
今のところ耳鳴りの治療法はなく、一度発症すると数年経っても消えないことも多い。
オックスフォード大学の研究グループによると、耳鳴りは睡眠と強い関係があるという。そもそも耳鳴りとは、ないはずの音が聞こえる幻聴だ。普通、幻聴や幻覚が起きるのは睡眠中だけだが、耳鳴りの人には目が覚めているのに幻聴が聞こえてしまう。
『Brain Communications』(2022年5月5日付)に掲載された研究では、そんな不思議な耳鳴りと睡眠の関係について科学している。耳鳴りと睡眠の関係性を解明されれば、新たな治療も誕生するかもしれない。
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眠りの種類と段階
睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠の異なる2種類の睡眠状態に分けられるレム睡眠は閉じたまぶたの下で眼球が動く急速眼球運動を伴う睡眠で、身体は休息した状態だが、脳の活動は起きている状態に近いことから夢をよく見る。
ノンレム睡眠はレム睡眠ではない眠りという意味で、脳が休息した状態となっており、眠りの深さによって4段階に分けられる。
ノンレム睡眠は段階が上がるごとに眠りが深くなり、3、4段階目の「徐波睡眠」で最も眠りが深くなる。
ノンレム-レム睡眠周期は90〜120分間で、寝ている時間が進むにつれ、ノンレム睡眠の持続は短くなり、睡眠徐波の出現は減少する。

眠りが深い状態の「徐波睡眠」で行われていること
「徐波睡眠」では、脳のさまざまな領域で特徴的な「波」が現れ、記憶や音の処理を司る領域など、大きな領域がまとめて活性化する。昼間に消耗したニューロン(神経細胞)が回復し、私たちが休んだと感じるのもこのステージだ。さらに記憶にとっても重要であるとされる。
徐波の強さは領域によって違う。一番はっきりと現れるのは、起きている間に酷使される「運動機能」や「視覚」に関係している領域だ。
だが時折、それ以外の領域でもやたらと徐波が活発になることがある。実はこの現象は「夢遊病」のような睡眠障害の患者で起きていることだ。

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睡眠と耳鳴りの関係
同じことが、耳鳴りにも言えるようだ。オックスフォード大学のリナス・ミリンスキ氏らによると、耳鳴りの患者の脳では、眠っているはずの領域が過活動になっていると考えられるのだという。このことは、耳鳴りの患者がしばしば不眠や夜驚症( 睡眠中に突然、恐怖や興奮で叫び覚醒してしまう病気)であることとも関係するかもしれない。
耳鳴り患者は、眠りの浅い時間が長いことでも知られている。その理由をごく単純に考えると、耳鳴りに邪魔されて深い眠りに不可欠な徐波が作られず、そのせいで眠りが浅くなったり、途中で目が覚めたりすると思われる。
その一方、平均すると耳鳴り患者は眠りが浅いのだとしても、耳鳴りの影響をほとんど受けない深い眠りがあることもわかっている。その原因は、もっとも深い眠りは耳鳴りをも抑制してしまうことかもしれない。

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耳鳴りも勝てない深い眠りがある
睡眠中に耳鳴りが抑制されるメカニズムはいくつかある。その1つは「ニューロン(神経細胞)」と関係がある。昼間の間ずっと活動を続けたニューロンは、回復するために徐波活動モードに切り替わろうとする。そうしたニューロンが増えるほどに、脳の残りの部分も休息をとろうという欲求が強くなる。
この欲求が十分強くなると、ニューロンはやがて徐波活動モードに切り替わる。そしてこれは過活動状態にあって耳鳴りを起こしている領域も同様だ。だから、深い眠りに入れば耳鳴りも抑制されると考えられる。
さらに徐波活動は脳領域同士のコミュニケーションを邪魔することも明らかになっている。徐波がもっとも強く生じる一番深い眠りでは、そのおかげで過活動領域は他の領域に干渉できなくなる。
だから耳鳴りがあるからといって、絶対にぐっすり眠れないということではない。
また睡眠は、ニューロン結合の変化を通じて、記憶が定着するためにも重要だ。こうした睡眠中の脳の結合の変化は、難聴などをきっかけに発症した耳鳴りがいつまでも治らない要因でもあると考えられている。

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耳鳴りの治療
耳鳴りの強さは、1日の間に変化することがある。睡眠中の脳を調べれば、耳鳴りの強さを変えている原因を突き止められるかもしれない。それは患者の睡眠の質を改善する手がかりであり、おそらく耳鳴りの新しい治療法にもつながるだろう。
例えば、不眠の治療として、本当に眠くなった時だけ眠るように指導することがある(睡眠制限療法)。
こうすると睡眠の妨げとなっている要因を減らして、徐波活動を促進できる。ぐっすり眠れるようにしてやれば、睡眠が耳鳴りに与える影響の理解も深まるかもしれない。
ミリンスキ氏によると、耳鳴りに一番影響を及ぼすのは、深い眠りであるそうだが、レム睡眠など、睡眠のステージは他にもあり、それぞれに特徴的な活動が見られる。
同氏らは今後、そうした睡眠ステージと耳鳴りの関係を調べることで、普段の脳の活動が耳鳴りをどう軽減するのか明らかにしたいとのことだ。
References:Tinnitus seems linked with sleep – understanding how could bring us closer to finding a cure / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
なんだ、そう言う話か・・・
耳鳴りの治療してるんだけど、ストミンAとメチコバール半年飲んでるが一向に改善されない。医者からは肩こりの薬や鍼が効く人もいるからそちらも試しましょう、ってそちらもやってるけど、どちらの薬も首から脳幹の血流を改善する薬と治療なんよ。
脳の血管が細いことに由来する別の持病もあるんで、耳鳴りは脳幹の血流阻害の病気だと思う。
でも、耳鳴りがうるさくて眠れないなんてことはないよ。それが普通の状態だから。
2. 匿名処理班
早く解明してくれ。
難聴は治るのか
3. 匿名処理班
耳鳴りでおかしいなと思ったら可及的速やかに病院行ってね
睡眠の質がとかもっと寝れば大丈夫かもとか言ってる場合じゃなく耳に不具合起きてる可能性あって早く治さないと一生治らないとかあるから
48時間以内とかそんなレベルで治るか治らないかの運命別れる
早ければ早いほうが良い
4. 匿名処理班
4種類くらい(ピーとかキーとかヒュンヒュンとか)重なってる耳鳴りがあるけど、静かなところじゃないと聴こえない。静かなところでも聴こうとしなければ気にならない
これくらいのでも眠りが浅くなるんだろうか。一応、目覚ましの5分〜10分前には目が覚めるしスヌーズに頼りたくなるような目覚めの悪さもなく、それもがばっと身体起こせるくらいの勢いで起きられるけど。ぐっすり眠れたからじゃなくて、眠りが浅いから勢いよく起きられるってことなんかな
5. 匿名処理班
耳鳴りが聞こえるにまかせているといつの間にか眠ってしまうのが常なので、オレには睡眠の導入の手助けになってる。
眠りは浅いたちなので、速く眠れるが深く眠れていないと言うことなのかも。
6. 匿名処理班
※1
耳鳴りがうるさくて眠れないなんてことはないのは症状が浅いだけにすぎん
すべての人間には耳鳴りはある
それが気になるのなら病名として耳鳴りがつくだけ
要は過敏なんだよ
音は気にすればするほど大きく聞こえる
血流だけの問題ではない
7. 匿名処理班
👽を思い浮かべて
「やめてくれよん!」
っつたら止まった。
8. 匿名処理班
※4
全く音がない場所だと誰でも自然と耳鳴りがするよ。耳鳴りで悩んでいる人は音がある場所でも耳鳴りが聞こえてる
9. 匿名処理班
耳の不調(何か大概は妙な音)になって耳鼻科行って見てもらって、異常なしだから慣れようで終わるのを数回繰り返している。まぁ記事にあるようにしっかり睡眠を取ると治ってしまうんだけども。夜更かししたいのをどうにか治せないものか…。
10. 匿名処理班
※6
耳鳴りはどの周波数帯が聞こえるかで原因が変わるんだが、原因が外にいくほど周波数が低くなる。外に行くほど治しやすい。
チーーーっていう防音室の中で聞こえる音よりもっと高い音(モスキート音検査で使う1万7千Hz以上)が常に中音量ぐらいで聞こえるのが脳幹とかで、ピーーーンっていうのが内耳の異常。この辺が血流が原因。
ヴィーーーとかウォンウォンって言うのが中耳系で、これは確かにいろんな原因がある。中耳系は眠くなる系の風邪薬や鼻炎の薬で治る人もいるので、大体は原因は炎症で、治療すりゃすぐ治る。
でも、過敏とは違うよ。一度なってみりゃすぐわかる。
スピーカー、つまり外からの音の場合、2万Hzなんてもう全然聞こえないんだが耳の中ではずっとでかい音で鳴ってる。
11. 匿名処理班
ワテはびったり一致 鼻炎の鼻詰まり→睡眠障害→耳鳴り→不安神経症
12. 匿名処理班
※1
わかる
自分もメチコバール長いこと処方されてた
でも効果ないどころか難聴が進行しちゃって会話に支障きたしてるレベルになった
こんなに聞こえない・聞き取れないのに相変わらず耳鳴りはそのまんま
いい加減慣れてはいるけど、眠れないってこともないけど、
やっぱむかつくわw
13. 匿名処理班
27年間耳鳴りに苛まれてます・・・
キーって高音で健康診断で必ず引っかかる。
平衡感覚にも影響が出て常に船酔いした感じで気持ち悪い。
医者からもこれ以上は改善しない、現状維持しかないって言われてる。
一度なったが最後、1〜2日中に治療を開始しないと一生治らない。
14. 匿名処理班
※11
15. 匿名処理班
※11
おまけに全身性乾癬も発症
16. 匿名処理班
夜驚症でアパート追い出されたことがある
自覚なくて訳がわからなかったけど友達が泊まりに来てそれを知った
今は抗てんかん薬処方されて多分だけどおさまってるんだと思う
今住んでるとこでまだ苦情きてないから
当時は夜中に警察や救急隊に起こされたりして生きていくのがかなりキツかった
もちろん近所の人はもっと迷惑と感じてただろうけど
17. 匿名処理班
耳鳴りが特定の場所だけで起きるのなら低周波音や微振動の影響を疑った方がいい。
18. 匿名処理班
ここしばらく猛烈な肩と首の凝りがあって後ろを向くのにちょっと苦労するレベルなんだけどそれとともに右耳のキーーーーという耳鳴りが始まった。
3日くらい前に何かの弾みで数分だけ治ったのだがまた戻ってる。
普段はともかく寝る前の静寂で聞こえるのは割と鬱陶しいのだけど首肩のこわばりが解消したら治るのかなあ…
19. 匿名処理班
※6
低音障害型感音難聴になった時、ボイラー室の中に閉じ込められているような爆音の耳鳴りが24時間ずっと聞こえていた
鼓膜突き破って耳聞こえなくすれば耳鳴りがなくなるならそれでいいとまで思ったけど調べたら耳潰しても無駄らしい
治療開始が早かったために感知したけど1か月ほどを要しその間治るか治らないかもわからないまま爆音聞き続けて発狂するかと思った
過敏じゃねえわ
20. 匿名処理班
僕も低音難聴で入院したりしたけど、仕事の忙しさを調整してもらって、家事負担が減ったらパッと突然治った。でも1年かかったな。
みんな良くなりますように。
21. 匿名処理班
40年以上「シーン」と言う耳鳴りがあるおっさんです。
漫画の静かな所を表す「シーン」と言うのはこの音だと思ってたくらい自分の一部だった(笑)ので、眠れないって事は無いんだけど、その音と同程度の周波数帯はレベルは落ちてしまう。常に鳴っている音だが、何かに集中していれば気にはならない。たまにどういったタイミングが掴めてはいないが、フッと一瞬だけ消える時がある。この一瞬の状態を維持できればなぁーと思う。
少し前に、舌に電極を加えて微弱な電流を加えながら、電子音を聞く治療ってたのがここかどこかで紹介されてたけど、あれはどうなったのだろうか??
無音・無響室でなくても普通に何も音がしないところで何も音がしない状態というもの。死ぬまでに1度で良いから経験したい。
22. 匿名処理班
「都会は静かすぎるから脳が音を作り出している。静かなとこでは自然の風や雨の音、川のせせらぎや草木が揺れる音、1/fの音を聞くが良い」って聞いたことがある。
23. 匿名処理班
事故で耳骨を砕いて以来耳鳴り止まらず
なお聴覚は過敏側に振れまして物音が聞こえすぎて…
まあ山で獣を捕まえるお仕事の時には役立ってますが
24. 匿名処理班
もう10年くらいか、最初は片耳のピーピー音から始まって、両耳になって低音も混ざっていつしか圧迫感を感じるように…と。俺の場合はカラオケのハウリング音が近い
MRI撮ってもらったり神経やらの薬も貰ったけど結局治らずで
いつの間にか慣れてしまって今じゃ耳栓しながら寝れるw
昔は扇風機の音で気を紛らわせて寝ていたけど、もしかして耳鳴り持ちにはあるあるかも