
『PNAS』(21年8月31日付)で報告された観察記録によると、緩歩動物に属するクマムシの歩き方は、全く違う分類に属する節足動物に似ているという。
地球上最強生物に向けられた悲劇
クマムシは緩歩動物の仲間で、およそ1000種以上(うち海産のものは170種あまり)が知られている。「乾眠(クリプトビオシス)」という休眠状態になると、30年以上冷凍保存されても生き返り、宇宙空間で強烈な放射線を浴びても生き延びることができる、地球上最強と言われるほどの驚異的な能力を持っている。
だが、そのおかげで予想外の悲劇に見舞われている。それは人間の関心が、彼らをどうやって殺すかということに向いてしまっていることだ。
しかし米ロックフェラー大学の機械生物学者ジャスミン・ニロディ氏らが興味を持ったのは、クマムシが生きているときの姿だ。

photo by iStock
歩くことができる最小クラスの動物
強力な生命力にばかり目を奪われるが、クマムシにはほかにも不思議なことがたくさんある。たとえば彼らは体長0.05ミリ〜1.7ミリという小さな体にもかかわらず、4対8本のずんぐりとした脚を持っている。脚があるものとしては最小クラスの動物で、とても柔らかい体を持つというのに歩くことができる。
ゆえにニロディ氏はクマムシが歩く姿を研究し、その驚くべき結果についてTwitterで語っている。
クマムシの歩きについて、最高にクールで、まず驚かされたことは、彼らがとても上手に歩くということです。規則正しい歩き方で、彼らよりずっと大きな動物のものに驚くほど似ています
But honestly, there aren't too many 'bloopers'! One of the coolest -- and initially most surprising -- things about tardigrades walking to me was how...good they were at it. They have a regular gait, and it looks remarkably like those of much much larger animals! pic.twitter.com/KQhiFx9p2w
— Jasmine Nirody (@jasnir_) March 22, 2021
クマムシの歩き方が昆虫に似ている謎
ニロディ氏によると、クマムシの歩き方は、彼らよりずっと大きく、体の材質もまるで異なる昆虫の歩行パターンによく似ているのだという。たとえば柔らかいゲルの上を歩かせたとき、「ギャロッピング」という歩行パターンが観察された。これは流動性のある表面や粒状の表面を移動するときに、昆虫などの節足動物が見せる歩き方だ。

柔らかいゲルの上を歩くクマムシ Photo by:Nirody et al., PNAS, 2021
一方で、滑らかガラスの上では、あまり上手に歩けないことも観察されている。

ガラスの上で上手に歩けないクマムシ Photo by:Nirody et al., PNAS, 2021
クマムシは「緩歩動物門」に属しており、「節足動物門」に属する昆虫とは系統が異なる動物だ。それなのに、両者の歩き方が似ているのはなぜなのか?クマムシと昆虫の祖先が共通している可能性や、両者がそれぞれ独自に同じ歩き方を進化させた可能性が考えられるが、今のところ真実は不明であるとのことだ。
References:Tardigrades exhibit robust interlimb coordination across walking speeds and terrains | PNAS / This Is How Tardigrades Walk, And We Were Not Ready For The Footage / written by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい





コメント
1. 匿名処理班
潰せば簡単に死ぬ
全然最強じゃないよ
2. 匿名処理班
あったかいんだからぁ・・・ って自然にきこえてくるよね・・・
3. 匿名処理班
パッと見ハダカデバネズミに見えるお
4. 匿名処理班
ひ!?思ったよりもムシだった!
5. 匿名処理班
今回の実験はおとなしめなのでクマムシもほっとしてると思うが
ガラスの板でショック受けたな
6. 匿名処理班
ガラスの上ではうまく歩けないってことはかなり爪に依存した歩き方なんだな
7. 匿名処理班
暴走したときのカオナシの歩き方そっくり
8. 匿名処理班
動作はカワイイが顔はキモい
9. 匿名処理班
ハルキゲニアやアノマロカリスが居たとき以前にそれらと分かれたのがクマムシの祖先て言われてるね。
つまりクマムシとカギムシと節足動物で大グループを作ってるとか。
カラパイアのみんななら↑に出てきた動物ぜんぶ分かるよね!
10. 匿名処理班
※1
人間や昆虫や象も潰せば簡単に死ぬんですが…
11. 匿名処理班
ここまで強いと人間に害のある生物で無くてホントに良かったと思うわ
…ないよね?
12. 匿名処理班
体が小さすぎてわかんないんじゃねえかな。
クマムシを巨大化するよう改良できれば研究も進む気がする
13. 匿名処理班
※10
※1君が潰しても簡単に死なない異星人である可能性を忘れてはいけない
14. 匿名処理班
歩き方がかわいい…
15. 匿名処理班
ガラスの上がひんやりして気持ちいいのではという仮説
16. 匿名処理班
>>1
もしクマムシが人間と同じサイズだったらと想像してみそ。
勝てる気がしないわ…
17. 匿名処理班
収斂進化かね。
かわいい。
18.
19. 匿名処理班
>>7
金をやろう。もう千にしか出してやらない事にしたんだ💓
20. 匿名処理班
ひっくり返って起き上がれない虫の動きだコレ>ガラスの上のクマムシ
21. 匿名処理班
>地球上最強と言われるほどの驚異的な能力を持っている。
> だが、そのおかげで予想外の悲劇に見舞われている。
>それは人間の関心が、彼らをどうやって殺すかということに向いてしまっていることだ。
笑う所か悲しむ所か悩む。
22. 匿名処理班
火星に送り込んでも生き延びられるかもしれない動物の筆頭?
23. 匿名処理班
地方でひっそり活躍してそう
24. 匿名処理班
ふと思ったんだが、もしかして食えるのか?
25.
26. 匿名処理班
あったかいんだからあ。
27. 匿名処理班
プリンタニアっぽい
28. 匿名処理班
もっと芋虫っぽくウネウネするのかと思ったら結構トコトコ歩いててわろた
29. 匿名処理班
「両者がそれぞれ独自に同じ歩き方を進化させた可能性」のが近そう
足の短い品種の犬猫のようでもある
30. 匿名処理班
これって筋肉で歩いてるの?
最小サイズのクマムシは何個の細胞でできてるの?とか色々気になる