メインコンテンツにスキップ

ヤギがクマを倒す。角で致命傷を負わせ返り討ち

記事の本文にスキップ

30件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
image credit:Parks Canada
Advertisement

 野生の世界では時に奇跡が起きることがある。捕食者と被捕食者の立場が逆転することもあるのだ。通常なら1対1で戦って勝てる確率はわずかだが、ゼロではない。

 カナダの国立公園でハイイログマの刺殺死体が発見された。公園当局は当初、何に刺されて死んだのか特定できなかった。

 そこで死体を解剖したところ、なんと、シロイワヤギの角に刺されていたことがわかったのである。

ハイイログマの死体発見。犯人はシロイワヤギ

 今月4日、カナダの国立公園パークス・カナダを訪れていたハイカーが体重70キロほどのメスのハイイログマ(グリズリーベア)の死体を発見した。

 その現場は人気のハイキングルートのすぐそばだったが、通報を受けたパークレンジャーが速やかにクマの死体を空路で回収した。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:Parks Canada(ハイイログマの参考画像)

 回収されたクマの死体は、首や脇の下の周りに致命傷とみられる刺し傷を負っていた。しかし当初、それが何によるものかは不明だった。

 ところがその後の解剖で驚くべき犯人が明らかになった。

 検死を行ったカナダの国立公園パークス・カナダの分析によると、メスのハイイログマに襲われたシロイワヤギが反撃し、その角でクマを追い詰めて殺した可能性が高いという。

 自然界では捕食者のトップに位置するハイイログマを返り討ちで仕留めたシロイワヤギは非常にラッキーだったといえるだろう。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:Parks Canada(シロイワヤギの参考画像)

ヤギがクマを倒したシチュエーションを予想

 パークス・カナダの野生生物生態学者デビッド・ラスキン氏は、地元メディアのインタビューにこう語っている。

その後の司法解剖により、ハイイログマが死亡前に負った傷がシロイワヤギの角のサイズや形状と一致することを確認しました

 ハイイログマの首と脇の下にあった傷の位置から、クマに襲われたヤギが鋭い角でクマを突き刺したことがうかがえるという。

 北米に生息するハイイログマは、シロイワヤギの天敵である。

 パークス・カナダはラスキン氏の経験豊かなパークレンジャーの考察から、緊迫した戦いの様子を以下のように推測している。

ハイイログマは通常上から獲物に襲いかかり、攻撃は獲物の頭、首の後ろ、肩に集中する傾向があります。

したがって急襲されたシロイワヤギは防御反応として鋭い角で身を守ることになります。そしてこの防御が功を奏して形勢が逆転したのでしょう。

この画像を大きなサイズで見る
photo by iStock

ヤギがクマを倒した例は他にも

 獲物の立場のシロイワヤギがクマの猛攻から逃れること自体非常にまれだが、ラスキン氏によるとヤギがクマを殺した例は過去にもあるという。

シロイワヤギが防御のためにクマを殺した事例は過去にも報告されています。なので目を疑うほどのことではありません。そもそもシロイワヤギは自分を守るのに十分な角を備えた強い動物ですからね。

 なお全米野生生物連盟によると、オスのシロイワヤギの体重は最大で136 kgにもなり、その驚異的な登山能力が生かせる急傾斜地においてはハイイログマより優位に立つことができるという。

 以下の動画はカナディアンロッキーで目撃されたハイイログマとシロイワヤギの様子。ハイイログマに追われた母子らしきシロイワヤギ2頭が、狭い岩の隙間に入ってハイイログマから身を守っている。

MOUNTAIN GOAT GRIZZLY BEAR ENCOUNTER IN CANADIAN ROCKIES

ヤギに殺されたのは幼いハイイログマだった

 また、死体で発見されたハイイログマはまだ幼い個体だったと考えられている。

 ハイイログマは最近になって体重360キロまで成長することがわかってきたが、死体はその1/5の70キロほどしかなく、出産経験がないことも判明。

 若くして命を落としたそのクマは、そのヤギに噛みついて食いちぎろうとした可能性もあるが、鋭く固い角に守られたヤギのほうが上手だったのだろう。

ハクトウワシを刺し殺した幼いアビの事例も

 こうした事例はネットでも時折話題にのぼる。

 例えば昨年、アメリカのメイン州の湖で何者かに殺されたハクトウワシの死骸が見つかり、その犯人がアビ科の幼鳥であることが後に判明した。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:Andy Morffew, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons:ハクトウワシ

 その鳥は、ワシに襲われながらもとがったくちばしでワシの心臓を突き刺したのだ。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:David Karna / Wikimedia Commons:アビの親子

 こうした動物たちの逆転劇は稀有な戦いとして注目されがちだが、と同時に一見不公平な戦いでも勝敗は最後まで読めないことも示している。

クマを恐れず撮影に没頭。襲われるおそれも

 また野生動物に出くわした人の中には、珍しい光景をとらえようと近づいてスマホ撮影を始める人もいる。が、その行動が命取りになることもある。

 今年初め、イギリスのデータ分析会社YouGovが行った世論調査で、アメリカの成人男性1,224人のうちの7%が「ハイイログマを倒せる」と信じていることが明らかになった。

 現実には野生のクマを倒しに行く人などまずおらず、自信過剰な回答が証明されることもないだろう。しかしクマの撮影に没頭しているうちに見つかって襲われることはありうる。

 倒せると主張する男性の中には、クマを撃退して生還できた幸運な人のニュースを見て「なら自分だって平気かも?」と楽観視する人もいそうだが、クマの犠牲者数を考慮してない可能性もある。

動物の死体を発見したらすぐ報告。危険回避のため争いの場から離れること

 自然豊かな地域ではどんな動物がこちらの様子をうかがっているかもわからない。観察してるつもりが観察されてる可能性もあるのだ。

 特にクマの生息地のような危険な場所で、野生動物の命がけの戦いの場面に遭遇したときは近寄らないのが賢明だ。

 パークス・カナダの広報係を務めるバイルズ氏は「安全はパークス・カナダの最優先事項です」と述べ、来園者に動物の死体を見つけた時の対処法や、死体の放置で引き起こされる危険性を伝えている。

来園者が動物の死体に遭遇した場合はすぐにそこから離れ、早急に発見場所を報告してください。その場にいると、死体に引き寄せられた肉食動物や他の野生生物たちの活発な行動に巻き込まれる恐れがあるからです。

References:livescience / youtube / iflscienceなど /written by D/ edited by parumo

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 30件

コメントを書く

    1. >>1
      ヤギは動画のような断崖絶壁でも自由に動けるけど、熊は一突きされたらまっ逆さまに落ちるしかない。

      • +1
    2. ※1
      クマは登りはわりとできても下りは苦手なんだよ 

      • +1
  1. マイリトルゴートみたいだ…あれは狼と羊だったけど。

    • 評価
    1. >>3
      「チリンの鈴」っていうのもあったね

      • +3
  2. 「ハイイログマを倒せる」男はいつの時代もバカだな
    私の高校時代の教師に酔っぱらったときの
    必殺技が⦅自動販売機投げ⦆というのがいた
    当時の自動販売機は今ほどガッチリ固定されていなかったので
    ガンガン揺らしてグラグラしてから倒すらしい
    飲料メーカーもいい迷惑だよ

    • +4
  3. 角って自然が生み出した防御装備なんだなぁ。
    そういえば以前、家の近くでヤギが野放しにされていたけど、彼ら自分の角を狙ったところに刺す方法を知ってるようなんだよね。写真のヤギほど立派な角ではなかったけれど、それなりに痛かった

    • +5
  4. 熊に勝てるわけねーだろ素手なら猪ですらまず無理だぞ

    • +7
    1. >>8
      うちの猫がパニック&激怒した時もなかなか恐ろしいよ…人は毛皮も爪も牙も敏捷性も無い無力な存在だとしみじみさせられる

      • +5
    2. ※8
      大山館長「へっ?素手で倒したよ。ウィリーもな。」

      • -1
  5. ヤギ「俺はただのヤギじゃめぇ地獄の使者だ。騒ぐんじゃめぇ!」

    • +2
  6. 「俺はハイイログマを倒せる」と主張するアメリカ人男性がいたら「お前はヤギか」とツッコミを入れればいい、ということ ?

    • +9
  7. 上から岩をたくさん落として、
    両方とも転落させてやりたくなるw

    • -17
  8. どこの世界にも規格外の奴はいるんだな。

    • +3
  9. 70kgのクマじゃ相当小さいな
    急所にツノ攻撃喰らったらそりゃとても防ぎきれないし致命傷になるわ

    • +2
  10. トラも獲物に反撃されて死んだりするらしい
    猪にどつかれたりバイソンの角にやられたり
    肉食動物はあまり繁栄してないし
    やはり草食>肉食だよなぁ

    • 評価
  11. 山に住むヤギはなぜ落ちないんだろう?
    重心が低いわけでもないし、足の蹄も硬くてグリップが効かなさそうだし。
    人にも応用できるコツがあるなら知りたい。

    • 評価
    1. ※21
      ヤギは偶蹄目でネットの検索画像でいいからよく見てみてほしいのだけど、お手手はじゃんけんのチョキの形に結構深く分かれていて、もちろん爪(蹄)は硬いけど(←おおきいやぎのがらがらどんが「(おれには)おおきな いしも 二つ ある」って言ってるやつね)チョキ部分自体は柔軟に動いて、足元をしっかりつかめるような感じになってるよ。重心も低いと思う、そんなに足がひょろりと長くなくてお尻とか低いよ。(※種類にもよると思うけど)
      あと普通に足腰が強いのもあると思うけど、岩山や高いところ(民家の屋根とかもw)にひょいひょい上れるのはあの蹄がものを言ってると思う。
      ヤギ可愛いからSNSとかで検索してみて!w しっぽが地味可愛いから!

      • +6
  12. 刺突というのは動物の世界でも強者を倒す一発逆転の手段として有効なんだなあ

    • 評価
  13. >アメリカの成人男性1,224人のうちの7%が
    >「ハイイログマを倒せる」と信じていることが明らかになった

    んで、実際にその場面になってから後悔する。。。しか想像できん
    強力な銃でも持っていれば勝率は上がりそうだが、ナイフ程度だと
    数%くらいしか自分が生き残る可能性は残っていないと思うけどな
    (アメリカでは銃の所持は合法だから、皆銃を持って登山するのか?)

    • +1
  14. GRIZZLYだからグリスリーベアじゃなくグリズリーベアね!

    • 評価
  15. 写真のヤギはチャック・ノリスに似てる、そりゃあ敵うわけがない、チャック・ノリスなのだから。

    • 評価
  16. 子供を守るお母さん(かな)、ステキ。足踏みは威嚇してるんだよね。子供もお母さんを信じてきゅっとくっついている。
    熊のほうも、せっかくご飯を追い詰めたのに…。あのぉ、小さいほうだけでももらえませんかねえ?て感じ。

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

画像

画像についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

動物・鳥類

動物・鳥類についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。