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毒にも薬にもなる。植物や細菌の毒から作られた5種の薬

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(著) (編集)

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 「すべての物質は毒にも薬にもなる」16世紀のスイスの医師・化学者・錬金術師、パラケルススの言葉だ。

 実際、人は毒を薬として利用してきた。植物や細菌は毒性の化学物質の宝庫だ。特に動くことができない植物は、外敵から身を守る手段として有毒な化学物質を作り出す。植物性なら体にやさしいという誤解が広まっているが、植物の毒性の強さは人間が命を落とすほどなのだ。

 人類はそうした危険な毒を薬として活用する方法を考案してきた。ここでは4つの植物と1つ細菌の毒から作られる5つの薬を紹介しよう。

1. ボトックス:ボツリヌス菌

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photo by Pixabay

 植物・土・水・動物の腸内などに存在するボツリヌス菌は、重篤な食中毒を引き起こす強力な神経毒を作り出す。

 「ボトックス」とは、「ボツリヌストキシン(ボツリヌス毒素)」の略称で、商標名でもある。

 慢性偏頭痛・眼瞼けいれん・多汗症・過活動性膀胱など、さまざまな症状に少量で効果を発揮するほか、顔のシワ取りとしても有名だ。

 その効果は、神経と筋肉間のシグナルを遮断し、筋肉が収縮できないようにすることで発揮される。また約4~6か月でその効果は消える。

 一般に副作用は認容できるほどに軽いものだが、注射部位に痛みや腫れが生じたり、風邪のような症状が出ることはある。美容目的で使用する場合、4か月以上間を間を置くことが推奨されている。

2. ジゴキシン:ジギタリス

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photo by Pixabay

 日本では「キツネノテブクロ」とも知られる植物「ジギタリス」からは、心臓病の薬「ジゴキシン」が作られる。

 イギリスの医師ウィリアム・ウィザリングが1785年に初めて薬として使用し、一般に広まった。「強心配糖体(う鬱血性心不全あるいは不整脈に用いられるステロイド配糖体)」に分類される薬で、カルシウム活性に作用して心臓の負担を軽減する。

 一方、ジギタリスの花を吸ったり、葉・茎・根を食べたりすれば不整脈・嘔吐・頭痛・めまいといった毒性が発揮される。

 またジゴキシンの過剰摂取も危険だ。2003年、チャールズ・カレンという看護師が逮捕された。この男は16年の間に患者29人を殺害した最悪のシリアルキラー(実際には400人に及ぶという推測もある)で、その犠牲者の多くがジゴキシンで殺されていた。

3. スコポラミン:ヒヨス

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photo by Pixabay

 ヒヨスは、悪臭を放ち、淡黄色の鈴型の花をつけるナス科の植物だ。90センチほどに成長し、葉はべたつき、毛が生えている。

 この植物はアルカロイドの宝庫で、スコポラミン、ヒヨスチアミン、アトロピンなど、34種も発見されている。

 これらは神経細胞が筋肉などに命令を出すために使う「アセチルコリン」の作用を妨げ、中枢神経や副交感神経に機能不全を引き起こす。

 この作用があるために、膀胱・腸・胃のけいれんを抑える薬として使われるほか、吐き気の治療、手術中のリラックス・心拍の維持・唾液の抑制などに使われる。

 ただし、けいれん・幻覚・錯乱・顔面紅潮・発汗減少・視力障害といった副作用もある。

4. モルヒネ:ケシ

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photo by Pixabay

 見た目だけなら可愛らしいケシ科ケシ属の植物で、学名を「パパヴェル・ソムニフェルム」という。毎年花を咲かせ、90~490センチにも成長する。

 種子には天然アルカロイドを含んでおり鎮痛剤として使われる。「モルヒネ」や「コデイン」といった医療用麻薬は知っているだろう。

 同じく麻薬性鎮痛薬の「オキシコドン」や「ヒドロコドン」は半合成オピオイドだ。

 麻薬というだけあって依存性が高く、アメリカでは乱用されて社会問題にもなっている。ゆえに使用に際しては必ず医師の指示を守らねばならない。さもなければ、ひどい中毒になったり、ヘタをすれば過剰摂取で命を落とすこともある。

 なお食品にケシの実が使われていることがあるが、これを食べた後だと薬物検査で陽性反応が出ることもあるようだ。ただし熱処理されているので、健康上には特に問題ない。

5. ワルファリン:シナガワハギなど

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photo by iStock

 1920年代、スイートクローバー(シナガワハギ属)を食べたウシが大量に死亡するという病気が発生した。これがきっかけとなって開発されたのが「ワルファリン」だ。

 ワルファリンには、血液を固まりにくくして、血栓ができるのを防ぐ作用があるが、大量に摂取すると内出血が起きる。

 それゆえに殺鼠剤として使われてきたが、1954年には人間用の抗凝血剤(血液をサラサラにする薬)として認可された。

 薬として利用できる用量の範囲が狭いため服用には注意が必要となる。

 ワルファリンを処方された場合、定期的に血液検査を受け、血液の固まりやすさを調べねばならない。過度に固まりにくければ出血のリスクが高まるし、固まりやすければ血管が詰まるリスクが高まるからだ。

 尚、納豆、青汁、ほうれん草・芽キャベツ・ブロッコリーなど、ビタミンKを多く含む食材には、ワルファリンの血液を固まりにくくする作用を弱めてしまう為、服用中は食べないようにした方がよいとされている。

References:5 Medicines Derived From Poisons | Discover Magazine / written by hiroching / edited by parumo

追記(2022/04/27)誤字を訂正して再送します。

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この記事へのコメント 13件

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  1. 「薬」は、逆から読むと「リスク」となります。

    • +15
  2. 薬は基本的に用法用量を守らないと毒だからね。

    • +15
    1. ※2
      毒を「許容できる悪い効果(副作用といいます)で期待する良い効果が出る量」だけ摂取すると薬になりますね。体質によって悪い効果である副作用が強く出る人もいらっしゃいますからその辺が難しくて、内科医の腕の見せ所かも?

      ワーファリンは、交通事故の後遺症で肺塞栓になった時にでました。

      • +2
  3. ワルファリンは殺鼠剤としても使われているよね
    徐々に目が見えなくなってきて光を求めて明るいところに出てくるようになる
    徐々に毒が効く濃度に調整されていて警戒心を呼びにくくしています。

    他にエフェドリーネハーブ、
    柳の樹皮→アスピリン
    などなどたくさんありますね

    • +1
  4. 七味のケシの実は熱処理されてると分かってても、
    1つくらい発芽するんじゃないかと気になる

    • +2
    1. ※4
      ドモホルンリンクルが一滴ずつ流れるのを見ている仕事に向いているぞ

      • +2
  5. 最古の化学合成薬品であるサルバルサンもかつては梅毒治療薬として使われていたけど、毒性も強いから今となっては使われていないんだよな

    • +2
  6. ベテランジャンキー「ナス科植物とPCPとタバコは止めておけ」

    • +1
  7. スコポラミンに関しては、胃薬の棚を探すと
    意外と見つかるんだよな。

    • 評価
  8. 記事のたびに「植物性なら体にやさしいという誤解が広まっているが~」
    みたいな雑な事言う認知の風潮も弊癖だとおもうんだよなぁ。

    商品に使えるような物質のキャッチコピーを見て、それらの物にそう思う事はあっても

    人間がそこらの野生の物にそこまで完璧に適応したと思う奴なんてそうそう居ない。インスタント食品とそこらへんの適当な植物でどっちが身体に問題ないかで現実に後者を選ぶ奴がどれだけ居るかね?

    無農薬を肯定する人は自己満足で科学的な程度問題を理解しないで健康の為にそれを求めてると決めつける人とか。

    学術的にも海外メディアで扱われる時も、
    先進国の現代農業に対して不利な伝統農法地域の農産物の付加価値戦略、
    職業暴露問題、
    経済的、環境的な薬物耐性問題、
    動物性微生物や魚、蜂等への問題、
    そういう点からオーガニック系の話題扱ってる人が多かったと思うんだよね…

    オスの雛を産まれるまで孵卵器で育ててオスメス区別してから殺すより、卵の中で体が出来る前に卵を区別して処分する技術開発に対して、卵も雛も変わらない偽善者だっ!てやたら非難したり、早期の細胞組織段階の吸引中絶と後期の意識ある赤ん坊の中絶を一緒にしたり、倫理や技術を否定してるのはどっちだよって…

    • +1
  9. 花粉症を、コロナと紛らわしいから市販薬でちゃんと直しておきましょう!ってメディアも職場も言うけど、昔から苦しんでない奴が言ってる様にしか見えなくて嫌なんだけど、
    一言で言うとしたら、
    花粉症対策の薬は鼻づまりに効かない点鼻薬のステロイド以外は、腸や心肺、瞳孔を攻撃する副交感神経系毒の植物毒を使ってる奴が殆どで、花粉症が現れないようにずっと使ってると本当に腸が動かなくなるのと、飲んでる時は運転出来なくなるんだよね。

    • 評価
    1. >>11
      記事中にあるアトロピンを含むような植物は、胃腸の痙攣を麻痺させて抑える他に花粉症の鼻炎薬等に今は消費されている為のコメ

      • 評価
  10. >「パパヴェル・ソムニフェルム」という。毎年花を咲かせ、90~490センチにも成長する。

    これは90~490インチの間違いでは?1.2mぐらいだね。

    • 評価

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