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本当にあった世にも奇妙な疫病。感染すると死ぬまで踊り続ける「踊りのペスト」

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(著) (編集)

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 現在、世界では新型コロナウイルスが大流行し、大勢の人が亡くなっているが、これまで様々な感染症が人類を脅かしていた。

 中には信じがたい感染症が流行したことがある。12世紀から16世紀にかけてのヨーロッパで、死ぬまで踊り続ける「踊りのペスト」という奇病が流行ったそうだ。

 「踊りのペスト」にかかった者は、いきなり手足をくねらせながら踊り始め、疲れ切って倒れるまで踊るのをやめず、しまいには、心臓発作や脳卒中で死んでしまう者も続出したという。

 しかもその原因はウイルスなのか?細菌性のものなのか?そもそも感染性のものなのか?今でもよくわかっていないという。

踊らずにはいられなくなる「踊りのペスト」

 「踊りのペスト」のもっとも古い記録は7世紀にさかのぼる。その後、1020年代にドイツベルンブルクで再び発生し、さらに13世紀にも何度か繰り返し発生した。

 1237年には、ドイツのエアフルトから20キロ離れたアルンシュタッドの町へと移動していた子ども
たちのグループが、狂ったように踊り続けた。

 1278年には、ドイツ、ムーズ川にかかる橋の上で、200人もの人が踊り始めたために、橋が落ちてしまった。

 1373年から1374年にかけては、この「踊りのペスト」の発生は、イングランド、ドイツ、オランダでも報告されている。

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credit:public domain/wikimedia

1か月で400人が踊り狂う

 中でももっとも有名なものは、フランス、ストラスブールで1518年7月に発生したものだろう。

 フラウ・トロフィアという女性が、通りでいきなり踊り出した。トロフィアは昼も夜も踊り続け、4日後にはほかにも33人が踊り始めた。その人数は1ヶ月のうちに、400人にも膨れ上がった。

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ピーテル・ブリューゲル「踊り病」1518年 / image credit:public domain/wikimedia

 当時、ストラスバーグ当局は、この「踊りのペスト」は”血の気”が原因だと信じ、ふたつの市庁舎や穀物市場を開放して、踊り手のために木製のダンスステージまで作って、専用の楽団まで雇った。

 ストラスバーグ市議会の議事録、医師のメモ、宗教の説教、地方や地域の年代記などの記録には、1518年8月までに、踊り狂った多くの人々が死んだとある。9月には、市は残った踊り手たちを山の上の聖堂に連れて行き、そこで祈祷をさせた。

The Strasbourg Dancing Plague | A Short Documentary | Fascinating Horror

「踊りのペスト」の原因はなにか?

 踊らずにはいられなくなり、踊り狂って最後には死んでしまう。文字にするだけで狂気しか感じないこの病だが、その原因は諸説あるものの、完全には明らかになっていない。

 歴史家のジョン・ウォラーは、この奇妙な伝染病は、各地で発生した病気や飢饉によるストレス性の集団ヒステリー(集団心因性疾患)だと考えている。

 ほかにも、人々が麦角菌(ばっかくきん)を摂取したせいだという説もある。麦角は湿ったライ麦の穂に寄生する菌で、幻覚を引き起こすLSDに似た成分を含む。

 エルゴタミンは、麦角菌の神経活性物質で、LSD(リセルグ酸ジエチルアミド)と構造が似ていると言われている。

 しかし、LSDによる幻覚体験は、通常、24時間以上は持続しないため、人々が何週間も踊り続けた理由の説明にはならない。

 また、脳内の神経伝達物質であるドーパミンによる運動の調節機能がうまく働かなくなって起きるジスキネジアの可能性もあるという。

 ジネステリアは自分の意志とは関係なく、体の一部が勝手に不規則で異様な動きする現象のことで、踊っているような仕草にみえるものは舞踏病と呼ばれている。

 ジネステリアは脳や神経の病気の一症状として出現する場合と、薬の副作用として出現する場合があるそうだ。

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photo by Pixabay

21世紀にいたるまで「踊りのペスト」に似た症状が発生

 16世紀にも、スイスのバーセルで同様の事件が起こり、1973年から1978年にかけては、シンガポールにある工場で、踊りのペストに似た症状が6回発生した。

 工場労働者たちが、叫び声をあげながら、トランス状態になったり、かつてないほどの恐怖を示したりしたという。

 最近では、2011年にニューヨーク州北部のルロイの学校で起こったケースが有名だ。12人の十代の女子中高生たちが、トゥレット症候群のような体をピクピクさせる症状を発症し始めた。

 このケースの場合、当局は、感染症や毒物の可能性をすべて排除し、集団心因性疾患として知られる集団ヒステリーが原因だと結論づけた。

 この世には様々な疫病があるが、まだ医学では完全に解明できない特殊で奇怪なケースも存在するようだ。

References:The Dancing Plague Has Got to be the Weirdest Outbreak Ever Experienced / written by konohazuku / edited by parumo

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この記事へのコメント 37件

コメントを書く

  1. 踊り狂う奇病と言われてハンチントン舞踏病かと思っちゃった。
    こっちは遺伝子関係だから全然違うかw

    • +8
  2. 何らかの反応による動作なのかな?
    もしくは踊るような動作をせずにはいられない不快さを生じさせる病気とか。
    なんにせよとても不気味に見えただろうね…

    • +5
    1. ※5
      ええじゃないかは、踊り狂ったといっても
      幕末の不穏な世相の中でのやけっぱち感や、
      騒動に便乗して後から加わり 商家に酒食を強請ったり
      鬱憤晴らしに暴れてそこら辺の物をぶっ壊したり、
      一応は正常な脳の人間の集団バカ騒ぎって感じだからなぁ…。
      せいぜい群集心理の事例な感じがする。

      本当の“発狂”レベルで 疾患としての脳の異常も疑われ
      「踊り狂った多くの人々が死んだ」というこの事例とは、
      ちょっと質的に別物なんじゃないだろうか?

      • +11
  3. 踊り狂うって言ったらあれだよね、ワライタケ症状
    飢饉で毒キノコを食べちゃった可能性

    • +11
  4. アンデルセンの赤い靴思い出した
    アレは呪いだったっけ

    • +11
  5. 「う~ん、なにが原因かわからんから舞台で踊ってくれる?」
    って発想がすごい

    • +18
  6. 神経毒とかはありそうだよねえ
    何かしらのガスとか毒キノコとか

    • +1
  7. 村上龍の「五分後の世界」に出てくる病気の末期症状がこんな感じだったなぁ…
    作中ではロシアンマンボと呼ばれて恐れられてたけど

    • 評価
  8. ジスキネジア出たことあるわ。
    ある検査で使った薬で、検査後に急にドクンてしたのでDrにいうと「すぐ注射」と。
    拮抗薬を打ったけどそれが効くまで30分、座ってられなくてホールをぐるぐる。
    立ったり座ったり、窓口に「まだ効きません!!」「効いてくるのでお待ちください」を5回くらい、トイレに行くこと3回くらい。
    とにかく動いてないとダメで事前に聞いてなければ走り出したり叫んだりしてただろう。
    いや踊りはしないけどアレはきつかった。

    たぶん記事のとは違うだろうけど、もしジスキネジアの程度が軽かったら、衝動を抑えるため踊るというのはあるかもしれない。
    とにかくじっとしてられないのだから。

    • +16
    1. >>19
      仲間発見
      意思と関係なく脳が勝手に命令出してる感覚だよね
      その命令に逆らうととても苦しい
      あれで意思>脳ではなく意思<脳なのだと理解できた
      この記事の人らもかなり苦痛だっただろうな

      • +9
      1. ※23
        心療内科の薬かな?心療内科系の薬は怖いよね。自分は服用したことがないが、
        身内がやられたせいで心療内科の薬の薬害に詳しくなった。

        • +2
  9. 最近文の推敲が甘いような。
    内容の重複や誤字が気になる。

    • +4
  10. アンデルセンの「赤い靴」もこれがモチーフなのかな
    あれは1800年代の話だけど感染はしなくて、止めるために首切り役人に足を切り落としてもらうという容赦ない止め方だ
    貧困層出身の女の子が思い入れある靴に魅入られることがそこまで呪われなきないけない罪なのかと、当時の道徳観とか宗教観について考えさせられる話

    • +4
    1. ※21
      あれは貧困層でも裕福層でも同じ罰を受けたと思うよ。
      物に魅入られて情をないがしろにしてしまったから。

      • +4
    2. ※21
      「赤い靴」ってのは象徴アイテムであって、
      たかが靴くらいで~じゃなく
      何度 不謹慎と注意しても教会に派手なダンス靴で現れたり
      あまつさえ危篤の養母を放ってダンスパーティーへ出掛けようとしたり(結局 死に目に会えず 次に目撃したのは葬列)、
      そういう「夜遊びに明け暮れる放蕩の若者」
      「内面の美を磨かず、見てくればかり飾る軽薄な人格」という
      自堕落な娘を端的に示す小道具が「赤いダンス靴」なのだろう。

      あと、シンデレラでも言われたりするけど、
      「靴に足を嵌める」動作って そっち系を連想させたり
      ましてそれが赤色…ってのや、
      そもそもダンスは若い男女の出会いの社交場、ってのも相まって
      そこはかとなく ふしだらな雰囲気を醸すツールな印象もある。

      舞踏病の他のモチーフだと、白雪姫の継母の末路にも出てくる
      「焼けた鉄(=赤い)の靴を履かせ、死ぬまで踊らす」
      (踊るというか、底面に触れる灼熱の苦痛で飛び跳ねざるを得ず
      力尽きて動けなくなるまで それが続くって感じなんだろうが…)
      も、罪への罰としてオマージュしてそう。

      • +7
    3. ※21
      ”赤い靴”で、首切り役人に切り落とされた足は、そのまま踊りながら
      どこかへ消えていったんだっけ?
      で、その女の子は木で作った義足と松葉づえで歩いて行った、だったか言う
      記憶があるんだけど、その後どうなったかを覚えていない。

      • +1
      1. >>28
        自分が初めて読んだ「赤い靴」では森へ入って行って、枝に体や服を切り裂かれながら神に許しを請いつつ絶命するという結末だった
        トラウマ童話の一つ

        気になって調べたら、原作では足のないまま慈善事業に身を捧げ、それでも何かに阻まれるように教会には足を踏み入れられずにいたけど最後には神に救われる的endだった

        なんか、アンデルセンには妾腹の身内がいて嫌悪とともに醜聞のネタとして恐れてたとか、自分自身が新品の靴に気を取られて宗教儀式に集中できなかった経験とかが反映されてるって説があるらしいね

        • +2
    4. >>21
      あれ幼児の時本屋で立ち読みしてトラウマになったな
      かわいい金髪美少女が表紙だったからつられて手に取ると…
      しかも自分が子供の頃は今のと違って切り落とされて足だけ踊り去っていったところで「完」
      救いようがなかった
      今のだと親切な大人に義足を作ってもらって「完」だけど

      • +1
      1. ※29
        原作では、足を切ってもらった人に義足も作ってもらってる

        • +2
    5. ※21
      何度注意されても禁止されている派手な靴で教会へ行ってしまう。死の床についている養母(恩人)を放ってダンスパーティーに行ってしまったのは、靴への憧れを超えていると思うよ

      • +1
  11. 当時に動画の撮影機が発明されてれば良かったのに。

    映像として記録が残っていたら、何らかの原因を突き止める事が出来たかも知れない。

    • +1
  12. 日本の「ええじゃないか」のような反政府的な群集心理を政府が鎮圧させる為に「疫病」だと決め受けて目をそらしたのでは?
    どこそこの村でええじゃないか病で死者が出たと政府がデマを流せば人々は怯えて踊らなくなるだろうし。

    • -1
  13. 麦角菌じゃあないかなあ。某チェコのフス戦争漫画で麦角でラリって裸で乱痴気騒ぎするアダム派というカルト(実在)が出てきたけど。同じ地域のかびた麦を皆で食べてたら集団幻覚騒ぎが起こってもおかしくない。

    • +1
  14. むずむず脚症候群みたいな奴なんだろうな。

    • 評価
  15. 踊ってるのではなくフラフラクネクネと普通に立ってられない症状があたかも踊ってる様に見えるってだけだと思うんだけど

    • 評価
  16. 痒みとか痛みじゃないのかな?
    集団ヒステリーだとしても何日も~は無理あるんでない?

    • 評価

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