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地球により生じる磁場(磁界)である地磁気は、太陽から吹きつけられる大量の荷電粒子から、地球を守ってくれている。だが由々しき事態が進行している。地球の一部領域には地磁気の”へこみ”があり、それが徐々に広がっているのだ。地磁気のへこみ、すなわち、ほかよりも地磁気が弱い部分は大西洋の南にあり、「南大西洋異常帯」と呼ばれている。
それは過去200年で4倍にも広がり、現在も拡大中だ。また1970年以降、8%ほど弱まったこともあったが、現在では更に拡大し、アフリカ南西部と南アメリカ東部に分裂しつつある。
地磁気が年々弱まっており「へこみ」が広がっている
地磁気が弱まると、特に低軌道を周回している人工衛星などにとっては厄介だ。荷電粒子の濃度が高まるおかげで南大西洋異常帯では、人工衛星の故障が増えることが知られている。そのために今日でさえ、人工衛星がその上空を通過する際、不必要な機器をシャットダウンして万が一の事態に備える必要がある。
NASA Explores Earth's Magnetic 'Dent'
原始惑星テイアの影響か?
なぜ地磁気のへこみが広がっているのか、その原因は不明だ。しかし一説によると、かつて地球に衝突した原始惑星が関係しているのだという。地表から3210キロの地下では、ドロドロに溶けた鉄がぐるぐると流れている。地球全体を包むような地磁気を発生させているのは、このプロセスだと考えられている。
外核の鉄が流れている理由の1つは、核から熱く軽い物質が、マントルの半固体の領域へと上昇するからだ。その一方、冷えて密度が高くなった物質は、核へと沈んでいく。つまり対流が起きているのだ。
だがアフリカ南部の地下には、核とマントルの間に何かが存在して、対流を妨げているという。
その何かとは45億年前に生まれたばかりの地球に衝突したとされる原始惑星「テイア」の名残だ。月が誕生したのは、じつはこれがテイアの衝突が原因だったという説もある。
衝突時、テイアは2つに砕けて地球の奥深くにめり込んだ。世界の最高峰エベレストより数百万倍も大きいその領域は、「大規模S波低速度領域」と呼ばれている。地球のマントルよりも1.5〜3.5%密度が高く、熱い。
これがあると対流が乱れる。アフリカ南部の場合、これによって鉄の流れが逆方向になっているかもしれないという。
地磁気の向きは、鉄が流れる方向に左右される。そして地磁気が強くなるためには、全体が同じ方向へ流れている必要がある。だから対流に乱れがあれば地磁気は弱まる。
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磁場のへこみ、残された謎
とは言っても、大規模S波低速度領域がへこみの原因ではない可能性もある。たとえば太平洋の下にも大規模S波低速度領域があるが、大西洋と同じように地磁気が弱まっているわけではない。もしそれが本当にへこみの原因なら、太平洋にも地磁気の異常が発生しているはずだ。
何しろ地球の奥底で起きていることだ。一体何が起きているのか確かめることは非常にむずかしいだろう。
References:A Buried Chunk of Alien World Could Be Behind a Weak Spot in Earth's Magnetic Field/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
マントル深部の液体金属の中をぐるぐる回っている比重の高いコア部分が年々大きくなってきているなんて説があるけど
地球の圧力をもってしても液体からの硬化が進行していっているとすれば大事だな
コアの回転が鈍くなり磁場が無くなればあっという間に全滅だな儚いね地球の運命も
2. 匿名処理班
それは大変でがうす。
3. 匿名処理班
地球内部にあるマイクロブラックホールのせいかな?
ホットスポットもプレートテクトロニクスもそのためとか。
奇妙な説だが完全否定も出来ない。
4. 匿名処理班
プロフェッサーX「マグニートー、アフリカで戦おう」
5. 匿名処理班
面白かった。
こういうさらっとした科学系読み物読みたいなあ。20年振りにNewtonでも買おうかな
6. 匿名処理班
地磁気の形成には月が重要な役割を果たしていて、月が重力でコアを引張って、地球内部で楕円軌道を描いてるおかげで中心部分が固まらない。
しかし、月は徐々に地球から離れており、その影響でコアは少しづつ固まりつつあるらしい。
数億年前から月の重力が弱まったことが「今」徐々に顕在化してるだけなので、現在の我々にはどうしようもない。
7. 匿名処理班
単純に老化しただけだったりして
8. 匿名処理班
サムネの地球がドーナツに見えてしまった
9. 匿名処理班
テイアの破片とかじゃなくて地下に潜り込んだプレートの残骸が原因だったりして
10. 匿名処理班
さて,これで一儲けする人たち,誰かなぁ?
11. 匿名処理班
マントルへ沈降した地殻は軽い物質が主成分なので外角より深部へは沈み込めない。そのまま溶けてマントル流の一部になる。が、2〜8億年ほど経過するとマントル・プルーム(対流による上昇流)に乗って表面へ湧昇、少しずつ冷えて固体化、新たな地殻を構成する。このサイクルを繰り返している。つまち地殻が地球の磁気圏に与える影響はほとんどない。
12. 匿名処理班
超巨大衝突の衝撃と何十億年も高温高圧に晒されてたら溶けるかコアと一体化しそう。比重はマントルに近いけど組成は違って決して溶解しない物質とかロマンはあるけど
13. 匿名処理班
The Coreって映画が似た現象を題材にした映画だったような…。
地球の核が活動を停止したせいで磁場が消失して、ゴールデンゲートブリッジが溶け落ちるヤツ。
14. 匿名処理班
※6
月の裏側で大爆発を起こしてこっち側にちょっと押し戻したりとかできないのかな
15. 匿名処理班
世界最高峰のエベレストより「数百万倍」も大きい領域だと…ヤバいですよ…と考えていたが、距離でも面積でもなく容積だな、解決😀
16. 匿名処理班
※12
まだ一体化してないとすると驚きですねぇ。
※15
地球を直径 127cm の風船としたとき、エベレストの高さは 0.8mm に過ぎません。もう、ほとんど誤差みたいなものですね。だから、月を作るようなモノの体積はそりゃー何百万倍ですね。この倍率での月は 35cm 弱で、太陽は 140m 弱(←デケェ!)です。
今回の記事の事象は、過去にもあった磁場反転とかの予兆だったり?とか思ってもいます。
17. 匿名処理班
新しい環境ビジネスの種かな?
18. 匿名処理班
>>17
ほしたら、金儲けの種を考えてみたらいい
19. 匿名処理班
※3
いやー僕も全く信じてないんだけど、アシモフ博士がありうるかもしれないと書いてんだよね。
完全否定されるまではありうるかなって話。
20. 匿名処理班
ごちゃごちゃオカルトに引っかかる前に、チバニアンでも調べようよ。
>地球史上の直近に起こった約77万年前の地磁気の逆転では、約2万年にわたり地磁気が不安定な期間が続いたことが、地質年代名「チバニアン」の由来となった千葉県市原市の地層の分析で分かった。
>地磁気の向きは数万〜数十万年ごとに逆転を繰り返しており、直近では約77万年前に現在の向きへと逆転した。
地磁気変化なんてよくある事。
ついでに温暖化なんて、+5〜−10℃は地球ではよくある事で、今すぐ起きてもおかしくないってのが地球環境。ちょっと環境変わったら人類はお終いだー詐欺ってのは、こういう事を無視した似非科学。
21. 匿名処理班
※13
あれなぁ。突っ込み処が多すぎて・・・。
鉄が溶けるほどの熱量なら雲なんか簡単に蒸散させてしまう。つまり雲の切れ間から光が射してって言うシチュはあり得ないし、アレくらいの現象が起こるなら一日で地上は全部焼かれて絶滅しちまうんだわ。
22. 匿名処理班
>>20
あなたの主張が分からない。
対称性のある不連続な地磁気の逆転より、非対称かつ局在的に磁気にむらがある方が生活への影響がありそうな上に「よくあること」どころかずっと対流してる(貴殿が持ち出した時代で起こっていることとは直感的には異なる現象)という理論だけれど、どの辺にオカルトを感じたのか記述してくれないと、理解できない人が理解できないことをオカルトと呼んでるという印象にしかならない。
ついでに以降は関係ないのでやめときます。
23. 匿名処理班
この前のニュースでジャイアントインパクトで衝突したテイア大きな破片が調度南米の地下ってやってたから、それが影響しているのでは?
24. 匿名処理班
>>6
地磁気なんて衛生関係なく大抵の死んでない星に見られるぞ