
古代ローマの都市の姿が明らかに image by:Verdonck et al., 2020/Antiquity
地中レーダーを使った発掘調査によって、土に埋もれてしまった古代ローマの都市の姿を詳細にマッピングすることに成功したそうだ。イタリア、ローマから北に50キロの地点にある「ファレリイ・ノーヴィ」の詳細なスキャン画像からは、浴場や劇場、お店や神殿といった施設や、町の送水システムのレイアウトまで知ることができるという。
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ポンペイのような遺跡を別にすれば、普通は小さな手がかりしか見つかりません。発掘から多少の洞察は得られるとしても、全体像を理解するのはとても困難です。ケンブリッジ大学のマーティン・ミレット教授は説明する。
ですが、リモートセンシング技術のおかげで、穴掘りをしなくても、大きな完全な遺跡をその構造の細部にわたって調べられるようになりました
Under the surface: radar reveals splendor of ancient Roman city
地中で眠る古代ローマの町
この遺跡の起源は、ファレスク人の反乱が鎮圧された紀元前241年頃にさかのぼる。ローマ人によってファレスク人の一部が移住させられたとき建設されたのが、このファレリイ・ノーヴィの町である。紀元前3世紀には2500人ほどの住人が住んでいたが、紀元700年頃に放棄され、今日では地表にわずかに遺構が顔をのぞかせている程度だ。
1990年代に発掘調査が開始され、浴場や劇場、市場や神殿といった施設の存在が明らかにされてきた。また2017年には、イギリスのセント・ポール大聖堂に匹敵するほど大きな神殿が発見されている。

image by:Verdonck et al., 2020/Antiquity
送水ネットワークと都市計画の存在
ケンブリッジ大学(イギリス)とゲント大学(ベルギー)による最新の地中レーダー探査では、送水ネットワークにつながった大きな長方形の構造が発見されている。これは屋外プールの遺構で、大型公共浴場施設の一部であるそうだ。しかしミレット教授によると、まず目に付くのは送水ネットワークのレイアウトであるとのこと。通りに沿って敷設されてはおらず、建物の下を通っていたのだ。
つまり建物が建てられる前にすでにそこにあったということであり、きちんと都市計画が練られた上でこの町が建設されたことを物語っているという。現在では当たり前のことかもしれないが、それが紀元前3世紀のことなのだから驚きだ。

image by:Verdonck et al., 2020/Antiquity
ローマによる支配以前の文化の名残
また北門の近くではモニュメントの一部らしきものも見つかっている。それは、石柱が並ぶ通路内に向き合うように配置された2つの大きな構造物だ。このモニュメントの意味や役割ははっきりしないが、ミレット教授の推測によれば、ローマに支配される以前この地に暮らしていたファリスク人の宗教・文化習慣に関係している可能性があるという。
ローマ帝国について一番の論点の1つは、個々の地域コミュニティの機能と、それがローマ帝国の権力構造全体とどう作用したのかということです。
ファレリイの町の周辺にあるこうした宗教的要素は、おそらくこの地域で暮らしたファレスク人のアイデンティティの産物でしょう。彼らの宗教的習慣がローマ圏内で作り直されたものだと想像します

image by:Verdonck et al., 2020/Antiquity
考古学調査における地中レーダーの可能性
地中レーダーの可能性を示すにはぴったりだというファレリイ・ノーヴィの調査では、一番大変なのはその膨大なデータ量であるという。古代の遺跡にしては珍しく、町の上に建物が建てられていなかったため、4輪車で地中レーダーを牽引しながら、30ヘクタールの範囲を12.5センチ単位で測定。合計7170万回の計測が行われ、生データの容量は1ヘクタールあたり4.5GBに達している。
1ヘクタールあたりを文書化しようとすれば20時間もかかるほどで、だからこそ研究チームは処理を自動化する方法を開発しているという。
ミレット教授は、すでに地中レーダーでオールドバラ(イギリス)をはじめとする遺跡を調査してきた実績があるが、今後はさらにミレトス(トルコ)、ニコポリス(ギリシア)、キュレネ(リビア)といったローマ帝国に関連する主要都市も調査したいと考えているそうだ。
この研究は『Antiquity』(6月9日付)に掲載された。
Ground-penetrating radar survey at Falerii Novi: a new approach to the study of Roman cities | Antiquity | Cambridge CoreReferences:arstechnica / theguardian/ written by hiroching / edited by parumo
https://www.cambridge.org/core/journals/antiquity/article/groundpenetrating-radar-survey-at-falerii-novi-a-new-approach-to-the-study-of-roman-cities/BE7B8E3AE55DB6E03225B01C54CDD09B
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コメント
1. 匿名処理班
俺のポケットには大きすぎらぁ
2. 匿名処理班
地中レーダーで
「地球空洞説」も調べてほしい
3.
4. 匿名処理班
1haあたり4.5GBてそんなに大きなデータ量とは思えないんだけど…
5. 匿名処理班
遺跡が明らかになるとどうなるんですか?
アサシンクリードの新作が出る
6. 匿名処理班
ローマは歴史の有る街だから、地下には色々な遺構が埋まっているだろうな。ローマの旧市街地の地下には水害で流された泥の下にかつての建物群がそのまま埋まっている場所が有るとか、何かで読んだ。大昔に水害が有った後で、掘り返して街を復興させるのは大変なので、掘らずに積もった泥の上に新しく街を作ったのだとか。こういう例は各所で有ったのだろうと思う。とにかく地下を掘れば、どこでも遺跡だらけ…状態らしい(ある意味で羨ましい)。
7. 匿名処理班
西暦700年ころというと、東ローマとロンゴバルド王国がイタリア半島めぐって争ってた時期。
その関係で放棄されたんかなぁ。
8. 匿名処理班
あ、埋まってた元地上都市の話か
この規模の地下都市が有ったの!?って少しびっくりしました
9. 匿名処理班
※1
そのかわり、もっと大変な物を盗んでいくんですね分かります。
10. 匿名処理班
※4
役所が人力で確認してる給付金の登録情報なんて文字データの総量でGBもないと思うけどめちゃくちゃ苦労してるじゃん
11. 匿名処理班
地中の構造を探る方法は結構昔からあったけど
まだ自動化のツールできてないのな
12. 匿名処理班
きっとこの中にルシウス・モデストゥスの設計した浴場が埋もれている
…と考えてしまう。
13. 匿名処理班
日本の古墳もこんな感じで調査させてもらえないかな?
ダメかな?
14. 匿名処理班
日本の場合は神話や古事記日本書紀とかの国家的創作との兼ね合いがあるから知らないほうがいいんだよね
15. 匿名処理班
>>14
知らないほうが良いってことはないでしょ
隠してる側が知られたくないってんなら分かるけど
俺は別に古事記の内容が覆ったって良いよ
というかそのほうがワクワクする
16. 匿名処理班
※14
宮内庁が認めない。お墓だから駄目だという方針。
ただ「誰」が埋葬されているかというのは当時の宮内庁が指定したんだが、いくつかの古墳で専門家に間違えてると指摘されてるのに訂正しない。
100%ミスと確定しない限り訂正しないという方針だそうな。そんな無茶な。
間違えっぱなしのほうがよっぽど失礼なのにね。メンツのほうが大事らしい。
17. 匿名処理班
五千年で埋まってしまうって事かね?
18. 匿名処理班
※4
確かに、今の時代だとそう感じますよね。
1000ha だと 4TB のハードディスクじゃちょっと足りないってところですから。
しかし、新書の本の文字情報だけなら、 320kB 程度と考えるとやはり膨大なデータですね。
なお、スーパーカミオカンデは一日あたり 500GB ものデータになるそうです。
19. 匿名処理班
※16
かといって数年でころころ訂正することになるのも困る
20. 匿名処理班
スフィンクスの地下を治安レーダーで調べてくれ
火星人のうまれかわりが言うにはとんでもねえのがうまってんだろ?
21. 匿名処理班
※20
今調べてもスフィンクスの下にさえBLMしか埋まってませんよ・・・