ホログラムのバーチャル患者で医療演習
image credit:CUH / GigXRCC BY 3.0

 イギリス、ケンブリッジのとあるアデンブルックズ病院では、医学生たちがホログラムの患者で演習を行うという世界初の試みを行なっている。

 医学生は「複合現実(MR)ヘッドセット」を装着し、シミュレーションされた環境の中で医療行為を体験する。この間、喘息などで苦しむ患者を診察し、リアルタイムで適切な判断を下さなければならない。
広告

医学生がホログラム患者で医療演習を行う試み

 この医療用デバイスは「ホロシナリオズ(HoloScenarios)」という。アデンブルックズ病院の研究グループが中心となり、ケンブリッジ大学と米LAに拠点を置くハイテク企業GigXR社との共同で開発されたそうだ。

 「ホロシナリオズ」を利用すれば、複合現実で描かれた医療現場で、医療行為をリアルタイムで練習することができる。

 複合現実(以下MR)とは、仮想世界を複合・融合させ、相互にリアルタイムで影響し合う空間を構築する技術のことだ。

 その第一弾は喘息の患者で、その後もアナフィラキシーショック、血栓、肺炎とさまざまな病人が登場する。さらに心臓病や神経疾患のシミュレーションも開発中であるという。
How holographic patients are being used to train doctors - BBC News


 イギリス国民保健サービス(NHS)のディレクター、スティーブン・ポウィス氏はプレスリリースで、「NHSは医療イノベーションの最前線に立ち続けてきた」と説明する。
ケンブリッジのチームによるこのユニークな発明は、現実感あるホログラム患者を用いた医療教育を通じて、次世代の医師・看護師・医療従事者たちの学習を促進する。

模擬的な環境で医療行為をリアルタイムで練習することができ、世界各地のトレーニングにもアクセスできる
10

MRなら複数人で共同作業が行える

 医学の勉強といえば、これまでは教科書、マネキン、コンピューターソフトが定番だった。ホロシナリオズの教育効果はこれらに匹敵するもので、開発者によれば、費用対効果が高く、柔軟なトレーニング教材であるという。

 その特徴は「複合現実(MR)」を採用している点だ。「仮想現実(VR)」の場合、ヘッドセットに映し出されるのは完全にバーチャルの世界なので、没入感あふれる体験ができるが、物理世界からは締め出されてしまう。

 またMRに近いものとして「拡張現実(AR)」があるが、こちらは物理世界にデジタル情報を重ねるだけなので、その操作までは難しい。

 MRは物理世界と仮想世界をより融合させたシステムで、物理世界が主体でありながら、そこに投影されたデジタル情報(例えば、ホログラムの患者)に働きかけることができる。また1つのMR空間に複数人が参加して、一緒に同じ体験ができるのも特徴だ。

 ケンブリッジ大学病院のアラン・グプタ博士は、「MRは便利な訓練用シミュレーターとして認知が進んでいる。採用が増えており、MR学習用機材の需要は急増中」と述べる。
6

MRが医学部は仮想教室に連れていく

 ケンブリッジ大学教育学部のリーカ・ホフマン教授は、「我々の研究は、こうしたシミュレーションを学習に役立て、MR学習の採用を加速する方法を探ること」と述べる。

 「教育機関が従来の教材を評価するのと同じように、MRをカリキュラムに取り込むガイドラインとなることを願っている。最終的には患者の治療の改善にもつながってほしい」

 GigXR社の創業者デビッド・キング・ラスマン氏は、「360度に展開される医療現場で指導者をサポートできることは、GigXR社にとって一里塚となる出来事。医学生たちがクラスの最初からずっと使えるようなアプリケーションライブラリを提供できるようになる」と話す。

 ホロシナリオズには、今後さらにさまざまな病気で苦しむホログラム患者が登場する予定であるそうだ。

References:Holographic patients are now helping to train the next generation of doctors - Study Finds / World first in hologram patients | CUH / written by hiroching / edited by / parumo
あわせて読みたい
イギリスの医師が5G通信でアメリカのバナナをリモート操作で遠隔手術

日本の歯科実習用ヒューマノイド少女「ペディアロイド」が海外で話題に

医療現場を救うために生まれた、超リアルなヒューマノイドロボット看護師「グレース」

AIロボットが人間の助けなしに複雑な外科手術に成功。その精度は人間を大幅に上回っていた

未来の世界は極小カニ型ロボットが体内で病気の治療をしたり、機械修理を行うようになるかもしれない

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします

この記事に関連するキーワード

キーワードから記事を探す

コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2022年07月13日 19:45
  • ID:Pw4OK7rs0 #

緊急事態の概要を述べたまえ(再)

2

2. 匿名処理班

  • 2022年07月13日 19:46
  • ID:hHNAb.fz0 #

みんなすげえ貫禄でビビるw

3

3. 匿名処理班

  • 2022年07月13日 20:08
  • ID:FC8Swd720 #

PC-98の医療シミュ思い出すわ懐かしい。
輸血忘れてサーセン。

4

4. 匿名処理班

  • 2022年07月13日 20:55
  • ID:XtIApJx60 #

ゴッドハンド輝のレーベンやないかい!

5

5. 匿名処理班

  • 2022年07月13日 22:55
  • ID:.lwQzU.50 #

ダミー人形とかに投影するとかじゃなくて、何もない空間で何も持たずにやるんだ。
感触とか重さがない状態だとPCのモニタでやるのと対して変わらなそうだけどな。

6

6. 匿名処理班

  • 2022年07月14日 08:36
  • ID:fRsPWvsy0 #

そのうち進○ゼミが医大生向けに導入してくれるだろう。
あっ、これ、ホログラム患者でやった疾患だ ! !

7

7. 匿名処理班

  • 2022年07月14日 09:12
  • ID:HE2G.vwE0 #

ホログラム〜だと思ったら〜
ゆ〜うれいだったでござる〜
👻チキショー!

お名前
ADVERTISING
記事検索
月別アーカイブ
ADVERTISING
ADVERTISING