・死刑だったかのような描写になってるけど、実際には割と寛容だったという説もある。
作者はそれを認識してたからC教とか色々ぼかして並行世界のような感じで進めてたわけだけど、最終回でポーランドって国名出して実在の人物が出てきたんで最後の最後で結構微妙な話になったんだよな。
この時期のヨーロッパは単純に、ゲルマン民族支配によるラテン文化の消滅で、天体観測の知識や技術が著しく後退していた。「見えているけど見えていなかった」だけ。
彼らが宇宙に目覚めるのはルネサンス中期以降。
4. 匿名処理班
1054年は古代じゃなくね?
5. 匿名処理班
1054年は古代じゃないね
6. 匿名処理班
11世紀のビザンチン帝国を古代ローマとは呼びません。通常西ローマ帝国滅亡の476年までの東西ローマ帝国を古代ローマと呼称します。以降東ローマ(ビザンチン)帝国滅亡の1453年までを中世とするのが普通です。
7. 匿名処理班
※4
古代の定義は地域によって少し変わるけど西洋史だと
通常は西ローマ帝国の滅亡までですな。
8. 匿名処理班
キリスト没千年紀の終末思想流行による混乱の記憶も新しい時期だから教会があれは悪魔によるまやかしだとして見たり書いたりすることを禁じていたのかもしれない。航海者には天体は興味の対象だと思うのだがキリスト教化する前だったバイキングの記録には残ってないのかな?
9. 匿名処理班
当時西洋で認識されてなかったハズが無いんだって願望先行の研究に見える
10. 匿名処理班
確かにクラス気ら靴泙任浪屬蕕靴ぅ譽蝓璽佞呂覆い諭
もし仮に皇帝の権威の象徴として花形の模様が使われていたなら
すべてのクラスの硬貨に描かれていたはずで、突如花型模様が出てきたように感じる。
「恐れていた」とか「こっそり」じゃなくて、普通に皇帝の権威付けに使ってたんじゃないかな?
そもそも中世でそれなりに貨幣経済も発展してた中で広く出回る硬貨にそんな暗号みたいなもんは刻まんだろう。隠して伝えるならもっといい方法がある。
11. 匿名処理班
500円玉にヤスリのようなギザギザがついた時は空からヤスリが落ちてきたのか?
12. 匿名処理班
これはこじつけでは?
13. 匿名処理班
藤原定家が明月記に「なんだか昼でも見える星が現われてワロタw」と書いてあるから、あながちこじつけではないのかも。
14. 匿名処理班
>>11
アレは、隣の国の500ウォン硬貨が日本の500円と直径、重さ、厚さが全く同じに作られていたので、自販機で500ウォン(約50円)硬貨を入れてお釣りとして日本円の硬貨を盗む詐欺事件が多発した為にギザギザを入れて対抗したんだよ、その後十数年にわたり500ウォン硬貨にギザギザを入れる技術がなかったので詐欺事件が発生しにくい状況になっていたけど、どうやら隣の国が何故か日本の500円硬貨と同じパターンでギザギザを入れることに成功したようで近年詐欺事件が頻発していたので、再度新500円硬貨を発行している。
ネットでもコミケシーズンになると詐欺をやられた報告が多数でているので検索するといい
15. 匿名処理班
記録はたぶんあっただろうけど、東ローマ滅亡時に失われたのかもね。
16.
17.
18. 匿名処理班
>>3
魔女狩りが暴走する前の「異端者」は大抵一般的なイメージみたいな教義とか技術の問題じゃなくて権力の問題だしね
ついでに前半部分の関連だけど、コペルニクスのクラクフ大は15世紀はじめの学長が公会議の場で教皇に異教徒とか異端者の生存権を認めさせてるような大学だし、そもそものポーランド国家自体がその前から宗教的寛容性をアイデンティティにしてるような国だからアレよなあ・・・