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炭疽菌からエボラまで。使用されたら危険な生物兵器になりうる10の細菌・ウイルス

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(著) (編集)

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 生物兵器の歴史は1155年にまでさかのぼる。赤髭王の異名を持つローマ皇帝フリードリヒ1世は、水源を遺体で汚染して敵を苦しめた。だが、より明確な形で生物兵器がこの世に誕生したのは、微生物学の発展によるものだ。

 疫病の恐ろしさは我々がまさに身をもって体験しているところだ。ゆえに、それが軍事利用されたときの恐怖は、生々しいまでに感じられる。以下では、使用されたら危険極まりない10の生物兵器を見ていこう。

10. 炭疽菌

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credit:public domain/wikimedia

 エジプトで進化したとされる細菌で、聖書の出エジプト記にも炭疽菌(たんそきん)が原因と考えられる人間と家畜の大量死が記載されている。

 皮膚の細かい傷口に感染すると潰瘍となり、黒いかさぶたを形成するのが特徴(これが炭に見えることが名称の由来)。また肺に吸入してしまうと、インフルエンザに似た症状が発生し、非常に致死率が高い。

 第一次世界大戦時、ドイツ軍が連合国と取引のあった中立国の家畜やそのエサに入れ、感染させたともいわれている。

 ちなみに1925年の時点で、ジュネーブ議定書によって毒ガス兵器・細菌兵器の使用は禁止されていたが、その研究や生産は規制の対象外のままだった。

 1942年、イギリススコットランドのグリュナード島で、イギリス軍が炭疽菌爆弾による散布実験を行う。この後48年間、グリュナード島は炭疽菌芽胞で高度に汚染された状態となり、立ち入り禁止地区となった。

 もっとも最近の使用事例は2001年の「アメリカ炭疽菌事件」だ。複数の場所に炭素菌入りの封筒が郵送され、最終的に22名が感染し、5名が死亡。そのうち7名は郵便配達員だった。

9. ボツリヌス菌

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photo by iStock

 世界でも最強クラスの毒性を誇る細菌。致死量は体重70kgの人間に対して0.7~0.9マイクログラム、つまり1グラムで100万人を殺すことができる。もう1つ恐ろしいのは、目に見えないばかりか、臭いも味もしないサイレントキラーであることだ。

 自然に感染することはあまりないが、年間200人程度がボツリヌス菌中毒と診断されている。幸いにも、そうした事例がバイオテロと関連づけられたことはない。

 感染すると、まず顔の筋肉の麻痺という症状が現れる。そのまま放置すれば、麻痺が全身に広がり、呼吸のための筋肉すら動かなくしてしまう。

8. 天然痘ウイルス

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credit:public domain/wikimedia

 全身に生じる膿疱が特徴の、非常に感染力が強いウイルス。致死率は大人で3割程度だが、幼児ではさらに上がる。危険なウイルスだが、それも過去の話で、天然痘は人類が根絶に成功した唯一の感染症でもある。

 ただしウイルス自体は、アメリカ疾病予防管理センターロシア国立ウイルス学・生物工学研究センターの2か所で保管されている。

 ゆえに将来的にそれが国やテロリストなどに悪用される可能性がないわけではない。実際、いくつかの国家が極秘に天然痘ウイルスを保有している可能性も示唆されている。

 もちろんワクチンはある。しかし最後に天然痘が確認されたのは1975年のことで(例外として、2000年代初頭にごく短期間だけ再出現したことがある)、それ以降ワクチン接種は途絶えてしまっている。

7. コクシエラ菌

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credit:public domain/wikimedia

 感染するとQ熱というインフルエンザのような症状を引き起こす細菌。Qとは「Query(不明)」のこと。1935年にオーストラリアの屠殺場で流行した原因不明の熱病にちなんだ名称だ。

 コクシエラ菌は自然界ではウシ・ヤギ・ヒツジ・ネコ・イヌなどの体内に存在しており、人間には家畜の乳などを通じて感染する。

 アメリカやソ連が感染力を強めたコクシエラ菌を開発しており、人体実験では被験者全員が感染・発症するなど、その効果が確認されている。

 アメリカでは20年も実験が続けられていたが、その主な被験者は、武器を使うことなく国に貢献したいと考えたセブンスデー・アドベンチスト教会の信者であった。

 2006年、テキサスA&M大学でコクシエラ菌を扱っていた研究者3名が感染。事故にもかかわらず、大学側は法に義務付けられた報告をしなかった。

 これを受けて、疾病予防管理センターは研究を規制した。なおQ熱は抗生物質で治療することができる。

6. 野兎病菌

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credit:NIAID / WIKI commons

 この病原菌が引き起こす野兎病が最初に確認されたのは1911年のこと。当時、ペストに似た病気と考えられた。これまでに発見された病原菌としてはもっとも危険なものの1つとされ、世界中に豊富に存在することから生物兵器化の最有力候補だ。

 ウサギやネズミといった齧歯類から人間に感染することからその名がついた。1940年代に日本で研究されており、60年代にはアメリカも兵器開発を進めた。

 人から人への感染は確認されていないが、感染力がきわめて強いことで知られており、粘膜や皮膚の小さな傷からも感染する。

 また感染した動物から血を吸ったダニ、汚染された生水やホコリやエアロゾルなど、感染経路も多岐にわたる。生物兵器としての利用が危惧されるゆえんだ。

5. ブニヤウイルス

 ブニヤウイルス目には380種ものウイルスが分類される。1本鎖で、エンベロープを有するRNAウイルスで、人間や家畜に感染することはまれだ。

 しかしダニやノミ、ハエなどに噛まれて感染してしまうと、出血熱などの重篤な症状を引き起こす。

 危険なのは血管全体のみならず、複数の臓器が同時にダメージを受けることだ。比較的軽い症状で済む場合もあるが、命に関わるほど重くなることもある。

 ほとんどの地域ではそれほど一般的なウイルスではないので、そうした地域に生物兵器として利用されれば、生態系や住民に重大な結果をもたらすだろう。ブニヤウイルスを使った生物兵器開発を最初に進めたのはソ連だ。

4. コレラ菌

 感染力が強く、これまでに7度世界的に流行したことがあるコレラだが、現在でも毎年2万1000~14万3000人がこの病気で亡くなっている。

 コレラ菌に汚染された水からの感染が主で、発症すると「米のとぎ汁」のような激しい下痢と嘔吐を起こす。極端な脱水症状のために皮膚が乾燥し、老人のようなシワだらけの顔や指になるのも症状の特徴だ。

3. マールブルグウイルス

 感染したときの致死率88%というマールブルグウイルスは、地球上で最強のウイルスの1つだ。最初に確認されたのは、1967年のこと。西ドイツのマールブルグとフランクフルトでアフリカミドリザルを扱っていた研究員などが発症したのがきっかけだった。エボラウイルスに似ており、その姿はU字あるいは6の字をしている。

 感染後、5、6日の潜伏期間を経て発症。全身の倦怠感、発熱、頭痛、下痢、筋肉痛といった初期症状から、吐血や下血などへ進行。やがて血管内で無秩序に血液を凝固させ、ショックを引き起こし死にいたらせる。

 ソ連では、サルに向けてマールブルグウイルスをスプレーし、ごくわずかなウイルス粒子だけでも感染力があることを確認。

 この実験の結果、最高クラスの生物兵器物質に分類された。その感染力は、研究の中心人物だったユスティノフ博士までが犠牲になったほど。彼を殺したウイルスは遺体から採取され、「マールブルグウイルスU」と名付けられた。弾頭などに搭載して利用するらしい。

2. アフラトキシン

 主にナッツ類に繁殖するカビ毒の一種。1960年にイギリスで最初に確認されたときは、感染した七面鳥が大量死したので、「七面鳥X病」と呼ばれていた。

 その毒性はほかの生物兵器とは少々違う。調理によっても消えることがない強力な発がん性があり、肝臓がんを引き起こすのだ。高濃度のアフラトキシンを暴露すれば、肝不全を引き起こし、黄疸・倦怠感・吐き気といった症状を経て死にいたる。

 生物兵器として効果的だと考えられるのは、ほかの病原菌のような機能がないことだ。エアロゾルによる散布、水への混入、作物の汚染といったさまざまな方法でその毒を拡散することができる。

1. エボラウイルス

 主にサブサハラ諸国で猛威を振るうエボラウイルスは、人間とサルにとって致命的だ。ウイルスを含む血液やフンなどの体液、あるいは動物組織によって感染すると考えられている。

 治療が遅れた場合の致死率は80~90%とあまりにも高い。危険極まりないが、皮肉にも感染者が遠くに移動する前に死亡してしまうことから、これまでのところ世界的には流行していない。

 潜伏期間は2~21日。発熱、全身倦怠感、頭痛などの症状で始まり、嘔吐、下痢、腹痛、結膜炎といった症状に進行。やがて脱水症状や全身の血管内で血液が固まってしまうことよる多臓器不全で死にいたる。

 その病気は「エボラ出血熱」という強烈なインパクトのある病名で知られているが、出血が見られる患者は一部のみだ。

 致死率の高さゆえに生物兵器として利用されれば、凶悪な兵器になるだろう。だがそれが現実に可能だったとしても、そのための研究開発は危険と隣り合わせなものになる。

 なにしろエボラウイルスを研究できる施設は、世界にも4か所しかない。万が一、テロリストが適切な安全設備のない研究所へ持ち込むことがあれば、それは彼ら自身を破滅させることだろう。

 また環境の変化に対して非常に敏感という特徴もあり、ウイルスを宿した宿主の入手が極めて難しいことからも、すぐに生物兵器として利用される可能性は低い、と信じたい。

References:The World’s Deadliest Biological Weapons – Toptenz.net/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 28件

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  1. 核と同じかそれ以上のバカが考える最終兵器

    • +11
    1. ※1
      BC ( Bio 生物、 Chemical 化学)は貧者の核と言われるように貧しい国でも研究開発ができるところも怖いです。
      エボラは 1990 年代に知りましたが、強力過ぎて流行が散発的なのが幸いしてますね。これが無症状の期間中にも感染させるように、あるいは体液だけじゃなくて咳などの飛沫でも感染させるように能力がついたらというか変異したら恐ろしいことになります。

      ペストが入っていると思ったんだけど、なくて意外ですわ。勉強になりました。

      • +5
  2. そして今世界的な感染症の流行によって各国の防疫体制の強弱が明るみになってるんだよね

    • +9
  3. ボツリヌス菌は美容のために使われてるよね確か。
    ボトックスの語源はこれじゃなかったっけ。

    • +5
    1. >>4
      大人だと感染の危険は少ないからね
      だけど免疫の弱い幼児や病み上がりの人だとその限りじゃないから危険性は認識するべきだね
      赤ん坊にハチミツなんかはその代表例だし

      • +6
    2. ※4
      使うのはボツリヌス毒素ですよ。
      さすがに菌そのものを使うことはないですね。

      • +6
  4. エボラが広まってないのは物流や人がグローバル化してない地域にまだ留まっているからだけじゃないかと恐れている

    • +10
    1. ※5
      ・潜伏期間(7日程度)中は感染力がない
      ・記事にもあるように発症後は急速に病状が進むため、他人に感染を広げる前に亡くなってしまう

      空気感染はせず、患者の体液に触れなければ感染の可能性は低いとのことなので、医療体制の整った国であれば、仮に感染者が入国しても急速に広まる心配は少ないでしょう。まして水際対策に神経質な昨今ならば尚更です。

      • +3
  5. これらの病気へのワクチン開発、今回のコロナ騒動で進むのだから皮肉だね。

    • 評価
    1. ※6
      残念だけど進まない
      なぜならワクチン開発は当たり外れが大きいのに開発費は巨額だから
      よってエボラは地域の風土病扱いにされ
      ワクチン開発も手を引かれた状態
      悲しむべきことだし、どうにかすべき問題だと私自身は思うけど

      • 評価
  6. そもそも今ある普通のインフルエンザだって、あれが拡散されれば仕事を休む人間が増えるから、最終的にはGDPの低下になるから立派なB兵器と言われているけどな。
    新型ではないコロナウイルスだって、いわゆる風邪症状で数日休む、仕事をしても作業効率が落ちることになるから、悪意を持って拡散させれば兵器と言えば兵器。

    • +9
  7. 天然痘は、極秘保有だけでなく
    その気になれば馬痘ウイルスを変異させて容易に再現可能
    という話も聞いたことがある…。

    • +2
  8. この記事とリンク先読んで2時間潰れたわ
    色々勉強になった

    • +4
  9. 気温上昇と共に活動域が増える可能性のある連中の話ですな…
    新コロ終わっても油断出来ん

    • +8
  10. 中國が作った新型コロナ改良版が今インドで出回ってるしな。元々の新型武漢コロナも世界的に考えれば致死率高い。それを抜くって事はこの記事を書いた人は親中なんだろうな。、

    • -9
    1. ※14
      言いたいことはわかるがこの記事は「それ以前で」という前提じゃないのか
      新型コロナについては詳細もわからないんだし書きようがない

      • +3
    2. ※14
      兵器は効果が確実かつ、威力の制御ができなくてはならない。生物兵器として使用できるウイルスは以下の条件のいずれかを満たす必要がある。
      1.ヒト-ヒト間の感染力が無い、若しくは感染率が低い。
      2.致死率が高い、若しくは重症化しやすい。
      3.潜伏期間が短い。
      4.兵器の使用国が有効な治療薬、ワクチンを保有している。
      新型コロナウイルス(SARS2)はというと、ヒト-ヒト間の感染力が極めて高く味方にも感染が広がる可能性がある。潜伏期間は10日程度で、現代の戦争では敵はそんなに気長に待ってはくれない。若者が感染してもほぼ無症状であり、感染が始まった当時に中国は有効な治療方法を確立していなかった、現時点でも中国は治療薬の開発に貢献していないし、中国製ワクチンの有効性は40%に満たない。
      結局のところ誰彼構わず感染する風邪ウイルスなんぞ兵器にするマヌケな国は存在しない。テロに使うにしても致死率及び症状がショボ過ぎて宣伝効果は低い。

      • +7
    3. ※14
      インドで流行中の変異株「L452R」は、東アジア人の免疫から逃れるために発現した可能性がある」という指摘があります。詳しくは↓

      ttps://www.tokyo-np.co.jp/article/101453
      ttps://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65138

      これが事実なら、中国は自国の足元をすくうように「改良」されたウィルスを、ヒマラヤが隔てるとはいえ地続きの隣国に「出回らせた」たことになりますが。

      • +5
  11. 0.コロナウイルス
    現在進行形で世界中の人々を害し文化と経済を破壊せしめている。

    • +5
    1. ※15
      しかも発生国に大変有利な状況に、ってところが恐ろしすぎ

      • 評価
  12. 殺人ウイルスを作れたんだからアンチウイルスも作れるはずだ
    効くかどうかわからないワクチンを待つよりそのほうが効率的で経済的だと思う

    • -3
    1. ※22
      ものすごい乱暴な表現でいえばアンチウィルス=ワクチンなんですがね。

      • +4
  13. だが、実際に新型コロナによる経済的ダメージは下手な紛争以上だし、流行の発端の中国自体は世界から見たら感染によるダメージは少ない上に、軍事的、経済的にかなり優位な立場になっている。
    これが意図的なものなら実に効果的なわけで。
    その生物兵器の条件自体、すでに時代遅れになっているのでは……。

    • +1
    1. ※25
      疫病の蔓延を防ぐには、発生源の特定及び患者の隔離、発生地域との交流停止が有効である。いずれかの方法を実践できた国はSARS2の感染を抑え込むことができた。
      ・中国及びシンガポールは民主国家ではないので、強権的手法で都市封鎖及び人民の検査ができたから新型コロナを早期に抑え込むことができた。
      ・国民の相互監視意識の強い日本及び韓国でも比較的抑え込みがうまくできている。
      ・台湾とニュージーランドは地理的に隔絶しているため、外国人の受け入れ制限のみで抑え込みが可能である。

      疫病の重症度によっても感染の様相は異なる。
      ・重症の疫病の場合、感染者の移動力は低くなる。行政組織は全体の利益を守るため強権的な抑え込みを行う。
      ・軽症の疫病の場合、感染者の移動力は落ちない。行政組織の対応も緩いものになる。
      現行の日本国憲法でも「公共の福祉」の名のもと、特定感染症に対する隔離は実施されているし、致死率30%のMERSコロナウイルスのようなものであれば治安機関による感染地域の封鎖も辞さなかっただろう。SARS2の厄介なところは無症状のケースが多いため検疫をすり抜けやすく、若者であれば軽症で済むので行政も国民も注意意識が足りないことであろう。SARS2の致死率は2%未満で、肺炎球菌よりも死者は少ないのだ。このような事実から感染対策を一切やめてしまい経済を優先すべきと主張する論も一定の支持を得ている。
      しかし感染対策を全く行わなかったブラジルはSARS2の対策を巡って国民が分裂をしてしまい、スウェーデンは周辺国との交易を停止されてしまい経済は落ち込んだ。現在景気が良い国は強権的な抑え込をを行った中国、真っ先に検査を拡充した韓国及び台湾である。行く先にある地雷を除去できなければ人は歩みを進めることはできない。

      • +4
      1. ※26
        だから結局のところコロナ対策も人の移動を抑えることだったんだよなあ
        特に海外から
        島国なんだから

        • +1
  14. アフラトキシンはカビ由来だけど、細菌でもウィルスでもないただの化学物質じゃん
    リサーチ不足だよ

    • 評価

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