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40年以上にわたり、世界的に大ヒットを続けているスター・ウォーズシリーズで、ヒール役でありながら絶大なる人気を誇るのが「アメリカ映画100年の悪役ベスト100」の3位にランクインしたこともあるダース・ベイダーだ。エピソード4から6まで、ダース・ベイダーを演じていたのは、故デヴィッド・プラウズ氏だが、その声のイメージがどうにも合わなくて、声優で俳優のジェームズ・アール・ジョーンズ氏の声で吹き替えられたそうだ。
声が吹き替えられる前、デヴィッド・プラウズ氏の音声で収録された映像が残されているので、聴いてみることにしよう。
吹き替えを余儀なくされた初代ダース・ベイダーの声
映画史上、最高傑作を生み出し続けているスター・ウォーズシリーズ、その最初となる『エピソード4 新たなる希望』が世に生まれたのは1977年のことだ。この作品からエピソード6まで、ダース・ベイダーを演じたのは、イギリス南西部ブリストル出身のデヴィッド・プラウズ氏だった。
元ボディービルダーおよびウエイトリフター選手として活躍していたプラウズ氏は、屈強な体格と198cmの高身長の持ち主で、ダース・ベイダーを演じる前にも複数の映画で主に悪者の手下役として出演していたという。
役者としては申し分なかったのだが、彼にはイギリスの強い訛りがあり、理想とするダース・ベイダー像としては迫力に欠けたものだったようだ。
こちらがプラウズ氏演じるダース・ベイダーのオリジナルの音声だ。
The Real Voice of Darth Vader...hilarious!
映画を字幕で見る派なら、「俺たちの知ってるダースベイダーの声じゃない!」となるくらいにはまるで違う。
役を演じるからには当然声も担当したいとプラウズ氏は制作側に主張したが、結局受け入れられず、声を吹き替えることになった。
そして、後に“ダース・ベイダーの声”として誰もが知るジェームズ・アール・ジョーンズ氏がその役割を担ったのだ。
ダース・ベイダーの声へのこだわり
スター・ウォーズ制作者のジョージ・ルーカス氏は、ダース・ベイダーの声は、個性派名優である、故オーソン・ウェルズ氏でさえも適さないと判断し、ジェームズ・アール・ジョーンズ氏の起用を決めたという。プラウズ氏の声からジョーンズ氏の声に吹き替えられたダース・ベイダーは以下から見ることができる。うん、俺たちの知ってるダース・ベイダーだ。
Prowse/Jones Darth Vader Vocal Comparison
ジョージ・ルーカス氏は、ダース・ベイダーのコスチュームはもちろん、声にかなりこだわりをもっていたようだ。
自身の声が吹き替えられることを知ってがっかりしているプラウズ氏を立てるために、ジョーンズ氏はエピソード4と6において、自分の名前をクレジットに出す要求を一切しなかったという。
吹き替え料として、当時7500ドル(約82万円)を支払われて最初のレコーディング部屋で過ごした2時間半を、ジョーンズ氏は「特殊効果音」の役割担当と割り切った。
実際に、効果音専門技師ベン・バードさんが、ダース・ベイダーの声をジョーンズさんの低く凄みのある声とスキューバダイビングのギアサウンドを同期させ、象徴的な機械的呼吸を作成した。
イギリス訛りの強いプラウズ氏の声はダース・ファーマー
制作側スタッフの中には、イギリスの地方訛りが強いプラウズ氏を「ダース・ファーマー」というニックネームで呼ぶ者もいたほど、誰1人としてプラウズ氏の声をダース・ベイダーとして受け入れることができなかった。しかし、ジョーンズ氏は後のメディアのインタビュー内で、ダース・ベイダー役を演じたプラウズ氏に対して、「彼こそがダース・ベイダーだ」と尊敬の意を込めて語っていた。
こちらは、2009年のジョーンズ氏のインタビューの様子だ。
James Earl Jones On Playing Darth Vader
今では、ダース・ベイダーの声はジョーンズ氏として定着しており、彼ほどあの悪役の声を演じるに適切な役者はいないだろうとさえ言われている。
最初から、プラウズ氏がジョーンズ氏のような強いインパクトを持つ声に欠けており、キャラクターとのイメージが合致しないのは明らかだったが、なぜジョージ・ルーカスがプラウズ氏を最初に起用したのかは不明だという。
こちらは、2016年のデイヴィッド・プラウズ氏。
David Prowse aka Darth Vader Says Why His Voice Was Cut at Awesome Con
なお、晩年はアルツハイマー病を発症していたと伝えられていたプラウズ氏は、去年11月に新型コロナウイルス感染症に罹患し、2週間の闘病生活後ロンドンの病院で逝去。85歳だった。
written by Scarlet / edited by parumo
追記:2021/09/15:冒頭の誤字を訂正して再送します。
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コメント
1. 匿名処理班
大変興味深い記事でした。
『マイ・フェア・レディ」におけるオードリー・ヘップバーンおよびジェレミー・ブレットの吹替えの件を思い出しましたよ。
ところで、「効いてみることにしよう」は「聞いてみることにしよう」の誤変換ですよね、パルモさん。(文句を付けているんじゃありませんよお! 応援したいんですよお! 念のため)
2. 匿名処理班
ダースベイダーがザムンダの国王様だったとは知らなかった
3. 匿名処理班
オリジナルの声だったらここまで人気出なかったと思う
4. 匿名処理班
ダーダーダーダダダーダダダー
5. 匿名処理班
ボイスチェンジャーみたいなので低くしてるのかと思ってた。
確かに本人の声は、怒りというよりかんしゃくを起こしてる感じ。
6. 匿名処理班
>>3
こいつが最後にクルクル回ってすっとんで行ったら、たぶん続編は違う色のやつが出てくるんだろうな…と思ってしまいそう
声って大事ね
7. 匿名処理班
>>ヒール役でありながら絶大なる人気を誇るのが「アメリカ映画100年の悪役ベスト100」の3位にランクインしたこともあるダース・ベイダー
ということで、悪役ベスト100を見に行きました。
なるほど、1位は日本でも有名なあの悪役ですね、2位はぱっとは気づきませんでした、誰だったかなぁというイメージです、第3位、納得しました。
>>なぜジョージ・ルーカスがプラウズ氏を最初に起用したのかは不明だという。
こちらは、存命なのですから聞くことはできないのでしょうか。
やはり、簡単にはコンタクトがとれる人物ではないのでしょうね。
8. 匿名処理班
有名な「私がお前の父親だ」のセリフ、撮影当時はトップシークレットだったもんで、プラウズ氏には偽のセリフが伝えられていたんだよね。「ベンケノービがお前の父を殺した」と言って演技した。
で、上映時にはじめて本来のセリフを聞いておったまげた。ベイダー本人なのに知らなかったという。
9. 匿名処理班
演者の声でも悪役っぽくて良いと思うけどな
ただ、このタイプの早口でまくし立てるように喋るのは、第二次世界大戦モノのアメリカ映画のドイツ軍将校の悪者役に多い喋り方に似ているので、そんなイメージを嫌ったのかなぁとも思いましたが、でも帝国軍の制服ってナチス・ドイツ軍や親衛隊の制服を参考にしてるし、うーむ、やはりダース・ベイダーという敵キャラのボスクラスの役なので第二次世界大戦モノの下っ端将校のイメージが付きまとう喋りを避けたのかな
10. 匿名処理班
わかってなかったが吹き替えグリーア提督だったのか
ライアン(ハリソン・フォード)との友愛と厳しさあふれるやりとりのシーンを見る目がかわりそうだ
ご本人の声は大作戦争映画に出てくる大英帝国慇懃スノッブ将官みたいでちょっと好き
11. 匿名処理班
ジョーンズさんはオーソンウェルズにも気を遣って、「オーソンウェルズの声は余りに本人を想起させすぎたからじゃないかな」と言ってるね、インタビューで。良い人や
12. 匿名処理班
声にエフェクトかければそこまで変じゃないと思うけど、なんか小物感は否めないね。
ただエピソード3のダースベイダーになる前のアナキンのイメージだと、低音で野太い声のジェームズ・アール・ジョーンズより実際に演じてた中の人の声質のが近い気がする。
13. 匿名処理班
悪者の親玉がおっさんなら
低音じゃないと迫力が無いからな
14. 匿名処理班
訛りのある高い声でまくし立てるとチンピラっぽい印象はある。
でも吹き替え後の声同様、元の声もボイチェンで低くしてエフェクト乗せたらそれなりに聞こえる気がする。
15. 匿名処理班
スターウォーズの知名度の割には、本人あまり知られてない不遇の役者さんなんだよね。
イメージにあってないは、仕方ないとは思うけど、顔もほぼ出ず声まで吹き替えられて不本意だったと思う。
天国では楽しく暮らしてるかな。
16. 匿名処理班
たしかにこの声じゃ単なる下士官みたいだw
17. 匿名処理班
>>7
ヒーローと悪役ベスト100(各50)ですね。
アメリカ映画のせいかヒーローTop50の方が誰?が多い印象。
18. 匿名処理班
吹き替え版の方が圧倒的に恐い。
感情にダイレクトに響くから、聴き比べちゃうともう納得度100%。
19. 匿名処理班
Star Warsにおいて被り物の役者はみんな虐げられていてセリフが一切無い。
チューバッカ、R2-D2,ダース・ベイダーなど。例外はC-3POのみ。
C-3POも最初は別の俳優が吹き替えする予定だったが、中に入ってる人の
英国の執事風発音が翻訳ロボットに向いているということで、本人が喋る
事になった。
20. 匿名処理班
※8
本人に秘密にしていた理由は、この人はお喋りであちこちでストーリーを
喋ってしまうから。秘密を喋ってしまうためジョージ・ルーカスにとても
嫌われており、Star Warsファミリーとして扱われなかった可哀想な人。
Star Warsのファンイベントにも一切呼んでもらえなかった。