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狼が及ぼす影響はこんなところにも。鹿と車の事故を減らしているという調査報告(アメリカ)

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(著) (編集)

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 生態系を安定させるため、アメリカの一部の地域では、一度は絶滅の危機に追いやった狼の再導入が行われており、その成果が報告されているが、人間の予想を超えた恩恵を狼はもたらしてくれていたようだ。

 アメリカでは野生の鹿が多く生息しており、鹿と車の衝突事故は日常茶飯事となっている。保険会社の調査によると、アメリカでは2019年7月から2020年6月の1年間に、動物(鹿以外も含む)と車の衝突事故が190万件も発生しているという。

 鹿は車に対して全く脅威を感じないのだが、狼に対してはかなりの脅威を感じているようで、狼を導入した地域では、狼が鹿を怖がらせ、高速道路から追い払っているおかげで、衝突事故が減少しているという。

狼のいる地域では鹿と車の衝突事故が少ない

 鹿はどういうわけか車を恐れない。その為に車が来ても道路の上から逃げようとせず、高速道路にまで入り込んでくる。その為に車との衝突事故が相次いでいる。

 ところが、彼らは車以外の脅威を察知する能力は優れているようだ。とにかく狼を避けなければならないことは良くわかっている。

 新たな研究によると、狼がなわばりをもつ地域は、鹿と車の衝突事故は少ないと言う。狼が鹿を怯えさせ、車道から遠ざけているからだ。

 つまり、そうした地域で狼の数をコントロールすれば、ドライバーが衝突の差異の修理費や治療費など、多額の金を節約できるという、間接的なメリットにつながるという。

 ちなみに鹿に衝突するとその衝撃は大きく、人を轢いた以上のダメージが発生する。事実私の友人がアメリカの高速道路で鹿を轢いた時、車は大破した。

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狼の個体数を維持することの大切さ

 2013年、五大湖周辺の郡で集中的な調査が開始された。この地域では2012年にハイイロオオカミの生息数が増えたため、絶滅危惧種保護法のリストから外されていた。

 しかし、それも束の間、狩猟のせいで、1年しかたたないうちに再び絶滅危惧種リスト入りすることになってしまった。

「狼は、五大湖の絶滅危惧種リストに出たり入ったりしています。アメリカのほかの地域でもそうです」ウェスリアン大学、天然資源経済学者のジェニファー・レイナーは言う。

 レイナーら研究チームは、狼がさまざまな地域で再び生息し始めたことによる間接的な利益を調べ始めた。

 今年、狼はハワイとアラスカを除くすべての州で、絶滅危惧種ではなくなった。この研究論文は、政策立案者が狼の管理を適切に判断し、狼による”油断のならない漠然とした”利益を定量化するのに役立つかもしれないという。

「捕食者がいることによる利益がどれほどのものであるかを目に見える形にするのは、非常に複雑で難しいのです。その一方で、コストのほうはとてもはっきりしていて、測りやすいと思います」レイナーは言う。

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狼がいることで鹿と車の衝突事故が24%減少に

 研究チームは、1988年から2016年の間の63の郡における鹿と車の衝突データについて調べた。このうち29の州に狼が生息している。

 そして、このデータを、天然資源省が作った、狼が戻ってきた時期と場所を示すマップと照らし合わせてみた。ここから、狼の存在が鹿と車の衝突に与える影響を知ることができた。

 マディソンにあるウィスコンシン大学の経済学者、ドミニク・パーカーは言う。

経済学者は、野生動物、絶滅危惧種、大型捕食者など、さまざまなもののコストと利益を測る研究をしています。こうした計算は割り出すのは難しいとされていますが、一部なら推定することができる有望な方法だと考えています

 狼が生息していることで、鹿と車の衝突事故が全体で24%減ったことがわかった。この効果の4分の3は、狼が論文で言うところの”恐怖の環境”を作ったことによって、鹿が車道に近寄らなくなったおかげだ。

 残りの4分の1は、狼が鹿を捕食してその数を減らしたためだ。研究チームは、各郡における鹿の生息数ベースに基づいて計算した。

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狼がいることのメリット

 もちろん狼は、例えば家畜を殺すなど、経済的に負の影響も及ぼす。しかし、捕食者のいる地域は、だいたいにおいてメリットのほうが大きい。

 論文では、衝突事故の減少によって、1100万ドルの損失が回避されたと指摘している。パーカーによると、この金額は狼が家畜を殺した場合の損失の63倍に当たるという。

 レイナーによれば、ヘラジカや鹿のような有蹄類は、捕食者がまわりにいると、その餌食にならないように行動を変えるという。

 さらに、狼は、素早く移動するための通路として車道を利用することが多いので、鹿は狼を避けるため、車道に近づかなくなり、車と衝突して命を落とすことも少なくなる。

 鹿と車の衝突事故が多く、理想的な狼の生息地になっている地域にとって、この研究は貴重だ。例えば、ニューイングランドは、増えすぎた鹿が車との衝突事故によって死亡する率が高い地域で、狼が歩き回るのに適した広大な森がある。

 レイナーは、狼がべつの間接的な利益をもたらす可能性もあるとしている。

 例えば、狼が鹿を捕食してその数が減れば、鹿が作物を食い荒らす被害が減るかもしれない。しかし、この研究がほかの動物にも適用できるかどうかは、判断は難しいという。

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人間の介入は狼の代わりにはならない

 フレイザー・シリングは、環境と交通の関係を研究している、カリフォルニア大のロード・エコロジー・センターの所長。捕食者の減少が思いもかけない影響を環境に与える多くの例があると話す。

 例えば、前の世紀では、イエローストーンの生態系の中にオオカミの姿が見られることは珍しかった。

 狼の数が減ると、鹿やヘラジカの数が爆発的に増え、川のすぐ近くまで草を食い尽くしてしまった。そのため、一帯が砂漠化し、川床が侵食された。

 生態系から捕食者を排除してしまうと、予想もしなかった影響が現われる。「下流効果が現われることは予測できますが、それがどんな影響なのかは必ずしも予測できるとは限りません」

 レイナーとパーカーの論文は、人間のハンターが狼の代わりになることはできないということも指摘している。

 人間が銃で多くの鹿を殺すことはできても、人間の存在が自然の捕食者と同じように、鹿を怖がらせ、近寄らせなくさせることはできないというのだ。

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 生態系を調整するために、人間が介入して動物を狩ればいいという議論は古くからあった。アラスカでは狼を殺してきた長い歴史があるので、人間がもっと食料を得るために有蹄類を狩ることもできるというわけだ。

 こうしたハンターたちが、生態系の中にいる狼の役割にうまいこととって替わることができるという議論もある。

 こうした考えがうまく機能する場合もあるかもしれないが、レイナーとパーカーの研究からは、常に完璧な解決策になるとは限らないことがわかる。

「つまり、人間が肉食動物による効果を代替できるという考えは、間違っているということです。少なくとも、彼らが調査してきた限りでは」シリングは言う。

References:Wolves create a “landscape of fear,” slowing deer-car collisions | Ars Technica/ written by konohazuku / edited by parumo

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この記事へのコメント 39件

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  1. へー凄いね
    でも日本のオオカミは絶滅しています

    • +2
    1. ※1
      たまにいる説出てるし、海外でも絶滅してるといわれても十数年後
      ひょっこり出て来るなんてあるし、意外にジト目で隠れてるかもよ

      • 評価
    2. ※1
      そうなんですよね。
      試しに導入してみろやと言いたいところだけど、ハブ対策のマングースなどなどうまく行かなかった例がたくさんあるんですよね。ただ、日本のオオカミもハイイロオオカミの亜種であるという説もあって、まぁともかくもともとは居たんだからほぼ同じならいいんじゃねとも思うしで難しいですね。導入したら日本の畜産関連(牛馬に始まり鶏とか)には害がありそうですから補償を含めて考えなくちゃいけないんですよね。トキがあまり問題視されないのは、人間に害のある事象(肉食獣でもなく、病気もたぶんあまり運ばない)があまりないのも大きいかも。

      • 評価
      1. ※12
        マングースは元々居ない生き物
        トキは遺伝子レベルで同じやったか近いやったかそんな感じやなかったっけ?

        • +1
        1. ※17
          そう、だからオオカミの導入は昔いたからで何とかなりそうなんですよね。ただいなかった期間が長いです。
          トキは同じ種だったと思います。
          完全な外来種ではないけれども、 100 年も経っているとほぼ外来種みたいな感じになるんじゃないかとか、ジステンパーや狂犬病の媒介の恐れなどとかもあって、私は利害関係者でもなさそうなので、導入には賛成したいけど賛成の理由も反対の理由もないのがもどかしいです。

          • 評価
  2. やっぱりなー罠猟やってるけど全然減らないもんw
    一時的にそこを通らなくなるだけで他のルート通るから堂々巡りだよ

    • +5
  3. 関連記事の
    オオカミってやっぱすごい!ほんの少数のオオカミの群れが自然に奇跡をもたらすまで(米イエローストーン国立公園)
    ttps://karapaia.com/archives/52202394.html

    もすごかった
    こんなに影響出るのか

    • +4
  4. オオカミと車の衝突事故は大丈夫なの?

    • +3
  5. まあ鹿にとっては溜まったもんじゃないな
    ディストピア感ある

    • -5
    1. >>6
      そうか?狼自体昔からある存在だからむしろ自然だと思うし、
      鹿は車に対する危機感覚がないそうだから知らん間に車に轢かれて死ぬよりいいのでは?

      • +1
      1. ※13
        どっちにしろ鹿は死んでしまうのだから、無意味に恐怖を与えられるより人道的なのでは?

        • -4
  6. 日本だと野犬も野良猫もとにかく駆除しようとするなら人ばかりだからね
    大局判断より個人の欲求な国では捕食者の導入は難しい

    • -7
    1. ※7
      オオカミは野生動物ですが、イヌやネコは愛玩動物です
      それとオオカミは元々が生態系に中にいた種で、それを再導入してシカ対策で成果を上げてる
      イヌやネコは元々が生態系にいない種、野良猫や野良犬を放置すれば元々の生態系に悪影響ががあります

      • +6
  7. 「おいおかみ、帰るぞ」
    「はい、それじゃぁ、代行呼びますね」

    おかみが事故を防いだのであった。

    、、、、なんかちがう。

    • 評価
  8. 狩猟捕獲制限のある人間と、捕獲制限のないオオカミとじゃ比べもんにならんだろ。

    • 評価
  9. 24時間そこにいて縄張りを主張する狼と、公園内に定住することができない人間じゃ代わりにはならないよな。やっぱり自然の成り行きに任せるしかないのかねえ。

    • +1
  10. アメリカの広大な山野であればこそオオカミの群れの再導入が成功するのだと思う。
    タイリクオオカミは絶滅したニホンオオカミよりだいぶ大型のようだから、日本へのオオカミの再導入は難しいだろう。

    • +5
  11. おおかみ~~ えしぃ~~~ ためぇ~~~~ おおかみ~~ えしぃ~~~ ためぇ~~~~♪

    • -2
  12. 狼が人間を襲う可能性は考えないの?

    • -2
    1. >>22
      定期的に狼狩りしてたと思う
      人間は怖いということはキッチリ教えこむ

      • +2
    2. ※22
      狼が人間を襲う事もあります
      しかしシカも出会い頭で人間を襲う事はあります
      そして、それらよりシカによる交通事故で亡くなったり怪我をする人間が圧倒的に多いです
      シカによる交通事故の件数は北米大陸ではそれほど多いのです

      • +2
      1. ※25
        対岸の火事?
        現実にアメリカではシカによる交通事故で年間200人以上の人が亡くなっています
        圧倒的にシカによる人的被害>狼による人的被害なのです

        • +1
    3. ※22
      鹿などの「ご飯」が充分あれば、余程じゃなかったら(人間の方が撮影したくてむやみに近づくとか)群れごと人家を襲うなんてことはないんじゃないの
      人間を襲う可能性って、それ言ったら再導入してなくても普通にグリズリーやピューマみたいな動物もいるじゃない? 狼だけじゃないよ

      • 評価
    4. ニホンオオカミは謎のところがあるけどエゾオオカミはほぼ間違いなくタイリクオオカミの仲間だね。
      日本で再導入するとしたらまずは北海道道北などの原野が広がる地域かな?
      あと誤解している人もいるけど、アメリカでは再導入後も保護一辺倒ではなくて牧場などへ害を及ぼす場合には駆除の対象になる。オオカミに「人間に近付くと怖いぞ」と教えるためにもそれは重要なのかもね。
      もちろん家畜が被害に遭った場合は酪農家への補償も必須。

      ※22
      その可能性はどの程度なんだろうね。再導入地域では人が襲われた話は聞かないし、日本でも明治以前は長らく本州の人も北海道の人もオオカミと共存していたわけだけど、オオカミに襲われたという言い伝えはあまり聞かないような。
      ただオオカミはそれなりに大きな肉食獣である以上はリスクは絶対ないとは言い切れないし現代では酪農家の家畜への被害も考えられるので、それらデメリットと狼がいる事によるメリットをどう考えるかだね。
      この場合、例えばコロナの流行を完全に止めるには厳格なロックダウンを続けることが有効だけど、そればかりだと経済が止まり多くのデメリットが出るみたいに、一方だけでゼロリスクを求めると他に大きなひずみが出るみたいな感じ。
      その辺をどう考えるか。

      • +3
      1. ※28
        >オオカミに襲われたという言い伝えはあまり聞かないような。

        そう?
        『鍛冶屋の婆(千匹狼)』とか『狼石』とか
        それなりに人を喰い殺す狼の昔話はある気がするけど。
        ほぼリアルな生態っぽい「送り狼」の伝承なんかも、
        普通にしてれば襲われないが、転倒したりして隙を見せれば
        一気に飛び掛ってくる、と云われていたりするし。

        一方で、「狼の報恩」に類する話もあるけど。

        • +1
        1. ※29
          最も多い伝承の送り狼については、狩りの為ではなく狼の習性としてテリトリーに入ってきた者が何者かを確認しようとして後をつけてくるだけと考えられ、実際に送り狼に襲われたという話は伝わっていないそうだよ。
          あと江戸時代中期以降は狂犬病が入ってきてそれに感染して凶暴化する狼(ニホンオオカミは山犬や野犬と区別が曖昧なのでこれらも含まれていると考えられる)もいたそうだ。
          ただし今の日本は狂犬病清浄国。
          また餌付けなどされて人に近付きすぎる(人への恐れが薄まる)のも良くないそうで、イエローストーンではそういう狼も事故防止の為に駆除対象。

          • +3
  13. あと忘れられるがちだが、絶滅危惧種の植物の保護の面でもメリットがあるのも確かだろう

    • +1
  14. 人間が自然に入り込む機会は少なくない。林業関係・登山トレッキング等のレジャー・鉱山関係等。銃社会アメリカなら個人個人で護身用の武器を所持しているだろうが、日本はそうではない。山に入った人がヒグマ・ツキノワグマに襲われる事故は毎年のことだ。オオカミ導入すればさらにそのケースが増加するのは確実。それでもというなら、アメリカに近い銃規制緩和が必要。
    あるいは、昔いたニホンオオカミは残っている標本の印象ではかなりきゃしゃなタイプのようだった。そういう南方系の小型種(メキシコオオカミなど)なら導入しても人にとってましかもしれない。

    • 評価
  15. 狼に襲われたことのないやつは黙っとれ

    • -3
    1. ※33
      それで口を封じるのは暴論。
      そんなこと言ったら今の日本人は全員狼の問題について語れなくなる。
      世界でも狼を語れるのはごく少数になる。

      • +2
  16. ニホンオオカミ絶滅してるのにハンター不足

    • 評価
  17. そもそも江戸時代のオオカミが居た頃と現在の鹿の頭数大して変わらないと言う北大の研究報告がある。
    鹿が激増してると言うのは単に昭和期の乱開発時に一部地域では絶滅危惧種になるまで減った時期と比べてるから。
    江戸の生存時の鹿の農業被害、オオカミが絶滅した明治以降の鹿の減り方を見ても日本においてオオカミに鹿の抑制効果はほぼ無い。

    • +1
  18. 昔、アラスカでヘラジカが激減して、捕食者である狼を殺しまくったら、
    さらにヘラジカが減っていく・・・

    狼は病気や弱ったヘラジカだけを狙って、ヘラジカ達に病気が蔓延しない役割も果たしていた。

    経れば保護、増えれば殺す・・・
    そうなるように生態系や居住地を壊したのも人間

    • +1
  19. 一応真面目にシカ対策として狼導入を唱えている研究者もいるけど、、まあ実現はしないだろうねえ

    • 評価
  20. でもさあ
    アメリカってオオカミ以外でも捕食者いるよね
    そんなにオオカミにこだわる必要あるのか?
    ボブキャットやコヨーテじゃダメか?

    • 評価
    1. >>40
      ヤツら主食はネズミでシカはクリスマス並みのレアケースなんですわ
      大型を日常的に狩るのは社会性のあるライオン、ハイエナ、オオカミなんだよ

      • +1
  21. 道路の周辺で遠吠えBGM流すだけじゃダメなの?

    • 評価

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