
image credit:国立保健医療科学院図書館所蔵、内務省衛生局編「流行性感冒」
1918年から1920年にかけ、人類史上最悪の感染症の1つとされるスペイン風邪が世界に蔓延した。日本では大正7〜9年のことである。20世紀最悪とされたスペイン風邪パンデミックにより、全世界での患者数は約6億人にのぼり、死者は2000万人〜5000万人と推定されている。『東京都健康安全センター』によると、日本ではは1918年から1921年までの間にパンデミックが3回(うち2回が大流行)あり、患者数は2千3百万人を超え、死者は38万人を超えたという。
当時、日本がスペイン風邪対策として作った啓蒙ポスターが『Spoon&Tamago』に紹介されていたので見ていくことにしよう。
これらのポスターが掲載されている、調査報告書の白黒版が現在、期間限定で公開中だ。
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スペイン風邪感染対策のために作られたポスター
スペイン風邪は、スペインが発生源ではない。第一次世界大戦時に中立国だったため情報統制がされていなかったスペインでの流行が大きく報じられたことに由来している。スペイン風邪の正体は、ヒトにおけるA型インフルエンザウイルスによる流行であることが後になって科学的に確認された最初の事例となった。
A型インフルエンザウイルスは元来鳥類を中心に保有されていたウイルスで、少しずつその遺伝子を変化させ、現在流行している香港型やソ連型に変異してきた。最近問題視されている鳥インフルエンザウイルスはA型の1つであり、濃厚接触によるヒトへの感染例が報告されている。さらには,鳥インフルエンザウイルスがヒトや他の動物のウイルスと交じり合い、遺伝子を大きく変化させ、ヒトに感染するウイルスに変異することも懸念されている。
当時は大正時代、今日と比較して海外との行き来が頻繁でなかったにもかかわらず、日本でもスペイン風邪はパンデミックを引き起こした。
政府主導のもと、国民に感染予防を呼び掛けられた。わかりやすく説明する為、当時、様々なポスターが作られていたようだ。
あれから約100年たった今、新型コロナという未知なるウイルスによるパンデミックが人々を不安と恐怖に陥れている。

image credit:国立保健医療科学院図書館所蔵、内務省衛生局編「流行性感冒」

image credit:国立保健医療科学院図書館所蔵、内務省衛生局編「流行性感冒」

image credit:国立保健医療科学院図書館所蔵、内務省衛生局編「流行性感冒」

image credit:国立保健医療科学院図書館所蔵、内務省衛生局編「流行性感冒」

image credit:国立保健医療科学院図書館所蔵、内務省衛生局編「流行性感冒」

image credit:国立保健医療科学院図書館所蔵、内務省衛生局編「流行性感冒」
内務省衛生局による調査報告書
国民を教育し更なる感染を防ぐため、内務省衛生局は当時のスペイン風邪がどのようなものだったか、またそれへの対処法などを詳述した調査報告書を発表した。455ページの「流行性感冒 778」は、日本におけるその流行の状況、予防、病理等をつぶさに記録した貴重な調査報告書で、スペイン風邪の蔓延や感染を回避するために誰もができる予防法も記載されている。上記ポスターもこの中に掲載されている。
4月30日まで無料ダウンロード配布中
「流行性感冒 778」は一時絶版となっていたが、2008年に平凡社より再販されているが、現在は新型コロナウイルスによるパンデミックの最中にあることから2020年4月30日までの期間限定として、白黒版が全文無料でPDF公開されている。流行性感冒 - 平凡社 また、東京都健康安全センターの『日本におけるスペインかぜの精密分析』も日本におけるスペイン風邪の詳細が記されているので、興味のある人は読んでみると良いかもしれない。
written by Scarlet / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
医療のデザインの本でも見たから知っていたけど、大正は黒マスクだったんだなぁと改めて実感
2. 匿名処理班
背骨に注射は泣く自信ある
3. 匿名処理班
スペイン風邪は若者中心に重症化したらしいね
4. 匿名処理班
!「ンキイバ」の「ゼカリヤハ」しべる恐 の乗客がガダルカナル・タカ
5. 匿名処理班
一体いつから、マスクは白と勘違いしていた?
流行の黒マスクは100年前の先祖返りだったのか・・・
6. 匿名処理班
※1
蒸気機関とか石炭・薪燃料多かったし身近だったから煤で汚れやすかったのもあるんじゃないかな。
医療用は白とか区別あったとは思うけど
7. 匿名処理班
横書きが左からになったのは
戦後からだったかな
8. 匿名処理班
何の予防注射かな?
9. 匿名処理班
警告する意図としては良く出来てるポスターだな
10. 匿名処理班
防疫は今も昔も変わらないんだな
11. 匿名処理班
日本におけるスペインかぜの精密分析を読んだけど、色んな所に書かれてるみたいに1918年に一回山があって1920年にもう一回山がある
年代層を分けてやられてるな
今回も何回か来る波の山に注意しないと
12. 匿名処理班
新型コロナもインフルエンザと同じようにずっと付き合っていかないといけないってわけか
13. 匿名処理班
マスクってごくごく最近のものと思ってたけどこの時代ですでに大体の人が知ってるものだったんだなぁ
そしてウイルスの予防方法は今と大体変からないくらい研究が進んでたんやね
14. 匿名処理班
この時代の方々の啓蒙努力があったからこそ
現代日本に手洗いうがいマスクの三種の神器が根付いたんですね。
先人の知恵と努力に感謝。素晴らしいです。
15. 匿名処理班
予防方法は今と変わらないかと思ったけど、どのポスターにも「手洗い」が無いのは意外。
16.
17. 匿名処理班
※8
詳細はわからないけれど、少なくともワクチンではない。
つまり効果は期待できない。
18.
19. 匿名処理班
コピーライターとかの作るいわゆるコピーよりシンプルな七五調の方が具体的に心へ響くよね
20. 匿名処理班
当時からノーマスクじじいは人々に迷惑かけてたんだな。
21. 匿名処理班
※8※17
まだウイルスという存在そのものが知られる前の1892年に北里柴三郎らがインフルエンザ患者から菌を分離しインフルエンザ菌と名付けた
これは実際には合併症の病原だったが、スペイン風邪の予防接種はこれのワクチンらしい
インフルエンザの病原ウイルスが発見されたのはもっと後の1933年
22. 匿名処理班
記事にあった衛生局の報告書に、マスクはかなり普及させられたが
うがいはマスクほどには浸透しなかったとある
病原菌の侵入経路は咽喉鼻腔だと散々書いてるのでこれは次までの課題だったことでしょう
予防法としてのワクチンも今回から励行してみたが、思ったより結果が出ず他国の報告にすら首を傾げてるように感じられる書き方だった
23. 匿名処理班
今見ても十分な公衆衛生の啓蒙だと思えばいいのか、100年経ってもやることは変わらないと言うべきなのか……
24. 匿名処理班
そういや与謝野晶子がスペイン風邪で子どもを亡くしたとかいうガセネタも流れたよね
25.
26. 匿名処理班
※22
100年前は清水が湧き出る田舎じゃないと生水はあまり飲まなかったので、お湯でうがいするわけにもいかず、湯冷ましを作り置きしてうがいするのも面倒だったからだと思います。
水道はすでにあったけれど今みたいな浄水場はなかった上に、外国人居住区以外はほとんど普及なし。多くの一般家庭では井戸水の汲み置きなので衛生上(戦後になるぐらいまでは)湯冷ましではない水はほとんど飲まなかったので(湧水が出る地域除く)
たぶん、うがいとはいえ、生水を口に含むのを嫌がったのではないかと。流行り病の予防のせいでコレラに感染では、洒落にならないと思ったでしょうから。(水経由からのコレラ感染が、明治時代に各地で起こっていました)
27. 匿名処理班
凄い裕福な家庭だね。
28. 匿名処理班
大正時代にもマスクしていて、しかも立体マスクだった?
ある意味で現代よりも進んでいるかも?しかも黒マスクだし
(まあ絵に描かれているから一般的だったとは限らんかも?)
29. 匿名処理班
手放しにセキをされては堪らない…
おい、肩の上に何か乗ってんぞ?
30. 匿名処理班
スペイン風邪もだけど、1957年のアジア風邪のパンデミックの話もして欲しい。国内だけで300万人かかって、5700人死んだらしいし・・・
31. 匿名処理班
>>10
私も同じ事考えてました。必死ですね。
32. 匿名処理班
ちょうど今この報告書を読んでるので、ポスターがカラーで見られてうれしいです。
!「ンキイバ」の「ゼカリヤハ」しべる恐 、ノーマスクおっさんの右隣の人、
静かに嫌がってる表情に見えます
33. 匿名処理班
※6
戦前は蒸気機関車・貨車が黒、電気機関車・電車・客車が茶色だったのも同じ理由だろうな。カラフルな電車が溢れる今から見たら「なんでこんな地味な色にするんだろう」と不思議だけど、石炭が使われまくっていた時代だとそうしないと煤の汚れが目立って仕方ない。
34. 匿名処理班
新型コロナでずっと思ってるわけですよ、
技術はそれはもう比べ物にならないほど進歩した、しかしそれを扱う人間はきっと有史以来ほとんど進歩せずに来たんだなぁ、と……精神的にも能力的にも。
35.
36. 匿名処理班
第二次大戦敗戦後の標語が混じってるんじゃない?